【マツダ アクセラ】ねらうべきはハイブリッド？ 相場調査で分かった”買い”のグレード

　マツダは、OEM供給される軽自動車を除けば、乗用モデルは3段階の車種構成となっている。下からデミオ、アクセラ、そしてアテンザだ。これに加えてSUVのCXシリーズやスポーツカーのロードスターなどが存在し、いまのラインアップを構築している。今回紹介するアクセラは乗用車系の中間モデル。このクラスに属するクルマは欧州Cセグメントなどと呼ばれ、世界的に見ると販売ボリュームの面でも非常に重要。少し前まで、このクラスのファミリーカーと言えば、日本、ヨーロッパ、北米それぞれ市場のニーズに合わせたクルマづくりを行うのが一般的だった。たとえば2世代前までのホンダ シビックなんかは、同じ「シビック」という名前でありながら、プラットフォームやデザインが市場によってまったく違っていたりする。

　でもアクセラは、2003年のデビュー以来、どの市場でも共通の設計となるのが特徴。とくにヨーロッパでは、このクラスはVWゴルフなどと競合する激戦区であり、ファミリーカーながらも高速走行時の安定性や、スポーティな足まわりが高いレベルで求められるが、アクセラはヨーロッパ基準の厳しいクルマづくりを行い、ライバルに追従しているのである。だから、アクセラが初登場したときの評価は、「ヨーロピアンな走り」というフレーズをよく目にし、走りの評価が極めて高かった。2009年には2代目、2013年には3代目へとフルモデルチェンジを重ねているが、クルマづくりの哲学はずっと不変で、いまでも走りのよさをアピールしている。

　そんなアクセラの中古車が、いま安くなっていることをご存知だろうか。マツダは、現行モデルは軒並み相場が高値となっている。とくにアテンザとCX-3は、新車とほぼ変わらないプライスを掲げる物件も多く、なかなか手が出せない状況だ。しかしアクセラは、クルマの完成度と年式のわりに、中古車がお買い得に……。その背景は、いまの小型SUVブームにありそう。ファミリーカーの定番だったセダンやハッチバックボディは、いまSUVに取って代わられつつある。同じセダンでもアテンザは高級路線で価格の値崩れが起きにくいが、アクセラをはじめとする小型セダン／ハッチバックのニーズが日本では低迷しており、中古車相場の下降に繋がっていると考えられる。

　アクセラは、グレードのバリエーションが豊富なのが特徴だ。ボディタイプはセダン（アクセラ）とハッチバック（アクセラスポーツ）から選べる。エンジンタイプは、ガソリンが1.5L、2.0L、ディーゼルが1.5L、2.2L、そして2.0Lハイブリッドと合計4種類を設定。しかし、セダンはガソリン2.0L、そしてハッチバックはハイブリッドが選べないなど、ボディタイプ別にエンジンバリエーションが異なっているので注意しよう。

　あとアクセラの魅力のひとつが、6速MTが選べること。この手のファミリーカーを3ペダルで乗れる機会は最近激減しているが、前述の走りのよさと相まって、ラインアップの素敵なアクセントになっていることもぜひ覚えておきたい。それではグレード別の中古車平均価格を見ていこう。ここでは、全体の相場が低いセダンを中心にご紹介しよう。ハッチバックはこの記事の最後にまとめて取り上げることにする。

　もっとも安いのは、エントリーグレードの「15C」で、中古車平均価格が123万円。しかし、こちらは内装トリムが簡素化されているほか、マニュアルエアコン、スチールホイールと装備面でやや物足りなく、なにより物件数が少ないので候補から外れそうだ。となると、「15S」か「ハイブリッド」どちらかの選択となるが、両者の価格差は大きくないし、物件数も同程度揃っているから、俄然「ハイブリッド」に注目度が集まってくる。なにせ、両者の新車時価格を比べると「ハイブリッド」のほうが50万円~80万円ほど高いのだから。ちなみに、セダンのディーゼルモデル投入は2016年以降だから、いまのところ中古車はほとんど流通していない。結論を言えば、アクセラをお得に買うなら「ハイブリッド」がかなりオススメなのである。

　しかもこのハイブリッドは、トヨタとの技術提供によって誕生したもの。つまり、プリウスのメカを、ボディや足まわりのつくりのよさに定評あるアクセラに移植したものである。JC08モード燃費30.8km/Lという低燃費でありながら、欧州仕込みのハイレベルな走りのコンビネーション。アクセラハイブリッドは、ただ安いだけじゃなく、クルマとしての完成度が高いことも特筆すべきところ。

　ここ最近のマツダ車は、毎年のように小規模な改良を重ねて進化させる方式を採用している。アクセラシリーズも同様で、初期モデルと最新モデルではメカニズムが異なる。なかでも特筆すべきは2016年7月に行われた大幅改良。内外装デザインをリニューアルしたほか、「Gベクタリングコントロール」と呼ばれるメカが新たに搭載された。こちらはエンジンの駆動トルクを制御し、横方向と縦方向の加速度を統合的にコントロールするもの。平たく言えば、滑りやすい路面などで安定性を高め、車体の揺れを抑えて乗り心地を高める技術。そのほか、エンジン制御など車体全体に改良のメスが入り、クオリティを大きく高めている。ただし、前述の「Gベクタリングコントロール」はハイブリッド車には搭載されないのでご注意を。では年式別の中古車平均価格をチェックしよう。

　上の相場動向から、2016年の改良を境に相場が大きく上昇しているのがわかる。とくに、「Gベクタリングコントロール」が搭載される非ハイブリッド車が顕著だ。一方ハイブリッドは改良の前後でそれほど大きな差はない。あと、物件数をそれぞれ調査したところ、非ハイブリッド車は大幅改良以降の物件が多いが、ハイブリッド車はどの年式もまんべんなく物件が流通しているようだ。

　最後に、全ボディタイプ別の中古車平均価格をチェックしておこう。

　アクセラスポーツは、平均価格で言えばもっとも高値。ただ、価格帯の幅が広く、100万円台前半の物件が目立ち、現行型のマツダ車としては比較的買いやすいモデルである。アクセラスポーツのなかから、グレード別の中古車平均価格を見てみよう。

　セダンではディーゼル車がほとんど流通していなかったが、ハッチバックは全体のおよそ半数近くがディーゼルだ。このディーゼル車の相場が高いため、アクセラスポーツ全体の平均価格が上がってしまっている。ディーゼルエンジンにこだわったクルマ選びをするなら、アクセラはCX-3やアテンザと同じく、それなりの出費を覚悟する必要がありそうだ。

　まとめると、豊富な現行型アクセラシリーズで、お買い得感がもっとも高いのはアクセラハイブリッド。しかし1.5Lモデル（15S）なら、セダン、ハッチバックともに手頃なプライスで購入できる。ただの実用車という枠に留まらない、走りの楽しさを感じられるアクセラは、いま注目すべきモデルと言っていいだろう。