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更新日:2023.03.06 / 掲載日:2023.03.06
【ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京】誰もがポルシェの最新技術を体験できる施設

文●石井昌道 写真●ポルシェ
ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京:https://porsche-experiencecenter-tokyo.jp/
2021年10月に千葉県木更津市に開設されたポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)は、世界で9番目となるポルシェのスポーツドライビングおよびブランド体験施設。ポルシェ・オーナー専用ではなく、誰でもがポルシェの最新テクノロジーを体験することができる。
今回は基本となるドライビングエクスペリエンスに参加。PEC東京に用意されたポルシェ車を借りて、2.1kmのトラックと5つのドライビングモジュールを90分間走行。マンツーマンでドライビングコーチのアドバイスを受けられるというものだ。
車両は718ケイマン/ボクスター、911、パナメーラ、タイカン、マカン、カイエンの複数グレードのなかから選択可能だが、今回は911GTSをチョイスした。滑りやすい路面なども用意されているので、せっかくならポルシェのコアである911のRRモデル、そのなかでも十分な速さがあり、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネージメント)やPDCC(ポルシェ)、リアアクスルステアリングなど、試してみたい最新テクノロジーが装着されていたからだ。

2.1kmのトラックは縁石もあってサーキットのようだが、あくまでポルシェの体験やドライバー育成のためのものであり、タイムアタックのような走りはしないことになっている。イメージ的にはポテンシャルの6~7割程度で走らせるのだが、それでも日本の公道ではとても試すことのできない領域だ。著名なサーキット・デザイナーのヘルマン・ティルケ氏の手になるトラックは元の地形をいかしてアップダウンが多く(PECのなかで高低差がもっとも大きい)、先が見通せないブラインドコーナー、変化に富んだカントなどで走りがいがある。ニュルブルクリンクのカルーセルやラグナセカのコークスクリューを模したコーナーなどもあって飽きがこない。
難易度の高いコースでもあるが、ブレーキングポイントやクリッピングポイントにはカラーコーンが置かれ、助手席にはドライビングコーチがいるから安心だ。適切な走行ラインや視線移動などをアドバイスしてくれる。

興味深かったのはドライブモードを切り替えて、走りの変化を体験できたことだ。ノーマルからスポーツ+へ切り替えれば、まずエンジンのレスポンスが高まり、シフトチェンジも素早くなる。これらパワートレーンの変化は公道でもわかりやすいが、シャシー系はそれなりの速度と負荷があるトラック走行だからこそ体感できるものだ。サスペンションが引き締まるだけではなく、スポーツクロノパッケージだからエンジンマウントもハードになる。911GTSはノーマルでも十二分にスポーティだったが、スポーツ+にすると余計な動きがなくなり、回頭性も鋭くなってさらにスポーティ。一体感が大いに高まるのだ。

トラックのほか、広いエリアで全開加速(ローンチコントロールも使用可能)やフルブレーキ、パイロンスラロームなどを試せるダイナミックエリア、水が撒かれた円周コースでアンダーステアやオーバーステアの体験およびドリフトコントロールが学べるドリフトサークル、後輪が通過するときに床が動いて強制的にオーバーステア状態にされるキックプレート、ポリッシュ仕上げのコンクリート路面でドライでも滑りやすいローフリクション・ハンドリング・トラックなどを走行した。
なかでも楽しかったのはドリフトサークル。RRの911でドリフトをキープするのは難しいが、コツを掴めば綺麗に数周はできるようになり、安全にスキル向上させるのに持ってこい。一番人気のモジュールであるのも頷ける。クルクルと回って遊ぶだけではなく、PSM(ポルシェスタビリティマネージメントシステム)などの有用性を確認するのにも適している。992から採用されたウエットモードがかなり賢いことも体験できた。
90分の間にトラックやモジュールなど好きなところで走行可能。人気のあるモジュールでは待つこともあったが、それでも想像以上にたっぷりと走り込めた。サーキット走行などに慣れていない人だと途中で休憩が必要なぐらいのボリュームだ。
費用は、718ならスタンダードモデルの4万7000円からGT4RSの9万1000円まで。911ならスタンダードモデルの6万4000円からGT3の10万9500円まで。
面白そうなのは45分づつ2台に乗れるミックスプログラムで、ミドシップVS RR、RR VS 4WD、エンジン車VS 電気自動車などの組み合わせで乗り比べるができるのだ。
さらにドライビングスキルを上げたいという人には4時間のアクセラレートプログラムが用意され、ポルシェ・トラックプレシジョンアプリによって走行データをとり、ドライビングコーチと解析しながら走りを磨いていくこともできる。
また、2023年4月1日からはポルシェオーナーエクスペリエンスが始まる。自分のポルシェでPEC東京を走りたいという要望に応えたもので、1990年以降のポルシェ車ならば90分コースに、1989年以前のポルシェ車は30分の走行とディーナーが組み合わされるクラシック向けのコースがある。
PEC東京内には、カフェやレストラン、オフィシャルアイテムショップ、シミュレーターラボなども併設されているので、走行しない人でも気軽に立ち寄ることができる。定期的に入れ替わる展示車両を眺めてお茶を飲むだけでもいいのだ。

ユニークなのはPEC東京につながる国道125号線の一部が「ポルシェ通り(Porsche Strasse)」と名付けられ、標識も掲げられていることだ。地元と友好的な関係を築いていて、環境保護や地域連携を深める活動を推進。木更津市のふるさと納税などでも貢献しているという。今後は“ポルシェの街、木更津”というイメージが強くなっていきそうだ。