中古車購入チェックポイント
更新日:2022.10.25 / 掲載日:2022.10.25
車の故障を修理したいときに保険を使うことはできる?
車が故障して、修理費用が高額になりそうな場合、自動車保険の保険金で賄うことを考える方は多いかもしれません。
しかし、自分の車の修理で使える「車両保険」には、故障の修理で使えるケースと使えないケースがあります。また、車両保険の使用にはデメリットもあるので、そうした注意点も押さえておくと役立つでしょう。
この記事では、車両保険によってカバーできる故障の範囲と補償内容、保険を使う際の手続き方法について解説します。
では、車両保険とはどんな内容の保険なのか、使う際にどのような注意点があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

自分の車の故障を修理する場合は自動車保険の一種である「車両保険」を使うことができます。
車両保険は故障の修理費用以外にも代車費用やレッカー移動の費用までカバーできることがあるので頼もしい保険となっています。
もともと自動車に関する保険には、強制的に加入しなければならない自賠責保険と任意で加入することになる自動車保険があります。自動車保険はさまざまな保険の総称で、車両保険はその一種です。
便利な車両保険ではありますが、保険料が安いものの適用範囲が狭い「限定型」というタイプも存在します。
また、この保険を利用すると等級が下がり、翌年からの保険料が上がるなどのデメリットもあるため契約内容には注意が必要です。
事故に遭ってしまった場合は加害者から賠償金が支払われますが、加害者・被害者の過失割合によって保険会社から支払われる賠償金が減額されてしまうことがあります。車両保険は、こうした場合の減額分もカバーしてくれます。
故障した部位の定めはなく、メンテナンス不足や経年劣化、地震以外の原因によるものであればおおむね保険金が下りるでしょう。
例えば、車を修理している間、他に使える車両がなければ代車を利用するケースがありますが、代車費用も車両保険で補償されることがあります。
車の修理は必要なパーツが取り寄せとなることもあります。あるいは、故障が一箇所にとどまらず複数個所に渡っており、修理に時間がかかることも多いです。
修理が長期間になる場合、車両保険を使えば安心して代車が利用できるでしょう。
保険商品によっては車両保険に契約していなくても有料のロードサービスの一環としてレッカー移動が使えることもあるでしょう。
走行中に車が故障して動かない場合、どうしてもレッカー移動が必要になるケースは少なくありません。そのため、どの保険会社も何らかの形で運搬費用をカバーできる仕組みを採用していることがほとんどです。
名称は保険会社によりますが、主に「故障運搬時車両損害特約」と言われています。加入や支払いには一定の条件があるものの、エンジンの不調を始めとする様々な故障に対応しています。
故障部位や車種によっては、ちょっとした故障の修理にも10万円以上かかることもあるので加入しておくと安心です。

ここまでで、車両保険は車の故障の修理のみならず代車費用やレッカー移動代までも賄えるなど、詳しい内容を見てきました。
ここからは、実際に車両保険を使う時の手続きの流れについて、3つのステップに分けて説明していきます。
多くの場合、故障の原因となる出来事が発生したり、故障が発覚したりした時点で警察に通報・相談することになるでしょう。
特に事故の場合はこうして警察に連絡をしておき、事故証明書が発行できる状態にしておかなければなりません。保険会社で支払いの手続きをする際、この事故証明書を用意する必要があるため忘れないようにしましょう。
車両保険を使う際、いくつか書類を用意する必要があるので修理直前のギリギリのタイミングで連絡すると後が大変になります。
