車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.26 / 掲載日:2014.04.25
NISSAN LEAF EV革命の立役者

自動車メーカーが精力的に開発しながら、なかなか一般ユーザーにまで普及しなかった電気自動車。日産はインフラの整備まで視野にいれ、ついに量産の電気自動車を開発。それが、今回紹介する日産リーフ。登場から3年が経過し、街中でも見る頻度が高まってきた。カーライフ革命の立役者リーフの魅力に迫る。
日産 リーフはこんなクルマ!
世界の市場を見渡しても、年産数万台の目標を掲げて開発されたEVはリーフが初。それだけに注目度は抜群で、デビューイヤーには「日本」、「欧州」、「ワールド」と3つのカー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。2014年1月には世界累計販売が10万台を達成。

中古車参考価格帯120万~280万円(平成22年~平成26年式 ※全グレード)
日産 リーフ G(CVT)
主要諸元
平成26年式
全長×全幅×全高:4445×1770×1550mm
車両重量:1460kg
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
最高出力/最大トルク:109ps/25.9kg m
一充電走行距離:228km(JC08モード)
EV普及への努力がカタチになった一台
環境にやさしい「エコカー」の切り札として、ずっと前から期待を集めていたのが電気自動車(EV)。それなのに、量産化がなかなか実現しなかったのは・・・「航続距離の短さ」や「充電インフラの不足」という大きな問題を抱えていたからだ。
だが、リチウムイオン式電池の登場により、航続距離の問題解決が大きく前進することに。そして環境意識の高まりから、先進国を中心として充電インフラの整備も図られるようになった。で、いよいよEVが用途限定の特殊なクルマから、次世代環境対応車のホープへと大化けする下地が整ったというわけだ。
そんな「EV革命」の流れをリードするのは、日産が2010年12月にリリースしたリーフ。日産の本気度を示すのは、EVのための専用プラットフォームを開発したことで、エンジンをモーターへと置き換えたコンバートEVとは一線を画す。
ゼロからの専用開発が可能にした優位点は多く、フロア下に大容量バッテリーパック(24kW/h)を効率よく収めたパッケージは代表的なもの。全高1550mmの機械式駐車場対応5ドアハッチバックボディの中に、大人4人が快適に過ごせる居住空間を確保することに成功した。
走行中にCO2などの排出ガスをいっさい出さない「ゼロエミッションビークル」というと、今でも特別なイメージを持つ人がいる。だが、リーフは普通の感覚で運転できるのはもちろんのこと、日常生活を満たす利便性も備えているのだ。ズバリ、日産が「エコカーの本命」として送り出した理由は“そこ”にある。
RIVAL ライバル
三菱 アイミーブ

中古車参考価格帯100万~210万円(平成22年~平成25年式)
より気軽に乗れるもう一台のパイオニア
EVの先輩格にあたるi-MiEVは軽がベース。コンパクトで扱いやすい、維持費が安い軽自動車登録で乗れるというメリットはあるが、位置づけは完全なシティコミューターだ。走りや快適性の能力をリーフと同列で語るのは難しい。満充電航続距離はXで180km、Mで120kmという実力。
HISTORY ヒストリー

特別仕様車も登場するなど
年を追うごとに魅力をアップ
平成22年12月 | 日産リーフを発売 |
平成24年11月 | マイナーチェンジ |
平成25年6月 | NISMO エアロパッケージ/パフォーマンスパッケージを設定 |
平成26年1月 | 特別仕様車「エアロスタイル」を発売 |

EXTERIOR エクステリア

ヘッドランプやアルミホイールは空気の流れを考慮したデザイン。省電力が自慢のLEDヘッドランプは、現在はGに標準設定。
機能を重視したフォルムは未来のクルマそのもの
ボディサイズの面から見れば、リーフはCセグメントに属するモデル。全長4.5m、全幅1.8mを切り、全高も1.55mに収めた設定で、日常の取り回し性と実用性を高い次元でバランスさせている。造形的に見れば、ラジエターグリルを持たないスッキリしたフロントマスクがEVを主張するところ。先進性と親しみやすさが魅力だ。
INTERIOR インテリア
ルーミーかつ質感の高いインテリア空間
EVらしい先進性をインテリアでも表現している。インパネにソフトパッドは使用していないが、表皮をしっとりと仕上げて、質感も不満のないレベルとした。また、高めの目線と広いガラスエリアがもたらす開放感と良好な視界も美点といえる。そして、リーフならではの特徴は充実したITシステム。専用ナビを核として、到達予想エリアや充電スポットなどの多種の情報を提供する。乗車する前に、エアコンやバッテリー充電のオン・オフなど、スマートフォン連携のリモート操作も可能だ。

