輸入車
更新日:2023.11.04 / 掲載日:2023.11.04
フィアット パンダ イタリアの巨匠が生んだ傑作小型車の歴史
フィアット パンダ|語り継がれる名車の系譜 vol.35|
文●ユニット・コンパス 写真●フィアット
※中古車参考価格はすべてグーネット2023年10月調べ。
※写真は一部本国仕様の場合があります。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2023年12月号の内容です)
安価な小型車であるにも関わらず、世界中にファンを持つフィアット パンダを生み出したのは、カーデザイナーの巨匠だった。
シンプルだからこそ愛らしい、イタリアの傑作小型車
ジウジアーロの思想は今もなお受け継がれる
イタリアの子供たちに将来の夢を聞くと、スポーツ選手などに混じってデザイナーが上位に入るのだという。さすがおしゃれの国イタリアだ。そんな国がコンパクトカーを作ると、実用性があるのに、思わず欲しくなってしまう愛らしいものになる。そう、フィアットを代表する大衆車パンダのことだ。
ジョルジェット・ジウジアーロは、ゴルフやデロリアンなど数々の名車を手がけたカーデザインの巨匠。そんな彼が手がけたのが1980年に登場した初代パンダだった。
ジウジアーロはインタビューで自らのデザインコンセプトについて、機能性、プロポーション、実用性、汎用性が統合されていることと語っている。そして、初代パンダはもっとも成功したプロジェクトのひとつだと語っているのだ。
つくりはできる限りシンプルに、小さな車体に広い空間をもたらすべく、内装の鉄板を外装色で塗装することで内張りを最小限に抑えるなどのアイデアを盛り込んだ。こうしたジウジアーロのこだわりが、パンダをただの経済的な安物ではなく、時を超えて愛される名車に昇華させた。
最小限のスペースに最大の空間を創造するというジウジアーロのコンセプトは、2代目、現在の3代目のへと受け継がれた。そしてそれが正しかったことは、モデルライフの驚異的な長さが裏付けているのだ。
フィアット パンダはこんなクルマ
コンパクトでありながら、全高を高く取るパッケージングを採用することで、空間効率を高めた小型車。流行のコンパクトSUVに近い使い勝手を10年以上前に実現させていた。
イタリアのクルマらしく、細部にまでこだわったデザイン。日本仕様には5インチのディスプレイオーディオを搭載。
ポップで質の高いファブリックシートを備える。背が高いこともあって、大人が座っても室内にゆとりがある。
エンジンは85馬力のツインエアターボで、トランスミッションはセミオートマチックのデュアロジックを採用している。
[フィアット パンダが名車になった理由]小型車を愛するイタリア国民の心を掴んだ
空間効率に優れ質実剛健な「素朴なコンテナ」
ほぼすべてのボディパネルとガラスが平面で構成されているコンパクトカーで、デビューは1980年。どこまでもシンプルで、性能は必要にして十分という、いまでいうミニマリズム的なコンセプトがヒットに結びついた。
小さな車体で最大限の空間を確保する工夫
初期モデルのシンプルさへのこだわりは徹底されていた。それを象徴するのがシート構造で、パイプフレームによるハンモックのようなものだった。しかし、それでいて座り心地も快適。簡素だけれど幸せな世界を表現した。
デザインの力で安価で素朴なのに魅力的なクルマに
コンセプトカーのような生活感の薄いインテリア。それでいてグラスエリアが広いこともあって居心地がよく、気分を明るくさせてくれる。灰皿がスライドして助手席でも使いやすいなど、斬新なアイデアが込められていた。
4WDの利便性をいち早く見抜いて取り入れた
いまでこそコンパクトカーにも普及している4WDだが、80年代当時は画期的だった。4WDと背の高いハッチバックスタイルの組み合わせは使い勝手に優れる。いまでも通じるコンセプトを約40年前に先取りしていた。
現在流行のコンパクトSUVに繋がる考え方
2002年のイタリア ボローニャショーに展示された「シンバコンセプト」は、小型SUVの人気を予見したようなコンセプトだった。じつはこれが2代目パンダを示唆する試作車で、クロスオーバー仕様も登場した。
アウトドアとの相性もばっちりな限定車「クロス」
パンダをベースにしたクロスオーバーSUVが「パンダクロス4x4」。タフさを表現したフロントマスクや4WDなど差別化された内容で、日本でも限定車として導入された。6速MTということもあり、希少価値の高いモデルだ。
いま買いの中古車たち
フィアット パンダ
現行型とはいえ10年以上販売されているモデルだけに、初期型などは乗り出し100万円を切る価格。台数はあまり多くはないが、条件を厳しくしなければ好みの1台がみつかるはずだ。
中古車参考価格帯:45万円~300万円(13年~23年 パンダ全グレード)
フィアット クロス
パンダをベースにアウトドアギア的なデザインと15インチアルミ、そして4WDを搭載した限定車。それだけに中古車市場での価値は高く、おおむね200万円以上のプライスをつける。
中古車参考価格帯:190万円~390万円(20年~21年 クロス4x4)
フィアット パンダ(先代)
探せばまだまだ中古車が流通しているのが2代目パンダ。背が高く使いやすい。100万円近いプライスタグを掲げるのはMT仕様のクルマ。欧州の小型車はMTモデルに根強い人気がある。
中古車参考価格帯:50万円~150万円(04年~11年 ニューパンダ全グレード)
フィアット パンダ(先々代)
いまやクラシックカーの仲間入りをしつつある初代モデル。とくにコンディションのいい個体は驚くほど高値で取り引きされる。レストアが必要とされる状態のものもあるため注意したい。
中古車参考価格帯:50万円~200万円(80年~03年 パンダ全グレード)