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更新日:2020.01.08 / 掲載日:2019.10.29

【スバル】進化したCVT「リニアトロニック」の構造や仕組みとは

【スバル】進化したCVT「リニアトロニック」の構造や仕組みとは

グーネット編集チーム

リニアトロニックとは、1987年にスバルが世界に先駆け量産実用化した、無段階トランスミッション「CVT」から発展・開発された無段階トランスミッションの理想形です。

今回はスバル「リニアトロニック」に構造や仕組み、開発の背景について解説します。

リニアトロニックの基になるCVTの構造と仕組み

リニアトロニックはスバルが開発したCVTを基に20年以上の研究を経て開発されました。

CVTとは、Continuously(コンティニュアスリー)、 Variable (バリアブル)、Transmission(トランスミッション)の略であり、直訳すると無段階変速機のことです。

CVTは、2つのプーリー(滑車のこと)を金属ベルトでつないだ構造をしています。エンジントルク側がプライマリー・プーリー、シャフトを介してトルクをタイヤに伝えている側をセカンダリー・プーリーと呼びます。

プライマリー・プーリー、セカンダリー・プーリーともに、プーリーの直径を変化させることができるようになっていて、プライマリーが小さくセカンダリーが大きくなるとローギア、その逆になるとトップギアになるという仕組みです。

AT車とCVT車を乗り比べた時の大きな違いは、クリープ現象の有無といえます。CVT車の多くは、クリープ現象がないので、特に上り坂での発進の際などに車が下がらないように注意が必要です。

また、AT車は、ギア(歯車)を使用しているため、車が速度を上げていってギアが切り替わるたびに、わずかにシフトショックが発生します。最近の車ではこのショックに気づかない程度まで抑えられていますが、CVTではそもそもギア(歯車)を使用していないため、滑らかな加速が可能となります。

その一方で、CVTは金属ベルトを使用しているため、変速機自体が重くなってしまい、油圧を送り出す時にエンジン負荷がかかるため、大排気量エンジンの高出力車に対応させるのは技術的に難しいとされてきました。

スバルの開発者が進んだリニアトロニックへの苦難の道

無段階トランスミッションのパイオニアとして登場したスバルのCVTですが、理想形のリニアトロニックに到達するまでには長い年数と苦悩を必要としました。

開発の中で特に苦労したといわれているのが「小型化」です。
CVTは、燃費効率やエネルギー効率に関しては優れた成績を上げてはいましたが、そのままレガシィなどの中型車に搭載すると、室内スペースが狭くなってしまうという欠点がありました。

全ての車種にCVTを搭載することを目指していたスバルにとって、この欠点は克服しなければならない「実用化への壁」です。この壁を突破するためには、ある技術革新が必要になりました。

リニアトロニック完成のきっかけとなったチェーンタイプの金属ベルト

CVTの小型化の壁を突破するきっかけとなったのが、チェーンタイプの金属ベルトの開発です。

従来のベルトがエレメントと積層リングで構成されていましたが、チェーンタイプの金属ベルトは、ロッカーピンと複数のロッカーピンを結んで形成されたものになっています。

この構造変更のおかげで、プーリーの小型化に成功し、さらにプーリー間の距離を8mm短縮することができました。

CVTの小型化によって誕生したリニアトロニック

CVTの呼び名から「リニアトロニック」と名を変えたスバルの無段階トランスミッションは、350N・mのトルクまで伝導するポテンシャルを持つように成長し、4ATに比べ10%、5ATでは6~8%の燃費向上を実現しました。

リニアトロニックのメリット・デメリットとは

リニアトロニックには、チェーンタイプの金属ベルトを採用したことなどによる多くのメリットとともに、デメリットも存在します。
ここでは、リニアトロニックのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

リニアトロニックのメリットとは

従来型のCVTは、プーリーでエレメントを挟み込み、エレメントを押すことでトルクを伝達していました。この方式だと、大きなトルク容量を伝達するためにはベルトを太くする必要があり、結果的にユニット全体が大きくなってしまうという弊害がありました。

しかし、リニアトロニックは、チェーンタイプ金属ベルトの開発によって巻き掛け径を小さくすることが可能になり、ユニット全体のサイズを小型化できたのです。このトランスミッションの小型化は、車全体の開発において、スペース効率を向上させるなどを含めて、非常に重要な要素といえます。

また、従来型の金属ベルトと比較して、リニアトロニックのチェーンタイプ金属ベルトは伝達ロスを減らすことにも成功しており、加速レスポンスが良くなっています。
加えて、チェーンタイプ金属ベルトは通常の金属ベルトと比較して耐久性が向上しています。これまでのCVTが2Lクラスのトルクにしか対応できないといわれていたのに対し、リニアトロニックは、4Lクラスのトルクにも対応可能となっています。

このように、チェーンタイプの金属ベルトの採用により、大きなトルクにも対応できるようになるとともに、ユニット全体のサイズの小型化と、伝達ロスの低減を実現しています。これらがリニアトロニックのメリットといえるのです。

リニアトロニックのデメリットとは

リニアトロニックのデメリットとしては、エレメント式のCVTと比べてノイズが大きいことが挙げられます。
しかしながら、メーカーとしても、リニアトロニックが出た初期から改良を重ね、入念に騒音対策をしており、現在では大きなデメリットとはいえないかもしれません。

また、リニアトロニックが出た初期には、他のCVTと同じように加速時にエンジン回転の上昇に速度がついて来られない、いわゆる「ラバーバンドフィール」に近い傾向がみられました。
しかし、これについてもスバルが改良を重ねており、デメリットといえるレベルではなくなっています。

リニアトロニックの耐久性

リニアトロニックの耐久性

グーネット編集チーム

リニアトロニックは、フォレスター、インプレッサなどに対応したトルク容量250Nmの中容量タイプと、WRX S4などの高出力に対応した高容量タイプの2種類が存在します。WRX S4のエンジンは、最高出力300PS、最大トルク400Nmであり、このハイパワーエンジンに対応できるということは、リニアトロニックが非常に高いレベルの耐久性を有していること示しています。

CVTが出始めたころには、他のメーカーでリコールや不具合報告がなされましたが、スバルのリニアトロニックに関しては、そうした報告はなされていません。リニアトロニックは、2009年に発売されたレガシィ・シリーズで初採用され、すでに走行距離が10万kmを超えた個体も多くなっていることからも、信頼の高さがうかがえます。

チェーンタイプ金属ベルトは、ドイツのシェフラー(LuKブランド)から特別に供給を受けているものであり、これらの点を考慮しても、リニアトロニックは通常のATやMT車と同じように、丁寧な運転を心がければ20万km以上も故障せずに走ることが可能となるのです。

まとめ

2009年にレガシィに搭載されたリニアトロニックは、究極の無段階トランスミッションの名に恥じないものです。しかし、これで満足しないのがスバルの開発チームです。

リニアトロニックを含め、スバルの車は今後もさらに研究開発が進められ、より快適で安全な車が誕生し続けることでしょう。

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グーネットマガジン編集部

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