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更新日:2023.01.29 / 掲載日:2023.01.29
車のコンピューターが故障した場合の症状は?修理費用についても解説
最近は車の機能の多くがコンピューターによって電子制御されるようになっています。その種類は、エンジンの制御から運転支援システムまで様々です。
そこで注意しなければならないのが、コンピューター類が故障した場合です。構造が複雑なので原因を突き止めるのが難しく、修理も専門的な内容になります。
この記事では、車を制御するコンピューター類が故障した場合の症状や、業者に修理を依頼する際に覚えておきたいことを解説します。
こうしたコンピューターは「車載用ECU」と呼ばれますが、こうしたECUの不具合が原因で車に故障が生じると、原因を突き止めることはもちろん点検・修理も大変難しいです。
そこで以下では、ECUが故障した場合の症状や修理時の注意点、かかる費用などを詳しく解説していきます。

車に使われているコンピューターには様々なものがあり、総称して「車載用ECU」と呼ばれています。
ここからは、車載用ECUについて、主にエンジン制御用のものと運転システムの2種類に大別して解説していきます。
最新技術が用いられた燃料電池車やハイブリッド車、EVなどでは、こうしたECUは欠かせません。
かつては、車両の構成部品のうち電子機器の範疇に入るのはエアコンやカーステレオ、ヘッドライトくらいでした。車本来の機能である「走る」「曲がる」「止まる」などの動作・操作には、機械的なシステムが用いられていたのです。
しかし、コンピューター技術の進化によって、エンジン制御をはじめとする様々な機構でECUが用いられるようになりました。こうして電子制御による車の性能の向上が図られ、現在では多いと100個以上のECUが搭載されている車もあります。
ECUが用いられているものは、エアバッグ、トランスミッション、車間距離制限システムや車線維持システムなどが挙げられます。
ECUによる制御は、現在の先進自動車の基本的な性能と言ってもいいでしょう。
これは、運転性の向上や排ガス規制に対処することを目的に作られた「電子制御ガソリン噴射技術」を中心としたもので、30年ほど前から市販の車に用いられるようになりました。
車の歴史の中で見ていくと30年というのは短いですが、その性能の進化のスピードには目を見張るものがあります。記憶媒体の大容量化、処理能力の高速化を経て、90年代の後半には電子制御スロットルなど現代の先進自動車の基本的な内容ができあがりました。
エンジンにとって最も重要なのは、混合気を燃焼室内で燃やして、効率よく熱を作ることです。ECUはそのために圧力センサーや吸入空気量センサーによって、吸気量にマッチした燃料を噴射するように機能します。
このようなエンジン制御機能の他にも、情報伝達に必要な車載ネットワークの高速化、センシング機器の高性能化も進みました。そうして、従来のメカニックな作りだけでは実現不可能な高性能の車が生み出されていったのです。
このシステムは、内閣府主導で開発が進められており、近年一般的になってきた誤発信抑制制御装置、衝突被害軽減ブレーキなどは運転支援システムとしてのECUです。
こうしたECUは、車の各部分についた機器の信号を読み取り、処理された情報を電動パワーステアリングやエンジンに送ります。こうして、人による操作なしでも車の動きを制御でき、安全性を高めることができます。
運転支援システムとしてのECUにとって重要なのが、車載ネットワークです。ECUから送られてくるたくさんのデータから重要度の高いものを選別し、間を置かずに伝達するネットワークシステムが必要になります。そこで最近は、高速で信頼性の高いCANやFlexRayなどの通信システムを採用した車が増えています。
車を安全に運転するための運転支援システムは、こうした技術開発の上に成り立っているのです。

ここまでで、いわゆる車載用ECUについて、エンジン制御用のものと運転支援システムの2種類に分類して解説しました。
次に、こうしたECUが故障した場合の症状にはどんなものがあるのか、そしてどのように故障内容を確認するといいのかを見ていきましょう。
