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更新日:2020.07.21 / 掲載日:2017.12.01
モンスタースポーツのスイフトスポーツ M19 S/Cは痛快この上なし!
さすがファクトリーチューン

見よ! このド迫力のエンジン!
【本記事は2011年5月にベストカーに掲載された記事となります。】1年半ほど前、モンスター田嶋のファクトリーを取材するとともに、スイフトスポーツベースのチューンドカーを試乗するという企画をページにした。その際に試乗したスイフトスポーツは、カム、ポート、ピストンなどに手を入れたNX16という仕様と、そこにさらにスーパーチャージャーを追加したSC16の2台。どちらも、なんのストレスもなくリミットの8000rpmまで吹け切るリニアなパワーフィールが印象的で、さすがファクトリーチューン(だってスズキのWRカーはここで製作されていたんだぜ)は違うなぁ! という感動を味わったのを覚えている。
最終発展型モデル

こちらは1.9LNAエンジン メカにうるさい鈴木直也氏をも唸らせたM19は珠玉のエンジンフィール ボアをノーマルのM16Aに対して7mm拡大し1.6Lから1.9Lに排気量アップさせたM19エンジン。それにROTLEXスーパーチャージャーを装着(写真左上部分)。エアクリーナーが直接冷気を吸えるように巨大なカーボン製のエアクリーナーボックスを装着。赤い大口径のパイプ類も迫力を倍加。エンジン内部は匠の技で研磨、バランス取りなどがされている
今回試乗したのは、この2台のいわば最終発展型といえるモデルだ。もっとも大きな違いは、ボアをノーマルの78mmから85mmまで拡大し、排気量を1.9L(1884cc)に拡大していること。スイフトスポーツのM16A型エンジンブロックは最近では珍しいウェットライナー構造だが、ボアピッチギリギリまで追い込みやすいこのタイプにしても、85mmのボアはホントに限界らしい。できれば、キリのいい2Lにしたかったところだが、クランクに手を入れるとコストが大幅に膨らむことから、今回はストロークは83mmのまま1.9Lにとどめている。いっぽう、スーパーチャージャー付きのほうは、形式をルーツ式からROTREXの遠心式へチェンジ。過給システムが全面的に変更された。これは遠心式コンプレッサーのほうがサイズや配管の取り回しなど、パッケージングの点で有利なことが選択理由。遠心式コンプレッサーは低速域の過給圧立ち上がりでルーツ式より不利だが、そこは排気量拡大によってカバーできるという計算だ。まずはNAのM19NAから試乗してみたが、「300ccの排気量アップは想像以上に効果的!」というのが第一印象だ。以前の1.6Lに試乗した際は、軽量化されたフライホイールの影響もあって、発進時のクラッチミートにやや気を遣ったものだが、これはノーマル以上にずぼらな運転でOK。1000rpm以下で完全にクラッチミートしても苦もなく加速。そこからグイッとアクセルを踏み込むと、3000rpmあたりから吸排気系の脈動が気持ちよく揃ってきて、クォーンとイイ感じに伸びるゾーンがやってくる。このへんの加速感は「うわっ、トルクあるなぁ!」と思わず声が出ちゃったくらいで、1.6Lとはまったくの別物。そのまんま、まったくストレスなく7000rpmのレッドゾーンに飛び込んでしまう。ウレシイ誤算は、試乗前に危惧した排気量アップにともなう弊害がほとんど見られなかったことだ。多くの場合、チューニングで排気量を拡大すると、トルク感は出るものの吹き上がりが重ったるくなったりする。以前に乗った1.6Lは、低速域はやや非力だけどその代わりトップエンドではカミソリのようにシャープで、このNAスポーツエンジンの醍醐味ともいえるキャラが失われないかが心配だった。しかし、17.8kgmから21.0kgmに増強されたトルクは、そういう懸念を吹っとばすインパクトを持っていた。もちろん、7000rpm近く回した時のフィールでいえば、やっぱり1.6Lのほうが澄み切った音色で気持ちイイ。これはこれで依然として価値があると思う。しかし、1.9Lはそこに到達するまでのスピードがまったく別次元。まさにチカラで圧倒するという表現が相応しいような迫力がある。これを一回味わっちゃうと、1.6Lはシャープなんだけれども、ちょっとパンチ力の点で物足りなくなってしまうに違いない。M19NAのスペックは前バージョンの過給仕様SC16とほぼ同等の172ps/6600rpm、最大トルクではむしろ上回っている。300ccの排気量アップは、以前のルーツ式スーパーチャージャーを上まわる効果があったというわけだ。
SCはロードカーの範疇を飛び越えている

スーパーチャージャーはターボのようにラグがなく、レスポンスも抜群!
もう一台のM19スーパーチャージャー仕様は、これまでモンスターが製作してきたどのスイフトスポーツよりもケタ外れのパワーを持っている。ベンチで正確に計測したスペックは、230ps/7600rpm、24.6kgm/5800rpm。ほとんどノーマルの2倍までパワーアップされている。ポイントになるのは、最初に述べたとおりROTREXのC30型遠心式過給器。これは、ターボチャージャーのコンプレッサー部分をベルト駆動にしたようなシステムで、ルーツ型S/Cとターボの中間的な過給特性を持っている。走りっぷりは、これはもうロードカーの範疇を飛び越えたジャジャ馬といっていい。
さすがのファクトリーチューン

JWRCのチャンピオンマシン、スイフトスーパー1600が街中を走っていると錯覚するようなカッコよさが魅力
トルクカーブはルーツ型S/Cほどフラットではなく、2000rpmを超えたあたりから急速に立ち上がって5800rpmのピークを目指す曲線を描く。実際に乗っても加速感はまさにそんな印象で、3000rpmあたりから別のエンジンが始動してドカーンと蹴飛ばされるように加速してゆく感覚は、高ブーストのターボチューンにもちょっと似たフィーリングだ。全開で踏むと3速くらいまではそれこそ各ギアはアッという間に吹け切り、シフトアップがまぁ忙しいこと……。最終減速比を2割くらい速くしてほしいところだ。さすがにこのレベルまでパワーアップすると、最高速度はたぶん220km/hは超えるだろうから、シャシーや空力にもそれなりにきちんと手を入れる必要がある。今回の試乗車では、バネ・ショック・タイヤはすべてそれなりに固められているし、特製フロントバンパーやJWRC仕様と同形状のリアウイングなどリフト対策にも手抜かりはない。さすがにファクトリーチューンだけあって、エンジンだけが猪突猛進しているわけではない。
完成度の高いパワーフィール

こんな手の込んだモデルは現在では貴重
しかし、ガンガン踏んでそのパワーを引き出すほどに、スイフトベースのチューンドカーとしてはこのへんがほぼ限界かなぁという思いもつのる。最近はトシのせいかジャジャ馬に乗ってると疲れちゃうもんで、個人的にはM19NAの完成度の高いパワーフィールを選びたいと思ったが、このご時世では貴重な存在だ。
モンスター田嶋のファクトリーの面白いところ

M19NAの完成度の高さと、そのS/Cバージョンのジャジャ馬っぷり。それが同じ工場から出てくるっていうのがモンスター田嶋のファクトリーの面白いところ。この工場には、まだまだいろんな秘密の引き出しがありそうだね