車の歴史
更新日:2025.04.27 / 掲載日:2025.04.26
アウトドア好きから支持されたSUV、スバル フォレスターヒストリー【名車の生い立ち#12】

先日、スバル フォレスターの新型がお披露目されました。新しくなったフォレスターは、SUVらしいタフネスさと洗練さを兼ね備えたルックス、ストロングハイブリッド(e-BOXER)の採用による低燃費が見どころ。各販売店ではすでに予約受注もスタートし、いま最もホットなSUVなのは間違いありません。そこで今回は、28年に及ぶスバル フォレスターの歴史をクローズアップしてみましょう。
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90年代のRVブームに乗って生まれた初代フォレスター

SUVが世に溢れている令和の時代ですが、日本においてSUVというジャンルはそれほど長い歴史を持つわけではありません。そのルーツはアメリカにあり、1960年代にピックアップトラックの荷台に屋根を付けたモデルがはじまりと言われています。そこから北米を中心にSUVは増えていきましたが、当時の日本ではまだ希少な存在。しかし80年代に入ると、オフロード性能に特化したクロスカントリー車の人気が高まり、一大ブームになりました。これがSUVブームの黎明期といえそうですが、当時はSUVという言葉は用いられず、「RV(レクリエーション・ビークル)」という言葉のほうが一般的でした。
この時代、RVと呼ばれていたモデルの多くは、オフロード志向の強いものが中心。例えば三菱 パジェロや日産 テラノなどがそれに当たります。いずれもそれなりに高額で、若者が買うには少し敷居が高いものだったのです。ところが90年代に入ると、乗用車(セダンやワゴン)をベースとしたカジュアルなRVがあちこちに登場。三菱 RVR(1991)やトヨタ RAV4(1994年)などはその代表例で、100万円台の低予算から買える身近なモデルとしてじわじわと人気が増していったのです。

そんな元祖RVブームに乗るかたちで、1997年2月に誕生したのがスバル フォレスター。初代インプレッサをベースとしつつ、200mmの最低地上高で悪路走破性を高めたのが特徴でした。とはいえ、全長4450mm、全幅1735mm、全高1580mmのサイズは大きすぎず、SUVとしては低い全高のおかげでセダンやステーションワゴンとほぼ同じ感覚で運転できたことも好評に。また、スバル得意の4WDや低重心で定評のあった水平対向4気筒もフォレスターのキャラクターにマッチし、セダンやワゴンでは飽き足らないアウトドア志向のユーザーから大いに注目されたのです。
走る、曲がる、止まるという基本性能を磨き上げた2代目

2000年代に入ると、クルマは燃費や快適性、実用性など多くの性能が求められていきました。ファミリーカーの中心がセダンやステーションワゴンからミニバンやSUVに移り、ユーザーのライフスタイルに合わせた多様なクルマが登場。そんな背景のなか、2002年2月に登場した2代目フォレスターは、走る、曲がる、止まるという基本性能を追求したSUVとしてデビューしました。この時代はミニバンの世界でも低車高なクルマがプチブームでしたが、フォレスターも初代と同じく低車高なパッケージングが特徴で、全高は1585mmとSUVのなかでは低車高。スポーツワゴン顔負けの走りっぷりはライバルの追従を許しませんでした。

パワートレインは初代と同じく2.0L 水平対向4気筒を搭載し、自然吸気とターボを設定。2002年10月には、全高を1550mmに抑えて機械式立体駐車場にも対応させた「クロススポーツ」もデビュー。さらに2004年2月、2.5Lターボ+6速MTを搭載した高性能モデル「STiバージョン」も登場しています。今でこそ高性能を売りとするSUVは珍しくありませんが、当時はまだまだ珍しい存在。時代を先取りした「走りのSUV」として、STiバッジのフォレスターはファンから大いに注目されました。
コンセプトを一新!正統派SUVとして生まれ変わった3代目

安倍首相が辞任し福田内閣が発足した2007年、スバル フォレスターがフルモデルチェンジを受けました。この時期はミニバンブームもひと段落し、所有欲を満たしてくれる上質なSUVやスポーツカーに再び注目が集まった頃。日産 GT-Rや三菱 ランサーエボリューションの新型モデルが発表されたことでも話題となった年です。新型フォレスターは低車高のスポーティ路線から一転、迫力ある大きなボディが与えられました。これはもちろん、北米市場でのニーズを強く意識してのこと。全長4560mm、全幅1780mm、全高1675mmとなり、特に車高は95mmも高くなったのです。

