車の歴史
更新日:2024.10.18 / 掲載日:2024.10.18
伝統の4WD+ターボでワゴンブームを巻き起こしたスバル レガシィ【名車の生い立ち#6】

2024年4月、米国スバルはレガシィシリーズの生産終了を発表しました。1989年に発売されたスバルのミドルセダン/ワゴン、レガシィは、日本はもちろん海外でも人気のモデル。しかし、すでに日本市場での販売は終了しており、現在は派生車であるアウトバックのみがラインアップに残されています。海外専売車になったとはいえ、生産終了に落胆している人も多いことでしょう。高性能な走りによりグランドツーリングカーとしての資質を備えた名車の生産終了は、一時代の終わりを感じさせます。今回はそんなレガシィにスポットライトを当て、歴史を振り返ってみましょう。
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ターボ+4WDというレガシィの基本形を作ったスバル レオーネ

レガシィの歴史を語る上で欠かすことができないのが、前身となったスバル レオーネ。初代レオーネが誕生したのは、高度経済成長真っ盛りの1971年でした。この頃は自家用車の普及率が上がり、贅沢品から必需品になりつつあった時代。国産車の性能もどんどん上がっていき、各メーカーはニューモデルを矢継ぎ早に投入していました。そんな折、それまでのスバル1000に代わるモデルとしてスバル レオーネがデビュー。トヨタ カローラや日産 サニーなど強力なライバルがひしめく小型車市場に投入されたのです。スバル1000時代の水平対向エンジンはレオーネにも引き継がれ、サッシュレスドアの採用など、最近まで続いたスバル車の原型はここで完成したといっていいでしょう。

1979年に登場した2代目レオーネでは、セダンやクーペに加えてスイングバックと呼ばれる3ドアハッチバックやツーリングワゴンが追加されました。特に後者はレガシィツーリングワゴンやレヴォーグの祖といってもいい存在。1982年にはターボ+4WDを組み合わせたモデルも登場し、当時過熱していったパワー競争に対抗していきます。

1984年にはフルモデルチェンジを受けて3代目レオーネが登場。直線基調のデザインに一新された新型レオーネは、ボディが大型化されたのが見どころ。後にフルタイム4WD搭載車も設定され、洗練された走りを身につけたのも特徴でした。1989年にはレガシィと入れ替わるようにレオーネクーペ、ツーリングワゴンの販売が終了。1992年にはもうひとつの後継車であるインプレッサの登場により、セダンも生産終了へ。レオーネバンのみが1994年まで販売され、その歴史に終止符を打ちました。
新時代の幕開けを飾った渾身のニューモデル「レガシィ」

昭和天皇の崩御により、平成の時代が始まった1989年。第一次海部内閣のスタート、消費税3%の導入、海外ではベルリンの壁崩壊や冷戦終結など、ひとつの時代が終わろうとしていた80年代最後の年、レオーネの後継としてスバル レガシィが誕生しました。シンプルながらも未来的なルックスは新しい時代を感じさせるもので、力強いブリスターフェンダーの採用などスポーティさをアピール。レオーネからボディがひと回り拡大され、当時のミドルクラスの標準的なサイズに並びました。レオーネ時代はクーペやハッチバックもありましたが、レガシィではセダンとツーリングワゴンの2つに集約。商用バンは用意されず、ワンクラス上の品質を身につけたのが大きな見どころでした。

パワートレインは、新開発の水平対向4気筒エンジン(EJ)を採用。セダンの最上級モデルには220馬力を誇る2.0Lターボ+4WDを搭載した「RS」を設定し、高性能なスポーツセダンとしてその名を轟かせます。同年10月にはワゴンに同エンジンを搭載した(ただしこちらは200馬力の)「GT」グレードを設定。スポーツ性能とは無縁の野暮ったいレジャーカーという、これまでのワゴン車のイメージを覆し、高性能ワゴンの草分けとしてこちらも大いに注目を浴びます。また、セダンは「RS」グレードをベースにWRCにも参戦し、その性能を痛烈にアピール。「RS タイプR」のようなモータースポーツ向けのグレードも投入されました。
スポーツカーブーム真っ最中に生まれた2代目

