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更新日:2022.12.26 / 掲載日:2022.12.26
車はモーターが動かないと走りだせない?車のセルモーターが故障する原因と修理費用を解説
車はエンジンで燃料を燃やし、そのエネルギーを利用して走行しますが、そのきっかけを作っているのが、セルモーターと呼ばれる部品です。
セルモーターが何らかの原因で動かなくなると、必然的に車も走りだせません。
今回は、セルモーターの寿命や故障の原因、故障時の症状や修理にかかる費用などについて詳しく解説します。
そこでまずは、セルモーターという部品の構造や仕組みなどといった概要と、車にとって重要なその役割について詳しく見ていきましょう。

セルモーターは、大部分をモーター(電動機)が占める部品で、その役割から「スターター」とも呼ばれています。あくまでエンジン始動のためだけに用いられる「補機」であり、エンジンがかかれば使うことはありません。
しかし、セルモーターが起こすきっかけがなければ、車はいつまでたっても走りだせないため、その役割は重要かつ不可欠と言えます。
エンジン始動までの仕組みは以下のような手順で進みます。
①イグニッションキーを回す(または、スタートボタンを押す)と、バッテリーからセルモーターに電気が供給される
②セルモーターの軸の小歯車(ピニオン)がレバーで押し出されながら回り始める
③前に押し出されたピニオンとクランクシャフトにあるフライホイールの外周についたリングギアが噛み合う
④ピニオンの回転運動に合わせてリングギアが回り、同時にクランクシャフトが回ってエンジンのサイクルが開始される(エンジン始動)
⑤イグニッションキーから手を離すと、STARTがONに戻る。(スタートボタンを放す)すると、ピニオンギアは元の位置に戻り、電流が遮断されてセルモーターは止まる
なお、③まで進むとセルモーターの役目はいったん終了します。故障や不具合でもない限り、エンジンを切って再始動するまで動くことはありません。
また、モーターという部品の構造上、故障するにしてもそのほとんどは経年劣化による内蔵部品(ブラシなど)の摩耗が原因です。
エンジンが既にかかっているのにいつまでもイグニッションキーを回し続けるようなことでもない限り、その寿命は5年や10年は軽く超えます。
そのため、車を買い替えるまで一度もセルモーターが故障しなかったということも珍しくありません。
そして、ブレーキペダルを離す、ハンドルを動かす、シフトレバーを動かす、といった運転操作を感知して、自動的にエンジンを再始動させる仕組みになっています。
燃費向上と環境への配慮のためにアイドリングストップ車の普及が進みましたが、ストップしたエンジンを再始動するのは、やはりセルモーターの仕事です。
必然的に非搭載車に比べセルモーターの稼働頻度が増えるため、故障するリスクも高まってしまいます。
ただし、セルモーター自体の強度を上げたり、ピニオンギアの動きや構造を工夫したりするといった故障しにくいような対策が取られています。それにより、寿命は非搭載車と遜色ないと言われています。

前述しましたが、重要度が高いセルモーターは故障しないよう丈夫に作られているため、故障しにくい部品の代表格です。そのため、エンジンがかからないなどの症状が出ても、セルモーターの故障ではなく他に原因が隠れているケースが多い傾向にあります。
そこでここからは、セルモーターが故障した時と似たような症状が出る代表的な原因・要因を挙げていきます。
セルモーターの故障を疑う前に、必ず確認するようにしましょう。
他の電装品が10A程度なのに対し、セルモーターは平均150A、最大300Aに達することもあります。
そのため、バッテリーに溜められている電力が不足するとセルモーターが回らない、もしくは回ってもエンジン始動させるには回転力が足りないことがあります。
バッテリーの電力不足はヘッドライトのつけっぱなしなどでも起こりますし、バッテリーの寿命もセルモーターより短くなっています。
つまり、エンジンがかからない場合はセルモーターの故障よりまずはバッテリーの不具合を疑ったほうがいいでしょう。
また、この状態で何度もセルモーターを回していると、どんどんバッテリーの電力が消費され、最終的にバッテリー上がりを起こします。そうなると、セルモーターはもちろん他の電装品も一切使えなくなります。
いくら「きっかけ」があっても、燃料がなければエンジンがかかるはずありません。
また、セルフスタンドが増えたことで、油種間違いも増えています。ガソリン車に軽油を入れたりすると、エンジンのかかりが悪いまたはかかるがすぐ止まるような症状が出ます。
何度もエンジンをかけようとしたり、そのまま走行したりすると、エンジンが壊れるといった大きな故障に発展しかねません。
直前に給油を行っていた場合は伝票などを見返して、油種間違いをしていないかすぐに確認しましょう。
オートマ車の場合、シフトレバーがニュートラル、またはパーキングに入っていないとエンジンはかかりません。
また、最近のマニュアル車は、飛び出し防止などの安全面への配慮からクラッチペダルを踏んでいないと同じようにエンジンを始動できないようになっています。
さらに、何かのはずみでハンドルロックがかかっている場合、エンジンがかからないというよりキーを回すことすらできないので解除しましょう。
ハンドルロックは盗難防止などに配慮した装置で、どの車にもついていますが、普段かけないので解除の仕方も分からないという方も多いかもしれません。
ハンドルを左右に揺さぶりながら同時にイグニッションキーを回すとロックが解除されますので、いざというときに備えて解除の仕方を練習しておくと良いでしょう。

