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更新日:2023.03.03 / 掲載日:2023.03.03
エンジンのシリンダーが故障したら車は買い替えが必要?シリンダーの役割や交換費用を解説
シリンダーは、車が走行する上で絶対に欠かせない構成部品で「エンジンそのもの」とさえ言える重要な役割を担っています。
そのシリンダーが故障してしまった場合、それほど車に詳しくなくても廃車や買い替えを伴う重大な不具合が起こったのだろうと想像がつく方も多いでしょう。
しかし、シリンダーは数々の部品で構成されています。故障個所と程度によっては、修理で対応することも可能です。
そこで今回は、シリンダーと呼ばれるエンジンの部品の構造と役割、故障時の症状や修理・交換費用について詳しく解説していきます。
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シリンダーは英語で「円柱」という意味です。車のエンジンにおいては、ピストンが往復運動を行う円柱状の筒、あるいはその構成部品を総称してシリンダーと呼びます。
シリンダー内では混合気への点火による燃焼と、そのエネルギーを用いたピストンの激しい往復運動が行われます。そのため、シリンダーには高い防音性・耐熱性・気密性・耐久性・機能性が必要です。
部品は、「シリンダーヘッドカバー」「シリンダーヘッド」「シリンダーブロック」という3つで構成されており、それぞれ重要な役割があります。
動弁系統は、動きを潤滑するエンジンオイルに浸されていますが、シリンダーヘッドはその飛散や動弁系統への異物混入を防いでいます。
また、エンジンが発する作動音の遮断や振動の軽減などもシリンダーヘッドカバーの役割です。
なお、作動音や振動が大きくなる高排気量・高出力エンジンの場合、シリンダーヘッドカバーの上に樹脂製の「エンジンカバー」を設置し、遮音性の向上を図ることもあります。
混合気の圧縮・点火・燃焼が行われる燃焼室の気密性を保つ役割を持っていることから、その車の性能を決定づける大きな要素の1つと言えるでしょう。
また、点火プラグ、吸気・排気バルブ、エンジンオイルや冷却水の通路の一部といったエンジン稼働に欠かせない部品や機構の多くは、このシリンダーヘッドに取り付けられています。
なお、シリンダーヘッドカバーとシリンダーヘッド、シリンダーヘッドとシリンダーブロックの接合面には、気密性を高めオイルやラジエター液の漏れ(またはシリンダー内への流入)を防ぐ「ガスケット」がそれぞれ設置されています。
これは、エンジンそのものとも言える中核部分なので、カバーやヘッド以上に高い耐久性・耐火性・耐熱性・耐摩耗性などを求められます。そのため、鋳鉄あるいはアルミニウム合金でできています。
特に、シリンダーヘッドと組み合わされて燃焼室となり、対をなすピストンの動きを誘導する役目も持つ筒状のシリンダーブロック内部には、摩耗防止のため鉄製のライナーが挿入されていたり、メッキ加工が施されていたりします。
また、機能保持のためクーラントやエンジンオイルの通路が設けられているほか、それらを圧送するポンプなどの補機類もこのシリンダーブロックに取り付けられています。
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車が動く上で重要な役割を持つシリンダー関連部品が故障すると、どのような症状が出てくるのでしょうか?
ここからは、構成部品ごとにその症状を説明していきます。
例えば、外部からの衝撃やエンジン自体の振動に耐えきれず破損した場合、そこからエンジンの作動音が外へ漏れたり、内封しているオイルが吹き出したりすることがあります。
また、亀裂から内部へ異物が混入したことでカムシャフトが傷つくと、そこから異音が発生したり、最悪の場合は動弁系統が正常に機能せず、エンジンが停止に至ったりすることもあるでしょう。
さらに、シリンダーヘッドとの間に挟まっているガスケットが変形・破損すると、できた隙間からオイルが漏れる場合もあります。
しかし、経年使用によってヘッド内に排気すすなどが過剰にたまったり、シリンダーブロックとの間にあるガスケットが変形・破損したりした場合、シリンダー内の気密性が保てず、燃焼状態が悪化することがあります。
程度が軽い場合は、外気混入によるオイルの白濁、シリンダーヘッド及びブロックとの接合部分からのオイル漏れ、パワーや加速の低下などといった症状が出てきます。
ただし、故障の程度が重くなってくると、エンジン停止やオーバーヒートからのエンジン損傷など、重大なトラブルや不具合に発展するかもしれません。
もし、車が停止するほどに故障した場合は、エンジン自体が使い物にならなくなったと考えたほうがよいでしょう。
ただし、長年使い続けると摩擦によって内部がすり減ったり、異物によって深い傷が入ったりすることがあります。その場合は、パワー低下や燃費悪化などの症状が出るでしょう。
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壊れにくいとはいえ可能性がゼロではないシリンダー関連部品が故障した際、修理や交換はできるのでしょうか?
