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更新日:2024.10.06 / 掲載日:2024.10.04
グランドツーリングカーに再注目。昭和から令和まで、一気に振り返るGTカルチャー

クルマの性能が日々進化しているなかで、グランドツーリングカー(GTカー)というジャンルが曖昧になってきている。GTカーは長距離を速く快適に走るためのクルマであるが、クルマの基本性能が上がっている現在、多くのモデルがこれに当てはまってしまうからだ。とはいえ、GTというカテゴリが消滅したわけではない。現代のGTはより高度で洗練された性能と快適性が要求されている。そこで今回は、昭和から続く国産GTの歴史を振り返りつつ、令和の新基準「GT」を紹介しよう。
そもそもGTカーってどんなクルマを指す言葉なの?
GT(Grand Tourer)の起源は19世紀のヨーロッパに遡る。当時の貴族階級は、卒業旅行として遠方へ赴く風習があり、それをグランドツアーと呼んでいた。当時は馬車の時代であったが、道中の厳しい旅を乗り越えるため荷物がたくさん積めて壊れにくく、高い快適性が求められた。そんな背景を持った長距離を快適に走れるクルマが「グランドツアラー(Grand Tourer)」、イタリアでは「グランツーリスモ(Gran Turismo)」と呼ばれるようになったのである。これらは、大排気量で高出力のエンジンを搭載した大型クーペ/カブリオレであることが多い。よく混同されがちな言葉としてスポーツカーが挙げられるが、こちらはあくまでスポーツドライビングを愉しむクルマ。誕生した背景が大きく異なっている。とはいえ、両者とも厳密な定義はなく境界線は曖昧で、たとえばフェラーリの12気筒のようにGTカーの要件を満たしたスポーツカーというのも存在する。
多種多様な高級クーペが誕生した国産GT黎明期

GTはヨーロッパが起源という話をしたが、日本ではどうだろうか。ヨーロッパとは異なり、日本は国土の狭い島国でその大半は山林を占めている。それゆえ長距離移動のためのクルマが育つ土壌がないため、1960年代まで目立った国産GTカーは存在しなかった。1963年になるとプリンス(現日産)から2代目スカイラインが登場し、モータースポーツ参戦用の「スカイライン 2000GT」が設定された。こちらは4ドアセダンのボディながらも「GT」のバッジを掲げて大活躍したことでも有名だ。

1967年にはトヨタ 2000GTが登場したが、こちらも純粋なGTカーというより、高級スポーツカー(スーパーカー)としての性格が強かった。事実、市販車の発売前には日本グランプリにも参戦し、モータースポーツでも成績を残している。さらに1968年には豪華ないすゞ 117クーペが登場。この時代はボディタイプに関わらず、GTカーならびに国産スポーツカーの礎を築いたモデルが多数誕生したのだった。ただ、いずれも欧州生まれのGTとは異なり、長距離を快適に走破するという意味合いは薄かった。
名車と呼ばれる国産GT豊穣期の70年代~80年代

1970年代以降は、欧米市場も視野に入れたGTが次々と登場した。1969年に登場した日産 フェアレディZは日本を代表するスポーツカーだが、GTカーとしての一面も備えていた。特に1978年に登場した2代目は、従来モデルと比べて室内空間が広くなり、快適性が大幅にアップ。豪華な内装を持ちながら大排気量の2.8L 直6エンジンを設定したことで、GTカーとしての性能が大きく高められた。日本はもちろん北米市場でも大ヒットし、以降3代目(Z31)〜4代目(Z32)まで速くて快適なGTカーとして名を馳せた。ちなみに、2002年の5代目(Z33)以降はスポーツカーとしての性格が強められ、原点回帰している。

2代目フェアレディZの同期として1978年に登場したのがトヨタ セリカXX(輸出名:スープラ)。初代フェアレディZの北米での成功を受けて開発されたセリカXXは、名前のとおりセリカをベースとしながら、よりパワフルな2.0Lと2.6Lの直列6気筒エンジンを搭載。強力なエンジンと豪華な内外装を組み合わせたその走りは、まさに本物のGTといえるもの。1981年にはフルモデルチェンジを受けて2代目が登場し、こちらも大ヒット。洗練されたデザインと高い動力性能は、新時代のGTカーに相応しいものだった。

また、1981年に誕生したトヨタ ソアラも忘れてはならない存在。BMWやメルセデスをライバルに見据えたプレミアムクーペであり、キャッチコピーは「SUPER GRAN TURISMO」。セリカXXよりさらにワンランク上のGTとして開発された。デビュー当初のパワートレインは2.8L 直6を筆頭に、2.0Lモデルも設定されている。豪華絢爛な内外装とパワフルな走りは高く評価され、この年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた。