セルモーターは頑丈な部品のため、故障する前に起こる前兆・予兆が長く続く傾向にあります。
ここで紹介する故障の前兆・予兆を知っておけば、エンジンが全くかからないという最悪の事態に達する前に修理工場などへ駆け込むことができるでしょう。
ブラシが摩耗すると、そのカスが可動部に詰まり、エンジンを動かすのに十分な回転量・回転数を発揮できなくなるのです。
その結果、一発でエンジンがかからない、エンジンがかかるまでいつもより時間がかかる(作動音が長い)などの症状が出始めます。
ただし、この症状は突然急激に表れるようなことが少なく、長い年数をかけ徐々に進行します。
その結果、いつもは「キュルキュル」と規則正しく聞こえていた作動音が、「キュルキュキュキュ…」というように不規則、または弱々しく聞こえることがあります。
なお、一発でエンジンがかかってくれない、作動音が不規則などといったこれらの前兆・予兆は、単体ではなく複合的に起きることが多くなってきます。
そのため、セルモーターが内蔵されている部分を外部から強めに叩くと、可動部分に蓄積していたカスが落ち、一時的に通電性が回復して症状が改善する場合もあります。
しかし、この行為はあくまでも応急処置というより、車をどうしても動かさなければならない時の最終手段と言えます。
そのまま乗り続けていると、一時的に振り落とされていたカスが再び積もり、すぐに症状がぶり返します。
また、近い将来完全に故障する可能性も高いため、速やかに整備工場などで点検・整備を行いましょう。

次に、完全にセルモーターが故障してしまった時の症状についても確認していきましょう。
こうなると当然エンジンは始動しないので、JAFやロードサービスを依頼し、レッカー車などで修理工場まで車を運ぶしか手はありません。
なお、作動音だけでなくカチカチ音すらしない場合、バッテリー上がりをはじめとする電気系統の故障も疑われます。
バッテリー上がりの場合は他の電装機器も使えませんが、セルモーターだけ動かない場合はセルモーターに電気を送っている系統だけに漏電などの故障・断線などの不具合が発生していると判断できます。
具体的には、キーを回し「START」の位置にある間(ボタン式の場合は押している間)の数秒だけ、セルモーターには電気が供給されます。そして、エンジンがかかってキー(ボタン)から手を離すと電気の供給は止まり、同時にセルモーターも止まるでしょう。
ただし、エンジンがかかると引っ込んでエンジン側との連結が外れるはずのピニオンギアが可動部分の錆や固着によって引っ込まなくなることがあります。
そうなると、エンジンがかかったのに外れず、その回転を受けて回り続けるという症状が稀に出ます。この場合、キーを戻してもセルモーターが止まらず、そのままにしていると短時間で焼き付いてしまうかもしれません。
対処法として、ひとまずバッテリーの端子を外し、電気の供給を強制的に止めることが挙げられます。もしくは、一刻も早くプロの救援を呼びましょう。

