カーライフ・ドライブを楽しむ
更新日:2024.10.10 / 掲載日:2024.10.10
移動の“質”にこだわる人にオススメ
かつてのGT

その実力は変わらずか!?
最近では「GT(グランドツーリング)」というグレードを目にすることも少なくなってしまったが、かつては、名実ともに「GT」にあたるクルマがある程度存在していた。今回、少し前の「GT」モデルに試乗し、改めてその魅力と実力を掘り下げてみた。
写真:渡部祥勝/文:岡本幸一郎
(掲載されている内容はグー本誌 2024年10月発売号掲載の内容です)

かつては人気が高かったGT、今でもその魅力は健在!
デザインや性能というのはクルマが持つ魅力の基本的な要素だ。いつの時代もスタイリッシュで走りのよいクルマは憧れの対象となる。
GTはまさにそうした人間の本能的な欲求に応えるクルマとして、もてはやされた。20世紀中はそれがより顕著だったことから、メーカーも積極的にGTやGTの要素を備えたクルマをラインアップしていた。
GTにもいろいろあり、文字どおりグランドツーリングに適したものからライトウェイトのスポーツカー的なものまで幅広くあるが、いずれも性能の高さをアピールしていた。
ところが価値観というのは時間の経過とともに変わっていく。たとえ不便でも見た目がよく性能の優れたGTよりも、便利に使えるほうがいいと考える人が徐々に増えていった。
一方でGTにはちょっとヤンチャなイメージがついてまわったため、「GT」という呼称をむしろ避ける向きも見られた。
それでもデザインや性能の優れたクルマが興味の対象となるのはずっと変わらない。「チョイ悪」が流行った頃にもGTを颯爽と乗りこなすさまに憧れた人は少なくないはずだ。
この先、世の中がどんなに変わってもGTを求める人は存在し続け、その思いに応える魅力的なGTが存在し続けるに違いない。
GTの代表選手ともいえる「スカイライン」で探るその魅力。街でも映える存在感のある姿

GTといえばスカイライン。伝統と確かな性能を備える
スカイラインは日本で指折りの長い歴史を誇るクルマであり、1964年という早い時期から「GT」を名乗って発売されてきた。歴代モデルで「GT」というグレードが必ずラインアップされているのは、日本ではスカイラインだけだ。
そんなスカイラインの12代目となるV36は、基本的に国内専売だった10代目までとは一転し、海外ではインフィニティブランドの一員として販売されたセダンの2代目となる。
このクルマが日本でスカイラインとされたのは、スカイラインと名乗るに相応しいグランドツーリング性能を十分に身につけていたからだ。
さらに、日本車離れした雰囲気を持つ外観は、登場から時間が経過してもあまり古さを感じさせず、今の街なみでも十分にスタイリッシュだ。なかでも最上級グレードの「タイプSP」は、スポーティかつ上級装備が充実しているという位置付けで、魅力的な内容となっている。
スカイラインは、その時代において常に新しいことに果敢に挑戦するという使命も与えられていた。このモデルにも当時最先端だったものが多く装備されていて、現在でもグランドツーリングするうえで十分に役に立つことにも感心させられた。
[日産]スカイライン(先代型)
試乗したのは2009年式の350GTタイプSP。VQ35HRエンジンを搭載し、パワフルな走りを披露する。パドルシフトの操作のみでマニュアルシフトモードに移行できる制御を採用。
中古車価格帯:29.8万〜300.6万円




ココがGTとしてイチオシの魅力!
大排気量のV6エンジン

伝統を継承する丸テール

パドルシフトがスポーティ

Impression 実際の走りはどうか?
排気量の大きさがもたらす力強い走りがGTにふさわしい
このクルマの最大の魅力はエンジン。いまや見渡すと4気筒の過給機付きだらけになったが、自然吸気で排気量の大きな多気筒エンジンというのは、やっぱりいいものだとつくづく思う。始動するときからワクワクして、走り出すと太いトルクと豪快な吹け上がりを堪能できる。低く重厚なサウンドもホレボレする。市街地でも瞬発力があるので楽しめるし、高速道路で再加速したいときも余裕がある。俊敏さと安定性を兼ね備えた足まわりも今でも十分に通用する。まさにグランドツーリングにもってこいだ。

スポーティなGT「86」で探るその実力。GTカーとしてふさわしい、質の高い走りを披露

まず走ることの楽しさを感じられるスポーティなGT
「GT」には明確な定義があるわけではない。ある程度は幅があり、ピュアスポーツに近いクルマもある。「86(以下ハチロク)」がまさにそれだ。
ハチロクがオマージュするAE86レビン/トレノも小柄で高回転型の小排気量エンジンを搭載しながらも、「GT」の付くグレードが存在した。
21世紀に蘇ったハチロクは、スバルのBRZと共同開発された、手頃なサイズとパワーを持つFRの2+2スポーツカー。機構的にはほぼ共通ながら、内外装や走りの個性は両者で作り分けられている。
ハチロクというとテールハッピーなイメージが強い。実際に乗るとそのとおりで、「GT」としてどうなのかという見方もあるが、基本性能が高く、スポーティなテイストを味わえるクルマであることには違いない。
それを「GT」と名乗るのはトヨタにとっては普通のことで、特にAE86が現役の頃には、多数の車種に「GT」がラインアップされていた。トヨタでは「GT」の解釈として、本来の意味であるグランドツーリング性能というだけでなく、シンプルに高性能を示すひとつの代名詞としていたのだろう。もちろん、スポーティなだけでなく、快適に運転を楽しめるということを補足しておきたい。
[トヨタ]86[ハチロク](先代型)
試乗したのは2012年式のGT Limited。水平対向・D-4Sエンジンを搭載したFRスポーツ。ドライバーの感覚を大事にした「直感ハンドリングFR」をコンセプトとして発売された。
中古車価格帯:72.8万〜328.8万円