ここからは、故障個所や程度に合わせて修理や交換ができるのか説明していきます。
役割上、どうしても高い気密性が求められるシリンダー本体を守っているのがガスケットなので、そのために「わざと」貧弱な素材が使われていると言ってもよいでしょう。
ガスケットは薄いアルミニウム合金を何層か組み合わせ、その表面にゴムがコーティングされた構造になっています。そして、このゴムが「パッキン」としてシリンダー接合部のわずかな隙間を埋め、その気密性を保っています。
しかし、混合気の圧縮や燃焼が行われるシリンダー内部から、外部に向かってかかる圧力や熱は相当なものです。高圧・高熱にさらされ続けたガスケット本体が変形・破損したり、表面のゴムが剥がれ落ちたりすると、シリンダー内部の気密性が低下してオイル漏れやパワー低下などの不具合が出てしまいます。
では、ガスケットを頑丈なものすればいいのかと言えば、そういうわけではありません。強度を上げ過ぎると、逃げられなかった圧力や熱が全てシリンダー本体にかかり、より重大な故障を招く可能性があります。
だからこそ、ガスケットは「わざと」貧弱に作られているのです。そのおかげで、不具合の程度が軽い、つまりガスケットの劣化・破損だけで済んでいるうちは、ガスケットを新品に交換することで対応できます。
唯一、シリンダーヘッドカバーが破損した場合は中古品やリビルト品を取り寄せて交換することもありますが、それも非常にレアなケースと言えます。
交換対応しない理由はいたって単純で、シリンダーヘッドやシリンダーブロックは部品代が高く、それにも増して工賃が高額になってしまうからです。
一般的に車を構成している部品は、故障しても新品に交換することで元の機能を取り戻すことができます。そして、シリンダーヘッド・シリンダーブロックといったシリンダー本体も、技術的に交換できるかできないかと聞かれれば「交換可能」な部品ではあります。
しかし、かかる費用のことを考えると、新品を用いるのは現実的ではありません。また、中古品やリビルト品を使うぐらいなら中古エンジンを取り寄せてそっくり載せ替えてしまったほうが作業的に楽で、工賃も安く済みます。
加えて、交換後の補償問題などから交換自体を請け負ってくれない修理工場も多いのが実情です。そのため、シリンダー本体が故障した場合は、基本的に「オーバーホール」をするしか症状を改善する方法はありません。
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シリンダー本体が故障した時の対応として、オーバーホールという方法があると説明しました。
オーバーホールとは、車のエンジンなどといった機械製品を、部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業です。
ここからは、このオーバーホールの手順や効果について解説していきます。
しかし、シリンダーブロックの場合はエンジン全体を車から完全に下ろさなければいけません。
また、シリンダーヘッドにはバルブ・カムシャフト・点火プラグなどが、シリンダーブロックにはウォーターポンプやオイルポンプなどの補機類、振動を抑えるためのエンジンマウントなどが取り付けられています。
シリンダー本体のオーバーホールを行うには、これらの付属部品も全て取り外す必要があり、相当な手間(作業工数)と作業時間がかかってきます。
具体的には、シリンダーヘッドの場合はこびりついた排気すすの清掃、プラグ磨きもしくは交換です。
シリンダーブロックの場合は、上記作業に加えピストンやピストンリングの交換、シリンダー内部の清掃や傷消しのための研磨などが行われます。
なお、シリンダーヘッドを上下から挟んでいるガスケットは、必然的に取り外すことになります。その際、ガスケットにわずかでも劣化や破損の前兆があった場合は、念のため新品に交換されるでしょう。
しかし、車のエンジンは精密に計算された元通りの状態(新車時に近い状態)で組み立てないと正常に作動してくれません。そのため、組み立てには分解以上の知識・技術・設備・道具・経験が必要になります。
熟練した整備士が設備の整った工場でオーバーホールを行った場合、症状の改善はもちろん、故障前より加速性能や燃費性能が向上するケースも多々あります。
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シリンダーが故障しても、症状改善や修理は可能です。しかし、そのための費用は決して安いとは言えません。
