輸入車
更新日:2022.03.17 / 掲載日:2022.01.06
マセラティ ギブリ/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年2月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年12月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
輸入車の本命クラスに挑む名門のスポーティセダン
マセラティ初のアンダー1000万円カー

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、イタリアのマセラティからラグジュアリーセダンのギブリが登場です。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「ベースグレード」、走行距離は約9万kmとなっています。
九島●イタリアの名門が登場だ。今回の試乗車は好み。いつ見ても魅力的なクルマでうれしいねぇ。
竹岡●わかる(笑)。いかにも好きそうだし似合うもん。逆に私にはちょっと似合わないかもしれない。
編集部●先ほどマセラティのまくら言葉として「名門」という表現を使われていましたが、そのあたりから改めて解説いただけますか?
九島●たしかに、フェラーリやアルファ ロメオに比べると、マセラティの存在はちょっとマニアックなのかもしれないね。創業は1914年、レース好きだったマセラティ3兄弟が、イタリアのボローニャでレースカー用のチューニングショップを立ち上げたんだ。彼らの興味の対象はレースに勝つことで、市販車を手がけたのはじつは第二次世界大戦後のことだったんだよね。
竹岡●ヨーロッパの歴史あるメーカーは、だいたい戦前のグランプリレースで活躍しているイメージ。
九島●そうそう。イタリアのスポーツカーといったらフェラーリが有名だけど、マセラティはそれより歴史が古いからね。フェラーリの創設者であるエンツォが所属していたアルファ ロメオとマセラティは競い合っていたんだ。だから「名門」なの。
竹岡●私にとってのマセラティはクワトロポルテの印象が強くて、高級車ブランドっていうイメージだった。
九島●それはそれで正しくて、初めての市販車となった3500GT(1957年)も、純粋なスポーツカーというより高級GTだったんだ。
竹岡●じゃあ私の好きなグランカブリオ(2009年)は、マセラティの王道だったのね。
編集部●さて、今回試乗していただくギブリですが、2013年に登場してから現在におけるまで、マセラティの量販車種として活躍している高級セダンです。
竹岡●ミウラやデイトナのライバルだった初代(1966年)の名前を受け継いだことや、1000万円を切る価格も話題になったね。
九島●「ギブリ」は地中海に吹き込む熱風に由来するらしい。マセラティの車名は、ボーラとか風を由来にしたものが多いんだよ。
編集部●はい。搭載エンジンは3LV6で、ガソリン版がツインターボで330馬力から430馬力、ディーゼル版がシングルターボで275馬力。後輪駆動モデルのほかに「S Q4」と呼ばれる4WDグレードもラインアップしています。
九島●ライバルはEクラスや5シリーズの上位モデルになるのかな。
竹岡●モデルライフが長いけど、マイナーチェンジはいつだっけ?
編集部●2017年11年の改良で前後デザインの見直し、パワートレインの強化、パッケージオプションの追加、先進運転支援システムの導入が行われました。そこが最も大きな変更ですね。それではそろそろ試乗のほうをよろしくお願いいたします。
竹岡「爽快な運転が楽しめる身近になったマセラティ」
九島「セダンというよりも高級なスポーツカーです」

DETAIL CHECK
4ドアセダンの形をした上質なスポーツカー

編集部●では、試乗が終わったところで感想を伺いたいと思います。今回の試乗車は走行距離が9万kmと多く、よくいわれるイタリア車のイメージからすると、傷んでいるかどうか気になる方も多いかと。
九島●それがあんまり気にならなかったんだよ。エンジンの吹きあがりもよかったし、ちゃんとメンテナンスを受けていた感じではあるね。全然問題なかったよ。ただ、もしもマセラティを買うとしたら、全部をディーラー任せにすると維持費が高額になってしまうから、自分で情報を集めて、消耗品の交換はタイヤショップを使うとか、上手にやりくりしたほうがいいね。
竹岡●ハンドリングもスポーティでシャキッとしていて、乗れば乗るほど楽しいクルマだった。クアトロポルテのイメージでおとなしい上品なクルマかと思っていたけど、じつはずっとスポーティなクルマで、それがわかると付き合いやすい。ただ、私の身長だとドライビングポジションが厳しかったかな。
九島●たしかにポジションは独特だから確認したほうがいいね。
竹岡●ブランド力もあるし、CLSとか6シリーズグランクーペみたいなクルマが好きな人にはハマリそう。
九島●そうだね。高級セダンというよりも高級4ドアクーペ。ところで中古車相場はどうなの?
編集部●300万円の半ばからで、4年落ち2万km台が500万円といったところです。ちなみに、今日ぐらいの多走行車だと300万円を切るものもあります。
九島●それはなかなかハイリスクだけど、ちょっと夢があるね(笑)。

