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更新日:2019.01.06 / 掲載日:2017.11.30
ゴルフに追いつき、追い越せを念頭に開発されたオーリスでハッチバック復権へ
欧州車を凌ぐ走りのよさを磨いた新型オーリス

欧州のCセグメントは200万台という巨大な市場規模、そこで存在感を放つために「欧州車を凌ぐ走りのよさを磨いた」と藤田CEが語る新型オーリスの気になる仕上がりを辛口国沢光宏が斬る
【本記事は2012年10月にベストカーに掲載された記事となります。】欧州のCセグメントは200万台という巨大な市場規模、そこで存在感を放つために「欧州車を凌ぐ走りのよさを磨いた」と藤田CEが語る新型オーリスの気になる仕上がりを辛口国沢光宏が斬る久々に登場したCセグメント(カローラやシビック級)のスポーツモデルでございます。しかも6速MTをラインアップ! 試乗前の説明によれば「欧州車を走りで凌駕しました」。うぉぉ~! そんなにハードル上げて大丈夫なの? 女の子を紹介してもらう時「すんごい美人です!」と言われるようなモノ。激しく期待しちゃうじゃないの! 以下、vw ゴルフをイメージしただろう「欧州車」を凌駕した走りのチェックといきましょう! 次ページでズバリ対決をやっているのでどっちがいいかはそちらを読んでいただきたい。私はあくまで「最新の日本車」としての評価をしてみたい。走り出すや、すぐ感じるのが「驚くべき静かさ」だ。試乗後に聞いたら、徹底的な騒音対策を行なったという。タイヤの走行ノイズは割と大きめだから、エンジン音あまり聞こえてこない。特にアクセル開度がないと、ほぼ意識できず。
スポーツを演出するには煮詰めがもうひとつ

バルブマチック採用の2ZR-FAE1.8Lエンジンは低速から気持ちのいい加速を見せる
スポーツを演出するには煮詰めがもうひとつただし、車重1270kgに1.8L、144馬力というスペックのためか、パワー感も普通っぽい。かつてのシビックって普通の『SiR』(1.6Lツインカム)ですら車重1100kgの170馬力でしたから。そればかりか現代のフィットシリーズ『フィットRS』や『マークX』の2.5Lにパワーウエイトレシオで勝てておらず。ギアレシオを低くした、ということながら、エンジン音は静かで、速度感も低いため、スポーティ度薄い。積極的にエンジン音を聞かせるなど「楽しさの演出」が欲しかったところ。では足回りはどうか? 欧州車を凌駕する以前に、最新の日本車に届いておらず。微少入力の減衰力が出ていないうえ、路面の継ぎ目など大きな入力が入ると「どしゃん!」というショックをボディに伝えてしまう。同業者から「ザックスのショックアブソーバーを使ったらどうか」と言われたそうな。最近やっとショックアブソーバーについて関心のある同業者も増えてきました。ちなみにオーリスの欧州仕様は欧州工場製のショックアブソーバーを使っており、乗り味が全く違うらしい。厳しい評価になったけれど、エンジン音を楽しませるようにし、欧州仕様と同じ足回りにすれば、イッキに楽しいクルマに生まれ変わると思う。マイナーチェンジといわず、すぐにでも「スペック・ユーロ」なんか作ってみたらいいと考えます。
意外やおすすめは150Xのほうだ

CVTとなる1.5Lはアイドリングストップ装着車ならJC08モードで19.2km/Lの低燃費だ。アイドリングストップなしは18.2km/L
意外やおすすめは150Xのほうだもはや期待せず、1.5Lの売れ筋150Xに乗り換えたら、これが案外よい。減衰力の違いや、タイヤサイズの関係なんだろう。路面からのツキ上げ感も気にならず滑らか。それでいてスポーティなステアリングフィールやレスポンスを持つ。欧州車を凌駕しているか? と聞かれれば「う~ん」ながら、このクラスの日本車としちゃインプレッサと並び、現時点でベストバランスのハンドリング&乗り心地だと思う。プリウスもこのくらいのサスペンションならうれしいのに。試乗会はアップダウンの多い富士山麓だったけれど、絶対的な動力性能も広いギアレシオを持つCVTと組み合わせているためか、1.5Lで不満なし(もちろん1.8L RSは充分に速い)。また、アイドルストップ機能は、停車とほぼ同時にエンジン止まり、発進もタイムラグを感じず。最近のトヨタ車のアイドルストップって優秀だ。オーリスのデザインにほれ込んだなら、ぜひともディーラーで試乗してみて欲しい。RSに乗って刺激を感じなかったら、足回りとマフラーを交換すればよろしいかと存じます。
オーリスはゴルフを超えたのか?

