輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2018.12.28

メルセデス・ベンツ Vクラス/気になる中古車【試乗判定】

2017年モデル メルセデス・ベンツ V 220 d

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2019年2月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。

Member Profile

  • 自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
    人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

  • 自動車ジャーナリスト【九島辰也】
    長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。

輸入車では貴重な存在となる大型プレミアムミニバン

3代目で大きく飛躍したプレミアムミニバン

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、メルセデス・ベンツのラージサイズミニバン「Vクラス」が登場です。お借りした車両は2017年モデルで、グレードは「V220d」、走行距離は1.4万kmです。
九島●なんかこのクルマを見ると海外出張を思い出すんだよね。空港からの送迎車でこれによく乗ることがあるから(笑)。
竹岡●たしかに。白だからまだパーソナル感があるけど、黒だとちょっとそれっぽいかも(笑)。このコーナーでミニバンが登場するのはもしかして初めてなのかな。
編集部●はい。大型ミニバンとして不動の人気を誇るアルファードやヴェルファイアに対する輸入車的オルタナティブになるのでは、という仮説をもってお借りしてきました。
九島●なるほどね。とはいえ、じつは個人的にはミニバンに対してあまりポジティブなイメージがなかったりする。とくに国産車に多い、家の延長線的なコンセプトはどうにも野暮っぽいでしょ。
編集部●そうおっしゃらず(笑)。まずは今回試乗するVクラスについて紹介させてください。こちらのVクラスは、2015年10月にフルモデルチェンジして登場した3代目モデルです。ユニークなのは、全長4905mmの標準ボディに加えて、全長5150mmのロング、そして全長5380mmのエクストラロングという長さの異なる3モデルが輸入されたこと。また、日本のために専用開発された2.2L直4ディーゼルターボに7速ATを組み合わせたパワートレインや、全車右ハンドル仕様など日本市場を強く意識したスペックも話題になりました。そして、2018年11月に特別仕様車として初のガソリンエンジン搭載の「V260 ロング」が発売されています。
竹岡●Vクラスの走りがいいのは認めるよ。そして「国産ミニバンはちょっと」というニーズがあるのもわかる。でも、結局シートアレンジみたいなミニバンとしての使い勝手でいったらアル・ヴェルには敵わないじゃない。だったら、3列シートを備えたSUVが増えてきてるし、そっちの方がおしゃれじゃないかな。
九島●そうだね。逆に言うと、そもそも「バン」をパーソナルユースにするのが日本独特の文化であって、こういうものは商用車の延長線上として、荷物をたくさん積んだり、淡々と長距離を走る使い方の方があってるんだよ。
編集部●つまり、Vクラスはアルヴェルのライバルではなく、ハイエースのような本当の意味でのタフギアの高級乗用車版であると。
九島●そのとおり。実際先代モデルまではプレミアムミニバンという触れ込みで登場したけど、中身は商用車だったわけで。
竹岡●だから一生懸命にメルセデスらしくなるよう改良したんだけど、どうしても商用車ベースという雰囲気は払拭できなかった。
九島●それでこの第三世代は最初から個人所有を前提に開発されたモデルになったと。実際質感なんかは明らかによくなったよね。
編集部●ではそろそろ、試乗のほうをよろしくお願いします。


竹岡「乗ったらちゃんとメルセデス 便利さは国産ミニバンに軍配」

九島「使い道をしっかり決めて 道具として使いこなしたい」

DETAIL CHECK

ユーザーがメルセデスに期待する高級感と快適性が備わっている

編集部●さて、試乗が終了しましたので、お二人に感想を伺います。
九島●クルマよかったよ(笑)。ちゃんとメルセデスとして納得できる品質に仕上げられている。直進安定性もさすがだったよ。
竹岡●はい。ちゃんとメルセデスでした(笑)。このボディサイズなのに小まわりがちゃんと利くし、ペダルの重さとかも乗用車と同じ感覚で運転しやすかった。一方で残念だったのが3列目が収納できないこと。取り外せるといっても、一般的な日本の家庭には使いにくいと思う。
九島●そうなんだよね。アメリカでもかつてのミニバンはシートが取り外し式でみんな不便に思ってた。そこにグランドボイジャーが床下にシートを収納するストゥンゴーを実用化して一気に人気に火がついたっていう歴史がある。そういう意味では、まだまだこのクルマは個人所有というよりも法人向けなんだよね。
竹岡●いっそ3列目レスで売ってほしいよね(笑)。実用上どうしてもこのサイズが必要で、さらにスタイル的にも国産ミニバンではなく、自分の個性をクルマに盛り込みたいっていうひとにはオススメできるかな。
九島●映像制作をしているクリエイターとかにいいんじゃないかな。あと、飛行機とかヘリコプターのラジコンを趣味にするひとが移動車兼基地として使うとかね。
編集部●国産のミニバンは使い道を選ばないマルチさが魅力ですが、Vクラスの場合はユーザー側にビジョンというか、このクルマを選ぶ理由が必要ということですね。
九島●そのとおり。
竹岡●だからこそ、使いこなせたら大人としてカッコいいよね。