保険会社は契約している自動車保険の証券番号や契約者の氏名などの個人情報を確認します。それから事故の場合は被害者の有無や怪我をしているかどうかなど、事故の状況を尋ねられるでしょう。
保険会社では、この見積書を確認して支払金額を算出するので故障の原因が交通事故であってもなくても提出は必須です。
なお、修理代の見積もりをどこに依頼するかですが、懇意にしている修理会社や販売店、ディーラーがあればそれで問題ありません。そういった業者がいないのであれば、保険会社に相談して適したところを教えてもらってもいいでしょう。
見積書を提出して保険金を請求する際は、保険会社が独自で作っている保険金請求書や事故車両の写真、事故発生状況報告書なども必要になります。これらの必要書類のラインナップは会社によって違うので確認して下さい。
車両保険を使うと、等級が下がって翌年の保険料が値上がりします。よって保険金を請求する際、来年からの保険料がどのくらいになるのかをあらかじめ聞いておいてもいいでしょう。

車両保険を使うか使わないかについてはいくつかの判断基準があります。
例えば、車両保険を使えば保険料が上がるので修理費用と天秤にかけて考える必要があるでしょう。
まず、メンテナンス不足や経年劣化による「ただの故障」は、車両保険が適用されないので覚えておきましょう。
メンテナンス不足による故障とは、例えば定期的に行うべきエンジンオイルの交換を怠り、オイル不足によってエンジンが損傷してしまったといったケースが該当します。
エンジンの交換となると数十万円の費用がかかりますが、車両保険は下りないので全額自己負担となるでしょう。
また、車両保険には「一般型」「限定型(エコノミー型)」の2種類があります。限定型(エコノミー型)は保険料が安いものの、一般型と比べて補償範囲が狭いという欠点があります。自損事故や当て逃げなどによる車の故障・損傷は補償されません。
このように車両保険は万能ではなく、保険金が下りない条件もあらかじめ決まっています。心配な場合は契約内容をあらかじめしっかり確認しておくことをおすすめします。
等級は無事故だったことによる安全度のランクのようなものです。自動車保険に初めて加入する際に6~7等級からスタートします。そして、1年間無事故でいるごとに1等級ずつ上がっていき、等級が高ければ高いほど安全度が高いと見なされて保険料も割り引かれます。
事故を起こして車両保険を使うと、この等級が下がることになります。例えば、現在7等級のところで3等級ダウンする事故を起こすと、翌年度は4等級となります。
等級が下がればそれだけ保険料も割増となるため、車両保険を使って車を修理する場合は、翌年度からの保険料の値上がり分と、修理費用の双方を天秤にかけて考えるべきでしょう。
保険を使って修理して値上がり分が修理費用を上回るのなら、自己負担で修理するという選択肢もあります。
同じ等級でも事故を起こした経歴があるか否かによって、保険料の割引率は異なります。この割引率を定めるのが事故有係数です。
例えば、事故歴がある10等級と事故歴がない10等級とでは、約20%以上も割引率に差が出てきます。そして、適用された割引率が継続する期間を事故有係数適用期間と呼びます。
実際にこの係数によって保険料がどのように変動するのかはケースバイケースで、計算も複雑です。車両保険を使った場合は等級が下がると同時に、この事故有係数を用いた計算によって保険料の値上がり分が決定します。
車の修理時に車両保険を本当に使うかどうかを判断するのは、この値上がり分を確認してからにしましょう。
過失割合は事故における加害者と被害者の責任の割合を数値化し、割合に応じて支払額が調整されています。
例えば、事故の「加害者:被害者」の過失割合が「9:1」と認定されれば、被害者は本来受け取れる金額の9割しか補償されず、残り1割は自己負担です。
車両保険はこの場合の自己負担分も補償してくれますが、翌年度分の保険料は値上がりするので、この点を踏まえてよく検討すべきでしょう。
