輸入車
更新日:2024.11.07 / 掲載日:2024.11.07
アメ車から欧州車、そしてSUVへ。日本で定番となった輸入車の歴史
定番モデル特集/[時代が変われば定番も変わる]日本の輸入車HISTORY
文●ユニット・コンパス 写真●フォード、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、プジョー、キャデラック、アルファ ロメオ、アウディ、BMW
(掲載されている内容はグーワールド本誌2024年12月号「[不動の人気モデルから、これからを担うニューカマーまで]定番モデルが間違いない理由」記事の内容です)
一度のヒットでは一発屋どまり。売れ続けることが定番モデルになる条件となる。ここでは輸入車の定番モデルがどのように移り変わったのかを、クルマにまつわる時代の変遷とともに解説する。
人々の心を掴むことが定番モデルの大前提
流行歌が時代によって変わるように、輸入車の定番モデルも時代時代で変化してきた。
第二次世界大戦が終わってからしばらくの主役は、戦勝国であり黄金時代だったアメリカのクルマだ。欧州車が富裕層向けの嗜好品だったのに対して、実用的なモビリティとして企画されたアメリカのクルマは、モータリゼーション発展期の日本とも相性がよかった。当然、文化的な憧れもアメ車人気を後押しする。アメリカは輝いていた。
1970年代に入ると、日本は奇跡的な経済成長により世相が一変。二度のオイルショックにより経済は混乱しつつも、生活は豊かになり、エンターテイメントやファッションといったカルチャーが花開いた。輸入車の定番にも大きな変化が到来する。フォルクスワーゲンから登場した初代ゴルフはその象徴だ。
従来の輸入車が大きく豪華でパワフルであることが魅力だったのに対して、ゴルフのデザインはそっけないほどシンプルで理性的だった。
当時はオートローンも少なく、輸入車を購入するハードルは今よりもずっと高い。そんななかで、地味で割高なコンパクトカーに注目が集まったのは、圧倒的な完成度の高さゆえ。当時の日本車は、小型車は安価なのだから性能が低いのは当たり前という価値観で作られていた。だがゴルフはまったく違ったのだ。
そうした考え方に共感できる感度の高いユーザー層がゴルフを購入し、颯爽と街を走ったことは、輸入車そのもののイメージを変えた。
「輸入車は先進的な商品で、それを購入することはクールである」という価値観が生まれたのだ。
大きくパワフルなアメ車からコンパクトでシンプルな欧州車へ。時代の流れが輸入車の定番を変えた。
1980年代の好景気は、輸入車を一気にスターダムに押し上げた。日本におけるモータリゼーションが花開き、若者までもがこぞってクルマを買い求めた。普及が進むと、人と違う商品を求めるニーズも高まる。
すると、もっとスタイリッシュで、もっと刺激的で、もっと個性的なクルマをと、世界中からユニークな輸入車が日本に輸入されることになる。歓楽街においては、BMWの3シリーズがもはや定番モデルとして扱われたくらいだ。
そこで注目を集めたのが、フランス車やイタリア車、北欧車といった非ドイツ車たち。比較的手が届きやすい価格で個性的なデザインを備え、独自の走り味やストーリー性を備えた欧州車たちが、新しい定番モデルの地位を占めた。高級車の世界では、ドイツ勢以外にもイギリスのジャガーやアメリカのキャデラックなどが定番モデルとして愛された。
21世紀に入ると、多様化する価値観に合わせ自動車メーカーのモデルラインアップは拡大する。
いくつかの定番モデルでブランドを支える形から、商品群全体でブランドをアピールする形に戦略を転換したのだ。もはや定番モデルなき時代に突入するのかと思いきや、ボディタイプに新しい定番が生まれた。それがSUVだ。
最初は大型SUVがセダンに代わる高級車の新しい形としてマーケットに受け入れられ、それがこの20年間で一気に拡大した。いまやSUVをラインアップしていないブランドは存在しないくらいだ。
時代とともに変化してきた定番モデルは、時代や文化を映す鏡のような存在なのかもしれない。
日本における定番輸入車の変遷
1960年 アメリカ車全盛期
1950年代から60年代にかけて自動車業界の王様はアメリカ車だった。豊かさの象徴であり、日本車とは一線を画すアメ車の威容は、輸入車を憧れの存在とした。
1970年 初代ゴルフ登場
オイルショックでアメ車が急減速すると、欧州車が輸入車のメインストリームに躍り出た。特にVW ゴルフは小さな車体とは思えない完成度で衝撃を与えた。
1980年 欧州車の台頭
優れた運動性能と洗練されたデザインを備えた欧州車は、大きく豪華なアメ車に対するアンチテーゼとして日本でも人気に。小型大衆車の傑作が数多く輸入された。
1990年 非ドイツ系欧州車の隆盛
アルファやプジョーといったイタフラ系をはじめ、ボルボやサーブといったマニアックな北欧車まで、輸入車の多様性が最大化したのがこの時代だった。
2000年 ドイツ御三家揃い踏み
70年代から日本でも売れていたメルセデス、BMWに加えアウディもメジャー化。ドイツ御三家として定番化した。各社がラインアップを拡大しドイツ車人気が加速。
2010年 SUVブーム到来
アメリカから始まった高級SUVはやがて世界に広がり、乗用車の定番ボディタイプを一変させた。多くのブランドが小型から大型、クーペタイプなど多様化が進む。