質感が大幅にアップし安全装備も充実した

 安全装備についても、メルセデスらしい高性能な装備を搭載。前走車との距離を計測、ディスプレイ表示と音によって警告し、ブレーキ操作をサポートするレーダー型衝突警告システムCPAを搭載。車間距離を自動でキープする高度なACCも備える。インテリアの質感も高級感がある。

標準ボディでもゆとりのある空間で7人が快適に移動可能

 標準ボディであってもホイールベースが3200mmと大きく、2列目だけでなく3列目であっても十分な空間が用意されている。また、2列目、3列目は取り外し可能で、その場合の最大容量は4500Lと圧倒的。ピープルムーバーとして以外にも、多彩な使い道がありそうだ。

スペース効率には優れるがシートの置き場という問題が

 3列目シートをもっとも下げた状態。ラゲッジルームは通常状態で720Lというスペックになる。天井までの高さがあり、スペースが四角いため、スペース効率に優れる。一方で、国産ミニバンのようにシートを床下に収納したり、跳ね上げたりすることはできない。

街中では軽快に、高速ではしっとりとした走りを提供

 2.2L直4ディーゼルターボエンジンは最高出力163馬力を発生。全域にわたって力強いため、巨体ではあるものの、軽快感のある走りを披露してくれる。排出ガス対策として「BlueTEC」という浄化システムを搭載しており、定期的にアドブルー(尿素水)を補充する必要がある。

試乗判定レビュー

※各項目に対して10点満点評価。

竹岡 圭

  • 【9点】こういう大きさって必要なときは必要なんですよ。でも必要ないときはまったく出番のないサイズ感。だから難しい。自分のライフスタイルと照らし合わせて、本当に必要なひとにこそ乗ってもらいたいと思います。「イクメンパパ、趣味人、超アッシー」。私が想像できるのはこの3パターンくらいなので、当てはまらないひとはしっかり選んでほしい1台です。

  • 【8点】ミニバンとして見ると正直装備は物足りないですよね。シートは日本のミニバンのように畳んだアレンジはできないし、小物入れだって少ないし。重量級のシートを頑張って取り外したところで置いておく場所もないし……。でも、そういうことを除けば、インパネまわりなんかは質感も雰囲気も、やっぱりメルセデス・ベンツなんですよ。どこをどう取るかです。

  • 【10点】トルクフルなディーゼルエンジンだけあって、走り出しのかったるさもないし、直進安定性も高い。そして意外と小まわりも利いちゃったりするんですよね。どっしり感が重厚感にもつながって、至極上級テイスト。その辺りがそんじょそこらのミニバンとは違う点です。これだけの大きさだからこそ、このしっかり感はアリだと思います!

九島辰也

  • 【9点】そもそも、個人がこういった大型のワンボックスを所有することを個人的には賛成しかねる。とくに「大は小を兼ねる」的な発想でこのクルマを選び、結果的に無駄な空間を背負ってしまうのはもったいない話だ。だが、この空間を必要としているひとならば話はまったく別。商用車のようなスペースを持つ高級車という独自性はVクラスの大きな魅力だ。

  • 【8点】安全装備や快適性を高めるアイテムはふんだんに用意されていて、そこはさすがにメルセデス。商用バンの由来を隠しきれなかった初代モデルと比べたら隔世の感だ。一方で、ミニバンとして進化を続けてきたモデルたちと比べると、シートアレンジなどの使い勝手は正直劣っている。それをどう捉えるかで、このクルマに対する評価は変わってきそうだ。

  • 【9点】パワートレインが非常に洗練されていて、走っている間は車内の騒音レベルも十分に抑えられている。印象的だったのは速度を上げていったときの直進安定性の高さ。横風などに弱い傾向にあるミニバンは、どうしてもステアリングの修正が増えて疲労が溜まりがちだが、こいつは違う。いかにもヨーロッパ育ちで、しっかりした足腰の持ち主だ。

グーワールド 編集部

  • 【9点】日本で根強い支持を集めているミニバン。当然、輸入車のミニバンがほしいというニーズもあるわけで、これまでもVクラス(およびビアノ)を愛用するユーザーも確かに存在しました。現行型となる3代目は、より乗用車的な内外装に加え日本市場のために開発されたディーゼルエンジンを搭載。より幅広いユーザーにアピールするクルマになりました。

  • 【8点】Vクラスは装備の充実具合を表現するのがなかなか難しいクルマです。というのも、いわゆる安全装備や快適装備はハイレベルなのですが、ミニバンとして期待されるシートアレンジやラゲッジの使い勝手については、国産ミニバンには勝てていないからです。とくにシートを収納する方法がないため、せっかくのスペースを活かしにくいのは大きな弱点です。

  • 【9点】さすがメルセデスと膝を打つのが高速でのどっしりとした走り。ディーゼルの力強いトルクもあり、長距離移動も苦になりません。街中であっても、小まわり性能がよく、カメラのおかげで駐車時などの後方視界にも不安なし。想像以上に楽に運転できました。一方で、個体差かもしれませんが、冷間始動時の振動と音がかなり大きかったのは若干マイナス点。

メルセデス・ベンツ Vクラスのモデル主要変遷やスペック情報はこちら

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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