車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2019.06.10 / 掲載日:2014.08.28
【徹底紹介】メルセデス・ベンツ Gクラス

自動車界で燦然と輝くまさに「生きる伝説」

欧州車のモデルサイクルは一般的に5~7年ほど。それを知れば、「ゲレンデヴァーゲン」と名乗った時代から数えて35年もの間、基本を変えずに生産を続けるメルセデスGクラスが、いかに長寿かがわかるはず。
しかもロートル扱いではなく、「オフローダーの王様」として今も世界のファンの憧れの存在であり続けているのだ。AMGモデルの拡充や新世代クリーンディーゼルの搭載など、昨今も改良の手を緩めてはいない。
生産終了の噂が流れたこともあったが、消えたのはショートボディの2ドアモデルだけ。ロング4ドアは「まだまだ現役」をアピールする。そう、熱狂的なファンがGクラスの引退を許さないのだ。Mクラスが登場しても、GLクラスが追加されても、「G」の存在は揺るぎない。
そんなGクラスを技術面から見れば、ボディはフレーム式、サスは前後コイルリジッド式と、今のSUVのトレンドに乗ってはいない。でも、SUVの時流がクロスオーバーの方向に振れたからこそ、昔気質のGクラスの個性や魅力が逆にクローズアップされた、という見方もできる。
昔気質の仲間にはランドローバー・ディフェンダーもあるが、これはベースの技術がさらに20年も古く、技術的アップデートもあまり進んでいない。「マニア向け」のカテゴリーにとどまるのはそれが理由だ。
対するGクラスは、トレンドの変化やユーザーニーズの多様化に合わせて、たゆまぬ改良を続けている。とくに、快適性のレベルアップや操縦安定性の進化は目を見張るほどで、21世紀に通用するプレミアムSUVにきちんと仕立て直されている。
パッと見の印象は、憧れのゲレンデ(今もこの愛称で呼ぶファンが多い)そのまま。分厚い鉄板を使用する「鎧」を連想させるボディや、がっしりしたドアの開閉感も昔ながらの感覚だが、車内に目を移せば……。内装はモダンかつ高品質なつくりで、COMANDシステムに代表される現代のハイテク装備も完備している。加えて、走りの能力や快適性も現代に十分通用するものなのだから、ファンが惚れ込むのも当然だ。
古き良き時代のメルセデスの重厚感と、現代の高級SUVに求められる洗練度を見事に融合させたGクラスは、まさに唯一無二の存在なのだ。
文●森野恭行 写真●内藤敬仁、GooWORLD
お問い合わせ●メルセデス・コール TEL:0120-190-610
Detail
丸目の下のLEDドライビングライトが現行型の目印。スペアタイヤ込みで全長は4725mm、全幅は1810mmと、ボディサイズは意外なほどコンパクトな仕上がりだ。
メルセデス・ベンツ G350ブルーテック(7速AT)
全長×全幅×全高 | 4530×1810×1970mm |
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ホイールベース | 2850mm |
トレッド前/後 | 1500/1500mm |
車両重量 | 2510kg |
エンジン | V6DOHCディーゼルターボ |
総排気量 | 2986cc |
最高出力 | 211ps/3400rpm |
最大トルク | 55.1kg m/1600-2400rpm |
サスペンション前/後 | リジッド/リジッド |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 265/60R18 |
新車価格
G350ブルーテック(7速AT) | 998万円 |
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G550(7速AT) | 1388万5000円 |
G63AMG(7速AT) | 1830万8000円 |
G65AMG(7速AT) | 3342万8000円 |
1979年のデビュー以来世界のクロカンファンを魅了
原点の「ゲレンデヴァーゲン」の誕生は1979年。オーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフ社と共同開発をしたのがこのW460で、NATO軍の正式採用が証明するタフさと機動力を最大の特徴とした。そして1990年には、4駆メカをフルタイム式に一新したW463が登場。改良のたびに快適性、装備を充実させ、高級SUVとしての地位を揺るぎないものとした。
長く第一線に君臨させるのは基本性能の秀逸さ
SUVと乗用車の間にある垣根は、近年ますます低くなった。でも、Gクラスはあくまでも「本物」であることを主張。235mmという特大のロードクリアランスと、周囲の状況把握を容易にする高いアイポイントと低いベルトラインの設定が、「G」独自の世界観をつくりだす。
多くのGクラス体験者が「意外と運転しやすい」と語るのは、遠くはもちろん近くもよく見えて、しかもコンパクトにパッケージングされたスクエアボディの車両感覚がつかみやすいから。最小回転半径は6.2mと大きめだが、街乗りでも持て余さない機動力を備えている。
ちなみに、目線は2トントラックと同等の高さで、見下ろし感覚の視界が「オフローダーの王様」を駆る優越感を生み出す。フロアが高いため乗降は「よっこらしょ」となるが、シートに収まれば……そこはとても快適な空間だ。後席も、大柄な男性が快適に過ごせる広さを有する。
インパネが今のモダンな姿になったのは2012年の改良時で、このときにCOMANDシステムや電気式ATセレクターが導入された。フロントやサイドの直立した平面ガラスは「ゲレンデ」の時代から変わらないが、コクピットのムードは驚くほど現代的になり、クオリティも大きくレベルアップした。とくにAMGモデルに設定の「desinoエクスクルーシブ」内装の豪華さが光る。なお、G350ブルーテックは右ハンドルのみの設定となる。
フロントバンパーに中・長距離レーダーを内蔵。停止までの追従クルーズを実現するディストロニック・プラスを全車に標準装備する。
インパネ中央に並ぶのはデフロックのスイッチ。センター、リヤ、フロントと、3つのデフロック操作を個別に行える。ローレンジの選択もスイッチ式だ。
G550の5.5L V8を凌ぐ大トルクが自慢の3L V6ディーゼルターボ。ワイルドさが残るフィーリングを含めて、Gクラスにピッタリの心臓といえる。
荷室容量は480~2250L。折りたたみ式の後席を収納すれば、ご覧のような大空間をつくりだせる。ただし床面は高い。
自らのルーツに誇りを持つ揺るぎないオフロード性能