他に考えられる不調としては、セルを回しても火花が飛ばない、イモビライザーを認識しないなどが挙げられます。しかし、車の不調の原因がECUだった場合、それをすぐに突き止めるのは困難です。
例えば、火花が飛ばないトラブル一つをとっても、点火プラグ、イグニッションコイル、ピックアップコイルの異常など、原因は複数考えられるからです。
最初に点火系について見ていきましょう。ECUの故障を目視で確認できるのは、コンデンサから液漏れが生じている場合や内部や焼けている場合などに限るので、まずは考えられる故障原因を一つずつ潰していくことになります。
もしもエンジン回転信号がきちんと入力されているのに点火指示信号が出ていないのであれば、ECUの故障と考えて間違いないでしょう。
例えば、キースイッチをオンにしてもチェックランプが点かない場合や、ダイアグノーシスの点検ができない場合はECUの不具合が考えられます。
燃料ポンプが稼働しないと、エンジンを始動した際や加速時の性能低下といった症状が発生するので注意が必要です。
ただし、燃料ポンプの故障もモーターの不具合やガス欠など様々な原因で発生するので、最初からECUが原因と断定することはできません。上記のような不調・不具合が発生したら、まずは専門業者に点検してもらいましょう。
吸気温度センサーは、普通はインテークマニホールド付近やサージタンクのあたりに取り付けられているでしょう。
本来、吸気温度センサーは経年劣化した場合を除き、めったに故障しません。もしも不具合が起きたとしたら、断線などの物理的な損傷やサーミスタ(温度センサー)自体が故障していることなどが考えられます。

ECUの故障が判明したら、ECUそのものの修理・交換が必要です。中古品を使って交換することもできますが、やはり確実性や安心感でいえば新品の純正部品を使ったほうがいいでしょう。
ただし、新品の純正品となると車種によってはパーツが10万円以上の高価格という場合があります。また、絶版モデルだったりすると新品での入手は困難で、仮に見つけたとしても希少価値が高いものはさらに高価格であることも考えられます。
そうなると、交換ではなくECUそのものの修理となります。詳しくは後述しますが、ECUの自己修理は大変ハードルが高く、取り返しがつかない故障に発展してしまうケースもあるため、専門家に依頼するのが安全です。
新品のパーツが入手困難で、なおかつ専門家による修理も難しいようであれば、次善の策として中古品による交換を検討しましょう。その場合は、きちんと動くかどうか、価格は妥当かなどをよく考えて選んでください。
次に、故障してしまったECUを自己修理する場合の注意点やリスクとして覚えておくべき事柄を解説します。
専門業者でも、個人経営のお店では受け付けてくれないことも多いので、ECU修理を行ってくれる専門業者を探すようにしましょう。
結果として故障・損傷が悪化してしまい、かえってコストがかかる恐れがあります。
はんだ付けは、未経験者が専用機器なしで適切に行うのはほぼ不可能です。もしも失敗してしまうと、基板そのものの補修作業が必要になったりと二度手間になる上に、悪くすると修復不可能になることもあるので手を出さないようにしましょう。
例えば、トランジスタというパーツは、全て同一形状にも関わらず種類が1000個以上もあり、正しく適切なものを探すには専門知識が必要です。
また、チップは小さすぎるため規格が印字できないことから、欠落してしまうとどの部品を使うのが適切なのかが分からなくなるでしょう。こうなると修理のための手がかりもなくなってしまい、修理そのものができなくなる恐れもあります。

ここまでで、故障してしまった車載用ECUを自己修理する場合の注意点を解説しました。素人がECUを自力で修理するのはリスクが伴うことが分かったでしょう。
では、ここからは専門家に修理してもらう際、どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。
過去に自己修理を行った際のやり方によっては、故障が思わぬ形で悪化していることがあります。
ECUは、交換しようにも代替部品がなかなか存在せず、存在しても入手しづらいことが多いです。そのため、その車についているECUはとりわけ大切に扱う必要があります。
過去の作業履歴の内容によっては、修理に支障が出るかもしれません。この場合の作業履歴とは、アマチュアの個人が行った作業も過去に別の業者が行った作業も含みます。
