車の歴史
更新日:2022.05.09 / 掲載日:2022.04.30
【ホンダ ステップワゴン特集】買うべき中古車がわかる改良変遷を詳しく【初代から新型まで】

文●大音安弘 写真●ホンダ
ホンダのファミリーミニバン「ステップワゴン」が今春フルモデルチェンジを迎え、第6世代へと進化する。5ナンバーサイズをベースとした扱いやすいサイズと広々キャビン、ホンダらしい走りの良さを武器に、日本で愛されて続けてきたステップワゴンの歴史を振り返る。
RVブーム真っただ中にあった90年代に、SUVやミニバンを持たないホンダは、販売で苦戦を強いられた。その危機を打破すべく、投入されたのが、初代オデッセイからスタートしたクリエイティブムーバーシリーズである。第2弾となるコンパクトクロスオーバーSUV「CR-V」に続き、送り出されたのが、コンパクトミニバン「ステップワゴン」である。
初代:47万台ものヒット作となった「楽しい移動空間」

1996年5月8日に発表された初代ステップワゴンは、取り回しに優れる5ナンバーのボディサイズをフル活用したスタイルが特徴だ。このため、デビュー前のスクープ記事では、ホンダの新しい商用バンという誤報を生んだほど。しかし、その形状は広い車内空間を生み出し、3列仕様で最大8名乗車を実現。シートレイアウトにも工夫があり、楽しい移動時間を過ごせる回転機構付きの対面シートも採用。さらに、3列目だけでなく、2列目シートも、折り畳み機構を設けることで、ラゲッジスペースの最大化に加え、広い足元空間によるリムジン風シートアレンジや前席フルフラット化による車中泊モードなど、様々な使い方を可能としていた。パワートレインは、2.0L直列4気筒DOHCエンジンと4速ATに一本化。前輪駆動を基本とするが、デュアルポンプ式の4WDも選択可能。グレード構成もシンプルに上位から「W」「N」「G」に限定。これは車名の「STEP WGN」から着想を得た洒落っ気であった。手頃な価格と抜群の機能性で、ステップワゴンは、47万台もの大ヒットとなったことで、その後も進化を続け、独自の世界観を作り上げていく。
2代目:5ナンバーサイズをキープしながら完成度を高めた

大ヒットなった初代に続く2代目は、2001年4月5日に発表。デザインは、よりモダナイズされたが、初代のイメージを受け継ぐキープコンセプトであった。強みの5ナンバーサイズを維持しながらも、室内空間をより拡大。乗降性を高めるべく、ステップをより低くするなど、より使い勝手の良いミニバンが目指されていた。グレード名称には、上から「K」、「I」、「D」、「Y」となっていたが、これは乗員の主役ともいえる子供を意味する「KID」を取り入れた遊び心であった。パワートレインは、i-VTECを採用した2.0L直列4気筒DOHCエンジンと新開発4速ATを基本とするが、2003年6月のマイナーチェンジでは、フェイスリストを実施し、凛々しい顔つきに。さらにパワフルな2.4L直列4気筒DOHC i-VTECエンジンと5速ATを組み合わせた仕様を追加し、ステップワゴンの歴史に欠かせない存在となるエアロカスタムモデル「スパーダ」も投入された。
3代目:現在につながる王道ミニバンの機能をすべて備えた意欲作

3代目は、2005年5月26日にフルモデルチェンジ。現在のミニバンの王道となる機能を全て採用した次世代ステップワゴンへと大幅に発展したのが特徴だ。低床低重心プラットフォームにより、室内高を保ったまま、従来比60mmの低床化と75mmの低全高化を実現。より重心が抑えられたことで、走りの良さにも磨きがかけられていた。その姿勢を示すべく、フロントマスクも低い位置に配置され、エクステリアデザインもスポーティさや軽快さを意識した若々しいものに。2.0L直列4気筒DOHC i-VTECと4速ATを基本とするが、2.4L直列4気筒DOHC i-VTECも継続され、FF車のトランスミッションに高効率とスポーティな走りを生むCVTとなった。スポーティさを意識したステップワゴンであったが、意外にも「スパーダ」の投入は、2007年11月と中期からに。但し、エアロパーツだけでなく、パドルシフトや16インチアルミホイール、専用チューニングサスペンションも奢られるなど、開発陣の意気込みを感じさせる仕様となっていた。
4代目:クラス最大級の室内空間を備え、スタイルも威風堂々としたものに

2009年10月9日に発表された4代目は、クラス最大の室内空間を武器に登場。再びスタイリングは、初代や2代目を彷彿させるボクシーなものに仕上げられていたが、低床低重心パッケージを意識させる広いガラスエリアが与えられていた。4代目では、標準車と共にカスタム仕様の「スパーダ」が同時デビューとなり、これよりエクステリアが異なる2本柱のモデルラインが基本となった。パワートレインは、再び、2.0L直列4気筒DOHC i-VTECに。トランスミッションは、FF車がトルクコンバーター付きCVT、4WD車が5速ATに統一された。電子制御スロットルやCVTの採用などで、当時クラストップのFF車14.2km/L(10・15モード)を実現させていた。機能面では、ラゲッジスペースの使い勝手を向上させるべく、クラス初の3列目床下格納シートを採用していた。2012年4月にFF車が先行してマイナーチェンジを実施。CVTを新開発のものに変更し、アイドリングストップ機構を搭載。クラストップとなる15.0㎞/L(JC08モード)の低燃費化を実現。4WD車も、同年5月にマイナーチェンジを行い、トランスミッションが5速ATからCVTへと変更され、アイドリングストップ機構を搭載。こちらは、同年4月より施行された新エコカー減税に対応するためのもので、全タイプが75%減税に適合していた。
5代目:使い勝手に優れる「わくわくゲート」や先進安全装備「ホンダセンシング」を採用