しかし、自動車保険の車両保険は自分の車の修理費用にのみ使えるのに対し、自賠責保険は事故の被害者が受けた人的被害の補償だけに使えます。この点で、車両保険と自賠責保険は正反対の保険だということが理解できるでしょう。そのため、自賠責保険は車両保険の代わりにはなりません。
自賠責保険はあくまでも「対人」の保険で、交通事故の被害者が受けた肉体的・精神的な損害のみを補償対象としています。事故の被害者が乗っていた車の修理や自損事故で壊してしまった建物の復旧などにも使えません。
自賠責保険の補償内容は、被害者が怪我を負った場合は最高で120万円、死亡してしまった場合は最高で3,000万円となっています。また、後遺障害が残った場合は最高で4,000万円の補償がされます。

ここまでで、車両保険の詳しい内容と使う場合の手続きの流れ、そして使用する・しないの判断基準などを説明してきました。
最後に少し特殊なケースも含めて、車の修理のために車両保険が使える事例・使えない事例を見ていきましょう。
あくまでも、修理費用が補償されるのは事故や事件、災害(地震、津波、火山の噴火を除く)を原因とする場合に限られます。
同じように車同士が衝突して人身事故を起こした場合、自分の車の修理には車両保険が使えます。一方、相手方の人的被害には対人賠償保険を使い、車の損害には対物賠償保険を使うという形でそれぞれ使える保険が決まっています。
例えば、オイル交換を怠ってエンジンが損傷し、走行中に車がストップして事故を起こしたというケースがあたります。ただし、この場合は事故による損傷を車両保険でカバーできてもエンジンの交換費用まで賄えるかどうかは保険会社と相談する必要があるでしょう。
ただし、過失割合によっては修理費用全額分が支払われるとは限らず、何割か割り引かれる可能性があります。割り引かれた分は自分(被害者)の自己負担となりますが、それも車両保険を使って補うことが可能です。
事故に遭遇して過失割合が問題になった場合は、車両保険の利用を検討するといいでしょう。
他車運転特約とは、他人から臨時で借りた車を運転していて事故を起こした場合に使える特約です。
それ以外の場合は、車の持ち主の自動車保険を使わなければなりません。ただし、車の持ち主が損害賠償のために支払った金額分を友人に請求することは可能です。
買い替える場合は費用の一部を自己負担するか、「全損時諸費用特約」「新車特約」などを使わなければなりません。
一方、自分が被害者の場合は全損した車の修理・買い替え費用は加害者側の対物賠償保険によって賄えます。この場合も過失割合の関係で満額は受け取れないことがあるので注意が必要です。
また、車両の故障の修理費用に関する補償は新車であれば購入時についてくるメーカー保証を利用できます。中古車の場合も販売店で独自に保証をつけていることもあるので、一度確認してみてもいいでしょう。
しかし、自分の車の修理で使える「車両保険」には、故障の修理で使えるケースと使えないケースがあります。また、車両保険の使用にはデメリットもあるので、そうした注意点も押さえておくと役立つでしょう。
この記事では、車両保険によってカバーできる故障の範囲と補償内容、保険を使う際の手続き方法について解説します。
この記事の目次
車の故障は保険でカバーできる?
壊れた車を修理する場合、自動車保険の一種である「車両保険」を使って、修理費用をカバーするのが一般的です。では、車両保険とはどんな内容の保険なのか、使う際にどのような注意点があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
自分の車の修理には「車両保険」が使える

車両保険は故障の修理費用以外にも代車費用やレッカー移動の費用までカバーできることがあるので頼もしい保険となっています。
車両保険とは?