発売当初のパワートレインは従来から定評のあるEJ20型の2.0L 水平対向4気筒(自然吸気およびターボ)を継続投入。駆動方式もスバル自慢のシンメトリカルAWDのみとなり、その走りは従来から衰えることはありませんでした。2010年には新世代BOXERエンジン「FB20」をフォレスターに搭載。21年ぶりの新設計となるこのエンジンは、ロングストローク化することで優れた燃費性能と爽快な加速を実現したのが見どころ。以降、スバルの主力エンジンとなりました。また広い室内空間を確保したことで、マニア層から一般ユーザーまで幅広く訴求し、以降のフォレスターの礎となったのです。
「アイサイト」を搭載し、安全性を高めた4代目

2000年代後半になると、自動車業界のトレンドは「エコカー」と「プリクラッシュセーフティ」という言葉がクローズアップされていきました。少し前にエコカー減税制度が始まったほか、衝突被害軽減ブレーキを搭載したクルマもこの時期から目立つように。そんななか、2008年5月にスバルはレガシィシリーズに「アイサイト」を導入。その後も「ぶつからないクルマ」として各モデルで展開されていき、2012年11月にフルモデルチェンジを受けた4代目フォレスターには、さらに進化した「アイサイト(ver.2)」が導入されました。以前のスバルといえばスポーティなイメージが強かったのですが、この時代になると安全=スバルという認識が一般ユーザーに広がっていったのです。

一方エクステリアは、先代と同じくSUVらしいタフなデザインが与えられました。ボディサイズも先代とほぼ同じ大きさに留まり、ゆとりある室内はそのままに、ソフト素材を用いることで上質さも追求。日産 エクストレイルやトヨタ RAV4のようなライバルにも負けない実用性や品質を身につけ、発売後は月販目標の4倍を超える受注で好調なスタートを切ることに。メカニズムは、2.0L 水平対向4気筒の搭載はそのままに、AWDに新制御システム「X-MODE」を採用したことで、オンオフ問わない快適な走りを実現したのも見どころ。安全性や走りは国内外で高く評価され、スバルへの信頼は一層高まっていきました。
新世代プラットフォームで基本性能が高められた5代目

2010年代半ばになると空前絶後のSUVブームが到来。セダンやワゴンは下火になり、大小さまざまなSUVが登場していきます。フォレスターで実績のあるスバルとしても、次期型で失敗するわけにいきません。そんななか、2018年6月にフルモデルチェンジを受けて5代目フォレスターが登場しました。インプレッサに導入された新世代の「スバル・グローバル・プラットフォーム」を採用し、クラストップレベルの快適性や安全性を実現。エクステリアは奇をてらわず、先代をブラッシュアップしたかのようなデザインでまとめられました。

パワートレインは、排気量を2.5Lに拡大することでパワフルな加速を実現。これに加え、2.0Lエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドモデル「e-BOXER」の設定も話題に。これにより、WLTCモード燃費14.0km/Lという低燃費を実現したのです。そのほか、スバル初の乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」や歩行者エアバッグなど、先進の安全装備もしっかり盛り込むことで、激戦区となったSUV市場でも競争力のあるモデルとして人気を博しました。
スバルのグローバル販売の中核を担う次世代フォレスター

低車高のスポーティなSUVから始まったフォレスターですが、時代のニーズに合わせて進化を遂げ、今ではグローバル市場での中核を担う正統派SUVにまで成長しました。2025年4月に発表された6代目は、ボディサイズがひとまわり大きくなり、室内は広く豪華に。パワートレインは1.8Lターボと2.5Lハイブリッドを設定し、特に後者はWLTCモード燃費18.8km/Lを達成。また、ドライバーアシストを充実した「アイサイトX」の導入やサイクリストに対応した歩行者保護エアバッグの導入など、走り、環境性能、安全性の全方位で大きく進化しています。初代の登場から28年が経った今、フォレスターの存在はスバルにとってなくてはならないものになりました。今後の展開にも大いに期待できそうです。
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ライタープロフィール
1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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