そうした履歴がある車を修理に出す場合は、業者に対してきちんと説明しておきましょう。
インターネットで調べるとコンデンサの交換だけで不具合が解消したと書かれていることがあるので、真に受けるケースが多くあるのかもしれません。
しかし、実際にはコンデンサの交換だけで復旧することは稀なので、ネットの情報を鵜呑みにして自己修復するよりは、最初から専門業者に依頼するほうが良いでしょう。専門業者なら、細かな原因を突き止めて修復してくれます。
スルーホールは、基板を貫いている貫通部分のことで、取れると信号が部品へと伝わらなくなります。スルーホールに挿し込んだパーツの足ははんだで固定されており、取れた際に無理にはんだで固定しようとしても、回路は断線してしまうのです。
それでも、基板補修を行うことで修理可能な場合もあります。例えば、電源系回路のスルーホール及びほとんどの回路が失われているものでも、何十箇所かを補修することで、動作が正常に戻ったというケースがあります。
ただし、何層にも重なっている基板の場合、修理不可能になることもあるでしょう。
自己修理の場合、パーツを取り外す時に適切な専用機材を用いて、スルーホールから他の部品へとつながっている回路を断線させないことが大切です。
基板には1ミリ程度のサイズのチップが多く使われていて、それがはんだ付けされていることから、作業を誤るとチップが紛失・焼損することがあります。
前述の通り、はんだ付けとは金属の部品同士を溶接することで接合するやり方です。ただ接合すればいいわけではなく、正しく行わなければ電子機器は正常に動かなくなります。そのため、この方法でチップをつける場合は専用機材の他、高等技術が必要です。
はんだ付けで使用する「はんだごて」の扱いに慣れていない方がECUの修理を行うと、修理不可能になってしまうこともあります。こうなると、チップを交換するしか方法はありません。
チップはとても小さいため規格などを印字することができず、ただ見ただけでは正確な規格を把握するのは難しいでしょう。後は正常なECUと比較しながら修理することができるかどうかです。
はんだ付けの作業ミスで言えば、いわゆる目玉はんだ(はんだの充填不足)、過熱、イモはんだ、はんだボール、はんだブリッジ、追いはんだなどがあります。
こうした作業は、やはり専門家に任せるのが賢明です。
逆接や規格外パーツの使用については、作業履歴があるECUの場合、静電容量が違うコンデンサを使っていることが原因でうまく作動しないケースが多いです。
コンデンサを逆接続すると爆発することもあって危険なため、そうなれば修理はできないので注意しましょう。
専門家も様々ですが、中には修理したことのあるタイプのECUの回路データなどをデータベースとして保存している業者もいます。そのため、信頼できる業者に頼るようにしましょう。
具体的にどのくらいの手間がかかるかというと、通常修理の1.5倍~2倍と言われています。そのため、作業履歴つきのECUの修理は、そうでないECUよりも作業費用がかかると考えたほうがいいでしょう。
詳細な金額は業者によって異なりますが、一例として、上限を約7,000円~8,000円として追加作業費が請求されるケースがあります。
そこで注意しなければならないのが、コンピューター類が故障した場合です。構造が複雑なので原因を突き止めるのが難しく、修理も専門的な内容になります。
この記事では、車を制御するコンピューター類が故障した場合の症状や、業者に修理を依頼する際に覚えておきたいことを解説します。
この記事の目次
「車載用ECU」と呼ばれる車のコンピューターについて知ろう
昔の車で電子機器といえばエアコンやオーディオ程度でしたが、今はエンジン制御から運転支援に至るまでコンピューターで管理されています。こうしたコンピューターは「車載用ECU」と呼ばれますが、こうしたECUの不具合が原因で車に故障が生じると、原因を突き止めることはもちろん点検・修理も大変難しいです。
そこで以下では、ECUが故障した場合の症状や修理時の注意点、かかる費用などを詳しく解説していきます。
車に使われている車載用ECUの種類

ここからは、車載用ECUについて、主にエンジン制御用のものと運転システムの2種類に大別して解説していきます。
車載用ECUとは?