TOYOTAオーリス価格/171万~225万円:キーンルックと呼ばれるフロントフェイスが特徴。ボディサイズは全長4275×全幅1760×全高1460mm。アウトバーンなどで競合車と比較テスト
オーリスはゴルフを超えたのか?REPORT/岡本幸一郎オーリスがもっともライバル視したのは、世界のCセグメントのベンチマークと評されるゴルフだ。主戦場の欧州で高く評価されることを念頭に開発したという新型オーリスは、はたしてゴルフを超えたのだろうか?ボディサイズは、全長はオーリスが65mm長く、全幅はゴルフが30mmワイドで、全高は先代と逆転してゴルフが25mm高くなった。デザインはオーソドックスなゴルフに対し、オーリスは並み居るライバルのなかで埋没しないよう、より特徴的なデザインとされたのは見てのとおりだ。
動力性能・ハンドリング・乗り心地

TOYOTAオーリス価格/171万~225万円:■オーリス150X 1.5L直4=108ps/13.9kgm ミッション=CVT ■オーリス180G 1.8L直4=143ps/17.6kgm ミッショ
●動力性能エンジンは、オーリスは1.5Lがメインで、1.8Lは上級という設定であるのに対し、ゴルフは1.2Lと1.4Lの直噴ターボ、1.4Lの直噴ツインチャージャー、2L直噴ターボと多彩にラインアップしている。ゴルフの後者2機種は別格として、残るエンジンの力関係が気になるところだ。ゴルフの1.2Lは、最高出力こそ105psにとどまるが、幅広い回転域で最大トルクを発生し、体感的な速さは、オーリスの1.8L(143ps)を上回るほど。122psの1.4Lターボでは、さらにその差が広がる印象だ。こうなると、108psのオーリスの1.5Lはもっとも遅いことになるが、従来の同型エンジンに対して大幅に改良され、振動が減って回転感もスムーズになり、1.8Lとの性能差も小さくなった。定評あるゴルフの直噴ターボ勢に対しても、互角かそれ以上になった印象だ。また、発進から停止時や微低速での扱いやすさは、直噴ターボ+7速DSGのゴルフよりもNA+CVTのオーリスに軍配。さらにはアイドリングストップシステム(メーカーオプション)も、新機構を導入したオーリスの緻密な制御が好印象だ。●ハンドリング オーリスのステアリングはかなりクイックで、俊敏な操縦性を楽しむことができる。ゴルフは反対に、ゆったりとリラックスして乗れることをヨシとした味付けといえる。また、このクラスにいち早く4輪独立懸架を採用したゴルフだが、オーリスもこれまで4WDにしか設定のなかったダブルウィッシュボーンのリアサスを1.8LのFFに採用した。トーションビーム式の1.5LFFと乗り比べるとその差は歴然。段差を通過した際のバタつきやコーナリング時の接地感は、1.8Lのほうがだいぶ上だ。いっぽうのゴルフはすでに全車にマルチリンクを採用しているが、ストロークが充分に確保されていない印象もあり、荒れた路面を通過するとリアが暴れてラインが乱れがち。ゴルフに負けじを念頭に開発されたオーリスのほうが安定傾向で、それはトーションビーム式の1.5Lでも感じられた。●乗り心地オーリスは装着タイヤによって印象がかなり変わるが、全体的に、けっこう引き締まった乗り味と感じられる。きれいな路面をおとなしく走ると気になることはないが、荒れた路面での突き上げは強め。そのトレードオフとしてハンドリングや安定性が向上したのだろうが、快適性を犠牲にすることなく巧みに操縦安定性との両立を図っているゴルフはさすがといえる。
居住性

後席は充分な実用性を持つ。前席に薄型のシートバックを採用しひざまわりに余裕がある
●居住性ゴルフは前後席ともあまり気になることはない。いっぽうのオーリスは、スタイルを追求したルーフ形状にしたせいか、前席はフロントウィンドウが迫ってくる感じだし、後席のヘッドクリアランスもあまり余裕がなく、成人男性の平均的な体格の筆者(身長172cm)が座って、こぶしが横に入る程度。ゴルフは縦に入る。後席のニースペースは同等で、筆者が前席でポジションを取った場合でこぶし2個入る程度。ただし、ゴルフにはセンタートンネルがあるが、オーリスはほとんど出っ張りがなく足元が広々としている点は大きな違い。また、シートの座面長はゴルフのほうが小さく、膝の裏側が少し浮く。オーリスのほうが座面のサイズは大きいものの、平らな座面に対して、背もたれの角度がやや寝かされ気味になっていて、身体の収まりはいまいち。ゴルフのほうが角度は適切だ。
インテリアの質感

TOYOTAオーリス価格/171万~225万円:助手席前のパネルはRS&RS Sパッケージがカーボン調、150X、180Gはブラックメタル調、本革はメーカーオプション。
●インテリアの質感内装については、シンプルで端正なゴルフに嫌悪感を抱く人は少ないだろう、つまらないと感じる人もいるだろうが、とにかく何も「気にならない」ところがいい。それだけ質感が充分に保たれているからだと思う。対するオーリスは本革加飾を設定するなど質感の演出に注力。最近のトヨタらしくダイナミックなデザインとし、印象の異なる素材を複雑に組み合わせるなど、変化に富んだインテリアを構築している。これをカッコイイと思うか、落ち着きがないと感じるか、感性の違いによって見方の分かれるところだろう。
総合評価

●総合評価ゴルフに追いつき、追い越せを念頭に開発されたオーリスは、そのとおりゴルフに並び、上回った部分があるが厳密に見ていくと、たとえば走りの面では、タイヤの力をより上手く引き出しているのはゴルフだし、シートの作りや、乗員のポジションの設定などといった基本的な部分でも、ゴルフのほうが巧みさを感じさせる。このあたりの課題は深いところに要因があって、そう簡単に超えることはできないように思える。オーリスはゴルフを超えたかどうかだが、オーリスがもう一歩およばないように思う。しかし総合的にみて、0.5点とその差はわずかだ。