1993年、レガシィはフルモデルチェンジを受けて2代目に進化。この年といえば、冷夏の影響で深刻な米不足が起きました。タイ米などが輸入され一般家庭の食卓に並んだことを覚えている人も多いでしょう。そのほか、細川連立政権の誕生やJリーグ発足など、国内でさまざまなニュースが報じられた年でもあります。そんな時代に生まれた2代目レガシィは、より洗練された内外装と強化されたパワートレインが大きな見どころ。直線的だった初代から一転し、丸みを帯びたモダンなルックスになりました。全幅こそ1695mmの5ナンバーサイズをキープしていましたが、ホイールベースを50mm延長した2630mmとし、居住性が大きく改善。ミドルクラスセダン/ワゴンに不可欠な実用性や快適性が高まったのが評価されました。

この時代はスポーツカーブームの真っ最中だったこともあり、エンジンスペックも強化。エンジンそのものは先代と共通のEJ型が搭載されましたが、セダンの「RS」、ツーリングワゴンの「GT」ともに最高出力は250馬力にまで強化。当時の自主規制値に届きそうなパワーと4WDの組み合わせは、セダンやワゴンとしては圧倒的な性能を誇りました。ただし、インプレッサにWRCベース車両の座を譲っていたこともあり、レガシィはやや大人向けスポーツセダン/ワゴンというポジション。なお、1996年のマイナーチェンジでは最高出力が280馬力に達し、名だたるスポーツカーと同じく280馬力車の一員になりました。一方1995年には、外観をSUV風に仕立てた「レガシィグランドワゴン(海外名:アウトバック)」も登場。当初は目立たぬ存在でしたが、こちらも世代交代を繰り返して大ヒット商品となっていきます。
全車4WD化と6気筒モデルの追加で走りを極めた3代目

大ヒットモデルとなった2代目と入れ替わるように、1998年に登場した3代目レガシィ。この年の出来事といえば、経済成長が戦後最大のマイナスを記録し、多くの企業が倒産したこと。失業率も過去最悪といわれ、就職氷河期の時代がやってきました。そんな潮流のなか誕生した3代目は、奇をてらわず先代からのキープコンセプト。ツーリングワゴンにやや遅れて追加されたセダンは「B4」のサブネームが与えられました。ボディは5ナンバーが維持され、先代とほぼ同じサイズ。サッシュレスドア、6ライトウインドウなどレガシィの基本を守りつつ、より洗練されたデザインとなったのが見どころです。

一方、メカニズムではFFモデルが廃止され、全車4WDとなったのがトピック。セダンは自然吸気4気筒の「RS」、ターボモデル「RSK」を中心としたグレード展開となり、スポーツ性能を全面に押し出しました。また、さらなる上級グレードとして水平対向6気筒を搭載した「RS30」や「GT30」が設定され、ワンランク上の上質な走りを実現。さらにポルシェデザインが手がけた「ブリッツェン」が限定販売されたことも大きな話題となりました。
グローバル基準で3ナンバーサイズとなった4代目

2000年代に入ると、世界の自動車メーカーは合併や統合が相次ぎました。日本車も商品力の強化やグローバル基準の設計が求められることになり、大きくステップアップした時代といえます。そんななか、2003年にフルモデルチェンジを受けたレガシィも例外ではありません。それまで5ナンバーを維持してきましたが、全幅を1730mmに拡大して3ナンバーとなりました。また、無骨な印象だった先代モデルから一転し、スポーティで洗練されたエクステリアとなったこともトピックでしょう。Cd値はセダンで0.28、ツーリングワゴンで0.30という優秀な値を実現し、空力性能にもとことんこだわりました。さらに生産拠点を日本のほかにアメリカにも置き、北米市場のユーザーにも訴求していきました。

