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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.04
平成20年の名勝負じゃ!! タントvsパレット 空間追求軽自動車どっちが使える!? 徹底対決

パレットには全モデルフロントスタビライザーが装着され、また、硬めのセッティングで高重心感はタントよりも抑えられている
【本記事は2008年3月にベストカーに掲載された記事となります。】久しぶりにワクワクさせる軽自動車のガチンコ対決。両車とも全高1700mm超のスペース指向のボディを持ち、スライドドアが備わる。ただし、パレットでは両側にスライドドアが付き、タントは左側のみがスライド式で右側は横開き。そのかわりタントの左側は中央のピラーを前後のドアに埋め込み、両方を開くとフルオープンになる。一長一短あるのは当然だが、両車が意識したのは子供。この2車はカタログまで似ていて、小学生くらいの子供と乳幼児が掲載されている。余談だが、チャイルドシートは写真に入っているが、ジュニアシートは見当たらない。これは問題アリだ!それはともかく、小学生と乳幼児の乗降を意識したうえでのスライドドアといえる。小柄な小学生が自分で乗降するぶんには、両車とも問題はない。しかし、親が乳幼児を抱えて乗り降りする場合には、不満が生じる。軽自動車の全長ではスライドドアの間口が狭まり、体を捩る必要があるからだ。そこでタントは間口を広く確保すべく、ピラーレスの構造をとったというわけだ。
大開口のタント!? 電動スライドのパレット!?

スズキ・パレットだ。タントは左側のスライドドアにBピラーが内蔵されており、フロントドアと同時にあければご覧のとおりの大開口!! これが新型タントの最大の特徴でもあり、魅力でもある。対するパレットは両側スライドドアを採用するのがポイント。タントの右リアドアは一般的なヒンジタイプとなっている
確かにタントの間口は広いが、子供を抱えた状態で前後のドアを開くのは大変だ。そこで便利なのが電動スライドだが、タントにこの装備が付くのは最も安価な仕様でも標準ボディのXリミテッド。価格は132万3000円で、ミラーサイクルエンジンを積んだデミオ13CVより1万3000円高い。95万~110万円というハイルーフ軽自動車の売れ筋ゾーンを大きく逸脱する。売れ筋のLやXにも5万円前後で電動開閉機能をオプション設定すべきだ。つまり現状では、高価なXリミテッド以上でないとタントが想定する乗降性のメリットが得られないということになる。パレットも最安値のGには電動スライドが付かないが、123万9000円のXでは左側に標準装着。Xにはサイドエアバッグ、エアコンのフルオート機能、キーレススタートシステムまで付き、Gに対して12万6000円の価格アップながら16万円相当の装備が加わる。間口の狭さはどうにもならないが、電動スライドドアの恩恵はパレットのほうが受けやすい。また、パレットなら電動開閉が非装着のGでも、ピラーを内蔵しないぶんだけ操作力が軽い。したがってスライドドアの勝敗は、タントの電動開閉機能が限定的な今、この部分ではパレットの勝ちとしたい。大開口がウリのタントに身も蓋もない話だが、タントの右側に付く横開きドアが使いやすい。2490mmのホイールベースで間口が広く、ドアも約90度まで開くからだ。「横開きで充分でしょう」と開発者にツッコミを入れたら、「ピラーレスならインパクトもありますし……」との返答。つまり、ガバッと開いて感動させるサプライズの要素も多分に含まれるわけだ。このあたりの事情はパレットの両側スライドドアも同じだろう。子供の乗降では床の高さも大切。路面からリアステップまでの寸法は、タントが350mmでパレットは340mmだ(実測値)。パレットの開発者は「床を徹底的に叩き、スライドドアを装着しながらワゴンRのサイドシルより低く抑えました」と。この優位性は荷室にも持ち越され、路面から荷室床面までの寸法はタントが580mmでパレットは530mmと低い(実測値)。その結果、パレットは室内高でも有利になり、全高はタントが15mm高いのに、室内高はパレットが10mm上まわっている。
自慢の広さ勝負、どっちが勝ちなのか!?

パレット:タントよりも若干だが座面長、背もたれ高ともに小さいものの、背もたれは充分肩口まで高さがあり、しっかりと座れるリアシートだ
次は居住性だ。まずはインパネだが、タントはメタル調パネルが明るい雰囲気を生み出し、パレットはセルボを連想させるスポーティな印象。質感は互角だ。メーターパネルは、タントが比較的高い位置の中央に配置して、見やすい印象を受けた。フロントシートも互角。両車とも座面の奥ゆき寸法を充分にとったベンチタイプで、快適に座れる。ルーフの高いボディだから頭上の空間も広い。そしてリアシートでは、足元空間の広さに驚く。身長170cmの大人4名が乗車した状態で、タントのリアシートに座った乗員の膝先空間は握りコブシ4つ分。前後方向の余裕にかぎれば、レクサスLS600hLにはおよばないものの標準ボディのLSなら充分に上まわる。2490mmのホイールベースを生かした結果だ。その点、パレットはホイールベースが90mm短く握りコブシ3つ半。それでもLSと同等だから、充分といえるだろう。リアシートの座り心地は、勝敗が微妙。座面のボリューム感なら座った時に体が沈みやすいパレットだが、着座姿勢の落ち着きではタントが勝る。座面の奥行きには両車とも余裕を持たせ、トータルで見ればリアシートの居住性は互角。それでも一般受けするのはパレットだろう。リアシートの格納方法も、両車とも似ている。床面へ落とし込めば、ボックス状の広い荷室になる。この時の荷室長は、タントの1385mmに対してパレットが1405mmと少し長くなっている。シートアレンジで注意したいのは、リアシートを格納した時の運転姿勢だ。タントでは身長170の乗員が不満なく座れるが、パレットでは少しスライド位置を前に寄せねばならない。タントに比べて前後のシート間隔が狭く、格納したリアシートがフロント側の後端に当たるのだ。長身のユーザーが購入する時は、タントも含めて格納状態での運転姿勢を確かめたい。
走りの性能どっちの勝ち!?

