輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2018.11.02
アウディ A6アバント/気になる中古車【試乗判定】
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2018年12月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
パーソナル感のある高級ステーションワゴンの世界
なぜ欧州ブランドにはワゴンが多いのか
編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、「ジャーマン3」の一角であるアウディから、高級ステーションワゴン「A6アバント」が登場です。お借りした車両は2016年モデルで、グレードは「2.0TFSIクワトロ」、走行距離は3万kmです。
九島●先月がメルセデスのEクラスセダンだったよね。同じカテゴリーの今度はワゴンというわけか。
編集部●かつてステーションワゴンは日本車にもたくさんありましたが、現在ではほぼ欧州車の独壇場です。今日はそのあたりの事情も含めてお話して頂けますと幸いです。
九島●欧州では高級セダンは会社から支給されるものというイメージがあって、個人所有の多いステーションワゴンには昔からステイタス性があるのね。現在SUVが流行しているけど、あれはもともとアメリカの文化だし、欧州の道路事情からしても、ステーションワゴンには一定の需要があるんだよ。
竹岡●たくさんの荷物を積んで速く遠くまで快適にってニーズだと、実際にワゴンはSUVより有利だよね。重心が低いから、同じ速度で走らせるなら安定していて運転がラクだし。荷室だってじつはSUVよりも広い。荷室の奥行きがあるからアレンジにも余裕があるし、本気になれば屋根にも積める。SUVだと手が届かないでしょ(笑)。女性からすると、重い荷物を載せるときには開口部が低いワゴンの方が嬉しいんだよね。
九島●あとはSUVブームへの反動ね。いまこのクラスのワゴンに乗っている方が、落ち着いた大人な感じ。「流されてる感」がないじゃん。
竹岡●それはわかる!
編集部●なるほど、ワゴンいいですね(笑)。では、そんな高級ワゴンセグメントにおいて、今回のアウディはどんな存在なんでしょうか。
竹岡●王道はメルセデス、ボルボ。アウディはちょっとハズしかな。
九島●僕は学生時代から80に乗っていて、100は憧れだった。大人がビシッとスーツ着て乗るイメージ。100は今日ではA6でしょ。そういうリアルな体験をしているからちょっと引っかかるんだよね。A7でもA8でもなくA6なんだよ。
竹岡●あとはクワトロ! 前輪駆動をベースにしているアウディのクワトロは安定感抜群だから、荷物を載せてビューっと走らせるには最適!
九島●そのとおり。トラクションがかかるから走らせやすい。
編集部●ありがとうございます。では、本日試乗していただくアウディA6について簡単に紹介します。第4世代となるC7系は2011年に登場。ワゴン版であるアバントは2012年に日本に導入されました。ボディに軽量素材であるアルミを多用したのも自慢です。エンジンは当初2種類のV6(2.8L、3Lスーパーチャージャー)にクワトロの組み合わせ。その後、2L直4ターボの前輪駆動モデルを追加。2015年にFFが1.8L直4ターボになったタイミングで、2.8LV6に替わり2L直4ターボのクワトロが登場しました。
九島●そういえば本国では今年フルモデルチェンジしたね。
編集部●それではそろそろ、試乗のほうをお願いします。
九島「アウディならではの洒脱さ カジュアルに乗りこなしたい」
竹岡「なんといってもクワトロ!走りに安定感があります」
DETAIL CHECK
走りに差があるクワトロを中古車としても積極的に選択したい
編集部●お二人が試乗から戻られました。いかがでした?
竹岡●やっぱりアウディはクワトロだと思う(笑)。タイヤのせいかな、ちょっと乗り心地が硬く感じられたけど、それ以外は文句なし。
九島●そうだね。アウディはA3スポーツバックがヒットして、いまはSUVが売れ筋なのかもしれないけど、A6、A7、A8には上級モデルにしか出せない味がある。ちょっと再評価しないといけないな。
竹岡●私はクワトロならエンジンは2L直4ターボでもいいと思った。
九島●中古車市場はどうなの? 中古車って新車時よりもグレードでの価格差がなくなるじゃない。
編集部●それが、初期モデルのV6NAは数も多いですし、価格もこなれているのですが、3LV6スーパーチャージャーは、同じコンディションなら50万円は高いですし、なによりタマ数がありません。
九島●つまりマーケットはその価値を認識しているんだ。だったら見た目もそんなに変わらないし、4気筒のクワトロは落としどころかもね、内容と価格のバランス的に。竹岡●同じく。このクルマはカジュアルに乗ったほうがカッコいいんじゃないかな。それこそ、サーフィンに行っちゃうみたいな。アウトドアでガンガン使ってたら、かなりイケてると思う。
九島●ボディカラーもブラックより今日試乗したホワイトがいいな。
編集部●それでしたら、2015年以前のモデルが価格的にも300万円を切るというバリューもあってお薦めです。
九島●まだ現行型なのにそんなに安いの!? 悪くないね~A6アバント。
上質かつシンプルなインテリア後期は先進安全機能が充実