Impression 実際の走りはどうか?
一般道や高速道路でも走りの楽しさは健在!
ちょっと速めのペースでワインディングを流してみたところ、ことのほか楽しくて改めて基本性能の高さを見直した。試乗したのは、2012年式の初期型だが、足まわりはほどよく締め上げられていて、回頭性が俊敏で軽くて小さいのでスイスイと走れる。力不足を感じたときはワンタッチでシフトダウンできて、迫力あるエンジンサウンドを味わえる。





ココがGTとしてイチオシの魅力!
運転意欲をかきたてる照明

共同開発の優れたエンジン

低重心のポジショニング

クルマのプロに聞いてみました! ワタシのオススメGTはコレ!
クルマ選びのプロである評論家の方々に、ご自身の記憶に残っている“GT”について聞いてみた。オススメの理由もクルマ選びの参考にしてみてほしい。

岡本幸一郎
今回の特集で2台を試乗した岡本氏。精力的に幅広くクルマに試乗しており、知見が広い。過去には自身でスカイラインを所有。
日産 フェアレディZ(Z33)
まず、なんといってもスタイリッシュな見た目がいい。走りの実力だってなかなかのもの。現行のRZ34ほど直接的ではないにせよ、往年のS30を彷彿とさせるスタイリングはもちろん、6速MTを操って3.5ℓV6の性能を引き出し、荒削りながらZらしい豪快なドライブフィールを味わえる。
2シーターのみの設定となり、日産ではスポーツカーだとアナウンスされていたが、個人的にはGT的なキャラクターのほうが強いように思う。
当時の人気が高かったわりに、新車価格が安価で抑えられていたこともあり、中古車市場でもある程度の台数が流通している。もちろん、個体差こそあるが、中古車価格も意外と手頃感があるので魅力的な1台だといえる。

[日産]フェアレディZ(Z33)
5代目にあたるZ33は、2002年7月に登場。2シーターモデルでクーペとコンバーチブルのボディを設定し、280ps/37.0㎏-mの3.5ℓV6エンジンを搭載。流麗なフォルムで高い空力性能を誇る。
中古車価格帯:44万〜628万円

青山尚暉
試乗記やコラムを数多くのメディアに寄稿。独自の計測機器によるパッケージ寸法データを集積。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
SUBARU レヴォーグ(先代型)
日本を代表するGTカーの1台がスバル・レヴォーグ。ここではちょい古な2014年登場の初代スバル・レヴォーグのSTI Sportをボクのイチオシとする。 特に2017年8月以降に発売されたモデルは、全車速域でアクセルやブレーキ、ステアリングをサポートする「アイサイト・ツーリングアシスト」をスバル車初搭載! 運転支援機能が格段に向上した。ポルシェと同じ水平対向エンジンのウルトラスムーズな吹け上がりと独特のボクサーサウンド、低重心かつスバル自慢のAWDによる地を這うようなスポーティで安定感ある走り、そしてワゴンゆえの荷物の積載性など、ロングツーリングに向くGT=グランドツアラーとしての資質十分。愛犬家の方にもオススメだ。

[SUBARU]レヴォーグ(先代型・STIスポーツ)
2017年のMCで「アイサイト・ツーリングアシスト」を初搭載。全方位にわたってドライバーの安全運転を支援する仕様となり、ロングツーリング時の快適性と安心感を大幅に向上させた。
中古車価格帯:119.3万〜350万円

近藤暁史
新車から旧車、メンテナンスやレストアなど、幅広いジャンルを得意とし、編集&執筆を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
トヨタ カムリ(AX70型)
もともとはセリカのセダン版として登場したのがカムリ。FF化に加え、モデルチェンジにより、往年の面影はないが、シャープな顔つきのデザインは存在感たっぷり。手頃なボディサイズや大ぶりのシートなど、余裕あふれるゆったりとした車内、スポーティな味付けの走りなど、ただのサルーンにあらず、GTの資質は初代からしっかりと受け継いでいる。実際に運転してもロングドライブをラクラクこなす。そもそもカムリという往年の車名を聞くだけでもちょっとワクワクする。それでいて新車価格が安いのも特筆すべき点で、残念ながら昨年末に販売を終えてしまったとはいえ、7年近くも販売していたので流通台数も多く、中古車価格がこなれているのはうれしい。

[トヨタ]カムリ(AX70系)
2017年に登場したAX70系は、エモーショナルな美しいデザインが特徴。比較的新しく最新の予防安全装備も備えている。GTというグレードこそないが、上質な乗り味を実現している。
中古車価格帯:138.7万〜479万円
総括
少し古くてもGTゆえの実力を持つ!
今回、「GT」の中古車代表としてスカイラインとハチロクを紹介した。スカイラインの力強い走りとハチロクの俊敏な走り……それぞれ性格の異なる2台だったが、どちらにも共通していえるのは、運転するうえでの楽しさや快適さをしっかり兼ね備えているモデルだったということ。いまや、名実ともに「GT」というクルマは減りつつあるが、クルマが本来持つ性能を感じながらドライブを楽しめる1台として「GT」には、まだまだ十分な実力があり、とても魅力的なクルマだと感じられた。