パレット:タント、パレットともに明るく開放感あふれるインテリアが特徴的。タントはセンターメーターを採用するのに対し、パレットは一般的なレイアウトとなっている
走行性能も比べよう。パレットはメーカー主催の試乗会前だったので、近所のディーラーをハシゴして試乗をしてきた。エンジンは売れ筋のNA。車両重量は両車とも最も軽いグレードで900kgだから、動力性能が不足気味。発進時の余裕はパレットが勝ると感じたが、その後の速度上昇が緩慢だ。初期段階のアクセル開度を大きく設定している。したがって4速AT同士だと加速性能は互角。もっともタントには無段変速ATのCVTも用意され、これならエンジンパワーを有効活用できて加速も滑らかだ。ただし、CVTが付くのは最も安価なグレードでも先に挙げたXリミテッド。パレットも含め、重量級の軽自動車なのだからCVTをもっと幅広く用意してほしい。走行安定性は、高重心の軽自動車とあって、両車とも後輪の安定感を優先させたセッティング。操舵感は少し鈍めだが、クルマの性格に合っている。この点を踏まえて比べると、タントはボディの傾き方が大きめで腰高感が強い。これはムーヴにも当てはまる特徴で、スタビライザーが最上級のターボ搭載のRSのみとなる点が影響。いっぽう、パレットはフロント側にスタビライザーを装着してボディの傾き方を抑制させた。主力グレードが履くタイヤも、タントの13インチに対して14インチだから踏ん張りがきく。数あるスズキの軽自動車のなかで最もバランスがよく、ノーマルエンジンの4速ATという売れ筋の組み合わせでは、パレットのほうが走りは勝る。ただし、乗り心地がいいのは13インチタイヤのタントだ。さて、両車のどちらを選ぶかだが、軽自動車の価格を踏まえたグレードとなると、パレットのまとまりがいい。ただし、先に述べたリアシートを格納した時の運転姿勢は要注意だ。また、今後タントにスライドドアの電動格納機能が5万円程度でオプション設定されると、価格の面から互角の選択が可能になる。タントは現時点では未完成な部分もあるが、片側スライドでピラーレスという凝った機能を持つぶん、秘められた可能性も大きいように思う。もう少し乗りまくって、次号で勝敗を決したいと思う。
直撃取材 鈴木修会長、強気のコメント

パレット:片膝をつくウメキは、荷室フロア高のチェックをしているのであった。左のタントと比べ、右のパレットは荷室フロアが低いことがおわかりいただけるだろう。実測値ではタントが580mm、パレットが530mmである
パレットの月販目標台数は6000台。ライバルタントの月販目標8000台に対して控えめな数字に感じられるが……。「私はね、数字の下方修正が大嫌いなんですよ。ハハハハハ」と豪快に笑い飛ばすのは鈴木修会長。つまり、6000台は本当に控えめな数字で、もっと売れる目算はあるようだ。パレットは、ダイハツタントを大いに意識したクルマだということは間違いないと思うのだ。「ダイハツさんはね、Bピラーごと開くスライドドアをやってきたけど、右側は普通のドア。ウチのは両側スライドドアで、お客さんにはこっちのほうが便利だと思っていますよ。右側からも乗り降りするだろうし、荷物の積みおろしでも絶対に便利。あとはね、床が低いのがウチのクルマの強みですよ」と鈴木会長。
CHECKPOINT タントvsパレット売れっぷりチェック

タントの発売開始は2007年12月17日。ちょうど年末年始の長期休みを挟む期間となったのだが、1月21日までの約1カ月での受注台数は約2万4000台。月販目標台数8000台の約3倍で、実質的な営業日数が少ない期間ということを考えれば、順調な立ち上がりといっていいだろう。販売比率はノーマルタントが約40%、タントカスタムが約60%でカスタムがややリードするかたちとなっているのが特徴的。カスタムにのみ設定されるターボエンジン搭載車RSと、標準車カスタムともにNAの上級グレード「Xリミテッド」にはCVTが組み合わされているが、CVT車の販売比率は約65%となっており、上級車が多く売れていることが読み取れる。が、ターボ車の比率は少ないということだ。ちなみに、下位グレードのトランスミッションは4速ATで、試乗してみたのだが、両車を比較すると確かにCVTのスムーズさ、トルクバンドを有効に使ったドライバビリティの高さは魅力的だと感じたが、4速ATでも充分に上質なドライバビリティを感じることができた。けっして4速ATはCVTよりも低級ではないな、と実感した。ただ、燃費に関してはCVTが一歩リードする。購入ユーザーはタントの狙いどおり子育て層が60%と最も多くなっている。購入の決め手は「Bピラーレスの大開口の利便性」、「圧倒的な室内空間」などが上位となっている。さてさて、室内空間でタントとがっぷり四つのパレットの登場で、タントの売れゆきに影響が出るのか!? 今後に注目だ。