2015年4月23日に発表された現行型は、ホンダらしい新技術と機能が満載のチャレンジングなステップワゴンとなった。その最大のポイントが、国産ミニバン初のダウンサイズターボエンジンの搭載とヒンジドア付きのテールゲート「わくわくゲート」の採用だ。ライバルが電動化を突き進める中、効率の徹底追及から、ホンダ初の直噴1.5L直列4気筒DOHC VTECターボエンジンと搭載。最高出力150ps/最大トルク203Nmと2.4Lエンジン並みの性能を実現しながらも、燃費も当時クラストップの17.0km/L(JC08モード)を実現していた。1.5L車なので、自動車税がコンパクトカー並みとなるのも強み。そして、ユニークなバックドア「わくわくゲート」は、跳ね上げ式テールゲートが使いにくい狭いスペースや小柄な人や子供でも安全で簡単にテールゲートを開くことが出来るようにした2WAYのオープン機構を備えたもの。さらに床下収納可能な3列目シートを楽々と操作できるようにしたことで、テールゲートからの乗員の乗降も実現していた。ボディスタイルは、先代同様に、大人しい顔つきの「標準車」とエアロカスタム車の「スパーダ」の2本立てに。やはりスパーダでは走りを重視した専用サスペンションが与えられた。急速に進化が進む安全装備では、先進の安全運転支援機能パッケージ「ホンダセンシング」が全車でオプション化されたのも大きなトピックであった。充実の安全機能が多くのユーザーに支持されたホンダセンシングは、特別仕様車への標準化を皮切りに、2016年5月の一部改良では、エントリーグレードを除き、全車に標準化を実現。最終的には全車標準となり、先進安全機能の普及拡大に貢献した。

モデルの熟成の共に新提案のグレードが次々と誕生したのも現行型の魅力のひとつ。その第一弾となるのが、2016年10月に登場したホンダ純正コンプリートカー「モデューロX」である。これはスパーダをベースに、専用内外装によるスポーティさと質感の向上に加え、専用サスペンションとエアロパーツによる走りのブラッシュアップが図られていた。その価値は、ホンダらしいスポーティなミニバンの実現である。また様々な専用パーツを備えながらも、それらを生産ライン上で組み込むことで価格上昇を抑えているのも強みであった。
1.5Lターボによる高い経済性とシーンを選ばぬ力強い走りを武器とした新ステップワゴンであったが、購買層となるファミリーのママ達には、ターボの魅力が伝わらず、思わぬ苦戦を強いられることに……。そこでハイブリッド車の投入が検討された。しかしながら、既存のハイブリッドシステムを搭載するには、大幅な改良とコスト増は必須。そこでホンダは、ハイブリッド車を単なるエコカーではなく、走りと燃費を両立だけでなく、よりプレミアムなステップワゴンの構築を決断した。それが2017年9月のビッグマイナーチェンジで登場した「ステップワゴン スパーダ ハイブリッド」だ。このマイナーチェンジで、スパーダは、ノーズが高い専用フロントマスクに変更されているが、これはイメチェンだけでなく、ハイブリッドパワートレインをステップワゴンに収めるための秘策でもあった。新搭載となるハイブリッドシステムは、高性能版となる2モーター式「SPORT HYBRID i-MMD」で、184ps/315Nmの走行用電気モーターと145ps/175Nmの2.0L直列4気筒エンジンの二つのパワーユニットを備えているのが特徴。このシステムは、シリーズパラレル方式のハイブリッドとなるが、基本的には電気モーターのみで走行し、エンジンは発電がメイン。但し、高速巡行などエンジン走行の方が高効率となるシーンでは、エンジン走行を行う仕組みである。因みに、現在のホンダの主力ハイブリッドシステム「e:HEV」と全く同じ仕様である。電気モーターによる大幅なトルクアップと駆動用リチウムイオンバッテリーを保護するために車体を強化したことで、走りの質感は大幅に向上し、ミニバンユーザーを驚かせた。さらに燃費は、25.0km/L(JC08モード)と、1.5Lターボを大幅に凌ぐもので、家庭の大蔵大臣であるママたちも納得の経済性を誇った。後に、スパーダ ハイブリッドベースとした「モデューロX」も追加。これにより上質かつスポーティな走りに加え、高い経済性まで備えた歴代ステップワゴンの最高潮が誕生することになる。

2020年1月の一部改良では、ハイブリッドシステムの名称を「e:HEV」に変更。モデルラインも人気のスパーダ中心のラインアップに整理された。しかし、2017年9月のビッグマイナーチェンジで大幅なテコ入れが図られていたため、装備や機能の改良は限定的であった。
まとめ
既に5代目となる現行型の製造は終了しており、2022年5月26日、6代目となる新型ステップワゴンが登場の予定だ。新型も現行型同様に、標準車「AIR」とエアロカスタム車「スパーダ」の2本立てで、それぞれにガソリンエンジン車とハイブリッド「e:HEV」車が用意されることが予告されている。またスパーダには、上級仕様の「プレミアムライン」が登場するなど、新たな提案もあるようだ。グランドコンセプトに「#素敵な暮らし」を掲げることから、歴代ステップワゴンが大切にしてきた家族や仲間との楽しい移動時間を過ごせる一台であることは間違いない。今から、新型の登場が待ち遠しいばかりだ。