原因が何にせよ、エンジンがかからなければ、いずれセルモーターも回らなくなります。
そこでここからは、セルモーターが回らない時の対処法をお伝えしていきます。
エンジンがかからなくても慌てることなく、シフトレバーの位置やハンドルロックなど、エンジンをかける準備が整っているか再確認しましょう。
それらが原因ではないと判明したら、次はバッテリーとガス欠の確認をします。全ての電装品が動かない場合は、バッテリー上がりの可能性が高いです。
バッテリー上がりやガス欠が原因の場合は、JAFや自動車保険に付随しているロードサービスを依頼すれば、ジャンピングやガソリンの供給サービスを受けることで対処できます。
一方、油種間違いはエンジン自体の重大な故障につながるため、早急に整備工場などで然るべき対処(燃料の抜き替え、タンク洗浄など)を受けましょう。
叩いてもセルモーターが回らずエンジンもかからない、またはエンジンはかかるがセルモーターが回りっぱなしの時は、素人にできることは安全確保以外ほとんどありません。
安全な場所に車を停車した上でレッカーサービスなどを依頼し、最寄り・行きつけの修理工場などまで運んで点検と修理を受けましょう。
ガス欠や他の部品の故障がなく、セルモーターが故障している、あるいはバッテリー上がりなどでセルが回らない場合に可能な方法でもあります。
押しがけの仕組みを簡単にいえば、車を押しタイヤが回転する力をドライブシャフトやミッションを通じてエンジンに伝えることで、エンジンがスタートするのに必要な力を得るというものです。
ただし、押しがけができるのはMT車のみです。AT車はもちろん、電気制御された電磁ポンプによって燃料を供給するインジェクション車の場合も押しがけはできません。

セルモーターが完全に故障するとエンジンがかからないため、その車を乗り続けたいのであれば修理するしかありません。
しかし、そうなると一体どの程度費用がかかるのでしょう?
以下で詳しく見ていきましょう。
しかし、新品を用いて部品交換すると、車種によって部品代が3~5万円、工賃が依頼先によって1~2万円必要になります。
修理コストが高額になってくるため、修理後の車に長く乗り続ける予定かあるのかどうかなどによって、新品に交換するかどうかは検討したほうがいいでしょう。
オーバーホール(OH)済のリビルト品を用いれば、1~2万円で販売されているため、それを使えば大幅に修理コストを節約できます。
一方、中古品はさらに安価で販売されており、ネットでは数千円程度で手に入るケースもあります。しかし、OHされていないものがほとんどなので、交換時は問題なく動いてもその後すぐに故障する可能性もあります。
リビルト品・中古品を使う場合は注意しましょう。
一方、車には他の稼働部分(パワステ、パワーウィンドウ、ワイパーなど)にもモーターが備わっています。そして、稼働回数や稼働時間を考えると、これらセルモーター以外のモーターのほうが故障しやすい傾向にあります。
そのため、稼働部分の動きに違和感(ハンドルが重い、窓やワイパーの動きが悪いなど)を感じた時は、すぐに修理工場などで点検を受けましょう。
セルモーターが何らかの原因で動かなくなると、必然的に車も走りだせません。
今回は、セルモーターの寿命や故障の原因、故障時の症状や修理にかかる費用などについて詳しく解説します。
この記事の目次
ボタン式になっても変わらない!セルモーターが果たしている重要な役割について
最近は、キーを回すことなくボタンを押すだけでエンジンがかかる車も増えています。しかし、ボタン式の車にもセルモーターはついており、その役割と重要性は変わっていません。そこでまずは、セルモーターという部品の構造や仕組みなどといった概要と、車にとって重要なその役割について詳しく見ていきましょう。
セルモーター(スターター)とは?