以下で詳しく見ていきましょう。
ガスケットの部品代は、いずれも数千円程度とそれほど高価ではありません。ただし、ガスケットを交換するには、シリンダーを一部分解し組み直す必要があります。
そのため、比較的取りやすい場所についているヘッドカバーガスケットでも5万~7万円の工賃が必要です。
取り外す部品点数が増えるヘッドガスケットの場合は、20万円以上の工賃がかかる場合もあります。
依頼先や車種、エンジン型式によってまちまちですが、シリンダーヘッドのみのオーバーホールで30万円以上、シリンダーブロックのオーバーホールになると100万円近くかかることもあるでしょう。
なお、シリンダーブロックをオーバーホールする場合、必然的にエンジン全てを下ろし、シリンダーヘッドも分解することになります。そのため、一緒にオーバーホールすることが多いです。
また、シリンダーのオーバーホールをする場合、干渉する部品や補機類は全て外すことになるでしょう。そのため、傷んでいるところや気になるところがある場合は、ついでに交換・整備してしまったほうがお得です。
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ガスケット交換で済んだにしろオーバーホールが必要になったにしろ、シリンダー関連部品が故障すると修理費用が高額になるのであれば、できる限り故障しないよう長持ちさせたいと思うでしょう。
そこでここからは、エンジンのシリンダーを長持ちさせるためのコツを紹介していきます。
そのため、シリンダー関連部品を長持ちさせるには、こまめなエンジンオイル及びオイルフィルターの交換などといった、適切なオイル管理が最大の秘訣です。
エンジンオイルは5,000kmまたは半年ごとの交換、オイルフィルターはオイル交換2回に1回が交換の目安とされています。それよりも早いタイミングで交換したからと言って、よい効果こそあれ悪い影響を与えることはありません。
長距離ドライブの前などには必ずオイルの量や汚れを点検し、オイルが減っていたり、汚れがひどかったりする場合は早めに交換するよう心がけましょう。
これらは、シリンダー関連部品が故障する「前兆」です。この段階であればまだガスケットの交換だけで済むことも多いため、早めに修理工場などで詳しい点検を受け、しかるべき修理をしてもらいましょう。
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ガスケットからのオイル漏れやエンジンからの異音・異臭が発生しているのに放置し、シリンダー本体が故障した場合はオーバーホールが必要となります。
そして、前述したようにオーバーホールに必要な費用は非常に高額です。そのため、よほどの高級車や思い入れの深い車でもない限り、車の買い替えを検討したほうが良いかもしれません。
そのシリンダーが故障してしまった場合、それほど車に詳しくなくても廃車や買い替えを伴う重大な不具合が起こったのだろうと想像がつく方も多いでしょう。
しかし、シリンダーは数々の部品で構成されています。故障個所と程度によっては、修理で対応することも可能です。
そこで今回は、シリンダーと呼ばれるエンジンの部品の構造と役割、故障時の症状や修理・交換費用について詳しく解説していきます。
この記事の目次
シリンダーとは?~関連部品とそれぞれの役割~
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シリンダー内では混合気への点火による燃焼と、そのエネルギーを用いたピストンの激しい往復運動が行われます。そのため、シリンダーには高い防音性・耐熱性・気密性・耐久性・機能性が必要です。
部品は、「シリンダーヘッドカバー」「シリンダーヘッド」「シリンダーブロック」という3つで構成されており、それぞれ重要な役割があります。
シリンダーヘッドカバー
シリンダーヘッドカバーは、エンジン本体の最上部に位置し、吸排気を行うバルブと、それを動かすカムシャフト(=動弁系統)を覆っているカバーのことです。「タペットカバー」と呼ばれることもあります。動弁系統は、動きを潤滑するエンジンオイルに浸されていますが、シリンダーヘッドはその飛散や動弁系統への異物混入を防いでいます。