車両保険とは、自分の車が故障した時の修理費用などをカバーできる保険のことです。自動車保険の一種で、自分の車が補償対象となる点などが対物賠償保険とは異なっています。もともと自動車に関する保険には、強制的に加入しなければならない自賠責保険と任意で加入することになる自動車保険があります。自動車保険はさまざまな保険の総称で、車両保険はその一種です。
便利な車両保険ではありますが、保険料が安いものの適用範囲が狭い「限定型」というタイプも存在します。
また、この保険を利用すると等級が下がり、翌年からの保険料が上がるなどのデメリットもあるため契約内容には注意が必要です。
事故に遭ってしまった場合は加害者から賠償金が支払われますが、加害者・被害者の過失割合によって保険会社から支払われる賠償金が減額されてしまうことがあります。車両保険は、こうした場合の減額分もカバーしてくれます。
修理代金をカバーできる
車両保険が適用されると、故障した車の修理代金は保険金でカバーすることができます。故障した部位の定めはなく、メンテナンス不足や経年劣化、地震以外の原因によるものであればおおむね保険金が下りるでしょう。
代車費用の補償
契約内容にもよりますが、車両保険は車の修理に関係する様々な費用もカバーすることが可能です。例えば、車を修理している間、他に使える車両がなければ代車を利用するケースがありますが、代車費用も車両保険で補償されることがあります。
車の修理は必要なパーツが取り寄せとなることもあります。あるいは、故障が一箇所にとどまらず複数個所に渡っており、修理に時間がかかることも多いです。
修理が長期間になる場合、車両保険を使えば安心して代車が利用できるでしょう。
レッカー移動の費用の補償
代車費用の場合と同様にこれも契約内容によりますが、車を修理工場へ運ぶ際のレッカー移動にかかる費用も車両保険で賄えることがあります。保険商品によっては車両保険に契約していなくても有料のロードサービスの一環としてレッカー移動が使えることもあるでしょう。
走行中に車が故障して動かない場合、どうしてもレッカー移動が必要になるケースは少なくありません。そのため、どの保険会社も何らかの形で運搬費用をカバーできる仕組みを採用していることがほとんどです。
「故障運搬時車両損害特約」もある
車両保険は原則としてメンテナンス不足や経年劣化による「ただの故障」の修理費用は補償対象としていません。しかし、近年はこうした単なる故障の修理費用をカバーできる特約もあります。名称は保険会社によりますが、主に「故障運搬時車両損害特約」と言われています。加入や支払いには一定の条件があるものの、エンジンの不調を始めとする様々な故障に対応しています。
故障部位や車種によっては、ちょっとした故障の修理にも10万円以上かかることもあるので加入しておくと安心です。
車両保険の使い方・手続きの流れ

ここからは、実際に車両保険を使う時の手続きの流れについて、3つのステップに分けて説明していきます。
①警察へ連絡する
車両保険は事故や事件にあたるケースで車が壊れた場合の修理費用の補償を前提としています。多くの場合、故障の原因となる出来事が発生したり、故障が発覚したりした時点で警察に通報・相談することになるでしょう。
特に事故の場合はこうして警察に連絡をしておき、事故証明書が発行できる状態にしておかなければなりません。保険会社で支払いの手続きをする際、この事故証明書を用意する必要があるため忘れないようにしましょう。
②保険会社へ連絡する
警察への通報や事故受け付けの手続きなどとあわせて、契約している保険会社にも連絡を入れましょう。車両保険を使う際、いくつか書類を用意する必要があるので修理直前のギリギリのタイミングで連絡すると後が大変になります。
保険会社は契約している自動車保険の証券番号や契約者の氏名などの個人情報を確認します。それから事故の場合は被害者の有無や怪我をしているかどうかなど、事故の状況を尋ねられるでしょう。
③修理費の見積書を保険会社へ提出する
最後に修理してもらう工場や業者から修理費用の見積書を出してもらい、それを保険会社へ提出しましょう。保険会社では、この見積書を確認して支払金額を算出するので故障の原因が交通事故であってもなくても提出は必須です。
なお、修理代の見積もりをどこに依頼するかですが、懇意にしている修理会社や販売店、ディーラーがあればそれで問題ありません。そういった業者がいないのであれば、保険会社に相談して適したところを教えてもらってもいいでしょう。
見積書を提出して保険金を請求する際は、保険会社が独自で作っている保険金請求書や事故車両の写真、事故発生状況報告書なども必要になります。これらの必要書類のラインナップは会社によって違うので確認して下さい。
車両保険を使うと、等級が下がって翌年の保険料が値上がりします。よって保険金を請求する際、来年からの保険料がどのくらいになるのかをあらかじめ聞いておいてもいいでしょう。
車両保険を使う・使わないの判断基準は?