車の電子制御に使われるコンピューターは、ECU(ElectronicControlUnit)と呼ばれるものです。車載用ECUと表記されることもあります。最新技術が用いられた燃料電池車やハイブリッド車、EVなどでは、こうしたECUは欠かせません。
かつては、車両の構成部品のうち電子機器の範疇に入るのはエアコンやカーステレオ、ヘッドライトくらいでした。車本来の機能である「走る」「曲がる」「止まる」などの動作・操作には、機械的なシステムが用いられていたのです。
しかし、コンピューター技術の進化によって、エンジン制御をはじめとする様々な機構でECUが用いられるようになりました。こうして電子制御による車の性能の向上が図られ、現在では多いと100個以上のECUが搭載されている車もあります。
ECUが用いられているものは、エアバッグ、トランスミッション、車間距離制限システムや車線維持システムなどが挙げられます。
ECUによる制御は、現在の先進自動車の基本的な性能と言ってもいいでしょう。
主なECUの種類①エンジン制御用
車に使われる主なECUとして、エンジン制御用のものが挙げられます。これは、運転性の向上や排ガス規制に対処することを目的に作られた「電子制御ガソリン噴射技術」を中心としたもので、30年ほど前から市販の車に用いられるようになりました。
車の歴史の中で見ていくと30年というのは短いですが、その性能の進化のスピードには目を見張るものがあります。記憶媒体の大容量化、処理能力の高速化を経て、90年代の後半には電子制御スロットルなど現代の先進自動車の基本的な内容ができあがりました。
エンジンにとって最も重要なのは、混合気を燃焼室内で燃やして、効率よく熱を作ることです。ECUはそのために圧力センサーや吸入空気量センサーによって、吸気量にマッチした燃料を噴射するように機能します。
このようなエンジン制御機能の他にも、情報伝達に必要な車載ネットワークの高速化、センシング機器の高性能化も進みました。そうして、従来のメカニックな作りだけでは実現不可能な高性能の車が生み出されていったのです。
主なECUの種類②運転支援システム
もう一つの車に使われる主なECUとして、運転支援システムが挙げられます。このシステムは、内閣府主導で開発が進められており、近年一般的になってきた誤発信抑制制御装置、衝突被害軽減ブレーキなどは運転支援システムとしてのECUです。
こうしたECUは、車の各部分についた機器の信号を読み取り、処理された情報を電動パワーステアリングやエンジンに送ります。こうして、人による操作なしでも車の動きを制御でき、安全性を高めることができます。
運転支援システムとしてのECUにとって重要なのが、車載ネットワークです。ECUから送られてくるたくさんのデータから重要度の高いものを選別し、間を置かずに伝達するネットワークシステムが必要になります。そこで最近は、高速で信頼性の高いCANやFlexRayなどの通信システムを採用した車が増えています。
車を安全に運転するための運転支援システムは、こうした技術開発の上に成り立っているのです。
車載用ECUが故障した場合の症状と確認方法

次に、こうしたECUが故障した場合の症状にはどんなものがあるのか、そしてどのように故障内容を確認するといいのかを見ていきましょう。
ECUの故障は前兆がない
ECUは前兆なしに故障することがあります。基板や電子回路の不具合により回転数が不安定になったり、エンジンストールなどの症状を起こしたりする場合です。他に考えられる不調としては、セルを回しても火花が飛ばない、イモビライザーを認識しないなどが挙げられます。しかし、車の不調の原因がECUだった場合、それをすぐに突き止めるのは困難です。
例えば、火花が飛ばないトラブル一つをとっても、点火プラグ、イグニッションコイル、ピックアップコイルの異常など、原因は複数考えられるからです。
ECUの故障の症状と確認方法①点火系
車のエンジンがかからないという症状の場合、点火系・燃料系・吸気系の3つについてまず点検します。最初に点火系について見ていきましょう。ECUの故障を目視で確認できるのは、コンデンサから液漏れが生じている場合や内部や焼けている場合などに限るので、まずは考えられる故障原因を一つずつ潰していくことになります。
もしもエンジン回転信号がきちんと入力されているのに点火指示信号が出ていないのであれば、ECUの故障と考えて間違いないでしょう。
例えば、キースイッチをオンにしてもチェックランプが点かない場合や、ダイアグノーシスの点検ができない場合はECUの不具合が考えられます。
ECUの故障の症状と確認方法②燃料系
