中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.03
NEWクラウンマジェスタにみる…… トヨタの高級車作りは錆びついていないか?
新型マジェスタはセルシオユーザーを納得させられるか?
セルシオ後継を謳うには迫力に欠けるリアビュー。これが上品でいいという意見もあるかもしれないが、ユーザーへの訴求度という点では物足りないかも?
【本記事は2009年5月にベストカーに掲載された記事となります。】新型マジェスタというクルマ、「セルシオのユーザーを引き受ける」という超重大な使命を持たされていた。トヨペット店のベテラン営業マンによれば「レクサスLSにいかない人も多いんです。それなら、とマジェスタの試乗車をお持ちするのですが、首を縦に振ってくれません。すべての点でセルシオに届いていないといわれます。新しいマジェスタ、どうでしょう?」。果たして新型マジェスタはセルシオに乗っているユーザーを納得させられるだろうか? ジックリとチェックしてみたい。■スルメのようなクルマ!?まずエクステリア。いまだ3代目セルシオのオーナーである私からすれば「厳しいですね!」。先代マジェスタにも共通することながら、マジェスタってアメリカ車流なのだ。セルシオのデザイン、いうまでもなくドイツ車流。特にボディ後半のボリュームを比べると圧倒的に違う。フロントグリルよりヘッドライトが上の位置にあるのも「高級車の法則」(これを守ってないクルマ、売れない)からハズしてます。レジェンドがアコードクラスのクルマに見えるように、新型マジェスタもせいぜいクラウン級にしか見えません。
インテリア
ウォールナットを多用したインテリア。運転席に座って即、普通に走り出せる使いやすさがトヨタらしい
インテリアも「う~ん」。本杢を使ってるのだけれど、面積が広すぎでしょ。色合いもイマイチ。樹脂に見えてしまいます。加えて「座った時の室内の広さ感」に決定的な影響を与えるフロントガラスの左右幅はセルシオより狭い。10年前によく比較した「セルシオvsシーマ」を思い出す。マジェスタとして評価すれば「正常進化」なのだろうけれど「偉そう指数」(高級感と言い換えてもよい)と価格のバランスという点で厳しいと思う。なんせ最も安い『Aタイプ』で610万円もするのだから。試乗前に開発担当者とそんな話をしていたら「とにかく乗ってみてください。とっつき難いかもしれませんけど噛めば噛むほど味が出てくるスルメのようなクルマですから」。マイナスイメージを引っ張りながらシートに座った、と思ってほしい。するとどうよ! 旦那仕様のシートと思えないほど「しっかり感」がある。今までのシート、高級飲み屋のソファのごとくふにゃふにゃ大王でしたから。こらもう正統派のよいシートだ。なるほど少し期待していいのかもしれません。
今までのトヨタとは異なる乗り味
GタイプFパッケージ(790万円)はリアセパレートタイプ。左側はオットマンつきで快適至極!
■今までのトヨタとは異なる乗り味Dレンジをセレクトして走り出すと「あれれ?」という印象はさらに拡大していく。今までのトヨタ流高額車とまったく違うのだ。トヨタ製FR車のサスペンションといえば、セルシオも先代マジェスタもレクサスLS460も「ブッシュで乗り心地を確保する」というアプローチだった。その結果「路面状況で騒音レベルが大きく変化する」という決定的な弱点を抱えてしまう。良好な路面だと隣の人の息づかいまで聞こえるほど静かなのに、荒れた路面に入った途端、明らかに騒音レベルも音質も大衆車のようになる傾向。乗り心地も平坦路だと超をつけたくなるほど滑らかなのに、路面の継ぎ目に代表される中程度のデコボコを通過すると「ぶるん!」とか「ドシン」系の安っぽさを感じさせてしまった。対応策でブッシュをいちだんと柔らかくするのだろう。トヨタ製FR車の多くはステアリングのセンター付近の応答性が悪く、当然ながら高速域での直進安定性もイマイチ。簡単に言うと「レベル低かったです」。されど現行クラウンで大幅に足回りの考え方を変え、ブッシュに頼らず良質のショックアブソーバを使うようになりました。
大いに満足できる高級車
後席センターエアバッグ(GタイプFパッケージ)などエアバッグは最大11個!
■大いに満足できる高級車新しいマジェスタは、クラウンから始まった流れをイッキに加速した感じ。笑っちゃうくらいよいのだ。それじゃ、と頑張って「アラ探し」をしてみました。見つけたら“アラ”は、急転舵した時のパワステのアシスト量が不足していることと、ベンツやBMWと比べ、中程度の入力を受けた時の「しなやかさ」で届いていない程度。重箱のスミをツツくようなもので、セルシオと比べても圧倒的にマジェスタの総合バランスのほうが高い。なるほど「噛めば噛むほど旨い」であります。具体的に誉めてみよう。感心するのは「上質な乗り心地とステアリングインフォメーションを相当高いレベルで両立させている」こと。このふたつ、相反する。乗り心地をソフトにすればハンドリングが鈍くなり、スポーティな挙動を実現すると乗り心地が硬くなってしまう。両方のレベルを上げようとすれば、強固なボディ+滑らかに動くショックアブソーバを使うしかない。新しいマジェスタに乗っていると驚くことばかり。乗り心地いいのに狙ったラインを5cmと外さずトレースできるし、何より楽しいのだ。騒音レベルの変化も見事に少ない! 今回はドライ路面とウェット路面もあったのだけれど、騒音の絶対量や音質の変化はベンツに匹敵するほど。4.6L、V8+トヨタご自慢の8速ATの滑らかさや、圧倒的に高い動力性能も文句なし! このシャシーと「腰が抜けるくらいカッコいいボディ」を組み合わせてレクサスGSを作ったら、ベンツEクラスやBMWの5シリーズなど真正面からブチ破れるクルマになると思います。新型マジェスタ、デザインさえ気に入った人なら大いに満足できるかと。【結論】スタイル、質感には不満はあるが、クルマのハード面の出来は文句なし。乗り心地、シートは実に快適で、この点、トヨタの高級車作りは確実に進化している。しかし、所有満足度はよいハードだけでは得られないのも事実だ……。