中古車購入チェックポイント
更新日:2020.04.12 / 掲載日:2020.04.12
ホンダ フィット【ONE MAKE MARKET RESEARCH】
左から「13G/15X/15XL」「HYBRID」「RS」
文●工藤貴宏
(掲載されている内容はグー本誌 2020年4月掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年3月調べ。
2001年にデビューした初代モデルで“積極的に選びたくなる新感覚コンパクトカー”を提案し、爆発的にヒットしたフィット。今回紹介する3代目は2013年から2019年まで販売。その魅力に迫っていこう。
2013年式 ホンダ フィット ハイブリッド Fパッケージ(7速AT・DCT)全長×全幅×全高:3955×1695×1525mm ●ホイールベース:2530mm ●トレッド前/後:1480/1470mm ●車両重量:1130kg ●排気量:1496cc ●エンジン:直4DOHC+モーター ●エンジン最高出力:110ps/6000rpm ●エンジン最大トルク:13.7kgm/5000rpm ●モーター最高出力:29.5ps ●モーター最大トルク:16.3kgm ●サスペンション前/後:ストラット/車軸式 ●ブレーキ前後:Vディスク/ドラム ●タイヤ前後:185/60R156
小さな車体に詰まった高い実用性が魅力
ユーザー目線で見たときのフィットの魅力は、バランスよくまとめた“ちょうどいい実用性”と選べるバリエーションの幅広さである。
ちょうどいい実用性として挙げられるのは、まず車体サイズと室内の広さの関係。フィットはコンパクトカーなので全長4mを下まわる、狭い駐車場でも扱いやすい大きさだ。しかし室内に入ると、後席は驚くほど広いし、荷室スペースもライバルより広く確保されている。車体の大きさからは想像できない広くて実用的な室内なのだ。これはコンパクトカークラスのなかでも、多くのライバルに対するアドバンテージである。
ホンダ独自のアイデアにより、座面を跳ね上げて後席にベビーカーを立てて積んだり、格納時に低く収まるリヤシートも特徴だ。 もうひとつの魅力である幅広いバリエーションは、たとえばパワートレーンはガソリンエンジンとハイブリッド(エンジン+モーター)があり、前者は排気量が1.3Lと1.5Lの2タイプを用意。さらにトランスミッションは無段変速のほかにMT(マニュアル・トランスミッション)も設定されている。駆動方式はFFを中心に、ほぼ全グレードで4WDも選択可能だ。グレードはベーシックタイプや快適装備を追加した「G Fパッケージ」などのほか、肌触りのいいシート素材が自慢の上級タイプ「L」や「XL」、さらにはスポーティグレードの「RS」など、バラエティに富んでいる。
属するのは、トヨタ「ヴィッツ」、日産「ノート」、そしてマツダ「デミオ」など競合ひしめくクラスだが、バランスのよさではフィットが最適解といえそうだ。
[バリエーション]
HYBRID
3代目フィットの販売で主力となったのがハイブリッド車。DCTと呼ぶトランスミッションを組み合わせることもあり、加速フィーリングはCVTのガソリンエンジン車よりも鋭い。
中古車参考価格帯:50万円~220万円(13年~19年 ※ハイブリッド)
RS
軽快なスタイルと専用チューニングのサスペンションを組み合わせたスポーティグレード。1.5Lガソリンエンジンとハイブリッドが選べ、前者のトランスミッションは6速マニュアルも設定。
中古車参考価格帯:70万円~200万円(13年~19年 ※RS)
13G/15X/15XL
価格面でもリーズナブルで、ベーシックな存在となるガソリン車。1.3Lエンジンでも日常域においては不足のない動力性能で、1.5Lになるとゆとりを実感できる。
中古車参考価格帯:50万円~190万円(13年~19年 ※13G/15X系)
[モデルヒストリー]メカニズムもバリエーションも進化
2013年9月:フルモデルチェンジ
プラットフォームまで刷新した大規模なフルモデルチェンジを実施。ハイブリッドシステムも新設計され、従来とは異なる効率と爽快な走行感覚を手に入れた。
2014年10月:一部改良
ガソリン車を一部改良し装備を充実。最大のポイントは「13G Fパッケージ」のエアコンがマニュアル式からオートエアコンにアップグレードされたことだ。
2015年9月:一部改良
グリルのデザインをリファインするなど、スタイリングの変更も含めた一部改良。「13G」を除く全タイプにプラズマクラスター付きオートエアコンが搭載された。
2017年6月:マイナーチェンジ
大規模なマイナーチェンジを実施。大きなトピックは、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全支援システムの「ホンダセンシング」が設定されたこと。
2018年7月:「モデューロスタイル」を設定
内外装ともに独自コンセプトの専用アイテムでドレスアップし、走りも磨き上げた上級スポーティグレードが登場。ベースは「13G L ホンダセンシング」だ。
NEW generation 2020年2月:新型フィットを発表