ロングホイールベースを活かして、大人4人が快適な移動を楽しめる空間を確保。ただし、フロア全体が高めのため、後席の乗車姿勢はやや不自然なところがある。荷室容量は370L。充電器をフロントに移設し、使い勝手を向上。

液晶デジタル式のメーターは、上下2段のユニークな構成。EVと賢く、楽しくつきあうための各種情報を提供する。そして、インパネセンターにはEV専用カーウイングスナビをレイアウト。XおよびGグレードに標準の設定だ。
MECHANISM メカニズム

航続走行距離228kmを実現し
家庭でも手軽に充電が可能
長距離航行を可能とする強力なリチウムイオン電池と急速充電が可能な先進のテクノロジーがEVライフを快適に。
効率を徹底的に追及し長距離航行が可能に
EVの価格を高止まりさせている主因は、いまだ高価なリチウムイオン式バッテリー。航続距離を伸ばすために容量を大きくすれば、車両価格が跳ね上がる図式だ。しかも、空間効率を悪化させ、車重も重くなるのだから、よくない連鎖となる。
だからこそ、リーフは最良のバランス点を追求した。総電圧360V、総電力量24kW/hという十分なバッテリーの性能を持たせた上で、各部の効率化により実用になる航続距離を確保しているのだ。JC08モードによる満充電航続距離は、登場時には200kmだったが、12年11月の改良で228kmに伸ばしている。
14%の効率改善は、80kgにおよぶ軽量化、モーターの一新、回生ブレーキシステムの改良がもたらしたもの。が、より注目できるのは実電費の改善。ヒートポンプ式ヒーターの採用や、前席シートヒーターおよびステアリングヒーターの標準化がカギで、夏場以上に厳しい冬場の実電費を大幅に伸ばすことに成功している。電費を稼ぐために寒いのをガマンせずにすむため、より快適にリーフの走りを楽しめるようになった。
とはいえ、カタログ値と実際の電費や航続距離に差があるのはEVも同じ。高速道路のハイペース走行などでは電費がガクンと落ちるから、その点は頭に入れておく必要がある。長距離ドライブの場合は、急速充電の施設があるサービスエリアや道の駅などを事前に調べて、充電計画を立てておくのが賢いやり方だ。
CHARGE 充電
30分の急速充電で80%の充電が可能
搭載するバッテリーの総電圧は360V。感電の心配をする人もいるだろうが、大雨の日の充電でも十分な安全が担保されている。充電作業そのものも、慣れればいたって簡単だ。バッテリー残量警告灯が点灯した状態から、80%までの充電が行える急速充電は約30分、満充電ができる普通充電は約8時間で完了する。

リッドを開けると充電ポートが出現。左が急速充電、右が普通充電用で、写真右上は200V電源からのケーブルをつないだ状態だ。ソーラー発電(12V用)機能を持つリヤスポイラーはGに標準装備される。
DRIVETRAIN ドライブトレーン

強力なモーターで走る楽しさを実現
プラグインハイブリッドと比較する例は多いが、EVにはエンジンや燃料タンクは不要。メカ全体がきわめてシンプルに構成されていることがわかるはずだ。最高出力90kWを誇るリチウムイオン式のバッテリーパックを床下に置くメリットは、空間効率の向上と低重心化。前後重量配分も理想に近く、冴えた旋回性能と高い高速安定性を実現している。コーナリングの速さと気持ちよさは、リーフの隠れた魅力といえる。

左上がモーターで、右上はインバーター。直流を交流に変更し、電流量をコントロールしてモーター出力を制御するのがインバーターの役目だ。そして左下は192のセルで構成されるバッテリーパック。シフトセレクターはもちろん電気式を採用する。
AERODYNAMICS エアロダイナミクス
流体力学に基づいたエアロフォルム
空力の効果は60~70km/hでも十分に表れるもの。それだけに、リーフの空力対策は徹底している。見どころは床下で、フロア下面を平滑にしやすいEVの利点を活かし、空気抵抗の低減を図った。また、高級サルーンに勝るとも劣らない静粛性をウリとするだけに、風切り音対策もしっかり行っている。ユニークな形状のヘッドランプは、ドアミラーに当たる風をコントロールして、ノイズ発生を抑える役目も果たす。

