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更新日:2025.03.13 / 掲載日:2025.03.09
人気中古車実車レビュー【プジョー 406クーペ】秀逸デザインの美しきヤングタイマー

[プジョー 406クーペ]自動車ジャーナリスト 竹岡 圭と巡る人気中古車実車レビュー
文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、メルセデス・ベンツ、BMW
※中古車参考価格は2025年2月グーネット調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年4月号の内容です)
試乗レポートではわからない、身近でリアルな使い勝手を実車を取材してレビューするのが、「人気中古車実車レビュー」。デザイン、装備、使い勝手をレビューしつつ、中古車相場についても中古車販売店に取材し掘り下げます。
Profile:自動車ジャーナリスト 竹岡 圭
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもお馴染みの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
今なお高い人気を誇る美しきクーペをチェック
このコーナーではこれまで高年式の中古車を中心に紹介してきましたが、今回はグッと趣向を変えて最近人気のヤングタイマーをご紹介。
最近はヤングタイマーな中古車が世代を問わず人気ですが、その魅力は本格的なクラシックカーよりも身近で、レトロな雰囲気が味わえるところにあります。チェックするのは、プジョーが1998年から2004年まで販売していた406クーペです。取材させていただいたのは、2004年登録の「406クーペ」で、走行距離は6万1500km、支払総額は250万円(車検費用別途)となっています。
実車チェックを行うのは、自動車ジャーナリストの竹岡圭さん。じつは今回取材する原工房とは縁があったようです。
「前に307CCに乗っていたときに故障というかトラブルがあって、ディーラーで作業してもらっても上手くいかないことがあったのね。それで結局、メーカーから原工房さんを紹介してもらって直したことがあった。そのときから駆け込み寺として有名だったのよ。マニアの間では、『ここで直せないなら、もうしょうがない』なんて言われてるくらい」
原工房代表の原 誠二さんは、正規ディーラーでの修行を経てインポーターを技術的に支えるプロフェッショナルとして活躍。独立してからはプジョーを中心に、フランス車の点検修理という分野で業界に大きく貢献してきた人物です。
「結局、古いクルマを点検したり修理するときに大切なのは、新車の状態を知っているかどうかなんです。ディーラーで働くメカニックの多くは若い人たちなので、古いクルマになると現状の音や振動が機械として正常かどうか判断ができない。うちのお客さんは、愛車にこだわりがあって、お金を貯めて相談してくれる人たちばかり。だからその期待には応えたいよね。といっても、部品がないクルマは物理的に直せないから、中古車としてヤングタイマーを販売する場合は、アフターケアができるかどうかも考えています」
原工房で数多く取り扱うのは、プジョーでは205、306シリーズ、そして今回の406クーペとのこと。
では改めて竹岡さんに406クーペの魅力を説明してもらいます。
「なんといっても美しく整ったデザインだよね。担当したのはピニンファリーナという1930年代から続くイタリアの名門カロッツェリア。デザインの専門企業なんだけど生産工場も持っていて、この406クーペでは製造まで手がけてる。今見ても本当にきれいなスタイリングだし、内装のシートもすごくオシャレ。フランス車なんだけど、イタリア車的な雰囲気があってそこも魅力」
取材車両は2004年登録で国内最終モデル。年式から考えれば走行距離も少ないし、ハイペリオン・ブルーのボディカラーは美しい艶をたたえていました。
「ヤングタイマーを維持するには主治医になってくれるお店が必要。だから、どこから購入するかというのが、じつは最も大事な要素かも。そういう意味でも原工房さんが手がけたクルマというだけでも、この406クーペは価値があると思うな」と竹岡さんも太鼓判です。

ピニンファリーナとのダブルネーム作品

プジョーの中核車種であった406のバリエーションモデルとして1998年に追加発売されたクーペ。デザインと製造を手がけたのがピニンファリーナということもあり、フランス車ファンのみならず、デザインにこだわりを持つユーザーから注目されている。中古車の台数は少なく、状態により価格もまちまちとなっている。
中古車参考価格帯:70万円〜340万円(98年〜04年 406クーペのみ)

取材協力|有限会社 原工房

東京都江戸川区にあるプジョーを中心としたフランス車のスペシャルショップ。京葉道路沿いにあるため各地からのアクセスも良好。車両販売はもちろん、長年培ってきた技術により整備や修理には定評あり。車検や板金塗装といったサービスにも対応するため、フランス車を愛するユーザーの心強い味方となっています。
SHOP DATA
住所:東京都江戸川区篠崎町7-12-19
TEL:03-5666-0610
定休日:水曜日、祝日、イベント参加時など臨時休業あり
営業時間: 10:30〜19:00
URL:https://www.hara-kobo.com
グーネットURL:https://www.goo-net.com/usedcar_shop/9510296/detail.html
プジョー 406クーペの実車をチェック!
【デザイン】さすが名門の技術 見れば見るほど美しさにうっとり!