心地よさを追求してスタイリングイメージを刷新
最新となる4代目フィットのテーマは「心地よさ」。驚異的に細いAピラーによる視界のよさや開放感、シートの座り心地のよさ、良好な乗り心地、そしてスムーズな加速など快適な移動環境をつくることに注力されている。もちろん広い後席や荷室など歴代フィットの美点はそのまま継承。
[インテリア]歴代フィットの頂点に立つ上級感
4人が快適に移動できる室内は初代フィットから引き継がれている長所。インテリアにおいて初代や2代目だけでなく、最新の4代目と比べても特徴と言えるのが高級感の演出。たとえば運転席周辺は自発光式の凝ったメーターを採用するほか、ピアノブラックのパネルやタッチ式の空調スイッチを組み合わせるなど上級セダンのようだ。
高効率パッケージングは、広い室内に加え中型スーツケース2個と機内持ち込みサイズ2個の計4個を積める荷室を用意する。
上級仕様のメーターは左右をカラー液晶化。そんな緻密なデザインのメーターも高級感の演出にひと役買う。ハイブリッドのセレクトレバーは、操作後に手を離すと中立位置へ戻る電子制御式だ。
後期型からはプレミアムブラウンも選べる
上級グレードにはメイン部にバックスキンのような質感のウルトラスエード、左右部に「プライムスムース」を組み合わせてブラウン基調とした仕様を設定している。プライムスムースは上質な本革のような質感と繊細な肌触りを備えた人工素材だ。
[メカニズム]トピックはハイブリッドとホンダセンシング
フィットはコンパクトカーながらホンダの基幹モデルとなっていることもあり、先進技術も多く投入されている。たとえばハイブリッドシステムは、「スポーツハイブリッドi-DCD」と呼ぶフィット向けに開発したタイプを搭載。安全面においても、モデル途中からホンダセンシングと呼ぶ先進安全機能が採用された。
HYBRID
特徴は、小型かつ軽量ながら高い効率と力強い加速を追求していること。トランスミッションはギヤ同士をかみ合わせる構造のDCTで、MTのように鋭い加速を実現し運転感覚にも優れる。
HONDA SENSING
「ホンダセンシング」はいくつかの技術で構成する。代表的なのは、衝突が避けられない状況になると自動的にブレーキを作動させる衝突被害軽減ブレーキだが、車線からはみ出すのを防いだり、路肩付近の歩行者を避けるようにハンドル操作に介入する機能も含まれる。
[ライバル]ホンダフィットと日産ノートを比較してみると?
フィットはコンパクトカーとしては大きめのサイズで、ガチンコライバルと言えるのは日産「ノート」。2012年から販売している2代目ノートは全長4100mmでフィットよりもさらに大きい車体だ。エンジンは1.2Lだが、スーパーチャージャーと呼ばれるシステムを追加して動力性能に余裕を持たせたタイプもある。2016年11月からは「e-POWER」と呼ぶハイブリッドも展開。
中古車参考価格帯:30万円~230万円(12年~19年 ※NISMOを除く)
ゆったりとした足もと空間を用意した後席や、コンパクトカーとして広めのラゲッジルームなど実用性は高い。しかし、格納時に低く収まるシートなど後席アレンジはフィット優勢だ。
[市場データ]人気のハイブリッドが買いやすくなってきた
新型が登場したこともあり、ここ最近相場は右肩下がり。以前は高値安定だったハイブリッドも初期型ならば100万円以下の予算で購入できるようになった。前期型は安い一方、ホンダセンシングが装備される後期型はやや高め。全体的に物件数が充実しており、好みの条件で探しやすいモデルだ。
年式
販売期間は長めであるが、年式ごとの物件数に大きな偏りはない。ボリュームがあるのはデビュー翌年の2014年式となっている。グレード
グレードの大半は、13G系とハイブリッドで占められる。とくにハイブリッドが半数を超えていることに注目。非常に買いやすい状況。走行距離
未使用車から10万km以上の多走行車まで幅広く流通する。1万km未満の低走行車は、24%と比較的多め。状態のよい個体は豊富だ。
自動車ジャーナリスト工藤貴宏の「ホンダ フィットGOODとBAD」
【GOOD】優れたパッケージと爽快な加速が魅力
なにより素晴らしいのは車体サイズと室内空間のバランスで、居住性と積載性の高さには驚かされる。そのうえで特筆すべき魅力なのが、ハイブリッドの加速のシャープさ。たとえばトヨタ「アクア」などは加速感に不自然さがあるが、フィットハイブリッドはまるでアクセルを踏む右足がパワートレインと直結しているかのような爽快な感覚が好印象だ。
【BAD】ファミリーユースなら乗り心地に留意を
バランスよく仕立てられているから“これぞ”といった死角は見当たらないが、強いていえば乗り心地が硬めな印象。とくに初期モデルや前期型にその傾向があり、運転席よりも後席でそれを感じやすい。ファミリーカーとして使う場合は、可能であれば後席に家族を乗せて乗り心地を確認したい。ベーシックグレードはインパネ周辺の質感がやや劣る。
編集部イチオシ!
HYBRID
燃費や走行性能を考えるとハイブリッドを選んだほうが満足感は高い。ハイブリッドは全車にオートエアコン装備なので、ベースグレードでもひととおりの快適装備は備わっている。