例えば、車両保険を使えば保険料が上がるので修理費用と天秤にかけて考える必要があるでしょう。
そもそも使えないケースもある
車両保険はどんなケースでも使えるわけではありません。故障の理由によっては保険金が下りないこともあります。まず、メンテナンス不足や経年劣化による「ただの故障」は、車両保険が適用されないので覚えておきましょう。
メンテナンス不足による故障とは、例えば定期的に行うべきエンジンオイルの交換を怠り、オイル不足によってエンジンが損傷してしまったといったケースが該当します。
エンジンの交換となると数十万円の費用がかかりますが、車両保険は下りないので全額自己負担となるでしょう。
また、車両保険には「一般型」「限定型(エコノミー型)」の2種類があります。限定型(エコノミー型)は保険料が安いものの、一般型と比べて補償範囲が狭いという欠点があります。自損事故や当て逃げなどによる車の故障・損傷は補償されません。
このように車両保険は万能ではなく、保険金が下りない条件もあらかじめ決まっています。心配な場合は契約内容をあらかじめしっかり確認しておくことをおすすめします。
車両保険を使うデメリット
車両保険を使うと自動車保険の「等級」が下がり、翌年度から保険料が値上がりするというデメリットがあります。等級は無事故だったことによる安全度のランクのようなものです。自動車保険に初めて加入する際に6~7等級からスタートします。そして、1年間無事故でいるごとに1等級ずつ上がっていき、等級が高ければ高いほど安全度が高いと見なされて保険料も割り引かれます。
事故を起こして車両保険を使うと、この等級が下がることになります。例えば、現在7等級のところで3等級ダウンする事故を起こすと、翌年度は4等級となります。
等級が下がればそれだけ保険料も割増となるため、車両保険を使って車を修理する場合は、翌年度からの保険料の値上がり分と、修理費用の双方を天秤にかけて考えるべきでしょう。
保険を使って修理して値上がり分が修理費用を上回るのなら、自己負担で修理するという選択肢もあります。
翌年からの保険料が上がる
車両保険を使うと、等級が変わることで翌年度からの保険料が上がると前項で説明しました。この保険料の値上げについてさらに詳しく見ていくと、事故有係数適用期間というものが関わっていることが分かります。同じ等級でも事故を起こした経歴があるか否かによって、保険料の割引率は異なります。この割引率を定めるのが事故有係数です。
例えば、事故歴がある10等級と事故歴がない10等級とでは、約20%以上も割引率に差が出てきます。そして、適用された割引率が継続する期間を事故有係数適用期間と呼びます。
実際にこの係数によって保険料がどのように変動するのかはケースバイケースで、計算も複雑です。車両保険を使った場合は等級が下がると同時に、この事故有係数を用いた計算によって保険料の値上がり分が決定します。
車の修理時に車両保険を本当に使うかどうかを判断するのは、この値上がり分を確認してからにしましょう。
過失割合を含めて自己負担分を計算する
車両保険を使う場合、過失割合に基づく自己負担分も計算に入れておく必要があります。過失割合は事故における加害者と被害者の責任の割合を数値化し、割合に応じて支払額が調整されています。
例えば、事故の「加害者:被害者」の過失割合が「9:1」と認定されれば、被害者は本来受け取れる金額の9割しか補償されず、残り1割は自己負担です。
車両保険はこの場合の自己負担分も補償してくれますが、翌年度分の保険料は値上がりするので、この点を踏まえてよく検討すべきでしょう。
自賠責保険は車両保険の代わりにならない
車の事故で使える保険には、自動車保険(任意保険)の他にも自賠責保険(強制保険)があります。しかし、自動車保険の車両保険は自分の車の修理費用にのみ使えるのに対し、自賠責保険は事故の被害者が受けた人的被害の補償だけに使えます。この点で、車両保険と自賠責保険は正反対の保険だということが理解できるでしょう。そのため、自賠責保険は車両保険の代わりにはなりません。
自賠責保険はあくまでも「対人」の保険で、交通事故の被害者が受けた肉体的・精神的な損害のみを補償対象としています。事故の被害者が乗っていた車の修理や自損事故で壊してしまった建物の復旧などにも使えません。
自賠責保険の補償内容は、被害者が怪我を負った場合は最高で120万円、死亡してしまった場合は最高で3,000万円となっています。また、後遺障害が残った場合は最高で4,000万円の補償がされます。
【ケース別】こんな場合は車両保険は使える?