しかし、セルモーターが起こすきっかけがなければ、車はいつまでたっても走りだせないため、その役割は重要かつ不可欠と言えます。
セルモーターの構造と仕組み
セルモーターは、電気で稼働するモーターとその先についているピニオンギアで構成されているシンプルな部品です。エンジン始動までの仕組みは以下のような手順で進みます。
①イグニッションキーを回す(または、スタートボタンを押す)と、バッテリーからセルモーターに電気が供給される
②セルモーターの軸の小歯車(ピニオン)がレバーで押し出されながら回り始める
③前に押し出されたピニオンとクランクシャフトにあるフライホイールの外周についたリングギアが噛み合う
④ピニオンの回転運動に合わせてリングギアが回り、同時にクランクシャフトが回ってエンジンのサイクルが開始される(エンジン始動)
⑤イグニッションキーから手を離すと、STARTがONに戻る。(スタートボタンを放す)すると、ピニオンギアは元の位置に戻り、電流が遮断されてセルモーターは止まる
なお、③まで進むとセルモーターの役目はいったん終了します。故障や不具合でもない限り、エンジンを切って再始動するまで動くことはありません。
基本的には丈夫で長持ちな働き者
セルモーターはエンジンが始動する時だけ使うとはいえ、車を走らせるなら必ず1度は動かすことになります。そのため、何千回、何万回稼働しても故障しないよう、高い耐久性を持っています。また、モーターという部品の構造上、故障するにしてもそのほとんどは経年劣化による内蔵部品(ブラシなど)の摩耗が原因です。
エンジンが既にかかっているのにいつまでもイグニッションキーを回し続けるようなことでもない限り、その寿命は5年や10年は軽く超えます。
そのため、車を買い替えるまで一度もセルモーターが故障しなかったということも珍しくありません。
アイドリングストップ車は特に負担が大きいため注意
アイドリングストップ車は、車速の低下や停車を検知し、電子制御でエンジンをストップさせる車です。そして、ブレーキペダルを離す、ハンドルを動かす、シフトレバーを動かす、といった運転操作を感知して、自動的にエンジンを再始動させる仕組みになっています。
燃費向上と環境への配慮のためにアイドリングストップ車の普及が進みましたが、ストップしたエンジンを再始動するのは、やはりセルモーターの仕事です。
必然的に非搭載車に比べセルモーターの稼働頻度が増えるため、故障するリスクも高まってしまいます。
ただし、セルモーター自体の強度を上げたり、ピニオンギアの動きや構造を工夫したりするといった故障しにくいような対策が取られています。それにより、寿命は非搭載車と遜色ないと言われています。
セルモーターの故障を疑う前に確認しておきたいこと

そこでここからは、セルモーターが故障した時と似たような症状が出る代表的な原因・要因を挙げていきます。
セルモーターの故障を疑う前に、必ず確認するようにしましょう。
バッテリーの電圧低下(バッテリー上がり)
車には様々な電装品がついていますが、エンジンを始動させるセルモーターの消費電力はその中でも特に大きいです。他の電装品が10A程度なのに対し、セルモーターは平均150A、最大300Aに達することもあります。
そのため、バッテリーに溜められている電力が不足するとセルモーターが回らない、もしくは回ってもエンジン始動させるには回転力が足りないことがあります。
バッテリーの電力不足はヘッドライトのつけっぱなしなどでも起こりますし、バッテリーの寿命もセルモーターより短くなっています。
つまり、エンジンがかからない場合はセルモーターの故障よりまずはバッテリーの不具合を疑ったほうがいいでしょう。
また、この状態で何度もセルモーターを回していると、どんどんバッテリーの電力が消費され、最終的にバッテリー上がりを起こします。そうなると、セルモーターはもちろん他の電装品も一切使えなくなります。
ガス欠&燃料の入れ間違い
電力は十分あり、セルモーターが元気に回っているにも関わらず、エンジンがかかってくれない場合は、ガス欠の可能性も考えられます。いくら「きっかけ」があっても、燃料がなければエンジンがかかるはずありません。
また、セルフスタンドが増えたことで、油種間違いも増えています。ガソリン車に軽油を入れたりすると、エンジンのかかりが悪いまたはかかるがすぐ止まるような症状が出ます。
何度もエンジンをかけようとしたり、そのまま走行したりすると、エンジンが壊れるといった大きな故障に発展しかねません。
直前に給油を行っていた場合は伝票などを見返して、油種間違いをしていないかすぐに確認しましょう。
エンジン始動(車を走らせる)準備が整っているか
乗りなれない車を使用している時などに稀に起きるのが、エンジンを始動させる準備が整っていないのにエンジンをかけようとすることです。オートマ車の場合、シフトレバーがニュートラル、またはパーキングに入っていないとエンジンはかかりません。
また、最近のマニュアル車は、飛び出し防止などの安全面への配慮からクラッチペダルを踏んでいないと同じようにエンジンを始動できないようになっています。
さらに、何かのはずみでハンドルロックがかかっている場合、エンジンがかからないというよりキーを回すことすらできないので解除しましょう。
ハンドルロックは盗難防止などに配慮した装置で、どの車にもついていますが、普段かけないので解除の仕方も分からないという方も多いかもしれません。
ハンドルを左右に揺さぶりながら同時にイグニッションキーを回すとロックが解除されますので、いざというときに備えて解除の仕方を練習しておくと良いでしょう。
セルモーターが故障する前兆・予兆とは?