本物のオフローダーである証は、頑丈なフレーム式ボディとコイル・リジッド式の前後サスで構成するシャシー。強固なボディを含めて、タフな走りを涼しい顔でこなす強靱さを身につけている。加えて、駆動方式はローレンジを備えるフルタイム4WDで、低ミュー路走行の場面でも高度なサポート能力を発揮する4ESP(挙動安定メカ)を搭載する。で、とどめは3つのデフロックスイッチ。いくら豪華になっても「G」の本質は変わらない。オーナーになったら、一度は本気のオフ走行を楽しんでほしい。
最高峰に位置するのは612馬力/102kgmの6L V12ツインターボを積むG65AMG。その加速力はまさに圧巻!ノーズヘビーは意識するものの、操安性の能力もけっこう高い。
抜群の相性を見せるディーゼルターボ

操舵やアクセルの操作が重いGクラスの運転感覚は、ふた昔前のメルセデスを思い出させるもの。「ドン」とした安定感や穏やかな挙動のしつけもポイントで、重厚感あふれる走りのテイストを生み出している。
試乗車は大人気のG350ブルーテック。気になるのは3L V6ターボのクリーンディーゼルとのマッチングだが、乗り始めは「走りが少し重たい」と感じるかもしれない。だが、右足に力を込めれば……わずか1600回転で55.1kgmの大トルクを生む心臓が本領を発揮。車重2.5トンを超えるボディを、グイグイと力強く加速させてくれる。ATのSモードを選択すれば、より快活な走りを楽しむことが可能だ。
ディーゼルというと、今も騒音と振動を心配する人もいるだろう。たしかに、アイドリング時の振動は大きめで、加速時のカラカラ音も耳に届くが、かつてのディーゼルと比べれば快適度は天と地ほどの差。クルージングのスムーズさや静粛性は「これがディーゼル!?」と驚くほどで、高い洗練度を身につけている。
なら、高速性能はどうだろう?空気抵抗が大きいため、高速域ではスピードの伸びが鈍化するが、直進安定性は優秀でステアリングもリニアな応答を示すから、気持ちよく長距離ドライブを楽しむことができる。
重厚なドライビング感覚が、乗り手の心を自然とリラックスの方向へと導く。高速クルーズの快適性は高く、燃費に優れるのもうれしいところだ。
乗りやすさならディーゼル「らしさ」を楽しむならAMG
Gクラスの存在をグッと身近にしたのは、2013年秋に日本上陸を果たしたG350ブルーテック。1000万円を切るプライスだけでなく、燃費に優れたディーゼルならではの低めのランニングコストも大きな魅力だ。装備面でも、本革シートとスライディングルーフをセットにした「ラグジュアリーパッケージ」を加えれば、十分満足できる内容となる。でも、ステイタス性を重んじる「G」のファンには、やはりAMGモデルをお薦めする。頂点はV12のG65AMGだが、走りのバランスやコスパからみればV8のG63AMGが一歩リード。大いに悩む選択だ。
中古車市場データ
中古車市場データ
生産期間は長いものの、市場に存在する車両のほとんどは90年代以降のモデル。上のグラフは2008年以降のものだが、10年落ちだと400万円前後、20年落ちだと200万円が目安。
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