実用的なセダンであった406のメカニズムを活用しながら、端正で伸びやかなフォルムに仕上がっているのが406クーペ最大の特徴です。スタイリングと生産を担当したのは、イタリアのカロッツェリアであるピニンファリーナ。高級馬車の時代から続く卓越した板金技術、そして顧客である富裕層の心を掴むスタイリングセンスが406クーペのデザインには盛り込まれています。プジョーとピニンファリーナとのコラボとしては最晩年の作品という意味でも価値があります。

【装備】装備はシンプルだが維持を考えるとかえって安心

基本設計は30年近く前のクルマですから、自動ブレーキのようなハイテク装備はありません。複雑なハイテク装備がないことは、年式を考えるとむしろ安心材料とも考えられます。一方で、豪華さを感じるのが3LV6のエンジンやタンカラーのレザー内装。シンプルな4速ATによる息の長い加速感も、現在の多段ATにはない魅力でしょう。少量生産のモデルでありながら左右両方のステアリング設定があったのも特徴。欧州の味にこだわるなら左ハンドル車がオススメ。

【使い勝手大人2名であれば日常から旅行まで幅広く対応

ミニバンやSUVが多数派となった現代のユーザーには想像しにくいかもしれませんが、クーペは乗員が大人2名までであれば使い勝手はかなり優れています。全長と全幅は約4.6m×1.8mとゆとりがあり、そのスペースのほとんどが前席とラゲッジに与えられているからです。トランクは奥行きがかなりありますし、後席の背もたれは左右独立して倒せるため、ゴルフバッグやスキーなども収納可能。センターモニターやドリンクホルダーがないところは愛でカバーでしょう。

デザインの美しさは世界遺産クラス!

竹岡 圭 レビュー
デザイン[★★★★★]
世界5本の指に入るクーペと名高いピニンファリーナらしい美しいデザイン。後期型はグリル形状が……なんて言われるそうですが、いえいえ。そんなことまったく気にならないウットリするフォルムです。ボディカラーもきれいで、毎朝惚れ惚れできること間違いなし。リアデザインも素晴らしく街の景色を彩る社会貢献度も高いです。
装備[★★★★☆]
年代を経ているので、最新物は付いていないですが、運転席フル電動シートだったり、JBLのオーディオだったり、当時としては超豪華装備。タン色のシートもリアシートに至るまで形状が素晴らしく、クーペと言えどもゆったりと身を委ねられそう。あとは、最新の便利デバイスを使って、音楽を飛ばせば快適に過ごせそうです。
使い勝手[★★★★★]
このスタイルからは想像もできないくらい、ラゲッジスペースが広いんですよね。さらにトランクスルー機構も付いているので、いざという時にも利便性は高いハズ。ボディサイズも適度なので、見た目以上に取りまわしも問題なかったと記憶しています。4枚ドアと比べると……というのはありますが、この美しさで帳消しでしょう。
編集部 レビュー
デザイン[★★★★★]
クーペの手本となるような王道かつハイレベルなデザインは、令和の今見てもため息もの。特にリアガラス周辺の処理は、モダンでありながらクラシックな雰囲気で素敵のひとこと。整ったプロポーション、なめらかな三次元曲面でまとめられたフォルムは見飽きません。内装も手抜きなしで本当に美しいクルマです。
装備[★★★★☆]
エンジンこそ3LV6と豪華ですが、メカニズムはオーソドックスな前輪駆動。そして装備類も当時のレベルからすれば豪華ですが、ハイテク装備はありません。じつはそれが中古車的な視点でうれしいところ。基本に忠実に維持管理を行えば、快適に走ってくれるからです。補修パーツがまだ手に入るのも大事なポイント。
使い勝手[★★★★☆]
ファミリーカーとして使うのでなければ、基本的に使い勝手で困ることはないでしょう。ただ運転席からの視点が低いことと、クーペならではの長いドアは慣れが必要かもしれません。純正オーディオがカセットだったり、ドリンクホルダーがなかったりしますが、そこは創意工夫で乗り越えましょう! 愛です!
ライバルモデルをチェック!
メルセデス・ベンツ ミディアムクラス/Eクラス クーペ

ヤングタイマーの金字塔といえばW124ファミリー。セダンが王道ですが、クーペ(C124)という選択肢も大いにアリ。当時のメルセデスならではの骨太なフォルムがたまりません。
中古車参考価格帯:300万円〜400万円(89年〜93年 Eクラス クーペのみ)
BMW 3シリーズ クーペ

20世紀末に登場した3シリーズクーペ。M3が武闘派であるのに対して上質でエレガントな大人のスポーツクーペというキャラクターでした。いい状態の物件と出会えるかがキー。
中古車参考価格帯:70万円〜200万円(99年〜05年 3シリーズクーペのみ)