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更新日:2019.10.18 / 掲載日:2018.03.14
【アウディ】コンパクトな12気筒エンジン「W型12気筒エンジン」の構造とは

グーネット編集チーム
昨今は、エンジンのシリンダー数を少なくし、排気量をダウンさせターボを搭載してパワーを得るのが主流です。
アウディも、ミディアムセダンのA4においても直列4気筒1.4L+ターボエンジンを搭載しています。アウディのフラッグシップを担う「A8 L W12クワトロ」は、エグゼクティブのための広い後席を実現させた最高級サルーンです。
また、最高級サルーンにふさわしいパワーと静粛性を得るために、アウディはA8 L W12クワトロはW型12気筒 6.3Lエンジンをノンターボの自然吸気で搭載しています。
今回は、アウディA8に搭載されるW型12気筒エンジンを紹介します。
スムーズで力強いW型12気筒エンジンの特徴とV型との違い
そもそもW型エンジンとは?
W型エンジンというのは、排気量が多く、多気筒型のエンジンを開発するうえで考え出された特殊なエンジン形状を指します。車の出力を上げていこうとすれば、エンジンの排気量を増やすとともに、高回転まで回るように多気筒化する必要があります。
多気筒エンジンを直列に配置しようとすれば、全長が長くなり、一般的な車に搭載するのは不可能となります。そういった問題を解決するため、エンジンをV型に配置したV型エンジンが世の中に登場しますが、それでも12気筒などとなれば、相当に長いエンジンのままです。
そこで考え出されたのが、V型にもう1本シリンダーを追加したW型エンジンであり、その後の4バンク式に発展していきます。
ちなみに、W型の「W」の由来というのは、正面から見た両バンクとクランクシャフトを繋ぐ形が「W」に見えることから名づけられています。
W型エンジンの歴史
W型エンジンというのは、1906年にオートバイ用に製造されたW型3気筒エンジンにその起源をさかのぼることができます。これは3バンク型のW型エンジンであり、のちには1990年のF1で4気筒の3バンクエンジンを搭載したマシンも登場しました。
なお現在は3バンクに代わり、V型6気筒(VR型6気筒)エンジンが2つ組み合わさった4バンクが主流です。
V型とはどう違う?
W型エンジンの基本的な構造はV型エンジンと同じです。フォルクスワーゲンが出している4バンクW型16気筒エンジンもVR6エンジンの延長線上で設計されています。
W型の最大の特徴は、エンジンの全長をコンパクトに抑えながらも、12や16といった気筒数まで増やしていけることです。
排気量や気筒数から考えれば、驚異的なくらい小さく設計されていますが、V型と比較すると横幅がどうしても大きくなるので、ある程度のボディサイズが必要です。
狭角V型エンジンがW型エンジンのベースなので、V型の良さであるコンパクトさを受け継ぎながらも、より多気筒向けに進化したエンジンといえます。
アウディA8に搭載されているW型12気筒エンジンの構造
W型12気筒の「12気筒」は何を意味するのか?
W型12気筒エンジンと言えば、アウディやベントレーを傘下に持つフォルクスワーゲングループの専売特許です。
まず、12気筒というのはエンジンのシリンダー数のことを指します。日本の軽自動車の多くは3気筒エンジンであり、フィアットの2気筒を別にすれば、乗用車の中では3気筒が最も少ない気筒数です。12気筒ともなれば、超高級サルーンやスーパースポーツカーなど、ごく一部の特別なモデルにのみ採用された気筒数といえます。
基本的に気筒数が増えていけば排気量も大きくなります。気筒数を増やす目的としては、高出力化だけでなくエンジンの質感にも大きく関係しています。
国産車で12気筒を搭載していたのは、VIPの送迎専用マシンであるトヨタのセンチュリーのみです。他車と差別化をする意味でも、12気筒というのは究極に近い気筒数なのです。
アウディA8に搭載されるW型12気筒エンジンの構造
アウディA8に搭載されるW型12気筒エンジンは、コンパクトなV型6気筒エンジンを2個、W型に組み合わせた構造です。
直列エンジンとは、シリンダーが直線に並んでいる構造で、V型は左右にV型にシリンダーが並びます。コンパクトカーは直列エンジンが主流ですが、排気量が大きくミディアムセダン以上のクラスでは、エンジンの長さを抑えることができるV型が主流になります。
さらに、V型エンジンを2個W型に組み合わせたエンジンがW型エンジンになります。W型エンジンはエンジンの長さはV6エンジンと変わりませんので、排気量をアップさせながらコンパクトなエンジンを実現します。
W型エンジンの利点と及第点

グーネット編集チーム
W型エンジンの利点・メリット
W型エンジンはエンジンの全長を大きくせず気筒数を倍増させることができるのが最大のメリットです。サイズの制約がある場合に、排気量を極限まで大きくして、気筒数を増やす場合には最も適したレイアウトといえるのです。さらには、多気筒化しながらも燃費性能や環境性能を上げる工夫ができるのもW型エンジンの特徴です。
アウディA8に搭載されているV8エンジンとW12エンジンには、高速巡航中などの低負荷時にはエンジンのシリンダーの半数を休止させる、アウディシリンダーオンデマンドシステムが搭載されています。W12エンジンならV6エンジンだけで走行するイメージです。
さらには、停車時には、アイドリングストップ機能や、減速時のエネルギーをバッテリーに回収するエネルギーリカバリーシステムも搭載し、最高級車でありながら、優れた燃費性能、環境性能も併せ持ちます。
W型エンジンの及第点・デメリット
W型エンジンのデメリットとしては、V型エンジンと比べて横幅がどうしても大きくなる点です。最高級サルーンなどの場合には、ボディも大型になるので問題にはなりませんが、コンパクトクラスなどではどうしても採用が難しくなります。
また、V型エンジン以上に部品点数も多く、構造も複雑なので、整備や故障時の対応については、専門的なショップやディーラーに頼らざるを得なくなります。
アウディW型12気筒エンジンのスペック
アウディA8に搭載されるW型12気筒エンジンの排気量は6.3Lの自然吸気エンジンです。ターボは搭載していませんが、最高出力は500馬力を発揮し、0-100km/h加速わずか4.6秒です。
アウディの4輪駆動システム「クワトロ」により、ハイパワーを無駄なく路面に伝え、スーパースポーツカー並みのスペックを誇ります。さらに、8速のティプトロニックトランスミッションを搭載し、スムーズで静かな加速を実現しています。
まとめ
今回は、W型12気筒エンジンについて、W型エンジンの特徴や歴史、V型エンジンとの違い、メリットやデメリットについて詳しく解説してきました。
最近ではエンジンのダウンサイジング化が進められている一方で、W型にされた12気筒や16気筒というような、夢のあるエンジンもまだまだ現役です。
現在は、フォルクスワーゲングループの専売特許となっていますが、今後も環境性能や燃費性能とパワーを両立したW型エンジンの進化に注目です。