また、エンジンが発する作動音の遮断や振動の軽減などもシリンダーヘッドカバーの役割です。
なお、作動音や振動が大きくなる高排気量・高出力エンジンの場合、シリンダーヘッドカバーの上に樹脂製の「エンジンカバー」を設置し、遮音性の向上を図ることもあります。
シリンダーヘッド
シリンダーヘッドは、後述するシリンダーブロックと共にエンジンを構成する基本的な部品です。鋳造のしやすさや耐久性の高さから、一般的にはアルミニウム合金で作られています。混合気の圧縮・点火・燃焼が行われる燃焼室の気密性を保つ役割を持っていることから、その車の性能を決定づける大きな要素の1つと言えるでしょう。
また、点火プラグ、吸気・排気バルブ、エンジンオイルや冷却水の通路の一部といったエンジン稼働に欠かせない部品や機構の多くは、このシリンダーヘッドに取り付けられています。
なお、シリンダーヘッドカバーとシリンダーヘッド、シリンダーヘッドとシリンダーブロックの接合面には、気密性を高めオイルやラジエター液の漏れ(またはシリンダー内への流入)を防ぐ「ガスケット」がそれぞれ設置されています。
シリンダーブロック
シリンダーブロックは、燃焼室内で燃料の爆発力を受けたピストンが往復運動を行う筒状の「シリンダー」の部分と、ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフトが収まっている「クランクケース」で構成されています。これは、エンジンそのものとも言える中核部分なので、カバーやヘッド以上に高い耐久性・耐火性・耐熱性・耐摩耗性などを求められます。そのため、鋳鉄あるいはアルミニウム合金でできています。
特に、シリンダーヘッドと組み合わされて燃焼室となり、対をなすピストンの動きを誘導する役目も持つ筒状のシリンダーブロック内部には、摩耗防止のため鉄製のライナーが挿入されていたり、メッキ加工が施されていたりします。
また、機能保持のためクーラントやエンジンオイルの通路が設けられているほか、それらを圧送するポンプなどの補機類もこのシリンダーブロックに取り付けられています。
シリンダー関連部品が故障した時の症状
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ここからは、構成部品ごとにその症状を説明していきます。
シリンダーヘッドカバーorガスケットが故障した時の症状
シリンダーヘッドカバーは、その役割と設置されている場所から、シリンダー構成部品の中では比較的不具合が出やすい箇所だとされています。例えば、外部からの衝撃やエンジン自体の振動に耐えきれず破損した場合、そこからエンジンの作動音が外へ漏れたり、内封しているオイルが吹き出したりすることがあります。
また、亀裂から内部へ異物が混入したことでカムシャフトが傷つくと、そこから異音が発生したり、最悪の場合は動弁系統が正常に機能せず、エンジンが停止に至ったりすることもあるでしょう。
さらに、シリンダーヘッドとの間に挟まっているガスケットが変形・破損すると、できた隙間からオイルが漏れる場合もあります。
シリンダーヘッドorガスケットが故障した時の症状
シリンダーヘッドは、普段シリンダーヘッドカバー(車種によってはエンジンカバーも)が保護してくれているため、そう簡単に不具合を起こしません。しかし、経年使用によってヘッド内に排気すすなどが過剰にたまったり、シリンダーブロックとの間にあるガスケットが変形・破損したりした場合、シリンダー内の気密性が保てず、燃焼状態が悪化することがあります。
程度が軽い場合は、外気混入によるオイルの白濁、シリンダーヘッド及びブロックとの接合部分からのオイル漏れ、パワーや加速の低下などといった症状が出てきます。
ただし、故障の程度が重くなってくると、エンジン停止やオーバーヒートからのエンジン損傷など、重大なトラブルや不具合に発展するかもしれません。
シリンダーブロックが故障した時の症状
構造的にも材質的にも頑丈なシリンダーブロックが、重度に破損・故障することは事故でもない限り滅多にありません。もし、車が停止するほどに故障した場合は、エンジン自体が使い物にならなくなったと考えたほうがよいでしょう。
ただし、長年使い続けると摩擦によって内部がすり減ったり、異物によって深い傷が入ったりすることがあります。その場合は、パワー低下や燃費悪化などの症状が出るでしょう。
シリンダー関連部品は修理・交換できる?
