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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.03
ロバート・デ・ニーロもかけつけた!? NEWレガシィ走ってどうだ? 大注目の初試乗レガシィB4&レガシィツーリングワゴン
大変革の意義を問う NEWレガシィの方向性に過ちはないか?
ワゴンとB4は同じ内容。居住性が飛躍的に向上した
【本記事は2009年7月にベストカーに掲載された記事となります。】どんな商品でもそうだけれど、4世代20年を順調に成長するのはとっても難しい。国産車の歴史を見ると、ヒット車もだいたい3世代目くらいで息切れする例が多いのだが、レガシィはその意味では希有な成功例。初代が確立した4WDスポーツワゴン&セダンというコンセプトを変えることなく、モデルチェンジごとにそのファンを増やし、専門家筋からも安定して高評価を得てきている。ところが、その成功体験こそが、まさに“死神のキス”。知らず知らず破局に近づくパラドックスなのだ。クルマがそこそこ安定して売れていて、しかもクロウト筋の評価も高ければ、作り手も売り手もあえて冒険をしようとしない。ましてや、レガシィは富士重の柱、変えようったってまわりが許さない。特に、コアなレガシィファンを納得させるのは至難のワザだ。その状況下でエンジニアに何ができるかというと、それこそ死に物狂いで技術的な改善に没頭するしかない。コンセプトをいじらず、パフォーマンスやハンドリングなどの技術的な改善に徹するなら、誰からも文句は出ないからだ。
全長4730×全幅1780×全高1505mm、ホイールベース2750mmのB4。従来型よりもかなり大きくなったが、世界的にみてCセグメントセダンとしては標準的なサイズでもある
ところが、ここが怖いところなんだけれど、こういうモデルチェンジを重ねてゆくと、徐々にユーザー層が煮詰まってくる。熱烈なファンはつくのだけれど、そのマニア濃度が高まるごとに一般ユーザーが減ってゆき、ふと気づくと販売台数がジワジワ落ちている。クルマもいいし、ユーザーからも好評。誰も間違ったことをやっていないのにね……。今度の5代目レガシィは、まさにそのパラドックスからの脱却を目指したクルマといえる。デビュー早々聞こえてくる巷の声は、「大きくなりすぎ」「北米市場向けか?」「2Lの消滅は残念」など、なかなか辛口の評価が多いようだが、もちろん作り手としてはそれは承知のうえ。既成のレガシィ像を打破しなければ、緩やかな衰退しかないのはわかっているのだから、まさにここが正念場なのだ。だから今度のレガシィは従来からの既成概念にとらわれずに評価することが大事だと思う。ボクのファーストインプレッションは、変革を指向した点だけでまずはマルだ。具体的には、スポーツ/パフォーマンス指向の呪縛からようやく脱皮して、ボクがレガシィ本来の持ち味と考える、安心/信頼のクルージング指向に走りのテイストを方向づけていることを評価する。つまり、今度のレガシィは、スポーツワゴン/セダンを卒業して、ごくごく“まっとうな”ワゴン/セダンに生まれ変わったといえるんじゃないかな?
日本車にライバルなし! 相手はヨーロッパ車だ!!
全長4775×全幅1780×全高1535mm、ホイールベース2750mmのツーリングワゴン。アウディA4よりも全長は長く、幅は狭く、背が高いスタイル。価格は236万2500~343万8750円
価格はかなり違うんだけど、B4はBMWの3シリーズ、ワゴンはアウディA4アバントあたりを念頭において、今度のレガシィの走りを考察してみようと思う。
旧型と段違いな室内の広さ
レガシィ:ニューレガシィのインテリアは、従来型よりも質感が下がった印象を受けた。リーズナブルな価格とクオリティのせめぎ合いがみてとれる。ただし、広さ、快適性は飛躍的に向上している
さて、まずはB4だけど、写真で見ても実物と対面しても、ひと回り以上サイズアップしているなぁというのが第一印象だ。それを強調しているのが、全体に“コッテリした”デザイン手法。どちらかというとアッサリ系だった先代とは対照的に、存在感を強く主張するスタイリングを目指しているように見える。寸法諸元でいうと、ホイールベースで80mm、全長で95mm、全幅で50mmの拡大となるが、これは現代のCセグメントセダンとしては平均サイズ。BMW3シリーズと比べると、ホイールベースは10mmしか違わないし、全幅は逆に3のほうが20mm広い。さすがに、オーバーハングの短さがウリのBMWだから、全長は200mm近くレガシィのほうが長いけれど、まぁ、標準的なパッケージ寸法といっていい。そのわりに「なんかデカく見えるなぁ」と感じる理由は、たぶん80mmアップした全高にある。