車の歴史
更新日:2020.02.05 / 掲載日:2020.02.05
TOYOTA ALTEZZA (SXE-10) 【1】

まだハイパワーこそ正義だった20世紀末、パワーによる速さだけでない、乗り味を重視したセダンをトヨタは世に送り出す。北米ではレクサスISとして販売されるDセグメントの車体に80年代から長年熟成され続けてきたトヨタのスポーツエンジン3S-Gと6MTを組み合わせたアルテッツァがそれだ。そんなアルテッツァもデビューしてなんと丸々20年が経過。意外や2LNAのFRスポーツセダンというコンセプトは、当時の日本車の中では唯一無二の存在であり、令和を迎えた今、密かにその価値が見直されてきたようだ。
ALTEZZA (SXE-10) DATA FILE

さすがはトヨタ車というべきか、デビューから20年以上が経過した現在でも、まだまだ多くの中古車が流通している。その7割は3S-GEを搭載するRS200が占め、そのうちの8割強が6MTと走りを楽しみたい人には狙い目のモデル。それでいて中古車相場は、現在のところ非常にこなれていて手を出しやすい価格帯だ。ただし昨今価格が上がってきているそうで、購入を考えているなら早めのほうがいいだろう。
RS2000 (SXE-10) の入手難易度&購入予算は?
◎入手難易度:易★☆☆☆☆難
◎中古車相場:90万~400万円
SPEC
RS200(前期 Zエディション)●全長×全幅×全高:4400×1720×1410mm●車両重量:1360kg●エンジン:3S-GE型水冷直列4気筒DOHC ●排気量:1998cc ●最高出力:210PS/7600rpm●最大トルク:22.0kg-m/6400rpm●サスペンション形式:ダブルウィッシュボーン●ブレーキ:Vディスク / ディスク●タイヤサイズ:215/45ZR17
AS200(前期)●全長×全幅×全高:4400×1720×1410mm●車両重量:1310kg●エンジン:1G-FE型水冷直列6気筒DOHC●排気量:1988cc ●最高出力:160PS/6200rpm●最大トルク:20.4kg-m/4400rpm●サスペンション形式:ダブルウィッシュボーン●ブレーキ:Vディスク / ディスク●タイヤサイズ:195/65R15
FRの楽しさを味わえるミドルスポーツセダン
1990年代、日本で流行った4気筒エンジンを搭載するスポーツセダンといえばインプレッサ、ランサーエボリューションといった4WDモデルや、プリメーラ、シビックフェリオといったFFモデル。FFや4WDという駆動方式が熟成されたことで、日本車のスポーツセダンカテゴリーではFRが劣勢となっていた。 そんなご時世だったわけだが、1998年末にトヨタがNAの4気筒2Lエンジンを搭載するFRのスポーツセダンを登場させた。それがアルテッツァだ。
北米ではレクサスISとしてデリバリーされたボディに、80年代からトヨタの2LスポーツエンジンとしてWRCやGT選手権などで活躍してきた3S-GEエンジンが搭載され、6速MTを組み合わせたアルテッツァは、当時多くの走り好きから注目された。NAエンジンならではのナチュラルな特性のエンジンと、やはりナチュラルなドライブフィールとなるFRの組み合わせは、絶対的なパワーこそないものの、走る楽しさをドライバーに与えてくれた。
ちなみに3S-GEを搭載するRS200の他直列6気筒の1G-FE(2L)搭載のAS200、2JZ-GE(3L)を搭載するステーションワゴンタイプのジータといったバリエーションもあるが、ここではホットモデルであるRS200のさらには6MTに絞ってレポートする。デビューから20年以上が経過したアルテッツァを楽しむにはどんなメンテナンスが必要となるのか?
エンジン本体に致命的なダメージは皆無。 不調の場合はまずは補機類を疑え!