最後に少し特殊なケースも含めて、車の修理のために車両保険が使える事例・使えない事例を見ていきましょう。
エンジンの故障
車の部品で最も重要なのがエンジンですが、メンテナンス不足や経年劣化による故障は、たとえエンジンでも補償されません。あくまでも、修理費用が補償されるのは事故や事件、災害(地震、津波、火山の噴火を除く)を原因とする場合に限られます。
自損事故
自分で電柱にぶつかるなどする「自損事故」で車が破損(故障)した場合は車両保険が使えます。ただし、この場合に保険金で賄えるのは車の修理費用だけです。損害を与えた電柱などの物品の修理・復旧の費用のためには使えません。同じように車同士が衝突して人身事故を起こした場合、自分の車の修理には車両保険が使えます。一方、相手方の人的被害には対人賠償保険を使い、車の損害には対物賠償保険を使うという形でそれぞれ使える保険が決まっています。
故障が原因で事故を起こした
メンテナンス不足や経年劣化による「ただの故障」の修理には、車両保険は使えません。しかし、その故障が原因で事故を起こして損傷してしまったのであれば、そもそもの原因がメンテナンス不足だったとしても車両保険が使えます。例えば、オイル交換を怠ってエンジンが損傷し、走行中に車がストップして事故を起こしたというケースがあたります。ただし、この場合は事故による損傷を車両保険でカバーできてもエンジンの交換費用まで賄えるかどうかは保険会社と相談する必要があるでしょう。
事故に遭った
交通事故の被害に遭って車を壊された場合は、事故の相手方(加害者)の対物賠償保険で修理費用を賄えます。ただし、過失割合によっては修理費用全額分が支払われるとは限らず、何割か割り引かれる可能性があります。割り引かれた分は自分(被害者)の自己負担となりますが、それも車両保険を使って補うことが可能です。
事故に遭遇して過失割合が問題になった場合は、車両保険の利用を検討するといいでしょう。
他人が車を運転して事故を起こした
車を友人・知人などの他人に貸して事故が発生した場合は、その友人が自分自身の契約している自動車保険で「他車運転特約」を結んでいるのであれば、車の修理費を賄えます。他車運転特約とは、他人から臨時で借りた車を運転していて事故を起こした場合に使える特約です。
それ以外の場合は、車の持ち主の自動車保険を使わなければなりません。ただし、車の持ち主が損害賠償のために支払った金額分を友人に請求することは可能です。
全損事故
自損事故によって車が全損してしまったら、車両保険の支払可能額の限度額までが支払われます。この限度額は車の時価に基づいて変動するため、時間が経てば経つほど補償金額も下がります。買い替える場合は費用の一部を自己負担するか、「全損時諸費用特約」「新車特約」などを使わなければなりません。
一方、自分が被害者の場合は全損した車の修理・買い替え費用は加害者側の対物賠償保険によって賄えます。この場合も過失割合の関係で満額は受け取れないことがあるので注意が必要です。
その他
自宅の敷地内で事故を起こして車が故障した場合は車両保険が使えますが、車庫や自宅の建物などの修理費用は火災保険などを使うことになります。また、車両の故障の修理費用に関する補償は新車であれば購入時についてくるメーカー保証を利用できます。中古車の場合も販売店で独自に保証をつけていることもあるので、一度確認してみてもいいでしょう。
まとめ
①車の故障の修理費用は「車両保険」でカバーされるが、場合によっては使えないこともある
②修理のためのレッカー移動や代車費用がカバーされることもある
③事故に遭ったら、警察と保険会社に必ず連絡する
④事故だけでなく、地震以外の自然災害やイタズラによる故障の修理にも使える
⑤車両保険を使うと等級が下がる、限定型(エコノミー型)では自損事故はカバーできないなどの注意点がある
⑥全損事故の場合の車の買い替え費用もカバーされる
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