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ここからは、故障個所や程度に合わせて修理や交換ができるのか説明していきます。
ガスケットのみなら交換で対応することも
シリンダー関連部品で故障や不具合を起こしやすいのは、素材的にやや貧弱な「ガスケット」です。役割上、どうしても高い気密性が求められるシリンダー本体を守っているのがガスケットなので、そのために「わざと」貧弱な素材が使われていると言ってもよいでしょう。
ガスケットは薄いアルミニウム合金を何層か組み合わせ、その表面にゴムがコーティングされた構造になっています。そして、このゴムが「パッキン」としてシリンダー接合部のわずかな隙間を埋め、その気密性を保っています。
しかし、混合気の圧縮や燃焼が行われるシリンダー内部から、外部に向かってかかる圧力や熱は相当なものです。高圧・高熱にさらされ続けたガスケット本体が変形・破損したり、表面のゴムが剥がれ落ちたりすると、シリンダー内部の気密性が低下してオイル漏れやパワー低下などの不具合が出てしまいます。
では、ガスケットを頑丈なものすればいいのかと言えば、そういうわけではありません。強度を上げ過ぎると、逃げられなかった圧力や熱が全てシリンダー本体にかかり、より重大な故障を招く可能性があります。
だからこそ、ガスケットは「わざと」貧弱に作られているのです。そのおかげで、不具合の程度が軽い、つまりガスケットの劣化・破損だけで済んでいるうちは、ガスケットを新品に交換することで対応できます。
シリンダー本体を交換することはまずない
工賃がかさむとはいえ交換することで症状を改善できるケースも多いガスケットに対し、シリンダー本体にあたるシリンダーヘッドやシリンダーブロックを交換することはまずありません。唯一、シリンダーヘッドカバーが破損した場合は中古品やリビルト品を取り寄せて交換することもありますが、それも非常にレアなケースと言えます。
交換対応しない理由はいたって単純で、シリンダーヘッドやシリンダーブロックは部品代が高く、それにも増して工賃が高額になってしまうからです。
シリンダー本体が故障したらオーバーホールするしかない
前述したシリンダー本体が故障した際、その交換対応が難しいことをもう少し深堀りしましょう。一般的に車を構成している部品は、故障しても新品に交換することで元の機能を取り戻すことができます。そして、シリンダーヘッド・シリンダーブロックといったシリンダー本体も、技術的に交換できるかできないかと聞かれれば「交換可能」な部品ではあります。
しかし、かかる費用のことを考えると、新品を用いるのは現実的ではありません。また、中古品やリビルト品を使うぐらいなら中古エンジンを取り寄せてそっくり載せ替えてしまったほうが作業的に楽で、工賃も安く済みます。
加えて、交換後の補償問題などから交換自体を請け負ってくれない修理工場も多いのが実情です。そのため、シリンダー本体が故障した場合は、基本的に「オーバーホール」をするしか症状を改善する方法はありません。
オーバーホールとは?~オーバーホールの手順と効果~
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オーバーホールとは、車のエンジンなどといった機械製品を、部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業です。
ここからは、このオーバーホールの手順や効果について解説していきます。
手順①エンジンを車から降ろし最小単位まで分解する
不具合がシリンダーヘッドにとどまっている場合は、エンジン上部のみの分解・再組み立てで対応することもあります。しかし、シリンダーブロックの場合はエンジン全体を車から完全に下ろさなければいけません。
また、シリンダーヘッドにはバルブ・カムシャフト・点火プラグなどが、シリンダーブロックにはウォーターポンプやオイルポンプなどの補機類、振動を抑えるためのエンジンマウントなどが取り付けられています。
シリンダー本体のオーバーホールを行うには、これらの付属部品も全て取り外す必要があり、相当な手間(作業工数)と作業時間がかかってきます。
手順②各部品の清掃と不良個所の交換を行う
車からの取り外し及び最小単位までの分解が完了したら、次に行うのは各部品の清掃と不良個所の交換です。これは不具合や故障の原因を排除するために行います。具体的には、シリンダーヘッドの場合はこびりついた排気すすの清掃、プラグ磨きもしくは交換です。
シリンダーブロックの場合は、上記作業に加えピストンやピストンリングの交換、シリンダー内部の清掃や傷消しのための研磨などが行われます。
なお、シリンダーヘッドを上下から挟んでいるガスケットは、必然的に取り外すことになります。その際、ガスケットにわずかでも劣化や破損の前兆があった場合は、念のため新品に交換されるでしょう。
手順③エンジンを組み立てて車に再搭載する