定番トラブルはパワステと可変バルタイの制御部
アルテッツァだけに特化した専門店が、トヨタのお膝元となる愛知県瀬戸市に存在する。エスワンがそれだ。代表の齋藤さんはなんとトヨタ自動車のテストドライバーを育成する部署にて教壇に立っていたという経歴の持ち主。その当時の教習車がアルテッツァだったそうで、アルテッツァのドライビングはもちろん、メカニズムに至るまで多大なるノウハウをお持ちだという。そんな齋藤さんに現在行うべきアルテッツァのメンテナンスについてお話を伺った。 「デビューから21年目を迎えましたが、今でも普通に乗れる車体が多いです。とはいえトラブルがないわけではありません。アルテッツァにも定番となるトラブルは存在します」
その定番トラブルとは、どういった部分の不具合なのだろうか? 「エンジンルーム内なら、最も多いのがパワーステアリングの油圧系統からのフルード漏れ。このトラブルが発生した場合、一般的な修理工場ではポンプの交換となることが一般的ですが、原因は別の部分にあることがほとんどだったりします。具体的にはリザーバータンク内とフルードクーラー内での経路の詰まり。これをしっかり直さないと、パワステからのフルード漏れはまず完治しません。
その他にはスロットルまわりやVVT-iの可変バルタイの制御などにもトラブルが発生しやすいですが、それ以外は特に目立ったトラブルは少ないですね」
エンジン 80年代生まれの熟成直4エンジンは基幹部に関していえばトラブル皆無
排気側オイルコントロールバルブが不動になること多し
アルテッツァに搭載されるエンジンは長年にわたり改良されてきた3S-GE型。そのアルテッツァ用3S-GEの最たる特徴が吸排気両側のバルブタイミングを可変制御するVVT-iとなる。
その排気側バルブタイミングを調整するオイルコントロールバルブに不具合が発生してしまい、可変しないままとなるトラブルを患っている車両が多いそうだ。
オイル漏れはカムカバーとクランク後端シール
アルテッツァに搭載される3S-GEの定番オイル漏れ箇所は、カムカバーとシリンダーヘッドの合わせ目と、クランク後端(ミッション側)のオイルシールの2か所。
それ以外、エンジン本体からのオイル漏れは、現在のところほぼないと考えていいようだ。
ダイレクトイグニッションの トラブルが目立ってきた
スロットルVVT-iにトラブルがなく、それでも不調という場合は、点火コイルを疑ってみてもいいかもしれない。ダイレクトイグニッションは消耗部品ともいえるので、20年が経過した現在であれば不具合がなくても
油圧計が動かない場合は 油圧センサーのトラブル
油圧計の動きがおかしくなったり、不動になった場合は油圧センサーのトラブル。意外や多く発生しているとのこと。油圧センサーはエンジン下部。オイルフィルターの隣に設置されていて、DIYでの交換もやりやすい。
数少ない定番トラブル発生箇所。複雑なメカニズムのスロットル
スロットルはフライバイワイヤー式だが、現在の構造とは異なり、スロットルバルブまでアクセルワイヤーが伸びスロットルバルブユニット内で電気信号化され、実際のスロットルをモーターで駆動する。
そのスロットルバルブまわりはトラブルが発生しやすい部分。
トラブルはアクセルワイヤーレバー部、それから電スロ側のスロットルセンサーの不具合の他、スロットルバルブが汚れで完全に閉じないといったトラブルも発生している。
エアフロの汚れによる エンジン不調も 発生している
エアクリーナーボックスとユニット化されているエアフローセンサー。これも汚れによりエンジンが不調に陥りやすいので、定期的なクリーニングを行う必要があるという。スロットルバルブの清掃とセットで作業しよう。
冷却水路、特にホースからの 水漏れが目立ってきた
水回りは、昨今さすがに経年劣化が進んできたようで、冷却水ホースから水漏れを起こす事象が珍しくないという。特にラジエーターのアッパーホースは要注意。
ホースに破損がない場合でも、ラジエーターとの接合部付近からの冷却水漏れが多発している。ラジエーターシュラウドと一体となるリザーブタンクも水漏れ多発ポイントとなる。
リザーブタンクは指で示しているあたりで前後の部品が溶着しているような構造なのだが、この部分から冷却水が漏れていることが多いという。漏れ出す前に交換しておきたい。
症例は少ないがECUカプラー部に オイルが溜まる珍トラブル
アルテッツァのECUはエンジンルームの助手席側前方に位置するが、このカプラー部にオイルが溜まっていたというトラブルがごくまれにあるという。
このオイルは、なんと漏れたパワステフルードが、ハーネスを伝ってカプラーの先端にまで浸入してきているようだ。
パワステの油圧計路からの オイル漏れ多発。 その原因は?
パワーステアリングのフルード漏れはアルテッツァの定番トラブル。
その原因はリザーブタンク内、それからフルードクーラー内の詰まりでタンクのキャップからフルードが漏れる。
フルードクーラーへのジョイントホースが破裂して漏れている場合もあり。