車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.30 / 掲載日:2010.01.28
【徹底紹介】アウディ TT
アルミを用いた専用のシャシーが与えられ、さらにスポーツ志向を高めた2代目TT
ロードスターやTTSなどバリエーションも広がり、販売台数を着実に伸ばしている
今回、ミドルスポーツを語る上で欠かせない存在となったTTの魅力に迫る
スポーツカーの純度を飛躍的に高めた2代目TT

98年に衝撃のデビューを飾った初代TTは、瞬く間に、デザインと走りの両面でアウディのブランドイメージを高める重要な存在となり、スポーツカー界の寵児にもなった。
だが、A3やゴルフとプラットフォームを共用する成り立ちが、スポーツカーとしての評価を微妙にしていたのも事実。デザインコンシャスな高性能スペシャルティと位置づけられることも少なくはなかった。そこで、初代TTの成功で自信を深めたアウディは、2代目のために専用の母体を開発することにしたのだ。
エンジン横置きのレイアウトこそ変わらないが、シャシー&ボディにはなんと、A8で培ったASF(アウディ・スペース・フレーム)の技術を存分に生かすアルミ&スチールのハイブリッド構造を採用!
ボディをひとまわり拡大し、かつねじれ剛性を50%(ロードスターは120%)強化しながら、車重軽減を実現したのだからあっぱれ。クーペのボディシェルは、オールスチールの設計より48%軽い206kg。後部フロアパネルやドア、テールゲートをスチール製(全体の31%)としたのは、単なるコストダウンが理由ではなく、後ろ側を重めにして前後重量配分を適正化するねらい。
このように2代目TTは、スポーツカーとしてとことん本気の設計を採用する。独特のバウハウスデザインを継承しながら、よりスポーティに、さらに精悍になったルックスも、スポーツ路線を明確にした2代目の方向性をわかりやすく指し示す。
ちなみに、2.0TFSI標準モデルで4180×1840×1390mmの3サイズは、先代のそれよりも120mm長く、75mm幅広く、50mm高い設定。合わせてホイールベースを40mm拡大し、タイヤをひとまわり大径化したこともあり、存在感や安定感は確実にレベルアップ。全体として、ひとつ格上になった印象だ。
となると、パフォーマンスの進化も気になるところ。操縦安定性の面では、強くて軽い独創のASFボディと、FFのリヤも独立式とした前ストラット/後4リンク式サスが、痛快な走りを実現する要となる。また、4気筒ターボの心臓を5バルブ1.8Lから2L FSIに変更することで、動力性能もきちんと強化した。
そうしたTTの進化は高く評価され、スポーツカー市場での存在感は増すばかり。ロードスター、TTSに続き、2010年には340馬力のTTRSも投入されるから、今後もその地位が揺らぐことはない。
写真●内藤敬仁 文●森野恭行 GooWORLD
お問い合せ●アウディ・コミュニケーションセンター Tel 0120-598-106
Detail