燃料ポンプが動かない場合は、エンジン制御用ECUで不具合が起きていることが考えられます。燃料ポンプが稼働しないと、エンジンを始動した際や加速時の性能低下といった症状が発生するので注意が必要です。
ただし、燃料ポンプの故障もモーターの不具合やガス欠など様々な原因で発生するので、最初からECUが原因と断定することはできません。上記のような不調・不具合が発生したら、まずは専門業者に点検してもらいましょう。
ECUの故障の症状と確認方法③吸気系
警告灯の点灯などによってエンジンの吸気系のトラブルが確認されたら、吸気温度センサーなどを交換することになります。吸気温度センサーは、普通はインテークマニホールド付近やサージタンクのあたりに取り付けられているでしょう。
本来、吸気温度センサーは経年劣化した場合を除き、めったに故障しません。もしも不具合が起きたとしたら、断線などの物理的な損傷やサーミスタ(温度センサー)自体が故障していることなどが考えられます。
車載用ECUの交換・修理について

ただし、新品の純正品となると車種によってはパーツが10万円以上の高価格という場合があります。また、絶版モデルだったりすると新品での入手は困難で、仮に見つけたとしても希少価値が高いものはさらに高価格であることも考えられます。
そうなると、交換ではなくECUそのものの修理となります。詳しくは後述しますが、ECUの自己修理は大変ハードルが高く、取り返しがつかない故障に発展してしまうケースもあるため、専門家に依頼するのが安全です。
新品のパーツが入手困難で、なおかつ専門家による修理も難しいようであれば、次善の策として中古品による交換を検討しましょう。その場合は、きちんと動くかどうか、価格は妥当かなどをよく考えて選んでください。
車載用ECUの自己修理について
ここまでで車載用ECUの定義や特徴、そしてECUが故障した場合の症状と確認方法について見てきました。次に、故障してしまったECUを自己修理する場合の注意点やリスクとして覚えておくべき事柄を解説します。
ECUの自己修理は難しい
基本的にECUの修理を個人で行うのは難しく、アマチュアの自己修理ならなおさらです。専門業者でも、個人経営のお店では受け付けてくれないことも多いので、ECU修理を行ってくれる専門業者を探すようにしましょう。
自己修理のリスク①故障・損傷の悪化
ECUを自己修理すると、作業に慣れていないことから基板の損傷、スルーホールの逸失、回路の断線などを起こしてしまうことがよくあります。結果として故障・損傷が悪化してしまい、かえってコストがかかる恐れがあります。
自己修理のリスク②余計な作業が増える
ECUの自己修理を行うと、はんだ付けの作業で失敗して余計な修復作業が増えることが想定されます。はんだ付けは金属の部品同士を溶接して接合する作業で、この接合作業を誤ると新たな不具合が生じてしまいます。はんだ付けは、未経験者が専用機器なしで適切に行うのはほぼ不可能です。もしも失敗してしまうと、基板そのものの補修作業が必要になったりと二度手間になる上に、悪くすると修復不可能になることもあるので手を出さないようにしましょう。
自己修理のリスク③適切な部品が不明になる
ECUの自己修理によって誤って異なる規格の部品に交換してしまうと、もともとの部品の情報が不明になってしまうことがあります。例えば、トランジスタというパーツは、全て同一形状にも関わらず種類が1000個以上もあり、正しく適切なものを探すには専門知識が必要です。
また、チップは小さすぎるため規格が印字できないことから、欠落してしまうとどの部品を使うのが適切なのかが分からなくなるでしょう。こうなると修理のための手がかりもなくなってしまい、修理そのものができなくなる恐れもあります。
車載用ECUを専門業者に修理してもらう場合

では、ここからは専門家に修理してもらう際、どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。
作業履歴に注意
ECUの修理・交換を専門業者に依頼する際注意しなければならないのは、過去の修理歴にあたる「作業履歴」です。過去に自己修理を行った際のやり方によっては、故障が思わぬ形で悪化していることがあります。
ECUは、交換しようにも代替部品がなかなか存在せず、存在しても入手しづらいことが多いです。そのため、その車についているECUはとりわけ大切に扱う必要があります。
過去の作業履歴の内容によっては、修理に支障が出るかもしれません。この場合の作業履歴とは、アマチュアの個人が行った作業も過去に別の業者が行った作業も含みます。
そうした履歴がある車を修理に出す場合は、業者に対してきちんと説明しておきましょう。
作業履歴があるパターン①コンデンサだけ交換した