1505mmという全高は、BMW3シリーズより65mmも背が高い。結果として、ウエストラインが高めでボディ全体が“肉厚”なイメージとなり、これがそのスペック以上にボディを大柄に感じさせている。ただし、大きくなったことは悪いことばかりじゃない。もちろん、道の狭い都市部では1780mmに達した全幅はあまり嬉しくないけど、そのかわり今度のレガシィは室内が画期的に広広快適になった。左右シート間で30mm、前後シート間で68mmも拡大された室内の開放感は5シリーズにも優る感じ。天井が高くなったぶんヒップポイントも40mm上がっているから、ドライバーシートからの景色もスポーティ感覚の強い3シリーズとはだいぶ違う。ただし、インテリアのクオリティについては、残念ながら旧型より後退した部分もある。インパネやシート、ドアトリムなど、インテリアのデザインそのものはそれなりに立派で見栄えもいいのだが、インパネ素材が全面ハード樹脂に後退したのはガッカリ。コスト低減圧力が強いのはわかるが、プレミアムセンを目指すクルマがここを譲っちゃぁダメでしょう。これはアウディA4に乗り換えると一目瞭然。もちろん価格は倍近くも違うけれど、レガシィが目指すべきクオリティがそこにある。ビシッとした建てつけのよさと、指で押すと軽くへこむソフトなインパネはプレミアムセダンの必須条件。個人的には、電動パーキングブレーキよりこっちにコストを振り向けてほしかったな。
CVT効果でレスポンス向上
アウトバックはフラット6、3.6Lエンジンも用意
走りっぷりに関しては、従来からのレガシィの持ち味である“スポーティなハンドリング”をあまり強調せず、落ち着きのある走りを目指しているように感じられた。最初に試乗したのは、NA2.5Lエンジン(170ps)搭載のワゴン2.5iだったが、低中速トルク重視で仕上げられたNAエンジンと新開発のCVT(リニアトロニック)の組み合わせは、これまでのレガシィのイメージとはだいぶ違うマイルドな印象だ。従来だと、NAのレガシィは2Lも2.5Lも4ATが足を引っ張ってそれほど好印象はなかったのだが、今度のCVTは素直で軽快な走りに大いに好感を持った。市街地レベルだと、アクセル開度の小さい状態では回転を抑えめにトルクの厚いところを上手く引き出してくれるし、ちょっと加速したい時のレスポンスも4ATよりぜんぜん機敏。「あれ、スバルのNA2.5Lってこんなにトルクフルだったんだ」って、思わず見直したほどドライバビリティが向上している。また、高速クルージングではエンジン回転数を思いきって低く抑えてくれるから静粛性も向上。もちろん、これは燃費にもそうとう効果的なはずだ。重箱の隅をつつけば気になるところもあるが、まぁこれはすぐ改良されると思う。まずはメデタイことと評価したい。サスペンションの設定も、標準ダンパー(サプライヤーはカヤバとのこと)付きのこのグレードは乗り心地主体のセッティングで、ある意味“レガシィ的”ではないマイルドな乗り味となっている。クレードル型サブフレームにしっかり固定されたステアリングの操舵フィールだけは普通のクルマとひと味違っていて、大舵角域までノーズがよく追従する“キレのよさ”はさすがと思わせるが、それ以外はいたって普通。アウディA4アバントと乗り比べると、欲をいえば乗り心地の“質感”にレガシィならではの味がほしいところだが、価格(230万円台から)を考えればグッドバリューであることは間違いない。
ターボは従来同様の乗り味
昨年3月に登場したアウディA4アバント。最も安いのはターボの1.8TFSI、FF、CVT車で440万円
これに比べると、次に乗ったB4GTはイッキにスポーティ度アップ。従来からのレガシィファンを満足させるためにビシッと仕上げられている。新たにタービンをエンジン下に配置した新しい2.5Lターボは、285ps/35.7kgmとスペック的には従来の2Lターボと大差ないのだが、ドライバビリティはまったくの別もの。1500rpm足らずの低回転域から充分なトルクを供給し、トップエンドの6000rpmにいたるまできわめてリニアな吹け上がりをみせる。ややピーキーだった2Lターボから乗り換えるとパワーダウンしたような錯覚をおぼえるが、現実にはよりストレスなく同等以上の加速を提供しているだけ。ハンドリングについても、ビルシュタイン装着のSパッケージはいかにも“レガシィ的”な味わいだ。新採用の電動パワステはソリッドな操舵フィールがスポーツ心をくすぐるし、フワついたところのない接地感たっぷりのサスペンションも固めながらいい味を醸し出している。スポーツ度限定で比べると、このB4GTは3シリーズよりもあるいは上かも。BMWは335iでもわりとしなやか系のサスペンションで、スポーツというよりはクルージング指向だから、ワインディングをぎんぎん飛ばしたいなんていうニーズにはむしろレガシィGTのほうがふさわしいのだ。