2009年 アウディ TTS クーペ(6速AT・Sトロニック)主要諸元
全長×全幅×全高 | 4200×1840×1380mm |
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ホイールベース | 2465mm |
トレッド前/後 | 1560/1545mm |
車両重量 | 1470kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1984cc |
最高出力 | 272ps/6000rpm |
最大トルク | 35.7kg m/2500~5000rpm |
サスペンション前/後 | マクファーソンストラット/マルチリンク |
ブレーキ前/後 | ベンチレーティドディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 245/40R18 |
新車価格
TTクーペ 2.0TFSI(6速AT・Sトロニック) | 444万円 |
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TTクーペ 2.0TFSI クワトロ(6速AT・Sトロニック) | 504万円 |
TTロードスター 2.0TFSI(6速AT・Sトロニック) | 496万円 |
TTSクーペ(6速AT・Sトロニック) | 687万円 |
HISTORY
2006.07 | アウディTTクーペがフルモデルチェンジ アウディ・スペース・フレームと呼ばれるアルミ技術が投入された新世代TTが登場。当初用意されたのは直噴ターボの「2.0TFSI」、V6+4WDの「3.2クワトロ」の2モデル。 |
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2007.06 | TTロードスターが登場 約12秒でルーフを開放できるロードスターが加わった。先代同様ルーフの素材はソフトトップで、時速50km以下の速度なら走行中でも操作可能。エンジンは「2.0TFSI」のみ。 |
2007.08 | TTシリーズを一部改良 自動防眩ミラー、オートライトなどの装備がクーペにも標準化されたほか、「2.0TFSI」に17インチの7Yスポークアルミが標準装備された。同時にSラインパッケージも設定。 |
2008.06 | 特別限定車「2.0TFSI リミテッド」を設定 クーペの「2.0TFSI」をベースに、本革スポーツシート、本革インテリアトリム、電動シート、シートヒーター、特別外装色「ミサノレッド」などを追加装備。販売台数は100台限定。 |
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2008.09 | 高性能版TTSを発表すると同時に2.0TFSIにクワトロを設定 272馬力にまで出力を高めた2.0L直噴ターボエンジンを搭載する伝統の「S」モデルが登場。外観、シャシーも差別化される。これと同時に「2.0TFSI」にもクワトロが設定された。 |
2009.08 | TTおよびTTSシリーズを一部改良 クーペに、バイキセノンヘッドライト、ヘッドライトウォッシャー、自動防眩ルームミラーを標準装備。またロードスターのソフトトップカラーにベージュが加わった。 |
2009.10 | アウディ100周年を記念した限定車を設定 Sラインのエアロ、専用ドアシルプレート、カーボントリム、専用19インチアルミで差別化された外観とインパルスレザーで仕立てられた内装が特徴。台数は100台限定。 |
高品質とハイセンスを貫くTTらしい魅惑のコックピット

抜群にスタイリッシュなフォルムを身にまとうTTだが、クーペのキャビンは2+2。ケイマンやフェアレディZに対して、実用性の面で明確なアドバンテージを築いている。後席は正直狭いが、子供や小柄な女性ならば座れる広さ。広く、使い勝手のいいラゲッジにも、FFベースのメリットを見いだすことができる。
そして、もうひとつの光る点は質感の高さ。円のモチーフをちりばめた造形を先代から踏襲しつつ、クオリティをさらに高めたインテリアはムード満点だ。低い着座位置と、高めのベルトラインが醸し出す囲まれ感は、スポーツカー本来の操る喜びを演出するキーポイントでもある。
なお、スポーツシートや非円形のスポーツステアリング、アルミ調ペダルは全車に標準。オプションのレザーパッケージでは、大胆な内装色の組み合わせも選択できる。撮影車のTTSも装備するこの特別内装は、上質なファインナッパレザーをシートに使用。さらにメーターフードやセンターコンソール、ドアアームレストなども革張りとして、プレミアム感を大幅に向上させている。

精緻なレタリングが印象的な4眼式メーター。2+2キャビンはスポーツカーらしい適度なタイト感と、十分な実用性を融合させたもの。ブラック/レッドの鮮烈なコーディネートのレザー内装はオプション。
クロームの縦桟が入るシングルフレームグリルはTTS専用。
アダプティブヘッドライトに加えて、TTSはLEDポジショニングランプも標準装備。
アルミ調ドアミラーハウジングもTTS専用。
美しいヒップラインと優れた空力を両立させる格納式リヤスポイラー。
TTSはSデザインアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは245/40R18だ。
ステアリングにシフトパドルとオーディオスイッチをビルトインする。
奥行きのある荷室の容量は290L。分割可倒式の後席を倒せば700Lにまで拡大。
アウディ自慢の先進技術で身を固めたハイテクモデル

