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更新日:2020.01.08 / 掲載日:2017.08.22
【ホンダ】異なる金属同士を組み合わせ軽量化を実現するFSW接合技術とは

goo-net編集チーム
ホンダが2012年の北米仕様のアコードのフロントサブフレームで初採用した、FSW接合技術(Friction Stir Welding=摩擦かくはん接合)は、種類の異なる金属を溶接することなく連続接合する新世代の接合技術です。
ホンダではアルミニウム合金と鉄と性質の異なる2つの金属を接合するために、この研究が進められてきました。
この技術は自動車の軽量化と製造エネルギーの低減を可能にする技術として、「第60回大河内記念技術賞」を受賞した画期的な技術です。
接合時の消費電力が通常のアーク溶接よりも少なく、溶接のように強い光やガスを発生させない、「地球の環境にやさしい」接合技術という特徴があります。
今回は、ホンダの開発した世界初の異種金属接合技術「FSW接合技術」について解説します。
開発チームが苦労の末開発した夢の新技術により、軽量で剛性に優れた夢の新パーツが誕生
FSW接合技術により初めて作られた「フロントサブフレーム」は、エンジン・フロントサスペンション・ステアリングなど重量部品を乗せ、ボディに組み付けるための骨格となる重要なパーツです。
そのため、どうしても高剛性が必要となり、スチール製で重量の重くなるパーツです。
FSW接合技術を導入することで、アルミニウム合金と鉄のハイブリッド構造が実現し、従来の25%の軽量化に成功しました。
取付点の剛性も20%上がり、製造時の必要電力も50%に減少、ボディの軽量化にも繋がり、低燃費、軽快な操縦性能が実現するなど、まさに夢の新技術の誕生です。
そもそも、アルミと鉄を直接接合し足回りのパーツに使うことはタブーとされていました。
それはアルミと鉄が接合した部分に湿気が混じると、「電食」という腐食現象を起こしてしまうからです。
ホンダの開発チームはその弱点を逆手にとらえ、「完全な絶縁ができれば、腐食は起こらない」と考え、新しい絶縁構造を開発しようと研究を重ね、鉄とアルミの直接接触を防ぐ「シール材」を、まんべんなく行き渡らせる方法として「FSW接合技術」を確立しました。
FSW接合技術は、特殊なツールを使い、アルミニウム合金に大きな圧力と摩擦熱を加えながら回転させることで、柔らかくし、鉄とアルミの間に「新しい金属間化合物(Fe4Al13)」を作り出し接着させます。
この技術自体はすでに研究が進められていましたが、腐食などの問題があり実用には至っていませんでした。
独自のシール材の開発により、この接着技術がようやく日の目を見ることになり、軽量で剛性に優れた夢の新パーツの誕生となったのです。
FSW接合を産業ロボットで作業可能にして量産車へも導入
FSW接合技術は、1トン程度の圧力をかける必要があるため、大型の専用接合装置を使う必要がありました。
パーツの生産効率化からも、量産車へこの技術を導入することはできません。
ホンダでは接合に必要な圧力をうまく分散できる、小型の「高剛性Cガンアーム」を開発することで、従来比1/10の設置スペースに産業用ロボットを設置し、各パーツの寸法管理や細かい条件を設定することで量産車への適用も可能になり、高効率・省スペース・製造エネルギー低減に繋がる新たな接合技術を確立しました。
また、接着面の確認のためにレーザーと赤外線を使った「非破壊検査システム」も導入し、品質管理を徹底しています。
さまざま技術と開発チームの想いが詰まったホンダらしい「FSW接合技術」は、今後も次々と夢のパーツを産み出していくことでしょう。