車の歴史
更新日:2019.11.29 / 掲載日:2019.11.29
DATSUN 70 BLUEBIRD 1800 SSS(H510)【1】

国内においてコロナとの販売台数争いが激化した1960年代半ば。豪華な装備で売るコロナに対して、日産は最新技術を詰め込んだ三代目ブルーバードで勝負に出た。エンジンには新開発のL型4気筒を搭載し、足回りはリヤに日産初のセミトレーリングアームを採用した4輪独立サスペンションを採用。技術の日産らしいパッケージングは当時のクルマ好きから支持され、BC戦争を圧勝。そんな510ブルーバードが今回のお題となる。
驚くべきは車幅 現行マーチよりもタイト

先代の410からサイズアップを果たし中級モデルにシフトした510。イメージとしては大きくもなく、だからといって小さ過ぎもしないサイズ感だが、肥大化した現行車と数値で比較すると、驚くほど小さいということが判明した。特に驚かされるのは車幅で、現行マーチの全幅が1665mmなのに対し、510は1560mm。100mm以上も幅が狭いのである。現行の軽自動車の全幅は1480mm以下となるので、現行マーチよりもむしろ軽自動車に近い車幅となる。
全幅:1560mm、後輪幅:1280mm
全高:1420mm、前輪幅:1270mm

全長:4095mm、輪間長:2420mm
実用性の高いセダンながら高い走行性能を有する

510ブルーバードが誕生したのは1967年。今から半世紀以上も昔の52年前のことだ。元々ブルーバードは日産の小型車、大衆車として登場したのだが、510ブルーバードがデビューする前年となる1966年にB10型サニーが登場したこともあり、大衆車としての役割をサニーに譲り、ひとつ上のクラスにステップアップを果たしている。
当時、宿命のライバルであるコロナと熾烈な販売合戦を行っていたが、両者のアプローチは異なっている。コロナはオーソドックスな車両造りで、豪華な装備などを売りにしていたことに対し、510ブルーバードは最新のメカニズムを多数投入。その最たるは、リヤがリジッドアクスルのコロナに対し、510ブルーバードはセミトレーリングアームを採用した四輪独立懸架を採用。別次元ともいえる乗り心地のよさはもちろん、走行性能の高さも武器となり、さらにブルーバードが販売台数でコロナを圧倒することとなった。
そんな性能の高さはモータースポーツの世界での活躍にも繋がる。特にラリーでの活躍が華々しく、メキシカン1000マイルラリー(世界的にも有名なラリーのひとつであるバハ1000)で総合4位に入賞したのをかわきりに、第18回東アフリカサファリラリーで、総合優勝を遂げたのは、多くの旧車ファンが知る事実のひとつだ。
このような海外ラリーでの活躍は、日本国内だけではなく、海外への輸出台数の増加にも貢献している。特に北米では510ブルーバードは数多く販売され、現在でも多くの愛好家が存在する。そんな北米ではラリーだけではなく、サーキットでも活躍していた。北米のレーシングコンストラクターであるBREは、トリコロールカラーにペイントしたレーシングカーを率いて多くのレースに参戦している。
これらモータースポーツの活躍に憧れて多くの510ブルーバード・ファンが生まれた。走りのよさと合わせて、そんなモータースポーツでの活躍を熱く語る人が多い。実用性が求められたセダンでいながら高性能な走りを楽しめることも魅力なのだ。
ヘッドライトは規格丸レンズの4灯式。外側がHi / Loで点灯し、内側はHiビーム時に点灯する。オリジナルは凸面タイプのシールドビームを採用。この車両もオリジナルを保っている。
メッキタイプのバンパーにはオーバーライダーが備わる。ゴム製のオーバーライダー故に、表面が劣化し取り外してしまっている車両も多いが、この510は状態のいいままのオーバーライダーが装着されている。
510は1967年のデビューから2回リヤコンビネーションランプを変更しているが、2回目の変更時、つまり最終型のテールランプがこれ。ガーニッシュは1800SSSと1800GLにのみ装着される。
510の特徴的なボディラインがスーパーソニックライン。その最前部にはウエッジシェイプのウインカーレンズが備わり、その直後にブルーバードのエンブレムを配している。
510の現役当時、セダンに装着されるバックミラーは平板なタイプが一般的だったが、スーパー・スポーツ・セダンを自負する510はミラーも砲弾形を途中から採用し、スポーツ感をより高めている。
510デビュー時のワイパーは両サイドに開く、いわゆる対向式を採用していたが、1967年のマイナーチェンジで現在主流となる平行式に移行している。アーム類はシルバーなのもこの時代らしい配色だ。
Cピラーの付け根の部分には、エア抜きダクトの装飾が備わる。SSSモデルの場合、側面から見た際でもSSSを認識させるべく、その部分にもSSSのエンブレムが装着される。
ボディサイドを引き締める彫りの深いプレスラインがスーパーソニックラインだ。後方にくるにつれ広がる直線的なラインは、510のボディデザインの最大の特徴といえる造形となる。
シンプルな造形に見える510だが、たとえばトランクリッドとリヤフェンダーなどにフォーカスすると、いくつもの面が組み合わさった緻密なデザインだと認識させられる。
510ボディの泣き所がステップ部

半世紀も前のクルマなので袋状の部分はどこも錆が発生しやすいが、特にサイドステップのリヤホイールアーチ側が錆びやすいという。これだけコンディションのよい石川さんの1800SSSも写真の部分に錆が発生していたそうだ。がれぇじアルティアにて錆を完全に除去した後、オリジナルのサファリブラウンでペイントするという部分補修を施したので、現在では美しい状態に戻っている。