ASFボディに、FSIユニットとSトロニックを搭載する2代目TTは、まさにハイテクスポーツの代表格だ。加えてクワトロシステムには、応答性に優れた新世代のハルデックスカップリング(電子多板クラッチを核とするオンデマンド式)を採用。パワステはサーボトロニック(車速感応)の電動式としている。
で、もうひとつの注目はアウディマグネティックライド。減衰力制御を磁性体で行うユニークな電子サスで、数千分の一秒の超早業で、連続的に的確なダンピングコントロールを行う能力を備えている。モードはノーマルとスポーツ。TTSは標準、他モデルはオプションでの設定だ。
ENGINE
FSI(直噴ガソリン)の直4ターボが主役だが、もうすぐ2.5L直5ターボが仲間に加わる。欧州では3.2L V6、1.8Lターボ、2Lディーゼルターボも設定する。
TRANSMISSION
VW/アウディが先鞭を付けたDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)。アウディはSトロニックと呼ぶ。日本仕様はこのミッションを全モデルに採用。
BODY
アルミ+スチールのハイブリッド方式のASF(アウディ・スペース・フレーム)ボディを採用。リヤフロアをスチールにした目的は前後重量配分の適正化にある。
冴え渡るTTSの走りは好き者を本気にさせる

身体能力を強化した2代目TT、とくにクーペの走りは、ソリッド感が際立っている。カギは言うまでもなく、強くて、軽いASFボディ。タイヤグリップが限界を迎える領域でも正確さを保つハンドリング、そしてアウトバーンの速度域でも「ビシッ」の高度なスタビリティが、強固な骨格の存在をうかがわせる。
ただし、「オレは本物のスポーツカー!」と主張するあまり、初期モデルは足を締めすぎていた感も。飛ばすと心地いいゾーンにはまるが、日常の低速域では正直に体をゆする上下動に目をつぶる必要があったのだ。とくに18インチを標準で履くクワトロは、その傾向が強かった。
ところが、ランニングチェンジというカタチで改良のメスを入れ、TTは着実に乗り味の洗練度を高めることに成功。なかでも完成度が高いのはマグネティックライド装着車で、ノーマルモードでは高性能スポーツカーを意識させない良質な乗り心地(低速域を含む)、スポーツモードでは抜群の高速安定性と冴えたハンドリングを味わわせてくれる。
試乗したTTSは、そのマグネティックライドを標準で装備するモデル。そのおかげもあって、走り味は冴え渡るものだった。より強力な心臓を積むだけに、速さとキレは3.2クワトロを確実に凌ぐレベル。加えて、V6の3.2クワトロよりノーズが軽めのため、ハンドリングのキレ味も一段とシャープになっている。
ノーマルモードでも攻めのワインディング走行が楽しめるが、スポーツモードにセットしたときのTTSはまさしく水を得た魚。ブン回す喜びを強化した高過給圧型の2.0TFSIや、限界域でのコントロール性を高める電制4WD+ESPの絶妙な制御も光る点で、TTSは痛快なドライビングを堪能させてくれた。
それでいて、エンジンは1000回転台半ばから従順に反応し、6速Sトロニックとの連携もじつにスムーズなのだから、日常の街乗りもイージーかつごきげんにこなせる。万能ともいえる性能バランスを考えれば、687万円の価格も納得だ。
BODY VARIATION
ロードスター
先代からの人気モデル。2シーターと割り切り、スタイルの美しさと個性を際立たせたのが見どころだ。設定はFFの2.0TFSIのみ。タイヤは17インチを標準で履く。走りの味つけはオープンに相応しく、クーペよりムードを優先したもの。
クーペ
09年モデルまではV6を積む3.2クワトロも選択できたが、今はFF&クワトロの2.0TFSIのみの構成。一段とスポーティな内外装と走り味が楽しめるSラインパッケージが人気を集める。TTSは左も選べるが、こちらは右ハンドルだけだ。
物件が豊富なので色や仕様も十分選ぶ余地がある
日本でもっとも売れているスポーツカー・・・それはなにを隠そうアウディTTだ。それゆえ、デビューから3年しか経過していない現行型だけを見ても、中古車市場の物件数は非常に多い。
TTは、クーペ、ロードスターと2タイプのボディ、直4ターボとV6の2機種のエンジン、クワトロか否か・・・など、多くの仕様が存在する。なかでも豊富に存在するのがクーペの「2.0TFSI」。カジュアルで肩肘張らない性格のエントリーグレードだが、動力性能は十分以上で、しっかりとスポーツカーしているのが◎。しかしTTシリーズは人気モデルかつ高年式物件が多いので新車からの値落ちは少ない傾向。ちなみにクーペ「2.0TFSI」の相場は350万円前後だ。
カスタムされた車両が少なく、コンディションも良好、物件も多いので好みの仕様をじっくり検討していこう。
AUDI APPROVED AUTOMOBILE
アウディ専任メカニックによる納車前100項目点検を実施し、すべての項目にパスした車両だけが手元に届けられる認定中古車制度。走行距離にかかわらず1年間の保証が付くほか、24時間緊急サポートなどのサービスも充実する。
走りで選べばTTS、ムードを楽しむならロードスター