マイナーチェンジ後のモデルは先進運転支援システムが充実

鮮やかな赤いダッシュパッドが目を引くインテリア。2017年11月の改良では先進運転支援システムを導入し、渋滞時追従機能、衝突被害軽減ブレーキ、ブラインドスポットモニターなどの機能が追加された。
マセラティならではの妖艶な雰囲気漂うインテリア

美しいレザーシートはマセラティの本領発揮。メーカーオプションとしてポルトローナ フラウによるレザーインテリア仕様も存在。Eセグメントセダンだけあって、リアシートのスペースにもゆとりがたっぷりとある。
じつは実用性は高くラゲッジルームも大容量

想像以上の広さに驚くラゲッジルーム。容量は500Lで、6対4分割タイプのリアシートを倒すことで、荷物に合わせたアレンジも可能。電動オープン&クローズ機能も備わっているのも高級セダンならでは。
魅惑的なサウンドを奏でるガソリンV6ツインターボ


ギブリの大きな魅力となるのが3LV6ツインターボエンジン。ベースモデルであってもライバルに対して最高出力350馬力とハイパワーで、ツインターボの恩恵により低速からレスポンスいい加速を提供。排気音も心地よい。
試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
1000万円を切ったマセラティとして、話題をかっさらったという印象が強いギブリ。とはいえ、まだまだ高嶺の花ですが、中古車なら手が届くという貴重な存在になったと改めて思います。しなやかさ際立つクアトロポルテをイメージすると、頭の中に「?」マークが浮かびますが、スポーツクーペだと思って乗ると、予想以上に爽快なクルマです。
装備[9点]
マセラティのなかではアッサリテイストのインテリアだと思いますが、面使いの大きさなどはやはりイタリアン。色っぽささえ感じられるから不思議です。スイッチ類などは意外とベーシックなので使いやすいですが、最新のものは渋滞サポート機能が装着されていたりするものの、年代によって装備が違うので、装備が気になる方はしっかりご確認を。
走り[10点]
カタログスペック的にはボディサイズも大きめなのですが、見た目も運転しても大きさを感じにくいのはイイトコロ。何を隠そう、かなり獰猛なマッスルカーなので、同乗者がいるときは、ジェントルな運転を心掛けることを忘れずに。とはいえ、ハンドリングもピシッとスポーティだし、シーンを問わず純粋にドライビングを楽しめるモデルです。
九島辰也
ポジショニング[10点]
マセラティというブランドには不思議な魅力がある。商品としての完成度を気にするよりも、まずはその素晴らしいデザインに心を奪われてしまう。内装もいかにもイタリア流の凝った仕立てて、いわゆるセンスがいいのだ。ドイツ製ハイパフォーマンスモデルがいいのはわかっているが、マセラティのような変化球こそ輸入車の醍醐味かも。
装備[9点]
2010年代の半ばから先進運転支援システムが普及し始めて、プレミアムブランドのクルマには当たり前に搭載されるようになった。マセラティもしっかりとそのトレンドに追いついていて、今回試乗したマイナーチェンジ後のモデルにはレベル2の運転支援が備わっていた。一方でナビの出来などはちょっといまいち。そこが許せるかどうかだろう。
走り[9点]
まるでスポーツカーを操っているような一体感のある走りに、思わず同乗者の存在を忘れてひんしゅくを買ってしまった(笑)。でも、試乗でいきなりそんな走りができるのは、ブレーキの性能がしっかりしているから。ギブリについてエンジンをほめる声は多いが、じつはシャシーの出来もそれに劣らずレベルが高い。運転が本当に楽しいクルマだ。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
マセラティといえばスーパーカーブーム時代にその一角を占めていた名門。そんな雲上人のようなブランドが中古車となれば現実的な価格で手に入るのですからテンションが上がります。このクラスにはジャーマン3の優秀なライバルがいますが、直接比較にならない非日常なキャラクター。ライフスタイルを変えてくれる予感がします。
装備[9点]
マセラティがデザインと職人的作り込みで勝負していたのはもう過去の時代。ギブリは現代の高級車に求められる装備類を積極的に採用しています。前列だけでなく、後席のひじ掛けにはカップホルダーだけでなくUSBソケットも用意するという気の利きよう。ベースグレードであっても豪華ですが、さらに上が用意されているのがマセラティ流です。
走り[9点]
ドライバーを楽しませるのが本当に上手なクルマで、アクセルを深く踏み込んだときの甲高い成分を含んだエキゾーストノートを聞くとゾクゾクします。ボディサイズは全長5m弱、全幅1.9m台と大柄なのですが、操作に対する反応がよく、一体感があるので大きさを感じないのも驚きました。ゆっくり走っても気持ちいい大人のスポーツカー。