輸入車
更新日:2021.08.04 / 掲載日:2021.08.04
BMW 2シリーズ グランツアラー/気になる中古車【試乗判定】

2018年モデル BMW 218i グランツアラー ラグジュアリー
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年9月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年7月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
BMWブランド唯一となる3列シートミニバン
家族層にアピールする新世代のBMW

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、BMWのコンパクトミニバンである2シリーズ グランツアラーが登場です。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「218i ラグジュアリー」、走行距離は3万3000kmとなっています。
竹岡●グランツアラーということは、3列シートのほうだよね。2列シートがアクティブツアラーだっけ。
九島●そう。よく似たクルマだけど、じつはそれぞれ専用ボディなんだよ。グランツアラーのほうが全長と全高が大きいんだ。
竹岡●全長が215mm、ホイールベースも110mm長い。見た目は似ているのに別物なんだね。グランツアラーの3列目は床下にフラットに収納できるタイプだから、普段はワゴン的にも使えて便利。
編集部●今回のグランツアラーは、「2シリーズ」のバリエーションモデルに当たるのですが、これが非常にバリエーション豊富でして、まず2014年にクーペとアクティブツアラーが導入され、翌年にカブリオレと今回の主役であるグランツアラーが登場しました。さらに2019年には4ドアクーペのグランクーペも追加されています。
九島●BMWは1、3、5、7が従来からのコンサバなシリーズで、2、4、6、8がライフスタイル寄りと理解しておくとわかりやすい。
竹岡●ホント、BMWも車種が増えたよね。でも、これだけバリエーションがあっても、BMWの3列シートミニバンってじつはグランツアラーだけ。だから、指名買いする人がけっこういるみたいよ。
九島●たしかに3列シートの輸入車は選択肢が少ないからね。じつはいまSUVに3列シートモデルが増えているんだけど、それらはボディが大きいし値段も高い。だから純粋な意味でのライバルは少ないんだ。
編集部●そんなグランツアラーですが、グレード構成は大きく分けて4タイプあります。1.5L直3ターボの「218i」(前期136馬力、後期140馬力)、2L直4ターボの「220i」(192馬力)、そして2L直4ディーゼルターボの「218d」(150馬力)です。そして、それぞれに内外装にエッセンスを加えるパッケージオプションである「スポーツ」、「ラグジュアリー」、「Mスポーツ」が用意されています。
九島●今日お借りしたグランツアラーは前期型だよね。これはこれでいいんだけど、後期モデルになると顔つきがシャープになって、さらに格好よくなったはず。
編集部●はい。2018年6月の改良では外装デザインを一新、シートの座面を大きくして座り心地向上、先進安全装備「ドライビング・アシスト」を全車標準装備しました。
竹岡●あれ、意外と改良ポイントは少ないんだね。前期モデルでも緊急自動ブレーキやLEDヘッドライトは標準装備だったんでしょ。ということは、それだけ最初から作り込まれていたってことだし、前期型でも価格次第では魅力があるね。
九島●それは試乗の結果次第。早く乗りたくなってきたな。
編集部●それではそろそろ、試乗のほうをお願いします。
九島「ノーズのあるデザインは箱型ミニバンより魅力的」
竹岡「乗り心地が硬めなので飛ばし過ぎには注意(笑)」

DETAIL CHECK

乗り心地の硬さは気になるもののミニバンとしての実力は国産顔負け
編集部●試乗から戻ってきましたので、お二人から感想を伺います。
竹岡●足がちょっと硬かったね。(タイヤを確認して)やっぱり純正のランフラットタイヤだ。これが普通のタイヤになるだけで、ずいぶん印象が違うと思うんだけどなぁ。
九島●ランフラットタイヤのメリットは、パンクしてもゆっくりとならその場を脱出できること。もともと治安に不安がある地域向けに開発されたものだった。だから日本だとそこまで切実に必要とは言い難い。とはいえ、高速道路でタイヤ交換するのも危険だから、メリットがないわけじゃないのが難しい。乗り心地が気になるなら、タイヤ交換の時に普通のタイヤを選ぶのがいいだろうね。
編集部●そのほかはどうですか?
竹岡●エンジンはディーゼルがいいと思っていたけど、「218i」でもまったく問題ないね。同じメカニズムを使っているMINIよりも静かに感じるし、街乗りが多いならガソリンでもいいかな。
九島●同感。日本だと軽油が安いし、ディーゼルの大トルクは荷物を満載して長距離を走るシーンにはベストマッチ。だけど3気筒ターボでも十分BMWらしさを感じるよ。それで、中古車市場はどうなの?
編集部●中古車平均価格は205万円。5年落ちで総額150万円ほどから。後期型は250万円スタートとまだ高値です。予算を重視するなら前期の高年式、まさに今回のクルマみたいなものがねらい目ですね。
九島●乗ればしっかりBMWだし、けっこういい選択なのかも。
竹岡●ワゴン的に使うとかなり便利。たくさん楽しんじゃってください!