インプレッションに記したように、現時点での走りの最高峰はTTS。速さや操る楽しさにこだわるマニアにも、絶対の自信を持ってお薦めすることができる。でも、プライスは高め。「手頃な価格で楽しいTT」が望みなら、軽い車重が軽快感とキレに結びついている、FFクーペの2.0TFSI・Sラインをお薦めする。また、速さと、いい意味での重厚感をミックスした3.2クワトロも、新車では購入できなくなったが、注目したいTTだ。
そして「ファッショナブルにTTを乗りこなしたい」、「特別なムードを味わいたい」という人にピッタリなのはロードスター。飛ばして気持ちいいのはクーペだが、流すペースの走りならオープントップが快感を増幅する最強のアイテムになる。で、忘れてならないのは上陸間近のTTRS。最速のTTに乗りたいなら、今は「待ち」だ。
マーケットデータ
グレード
2.0TFSI | 51% |
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3.2クワトロ | 29% |
2.0TFSIクワトロ | 12% |
TTS | 8% |
エンジンは直4ターボ(2.0TFSI)とV6(3.2)の2種類が存在するTT。直4ターボはFWD仕様も設定されるほか、高性能版のTTSも存在する。ボディもクーペとロードスターが存在するからバリエーションは豊富だ。市場に多く出まわるのはクーペの「2.0TFSI」で、半数以上を占める。
ボディカラー
ブラック | 34% |
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シルバー | 33% |
ホワイト | 16% |
その他 | 17% |
ブラック、シルバーなどの硬質なボディカラーが多くを占め、ドイツ製スポーツカーらしい結果となった。ホワイトの物件も比較的目立つ。そのほか、レッドやブルー系も数は少ないが確認できた。さらにTTSにかぎって見ると、専用色のイエローやオレンジなども見られる。
年式
2006年 | 16% |
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2007年 | 37% |
2008年 | 30% |
2009年 | 17% |
国内デビューから丸3年が経過したTT。もっとも多いのは07年モデルで、全体の4割弱を占める。相場は、まだ新しいモデルなので年式ごとの差は少ない。1年落ちの08年モデルが3割と多い一方、デビュー年の06年モデル物件は少なめ。全体的に物件が多く、選びやすい。
走行距離
~5000km | 20% |
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5000km~1万km | 27% |
1万km~2万km | 29% |
2万km~ | 24% |
5000km以下の低走行車は、全体の2割。1万km以下の物件を含めると、全体の半数を占め、比較的低走行な物件が目立つ。中古車の価格帯は280万~450万円で、定石どおり走行距離で価格が変わる傾向にあるようだ。ちなみにグレードによる価格差は大きくない。