1982年には三菱スタリオンが登場。フェアレディZやセリカXXをライバルとする2ドアクーペだが、こちらは6気筒モデルは設定されず、2.0Lまたは2.6Lの4気筒エンジンが搭載された。後にターボ搭載車も設定され、走りの性能をアップ。ラグジュアリーとスポーティを高次元でバランスさせた走りは今でもファンが多い。またモータースポーツへの参戦にも積極的で、全日本ツーリングカー選手権やWRCにも参戦した。
豪華なだけじゃダメ!デザインやメカにもこだわった90年代国産GT

90年代に入ると、空前絶後のスポーツカーブームが到来する。エンジンパワーはもちろん高水準な運動性能も求められ、かつてのGTカーは次々スポーツカーへと進化を遂げていく。例えば89年に登場した4代目フェアレディZは運動性能も追求し、スポーツカー的な性格がより強められた。1993年、セリカXXはスープラと名称変更(正確には輸出名に統一)され、こちらもピュアスポーツへ進化。さらに1990年、スタリオンの後継となったGTOも新時代の4WDスポーツとして生まれ変わった。

それらの隙間を埋めるべく、新たに誕生したのが個性を重視した新顔のGTカーだ。1990年にはユーノスコスモが発売された。これは初代コスモスポーツ以来となるロータリー専用モデルであり、上位モデルには世界初の3ローターエンジン「20B-REW」を搭載。最高出力280馬力、最大トルク41.0kgmというハイスペックを実現し、滑らかに高回転までまわるドライブフィールは唯一無二の存在だった。大柄なボディと相まって、贅沢なGTとして大いに注目を集めた。

翌1991年にはスバル アルシオーネがフルモデルチェンジ。2代目はSVXというサブネームが与えられ、ボディサイズがひと回り大型化された。注目なのはその斬新なエクステリア。デザインを手がけたのは巨匠ジウジアーロで、グラスtoグラスのラウンドキャノピーやブリスターフェンダーを採用し、独創的なスタイルを実現した。パワートレインには専用開発された3.3L 水平対向6気筒を搭載し、最高出力240馬力、最大トルク31.5kgmを発揮。全車4WDとしたことで、高い高速安定性を実現している。
グローバル戦略で世界をライバルに見据えた2000年代の国産GT

2000年代に入ると世界の自動車メーカーの再編が進み、国産車も世界基準のものが増えてきた。その筆頭がレクサスブランドの日本導入である。もともと北米を中心に展開してきたレクサスだが、その実態はトヨタ車であった。しかしこれを機に世界に通用するプレミアムブランドとして再出発。IS、GS、そしてSCの3モデルでスタートした。そのなかでもGTとして注目すべきはレクサスSC。こちらはトヨタ ソアラをリニューアルしたもので、V8エンジンのパワフルな走りと静粛性の高い乗り心地は、世界でも高く評価されている。また2007年には日産 GT-Rも登場。こちらは高性能なスポーツカーであると同時に、GTカーとしての性能も兼ねたオールマイティな存在だ。

また、プレミアムセダンの走行性能がグローバル基準にまで高められたのもこの時代。前述のレクサスGSのほか、2004年には日産フーガや新型ホンダ レジェンドが発売され、高性能な国産ラグジュアリーセダンが揃った。これらは厳密にはGTカーではないが、いずれもスポーツカー顔負けの高い動力性能と快適な乗り心地を実現し、新しい形のGTといってもいい。その一方で90年代にたくさん存在したクーペは軒並み生産終了となっており、この時代はピュアなGTはほとんど誕生しなかった。スポーツカーブームとともに、GTカーの市場規模も縮小していったのである。
令和の時代に国産GTは存在するのか?

最後に、令和の時代の国産GTカーを考えてみよう。2000年代に入りクーペやカブリオレが激減したことで、当然ながら国産GTも絶滅危惧種になっていく。これは86やロードスターのようなスポーツカーが生き残っているのと対照的といえる。とはいえ、全くないわけではない。現在純粋なGTカーといえるのは、2017年に登場したレクサス LCだろう。豪華絢爛な内外装に5.0L V8(LC500)または3.5L V6ハイブリッド(LC500h)を搭載する。シートは2+2レイアウトとなっており、快適なロングドライブを約束してくれる本物のGTだ。

しかし、もっと手頃な価格で手に入るGTカーはないのだろうか。そこで注目なのがスバル レヴォーグ。レガシィのマインドを引き継ぐスポーツワゴンであり、2000年に発売された2代目は新プラットフォームで走りの性能が大きく引き上げられた。パワートレインは1.8L 水平対向4気筒ターボを搭載し、全車4WD。安定感のある走りは、まさに現代の身近なGTといっていい存在だろう。グレード名には今でも「GT」が残されているのがその証左といえそうだ。

またトヨタ クラウンスポーツなどの高性能でラグジュアリーなSUVも現在のGTにおけるひとつの形。SUVが隆盛を極めているいま、多くのモデルがGTの性質を備えている。このように、ボディタイプは変わってもGTの本質を継承したものはたくさん存在している。カタチは変わっても「GT」のマインドを備えたモデルは今後も続いていくだろう。

ライタープロフィール
1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。
また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。
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