ここで紹介する故障の前兆・予兆を知っておけば、エンジンが全くかからないという最悪の事態に達する前に修理工場などへ駆け込むことができるでしょう。
一発でエンジンがかかってくれない(作動音が長い)
セルモーターが故障する原因の多くは、経年劣化による内蔵ブラシの摩耗です。ブラシが摩耗すると、そのカスが可動部に詰まり、エンジンを動かすのに十分な回転量・回転数を発揮できなくなるのです。
その結果、一発でエンジンがかからない、エンジンがかかるまでいつもより時間がかかる(作動音が長い)などの症状が出始めます。
ただし、この症状は突然急激に表れるようなことが少なく、長い年数をかけ徐々に進行します。
作動音が不規則もしくは弱々しい
ブラシの摩耗に比べると強度が強いため、稀な例にはなりますが、ブラシの外側をぐるりと取り巻いているコイルに異常があると、モーターの回転力が弱まったり、回転数が遅くなったりすることがあります。その結果、いつもは「キュルキュル」と規則正しく聞こえていた作動音が、「キュルキュキュキュ…」というように不規則、または弱々しく聞こえることがあります。
なお、一発でエンジンがかかってくれない、作動音が不規則などといったこれらの前兆・予兆は、単体ではなく複合的に起きることが多くなってきます。
セルモーター部分を叩くと調子がよくなるって本当?
前述した通り、セルモーターが不調をきたす大きな原因の1つに、ブラシ劣化によるカスの蓄積があります。カスが溜まると、その部分の通電性が悪くなり、モーターの回転力が低下してしまうのです。そのため、セルモーターが内蔵されている部分を外部から強めに叩くと、可動部分に蓄積していたカスが落ち、一時的に通電性が回復して症状が改善する場合もあります。
しかし、この行為はあくまでも応急処置というより、車をどうしても動かさなければならない時の最終手段と言えます。
そのまま乗り続けていると、一時的に振り落とされていたカスが再び積もり、すぐに症状がぶり返します。
また、近い将来完全に故障する可能性も高いため、速やかに整備工場などで点検・整備を行いましょう。
完全にセルモーターが故障した時に起きる症状

作動音が全くせずエンジンも始動しない
完全にセルモーターが故障すると、キーを回しても(ボタンを押しても)「カチ、カチ」というスイッチが入るような音はするが、作動音が全くしないようになります。こうなると当然エンジンは始動しないので、JAFやロードサービスを依頼し、レッカー車などで修理工場まで車を運ぶしか手はありません。
なお、作動音だけでなくカチカチ音すらしない場合、バッテリー上がりをはじめとする電気系統の故障も疑われます。
バッテリー上がりの場合は他の電装機器も使えませんが、セルモーターだけ動かない場合はセルモーターに電気を送っている系統だけに漏電などの故障・断線などの不具合が発生していると判断できます。
エンジンはかかるがセルモーターが回り続けている
エンジンがかかるとセルモーターの役割はなくなるため、電気が供給される時間はごく僅かです。具体的には、キーを回し「START」の位置にある間(ボタン式の場合は押している間)の数秒だけ、セルモーターには電気が供給されます。そして、エンジンがかかってキー(ボタン)から手を離すと電気の供給は止まり、同時にセルモーターも止まるでしょう。
ただし、エンジンがかかると引っ込んでエンジン側との連結が外れるはずのピニオンギアが可動部分の錆や固着によって引っ込まなくなることがあります。
そうなると、エンジンがかかったのに外れず、その回転を受けて回り続けるという症状が稀に出ます。この場合、キーを戻してもセルモーターが止まらず、そのままにしていると短時間で焼き付いてしまうかもしれません。
対処法として、ひとまずバッテリーの端子を外し、電気の供給を強制的に止めることが挙げられます。もしくは、一刻も早くプロの救援を呼びましょう。
セルモーターが回らないときの対処法