快適なドライブを可能にする充実した標準装備

デビュー当時から装備が充実。ナビゲーション、LEDヘッドライト、衝突被害軽減ブレーキは全車に標準装備。水平基調のインパネデザインは開放感があり、加飾パネルの面積が大きいこともあってプレミアムな雰囲気。
輸入車ではめずらしい3列7人乗りのパッケージング

このクルマのハイライトとなるのが3列シートを備える室内空間。2列目にはスライド&チルト機構が備わっているのも使いやすさに繋がるポイント。後期モデルではシート座面が大きくなり、さらに快適性が向上している。
2種類のガソリンエンジンのほか経済的なディーゼルも用意

エンジンは、ガソリンが1.5L直3ターボ(218i)、2L直4ターボ(220i)の2種類と2L直4ディーゼルターボ(218d)の3タイプ。2017年1月に、218dに4WDモデルの218d xDriveが追加されています。
日本車顔負けの考え抜かれたユーティリティ機能

国産ミニバンにも負けない使い勝手のラゲッジルーム。3列目は荷室側からの操作でフラットにたためますし、2列目も3分割なのでアレンジ豊富。荷物を外の視線から守るトノカバーも床下収納できるよう工夫されています。
試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
多くの日本車のミニバンとは違い、スライドドアではないですが、そもそも輸入車の3列シートモデルって数が限られているんですよね。だからこそ、家族は多いけれどやっぱり輸入車に乗りたいというファミリーには、かなり有効な選択肢。サイズ的にさほど大きくはないので、高校生の男子3名がいるご家庭となると、少々狭い気もしますけど……。
BMWの中では珍しく、コクピットレイアウトが、さほどドライバーオリエンテッドになっていないところは高評価。だって多人数乗りですからね。でも、3列目が床下にピタッと収まるシートアレンジを見ても、普段は荷室の広いワゴンのように使い、イザという時は3列シートというのが、グランツアラーの使い方としては正解なんだとは思います。
コレ、普通のタイヤを履いた方が絶対乗り心地イイんです(経験済み)。なので購入したら即時に、タイヤを交換するのをオススメします。そもそも日本の道路事情だとランフラットタイヤ必要ないですからね。そこ以外は、しっかりしたBMWテイストなので、ワインディングロードも駆け抜けられますが、調子に乗りすぎず同乗者への配慮をお忘れなく。
- 平均点 4.5
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 4.5
- 走り 4.5
九島辰也
正直、個人的にはミニバンは愛車の選択肢に入らないのだが、こうして改めて触れてみると、グランツアラーがよく考えられたクルマだということがわかった。ノーズのあるデザインのおかげで、プロポーションも商用車のような箱型から脱却できている。2列目シートがスライド可能だから、3列目をたたんで趣味の移動手段として使いたいところ。
ドアを開けてシートに座ったときに、ちゃんとBMWらしい雰囲気が漂っている。当たり前のようでいて、じつはちゃんとできていないクルマもなかにはあるわけで、そこはしっかり評価したい。それと、シートアレンジの豊富さも気に入ったところ。3列目が床下に収まるのも便利だし、2列目シートは3分割で前倒しできるし、前後にスライドも可能だ。
2シリーズグランツアラー/アクティブツアラーはBMWにとって初めてのFF車。だけど、走らせてみればそんなことはまったく関係ないことがわかる。ハンドリングは十分スポーティだし、アクセルに対するレスポンスも素早い。後期モデルは高効率な7速DCTに進化したが、ストップ&ゴーが多い使い方なら前期のトルコンATがオススメ。
- 平均点 4.3
-
- ポジショニング 4.0
- 装備 4.5
- 走り 4.5
グーワールド 編集部
家族のことを考えると3列シートが必要だけど、できれば上質なカーライフを送りたい。そんなユーザーニーズにしっかりと応えてくれるコンパクトミニバン。兄弟モデルのアクティブツアラーと比べると、取材時の物件掲載数は約200台と半分ほどで、価格も10万円ほど上。3列目が必須でなければ、アクティブツアラーも要検討です。
輸入車だと装備の多くがオプションで、車両価格に必要なものを加えていくとけっこうな金額になってしまうクルマも少なくありません。そんななかグランツアラーは、LEDヘッドライトや衝突被害軽減ブレーキが全車で標準装備。後期型はさらにリアビューカメラやパーキングアシストも標準装備となります。ただし後期型の中古車はまだ高値です。
乗り心地はいい意味でも悪い意味でもスポーティ。2列目はともかく、3列目の長距離移動は厳しいかと。一方、試乗車にはメーカーオプションの「ドライビング・アシスト・プラス」が装着されていました。これはストップ&ゴー機能付きACCのことで、あるとないとではロングドライブでの快適性が段違い。中古車を購入するときはぜひ確認を。
- 平均点 4.5
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 4.5
- 走り 4.5