MINOR CHANGE マイナーチェンジ
マイナーチェンジでさらに進化したリーフ

クリーンで明るいイメージのエアリーグレーに加えて、シックなブラック内装も選べるようになった。本革シートはX、Gにオプションの設定となる。
装備の充実を図りモーター設計も一新
ソフトウェアの改良などは順次行っているが、「大きな変更」となったのは12年11月のマイナーチェンジ。航続距離を200kmから228kmに伸ばしただけでなく、細かなブラッシュアップを行った。まずはグレード体系の変更で、装備を絞って低価格を実現したSを新設するとともに、17インチタイヤを標準化するなどしてGの装備レベルを引き上げた。
電気式から足踏み式に変更された駐車ブレーキや、XのLEDヘッドランプのオプション化は手放しでは歓迎できないが、全体として大きく魅力が高まったことはたしか。
また、大きめの減速度を発生させるBレンジを新設し、エコモードの選択をステアリングスイッチ式とするなど、走行モードにも改善のメスを入れた。状況に合わせた走行モード選択をすれば、ペースを落とさず電費を稼ぐスマートな走りが可能だ。

静かなEVは恰好のリスニングルーム。新設定のボーズ製オーディオが活きる。「駐車がラクラク」のアラウンドビューモニターの新採用も注目点だ。
SPECIAL MODELS 特別仕様車/パッケージ
ノーマルじゃ飽き足らない人にはスポーティなリーフも選べる
エアロスタイル

スポーティな容姿を好む人のために、専用フロントエアロフォルムバンパー(LEDライト付き)やサイドシルプロテクター、リヤアンダープロテクター、17インチアルミホイールを標準装着するエアロスタイルを用意。13年末から全グレードで選択可となった。
NISMO エアロパッケージ/パフォーマンスパッケージ

容姿だけでなくスポーティな走り味にもこだわる。そんな人に最適なのがNISMO仕様だ。30mmローダウンサス+18インチタイヤが生むのは軽快な身のこなしとシャープなコーナリング!独自の制御で駆動力マップを変えることで、加速の痛快さも強化している。
MARKET DATA マーケットデータ
魅力的な価格で良コンディション車が揃う
販売がスタートしてから、丸3年が経過した。中古車市場もどんどん物件が増えてきて、そろそろ検討してもよい時期がきた。走行距離を見ると、半数以上が1万km未満の程度良好車。それに対し、価格は新車のおよそ3割~5割ダウンとあれば、お買い得感は非常に高い。ここ最近の相場の推移は横ばいであるものの、今後の値下がりは当分先になりそうなので今が買い時。グレードは、標準の「X」と上級の「G」がほとんどを占める。
走行距離×年式別相場
平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | |
---|---|---|---|
5,000km未満 | 177万円 | 193万円 | 231万円 |
5,000~1万km | 172万円 | 188万円 | 220万円 |
1万~3万km | 155万円 | 180万円 | 223万円 |
3万km以上 | 148万円 | 160万円 | - |
グレード×年式別相場
平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | |
---|---|---|---|
S | - | 198万円 | 205万円 |
X | 152万円 | 176万円 | 222万円 |
G | 165万円 | 193万円 | 233万円 |
年式
平成22年12月に発売だが、この年に登録された中古車は確認できなかった。平成23年式が24%、平成24年式が72%となっている。昨年登録の車両は少ない。走行距離
全体的に言えるのが、低走行車が大半を占めるということ。1万km未満が全体の6割なので、安心してクルマ選びができる。ちなみに3万km以上の車両はほぼ皆無だ。

グレード
全部で3グレード構成のリーフ。デビュー当初から存在する「X」と「G」が同じ割合で流通するが、マイナーチェンジで追加されたエントリーモデル「S」はほぼ皆無。

IMPRESSION
森野恭行のインプレッション
静粛性に優れたスムーズな走り味
右足に力を込めると、「ヒューン」という高周波音を軽く響かせ、リーフは「グイーン」と加速!瞬時に大トルクを生むのがモーターの美点で、力感は3L級のガソリン車に匹敵する。しかも、加速、クルーズを問わずに室内は静寂を保つから、走行感覚は独特。「近未来のクルマ」を、多くの人が実感することだろう。
そして、低重心と優れた重量バランスを基礎として、きめ細かな駆動力制御を加えて実現させた高度な操縦安定性も、走りの「新しさ」を印象づける。17インチタイヤを履くGのコーナリング性能は特筆ものだ。
ロングドライブでは十分でない航続距離や、地域により不足が明らかな充電インフラなど、気になる点はたしかにある。でも、新鮮な走りの感覚と高い経済性(相対的に電力は安い)は大きな魅力。都市型生活者にお薦めしたいエコカーの決定版だ。
※すべての価格は参考価格です