そこでここからは、セルモーターが回らない時の対処法をお伝えしていきます。
セルモーターの故障が原因ではない場合
まず、セルモーター自体の故障が原因ではないことを疑ってみましょう。エンジンがかからなくても慌てることなく、シフトレバーの位置やハンドルロックなど、エンジンをかける準備が整っているか再確認しましょう。
それらが原因ではないと判明したら、次はバッテリーとガス欠の確認をします。全ての電装品が動かない場合は、バッテリー上がりの可能性が高いです。
バッテリー上がりやガス欠が原因の場合は、JAFや自動車保険に付随しているロードサービスを依頼すれば、ジャンピングやガソリンの供給サービスを受けることで対処できます。
一方、油種間違いはエンジン自体の重大な故障につながるため、早急に整備工場などで然るべき対処(燃料の抜き替え、タンク洗浄など)を受けましょう。
セルモーターが故障している場合
セルモーター部分を叩いてみて、もし運よくエンジンが始動しても、次にエンジンを止めてしまえば再始動できるとは限りません。そのため、運転予定を変更し、走行できるうちに修理工場などへ向かいましょう。叩いてもセルモーターが回らずエンジンもかからない、またはエンジンはかかるがセルモーターが回りっぱなしの時は、素人にできることは安全確保以外ほとんどありません。
安全な場所に車を停車した上でレッカーサービスなどを依頼し、最寄り・行きつけの修理工場などまで運んで点検と修理を受けましょう。
MT車なら「押しがけ」という手もあるが…
押しがけとは、車を押すことによってエンジンをかける、セルモーター故障時などの応急処置的テクニックのことです。ガス欠や他の部品の故障がなく、セルモーターが故障している、あるいはバッテリー上がりなどでセルが回らない場合に可能な方法でもあります。
押しがけの仕組みを簡単にいえば、車を押しタイヤが回転する力をドライブシャフトやミッションを通じてエンジンに伝えることで、エンジンがスタートするのに必要な力を得るというものです。
ただし、押しがけができるのはMT車のみです。AT車はもちろん、電気制御された電磁ポンプによって燃料を供給するインジェクション車の場合も押しがけはできません。
セルモーターが故障した時の修理コスト

一番安心な新品セルモーターを用いた場合
セルモーターは丈夫で長持ちな部品です。年数では7~8年、走行距離10万kmを超えても持つことは珍しくありません。しかし、新品を用いて部品交換すると、車種によって部品代が3~5万円、工賃が依頼先によって1~2万円必要になります。
修理コストが高額になってくるため、修理後の車に長く乗り続ける予定かあるのかどうかなどによって、新品に交換するかどうかは検討したほうがいいでしょう。
リビルト・中古のセルモーターを用いた場合
前述した通り、セルモーターは丈夫な部品であるため、他の部品が故障して廃車にしたが、セルモーターはまだまだ元気というケースも多いです。そのため、巷には多くのリビルト品・中古品が出回っています。オーバーホール(OH)済のリビルト品を用いれば、1~2万円で販売されているため、それを使えば大幅に修理コストを節約できます。
一方、中古品はさらに安価で販売されており、ネットでは数千円程度で手に入るケースもあります。しかし、OHされていないものがほとんどなので、交換時は問題なく動いてもその後すぐに故障する可能性もあります。
リビルト品・中古品を使う場合は注意しましょう。
セルモーター以外のモーターのほうが故障しやすい可能性も
セルモーターは、1度の運転機会で3~4秒程度と稼働時間が限定的です。そのため、普段短距離しか乗らない、こまめにアイドリングストップを心掛けている(アイドリングストップ車を含む)ケース以外は、走行距離が15万km超えても1度も故障しないこともあります。一方、車には他の稼働部分(パワステ、パワーウィンドウ、ワイパーなど)にもモーターが備わっています。そして、稼働回数や稼働時間を考えると、これらセルモーター以外のモーターのほうが故障しやすい傾向にあります。
そのため、稼働部分の動きに違和感(ハンドルが重い、窓やワイパーの動きが悪いなど)を感じた時は、すぐに修理工場などで点検を受けましょう。
まとめ
①セルモーターは、エンジンを最初に動かす重要な部品
②セルモーターは経年劣化する消耗品ではあるが、丈夫で頑丈なため、その寿命は非常に長い
③セルモーターの故障を疑う前に、まずはバッテリー上がり、ガス欠、エンジン始動準備ができているかどうかなどを確認しよう
④セルモーターは故障する前に、エンジン始動の失敗、作動音の異常などの予兆を示すことがある
⑤セルモーターが完全に故障すると、その作動音が聞こえなくなる
⑥セルモーターが故障している場合は、早急に専門家へ救援を依頼し、点検・整備を受けよう
⑦セルモーターが故障した時の修理コストは、一般的に1~2万円かかる。交換工賃を含めると新品使用時で4~7万円、リビルト品を使用しても2~4万円はかかる
⑧中古のセルモーターを用いればコストカットすることができるが、再故障のリスクもあるので注意しましょう
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