グレード編成は、セダンのレガシィB4ではRS系のネーミングを廃止し、ツーリングワゴンと共通のグレード名へと変更。最上級モデルには2.0L 水平対向4気筒ターボを搭載し、さらに倒立型ビルシュタイン製ダンパーを与えた「GTスペックB」を設定しています。こちらはフロントバンパー形状も専用デザインが与えられたのが特徴。その後3.0L 水平対向6気筒を搭載した「3.0R」も追加。また、2006年のマイナーチェンジでは、走行モードを任意に切り替えられる「SI-DRIVE」も導入されました。「SI-DRIVE」は走りのセッティングを変えることで、さまざまなシーンにピントを合わせた走りが可能となり、スポーツセダンとしての魅力がさらに高まったのです。走りと質感を高い次元で両立した4代目レガシィは、まさに絶頂期を迎えていました。
北米市場を意識してボディサイズが拡大された5代目

2009年の年明けに開催されたデトロイトショーで、スバルは次世代レガシィのコンセプトカーを出品。春のニューヨークショーでは市販型に近いプロトタイプが発表されました。そして同年5月に日本で販売がスタート。欧州的だった先代モデルから一転し、5代目レガシィは北米市場を意識したマッチョなデザインになったのが特徴です。全長は先代から100mm近く大きい4730mm、全幅は1780mmにまで拡大(セダンの値)。このおかげで室内空間は広くなり、快適性は一段と向上。また、レオーネの時代から続いたサッシュレスドアが廃止されたこともトピックでした。

車体の大型化により、発売当初は2.0Lモデルが廃止され2.5L水平対向4気筒、同ターボ、そしてアウトバック用の3.6L水平対向6気筒を設定。先代のようなシャープで軽快な走りから一転、重厚なドライブを楽しめる大人のフィーリングに大きく変わったのです。しかし、走りの路線変更にとまどいを覚えた人も少なくありませんでした。そこで2012年のマイナーチェンジで追加されたのが、2.0L 水平対向4気筒ターボ(FA20)を搭載した「2.0GT DIT」。これはスポーツ性能と環境性能を両立しながら、300馬力という高出力を実現した新グレードで、かつてのレガシィファンも納得のモデルでした。また、衝突被害軽減ブレーキのアイサイトも導入され、上級セダン/ワゴンとしてさらに上の高みに達しました。
ワゴン廃止の大決断!国内向けは最後のレガシィとなった6代目

2014年、レガシィはフルモデルチェンジを受けて6代目に。この世代は本格的に北米市場を意識した設計になり、レガシィの看板モデルだったツーリングワゴンを廃止。セダンのレガシィB4とアウトバックのみとなりました。スポーツイメージを牽引していた「GT」系グレードは全て廃止され、ベースグレードと上級グレード「リミテッド」に集約。パワートレインは2.5L 水平対向4気筒(FB25)のみとなり、ターボ車も廃止。かつて向かうところ敵なしだったスポーツセダンも、落ち着いたアダルトなセダンに様変わりしていきました。この時代はSUVが台頭し、国産セダンの市場はどんどん小さくなっていった時代。新しくなったレガシィも以前ほどの人気を取り戻すことができず、2020年には国内向けレガシィB4の販売が終了しました。
レガシィからレヴォーグへ。受け継がれたツーリングワゴンの血統

レガシィシリーズは、その後アウトバックのみが日本での販売が続けられているものの、日本では「レガシィ」の名は消え、歴史に終止符を打ちました。一方北米市場では2019年に7代目レガシィ(セダンのみ)が登場しましたが、こちらも来年に生産終了する予定となっています。レオーネから続くレガシィの系譜は途絶えるかに思えますが、6代目レガシィが登場した2014年、ニューフェイスのスバル レヴォーグが登場。こちらは4代目レガシィに近いボディサイズを持つステーションワゴンで、日本の交通事情でも使いやすい大きさ。ルックスもかつてのインプレッサやレガシィを彷彿とさせるスポーティなデザインで、一躍人気モデルに躍り出たのです。アイサイトなどの安全装備を盛り込みつつ、ターボ+4WD搭載車を設定し、まさにポストレガシィツーリングワゴンともいえる存在となりました。そんなレヴォーグも2020年には2代目が登場。スポーティなツーリングワゴンの血統を受け継ぎ、今も高い人気を誇る1台となっています。
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ライタープロフィール
1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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