ECU修理の作業履歴があるパターンで多いのは、「コンデンサだけ交換した」というものです。インターネットで調べるとコンデンサの交換だけで不具合が解消したと書かれていることがあるので、真に受けるケースが多くあるのかもしれません。
しかし、実際にはコンデンサの交換だけで復旧することは稀なので、ネットの情報を鵜呑みにして自己修復するよりは、最初から専門業者に依頼するほうが良いでしょう。専門業者なら、細かな原因を突き止めて修復してくれます。
作業履歴があるパターン②スルーホールがない
回路がプリントされたECUの基板は、各電子部品をスルーホールという穴によって固定しています。過去の作業履歴の中で、パーツごとに適した専用機材が使われていないと、このスルーホールがなくなってしまい、正常に動かなくなるでしょう。スルーホールは、基板を貫いている貫通部分のことで、取れると信号が部品へと伝わらなくなります。スルーホールに挿し込んだパーツの足ははんだで固定されており、取れた際に無理にはんだで固定しようとしても、回路は断線してしまうのです。
それでも、基板補修を行うことで修理可能な場合もあります。例えば、電源系回路のスルーホール及びほとんどの回路が失われているものでも、何十箇所かを補修することで、動作が正常に戻ったというケースがあります。
ただし、何層にも重なっている基板の場合、修理不可能になることもあるでしょう。
自己修理の場合、パーツを取り外す時に適切な専用機材を用いて、スルーホールから他の部品へとつながっている回路を断線させないことが大切です。
作業履歴があるパターン③チップ部品がない
作業履歴がECU修理に影響を及ぼすパターンとして、チップ部品が失われている場合も挙げられます。基板には1ミリ程度のサイズのチップが多く使われていて、それがはんだ付けされていることから、作業を誤るとチップが紛失・焼損することがあります。
前述の通り、はんだ付けとは金属の部品同士を溶接することで接合するやり方です。ただ接合すればいいわけではなく、正しく行わなければ電子機器は正常に動かなくなります。そのため、この方法でチップをつける場合は専用機材の他、高等技術が必要です。
はんだ付けで使用する「はんだごて」の扱いに慣れていない方がECUの修理を行うと、修理不可能になってしまうこともあります。こうなると、チップを交換するしか方法はありません。
チップはとても小さいため規格などを印字することができず、ただ見ただけでは正確な規格を把握するのは難しいでしょう。後は正常なECUと比較しながら修理することができるかどうかです。
作業履歴があるパターン④作業ミス
作業ミスは、はんだ付けに限らず様々な作業工程で発生する可能性があります。例えば、逆接を行ってしまった、規格外の部品を使ってしまったケースです。はんだ付けの作業ミスで言えば、いわゆる目玉はんだ(はんだの充填不足)、過熱、イモはんだ、はんだボール、はんだブリッジ、追いはんだなどがあります。
こうした作業は、やはり専門家に任せるのが賢明です。
逆接や規格外パーツの使用については、作業履歴があるECUの場合、静電容量が違うコンデンサを使っていることが原因でうまく作動しないケースが多いです。
コンデンサを逆接続すると爆発することもあって危険なため、そうなれば修理はできないので注意しましょう。
専門家も様々ですが、中には修理したことのあるタイプのECUの回路データなどをデータベースとして保存している業者もいます。そのため、信頼できる業者に頼るようにしましょう。
作業履歴がある場合の修理コスト
ここまで見てきた内容から、「作業履歴」があるECUを修理するのは、通常の修理と比べてより多くの工数がかかることが分かります。具体的にどのくらいの手間がかかるかというと、通常修理の1.5倍~2倍と言われています。そのため、作業履歴つきのECUの修理は、そうでないECUよりも作業費用がかかると考えたほうがいいでしょう。
詳細な金額は業者によって異なりますが、一例として、上限を約7,000円~8,000円として追加作業費が請求されるケースがあります。
まとめ
- ①車のコンピューターは「車載用ECU」と呼ばれ、これを使った電子制御の車が増えている
- ②車載用ECUには、エンジン制御用のものと運転支援システムなどの種類がある
- ③車載用ECUの故障によるトラブルが起きたら、点火系・燃料系・吸気系など大まかな項目から点検していく
- ④ECUの交換・修理作業は素人には難しく、故障が悪化することもあるため注意が必要
- ⑤ECUを専門業者に修理してもらう場合、過去の「作業履歴」が修理の工程に影響することがある
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