シンプルで上質なインテリア。ナビゲーションの画面はスイッチ操作で格納可能。2015年7月のマイナーチェンジ以降のモデルには、自動ブレーキシステム「アウディプレセンス」を筆頭に、レーンキープサポート機能、車線変更時の死角をケアする機能などの先進安全機能が導入された。
ボディサイズを生かしたゆとりのある室内空間
Eセグメントのステーションワゴンだけあって、室内空間にはゆとりが漂う。シートのサイズも大きく、その仕立ても上質だ。リヤシートはアレンジに不利な4対6の分割可倒式だが、その代わりに後席中央の席もクッションがしっかりしていて快適性が高い。
最大で1680Lという大容量を誇るラゲッジルーム
ラゲッジ容量は、5人乗車の標準状態で565L、後席を倒した最大状態で1680L。荷物を固定するためのレールも用意される。後期モデルのクワトロには、リヤバンパーの下に足をかざすことでテールゲートを開閉する「オートマチックテールゲート」が標準装備。
排気量を小さくして低燃費をねらうダウンサイジングエンジン
マイナーチェンジ前はV6が中心。上級モデルは3LV6スーパーチャージャーで310馬力。NAの2.8LV6が204馬力。その後、180馬力の2L直4ターボが追加され、マイナーチェンジ後はクワトロの標準モデル用となる。FF用としては190馬力の1.8L直4ターボが新たに設定された。
試乗判定レビュー
※各項目に対して10点満点評価。
竹岡 圭
【9点】アウディが気になるひとって「他人とはちょっと違う新しいものが好きなひと」と「定番的なんだけれど、他のひとよりちょっと差がつくものが好みの方」が多い気がします。これって一見、両極端のようで共通項が。それは他人とはちょっと違うこと。大きくじゃなくて「ちょっと」なのがポイント。奇をてらったではない、優等生的個性なんですよね。
【9点】最近のアウディはかなりの装備が、チョイスオプションになってきているんですよね。なので結果的に高くなってしまうなんてこともあったりはしますが…。その分、装備はいろいろと用意されています。アウディでとくにお見事なのは、ライトまわりとイルミネーションの使い方。マトリクスタイプを採用したのも初めてでしたし、とにかくオシャレです。
【9点】やっぱりアウディはクワトロだと思うんです。安定感が絶対的に違いますからね。エンジン縦置きもこだわりのひとつではありますが、それよりなにより、私的にはクワトロ押しです。だれもが簡単にある程度速く走らせることができる、そういった優しさもアウディの魅力のひとつだと思います。この個体はちょっと乗り心地硬かったですけどね…。
自分を「ステーションワゴン世代」と分析する竹岡さんだけに、今回のA6アバントの試乗もご機嫌。クワトロならではの安定感のある走りを満喫していました。
九島辰也
【9点】近年プレミアムブランドとして存在感を高めているアウディ。定番とちょっと距離を置きつつも、それらに匹敵する価値を持つことも、人気を後押しした大きな理由だろう。シンプルなスタイルは上質でなければ成り立たないが、それを高次元で確立したデザインセンスも評価したい。個人的には100シリーズの血を受け継ぐモデルとしてつねに気になっている。
【8点】エグゼクティブクラスをターゲットにするモデルだけあって、装備類に関してもその時代で最新のものが用意されている。後期型で採用されたマトリクスLEDライトはその象徴。コネクテッド機能を採用したMMIナビゲーションはWiFiホットスポットにも対応している。これも時代の先端だ。中古車を選ぶ際は、これらの有無もチェックしたいところ。
【9点】燃焼効率を高めた直噴エンジンと7速Sトロニックの組み合わせは、日常的にはスムーズで低燃費な走りを提供するし、一方でスポーティな走りにも応えてくれる。そんなときに自慢のクワトロシステムも、まるでFRスポーツのような振る舞いを見せてくれるのだから嬉しいところ。シーンに応じた走りを提供してくれる大人のためのワゴンだ。
かつてアウディ80を愛車にしていた九島さん。試乗したA6アバントに当時憧れていた100の姿を感じ、いつになくテンションも高めでした。
グーワールド 編集部
【9点】日本ではSUVやスポーツバックといった色気たっぷりの新規モデルに比べて、若干存在感が薄くなっているA6アバントですが、欧州ではまったく逆。アウトバーンの追い越し車線を王者のように走る「クワトロ」×「アバント」が多数観測されています。クルマをクルマらしく使いこなすユーザーにとって、全天候型クルージングマシンであるA6の魅力は不変です。
【9点】2012年の登場当時から充実した装備を誇ったA6アバント。8インチモニターとタッチパッドによる「MMIタッチ」、BOSEサラウンドサウンドシステムが標準装備。さらにオプションとして「Bang&Olufsenアドバンストサウンドシステム」やヘッドアップディスプレイ、フルLEDヘッドライトも用意。後期モデルはさらに自動ブレーキ機能が追加されています。
【9点】7代もの歴史を持ち、ブランドの中核をなすモデルだけあって、走りはもちろんハイクオリティ。今回お借りした車両は、2L直4ターボ搭載モデルでしたが、パワー不足だと思うようなシチュエーションはありませんでした。印象的だったのが、4WDでありながら、まるでそれを感じさせないクワトロのスムーズさ。FRのライバルにも引けをとりません。
高級感があって、荷物がたくさん積めて、天候を選ばずにどこまでも走っていけそうなA6アバントは、趣味の相棒としても最強。思わずほしくなりました。