その後は、清掃・研磨・交換済みの各部品を組み立てることになります。しかし、車のエンジンは精密に計算された元通りの状態(新車時に近い状態)で組み立てないと正常に作動してくれません。そのため、組み立てには分解以上の知識・技術・設備・道具・経験が必要になります。
熟練した整備士が設備の整った工場でオーバーホールを行った場合、症状の改善はもちろん、故障前より加速性能や燃費性能が向上するケースも多々あります。
シリンダー関連部品の修理にかかる費用の目安
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以下で詳しく見ていきましょう。
ガスケットの交換だけで済んだ場合
前述したとおり、オイル漏れやパワー低下といった症状がまだ軽い場合は、ガスケットを新品に交換すれば症状が改善する場合があります。ガスケットの部品代は、いずれも数千円程度とそれほど高価ではありません。ただし、ガスケットを交換するには、シリンダーを一部分解し組み直す必要があります。
そのため、比較的取りやすい場所についているヘッドカバーガスケットでも5万~7万円の工賃が必要です。
取り外す部品点数が増えるヘッドガスケットの場合は、20万円以上の工賃がかかる場合もあります。
エンジンのオーバーホールが必要だった場合
分解・清掃・再組み立てを伴うオーバーホールの費用は、ガスケット交換時より当然高額になります。依頼先や車種、エンジン型式によってまちまちですが、シリンダーヘッドのみのオーバーホールで30万円以上、シリンダーブロックのオーバーホールになると100万円近くかかることもあるでしょう。
なお、シリンダーブロックをオーバーホールする場合、必然的にエンジン全てを下ろし、シリンダーヘッドも分解することになります。そのため、一緒にオーバーホールすることが多いです。
また、シリンダーのオーバーホールをする場合、干渉する部品や補機類は全て外すことになるでしょう。そのため、傷んでいるところや気になるところがある場合は、ついでに交換・整備してしまったほうがお得です。
エンジンのシリンダーを長持ちさせるコツ
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そこでここからは、エンジンのシリンダーを長持ちさせるためのコツを紹介していきます。
適切なエンジンオイル管理が最大の秘訣!
エンジンオイルは、冷却・潤滑作用により熱や摩擦でシリンダー関連部品の劣化を抑制しています。また、古く汚れたエンジンオイルを使い続けていると、排気すすの蓄積やガスケットの破損・劣化を速めてしまいます。そのため、シリンダー関連部品を長持ちさせるには、こまめなエンジンオイル及びオイルフィルターの交換などといった、適切なオイル管理が最大の秘訣です。
エンジンオイルは5,000kmまたは半年ごとの交換、オイルフィルターはオイル交換2回に1回が交換の目安とされています。それよりも早いタイミングで交換したからと言って、よい効果こそあれ悪い影響を与えることはありません。
長距離ドライブの前などには必ずオイルの量や汚れを点検し、オイルが減っていたり、汚れがひどかったりする場合は早めに交換するよう心がけましょう。
迅速な不具合発見と修理も大切
オイル点検の結果、過度にオイルの量が減っている場合、ガスケット部分からオイル漏れが発生していることがあります。また、それを放置しているとエンジンから異音や焦げたような異臭が出てくることもあります。これらは、シリンダー関連部品が故障する「前兆」です。この段階であればまだガスケットの交換だけで済むことも多いため、早めに修理工場などで詳しい点検を受け、しかるべき修理をしてもらいましょう。
オーバーホールが必要な場合は買い替えも視野に入れるべき
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そして、前述したようにオーバーホールに必要な費用は非常に高額です。そのため、よほどの高級車や思い入れの深い車でもない限り、車の買い替えを検討したほうが良いかもしれません。
まとめ
- ①シリンダーとは、車の心臓であるエンジンそのものと言える重要な部品の総称
- ②シリンダーは、シリンダーヘッドカバー・シリンダーヘッド・シリンダーブロックで構成されている
- ③シリンダー及び関連部品が故障すると、軽度の場合はオイル漏れなどが発生し、重度になるとエンジンそのものが使い物にならなくなる
- ④ヘッドカバーガスケット及びヘッドガスケットは、シリンダー関連部品の中では故障しやすいものの、部品交換することで症状を改善できる
- ⑤シリンダー本体を交換することはほとんどないが、分解・清掃・再組み立てを伴うオーバーホールを行うことで、症状が改善することがある
- ⑥シリンダーを長持ちさせるには、適切なオイル管理と定期的な点検・整備が大切
- ⑦オーバーホールの費用は非常に高額なため、場合によっては乗り換えも視野に入れよう
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