御大・三本和彦がNEWアベンシスを斬る！　英国帰りのよくデキワゴン上陸

【本記事は2011年8月にベストカーに掲載された記事となります。】乗っていると「クルマ通」だと思われる、そんな評価を獲得していたのが、’03年10月から昨年の2月まで販売されていた先代アベンシス。開発からチューニング、テストなどはすべてヨーロッパ。生産もトヨタの英国工場で行ない、その硬質な乗り味は「欧州車以上に欧州車らしい」と、クルマ好きからは高く評価されていた、まさに隠れた名車といえるクルマだった。そのアベンシスの新型が再度日本に導入されると発表されたのが6月24日（本来は5月24日の予定だったが、東日本大震災の影響で延期）。英国トヨタのバーナストン工場で生産され、40日間かけて日本に船で輸送。9月19日から全国のトヨタ店、トヨペット店、ネッツ店にて販売が開始される。その先代同様の高いデキが期待される新型アベンシスを、御大・三本和彦がチェック！ はたしてどんな感想を抱くのか？

キャラチェンジでしなやかな乗り心地を獲得「乗ってみて驚いたのは、こらずいぶん乗り心地がいいクルマだなってこと。トヨタの作るクルマじゃクラウンに次ぐんじゃないかい？ しかも後席の乗り心地もいい。そりゃ前席と比べりゃ前席のほうがいいけど、後席もしなやかに路面の凹凸をいなしてくれますよ」試乗を終えた三本御大がまず語ったのがコレ。さらに、「こういうのに乗るとトヨタってのは、いろいろ引き出し持ってるなって思わされますよ。これだけできるなら、プリウスの乗り心地もどうにかできなかったのかね（苦笑）」と三本流にベタぼめ。ともすれば「足が固い」と評価されがちだった先代とは違う方向のセッティングがされていることは明らかだ。いいぞ、アベンシス。「向こう（海外）で売ることを目的とされたクルマだから、5ナンバーサイズに収まらないのは残念だけど、まあ、今日乗ったかぎりでは、あんまり大きいとは思わなかったですよ。ボディ自体は小さかないけど、そう思わせるってのは悪くない」

新型アベンシスのボディディメンションは、全長×全幅×全高＝4765×1810×1480mm。先代に比べ全長、全幅とも50mm拡大されている。確かに小さくはないが、先代比で45mm低められた全高もあって、サイドビューは伸びやかな印象になっている。ユーティリティ面ではどうなのだろうか。「リアの座面長はだいたい38cmってところで大きかない。これでアップライト気味に座らせて、膝もとの余裕を出そうってんでしょうが、確かにユッタリしてますよ。荷室も後席を立てた状態でも奥行きが110cmほどあるから充分でしょう。リアゲートのグリップがふたつついてるのもいい。これは僕がずっと言ってたんですよ、女性は両手で閉めることが多いから、ふたつ付けるべきだってね。ウインカーレバーが左側ってぇのは日本で売る以上どうにかしてほしいけど、まあ、総じて悪くない印象です」

デキ自体に不満ナシ。が、もう少し色気が辛口の三本御大にしては珍しく（←失礼）、おホメの言葉が多かった新型アベンシス。気になる点はないのだろうか。「走るってことについちゃあ不満はない。乗り心地はいいし、エンジンパワーも充分。変速は滑らかだし、室内も静か。やるなあって感じです。ただチョイと色気が欲しいなぁ。パノラマルーフとかを付ければ外観に遊び心が出るし、内装も少し普通すぎですよ。これで250万ってぇなると……。220万～230万円くらいなら売れると思うけど、今の状態だとやっぱり一部のクルマ好きが選ぶクルマなんだろうねぇ」とのこと。トヨタ自身も月販目標を300台と控えめな数字にしていることから、大ヒットは考えていないようだが、確かに内装はウッドとかで色気を出してもいいかも。チト惜しい。とはいえ、クルマのデキ自体は高いレベルでまとめられた新型アベンシス。欧州の風が感じられるこのクルマは7月から10月までの期間限定生産（日本仕様）だ。販売終了後に「いいクルマだったのに」と悔しがらないために、今からチェックしておこう。

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