ドライブ
更新日:2023.10.02 / 掲載日:2023.10.02

【CX-90】アメリカのまっすぐな道をドライブして得たもの【工藤貴宏】

日本とは違った独自の自動車文化を持つアメリカを自動車ジャーナリストの工藤貴宏氏がドライブ。現地の交通事情や日本との違いを独自の視点でレポートします。

文と写真●工藤貴宏

 まるで映画「キャノンボール」のオープニングのような、アメリカのひたすらまっすぐな道。ボクはそんな道をドライブするのが大好きだ。

アメリカをドライブする魅力とは?

地平線まで真っ直ぐ伸びる広大なアメリカの道路

 アメリカのまっすぐな道をドライブすることのどこに魅力があるのか。

 まずは雄大な景色が見られること。日本にも欧州にも風光明媚な場所はたくさんあるけれど、アメリカの風景はそういうのとは違う。スケール感が違うのだ。

 とにかく広大で、見渡す限り地平線まで道路以外は人工物の見えない風景。そして地平線まで真っすぐに伸びる道。そういうのは日本じゃ味わえない。

 そんな道を走っていると、細かい悩み事なんてどうでもよくなってくる。それが人生のリフレッシュに最高なのだ。

 だから、ボクはネバダやアリゾナの道を走るのが好きだ。

日本未発売のマツダ CX-90に乗る!

日本では発売されていないマツダの最上級モデルCX-90

 ロサンゼルスを訪れたもうひとつの目的は日本で売っていないクルマに乗ること。空港近くでマツダ「CX-90」を受け取り、さっそく郊外へ向かった。

 マツダCX-90 とは、いうなれば日本で売っているSUV「CX-60」のお兄さんだ。共通のプラットフォームを使いつつ全長を5.1mまで伸ばして3列シート化。全幅も広げてフェンダーの張り出しを増やし、グラマラスなボディにしている。

5.1mの全長を生かして3列シートをパッケージしている

 パワートレインは排気量3.3Lの直列6気筒ガソリンターボ(現時点では輸出専用エンジン)もあるけれど、今回は日本向けのCX-60にも積んでいる排気量2.5Lの4気筒自然吸気エンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドだ。ちなみにディーゼルはアメリカにはない。

CX-90はCX-60よりもボディがワイド

気をつけたいポイント&日本にないルール

右側通行では、交差点で曲がった後の車線を間違えないように

 さて、アメリカのドライブで気を付けなければならないポイントといえば、なんといっても左ハンドル右側通行。

 これはもう慣れるしかない。危ないのは慣れてきた頃で、駐車場から道路へ出る際や、交差点を曲がる際にフラッと左車線へ入りそうになるのがよくある例だ。クルマがバンバン走っている道はいいけれど、クルマが少ない郊外の道なんかが危ない。

信号のない交差点ではすべてのクルマは一時停止しなければならない

 また、基本的に赤信号でも一時停止後に右折できること、信号のない交差点ですべての道のクルマに一時停止を求められる「4ウェイストップ(オールウェイストップ)」というルール、市街地などでは対向車線との間には左折時に入るゾーンが存在すること、そして踏切で一時停止する必要がないなど、日本との違いや日本にはないルールもある。それらを事前に理解しておく必要もある。

これがアメリカの踏切。日本と違って一時停止の義務はない

 ちなみにアメリカで運転するときは国際免許(免許センターにいけばすぐ発行してもらえる)が必要と思われがちだけれど、実は絶対に必要なのはジョージア州だけ(アメリカは州により法律が異なる)。そのほかの週は、法律的には日本の免許証だけで合法的に運転可能だったりする。ただしレンタカーを借りるときや警察にお世話になるときに面倒なので国際免許を所持するのが望ましい。

 裏技はレンタカー会社(現時点では「ハーツ」や「ダラー」)の日本の代理店のウェブサイト上にて無料で発行してくれる免許証翻訳書を使うこと。アメリカでは、それを国際免許代わりとして活用できるので便利だ。

 余談だが、今回のドライブでは同行者の運転時にパトカーに止められた(明確な違反ではなく左折待ちでクルマを止めた場所が適切ではなかったので注意された)のだが、その時も日本の免許証だけを見せればOKだった。あのポリスが本当に免許証の記載内容を理解していたのか気になるけれど、身分証明書的に確認しただけなのかもしれない。

片側6車線も! スケールの違いに驚くが運転は結構フレンドリー

高速道路にあたるフリーウェイでは、左側の車線が追い越し用レーン

 さて、ロサンゼルス近郊のフリーウェイはとにかく車線がいっぱい。なかには5車線とか6車線なんていう場所もあってどこを走ったらいいか迷うくらいだけど、基本的には出入り口のレーンとなるもっとも右を避けつつ、右寄りを走っていれば大丈夫だ。こういう道を走るのも、アメリカドライブの醍醐味だと思う。

 それなりに飛ばす人も少なくなくて、捕まらないのだろうかと思ったりもする。いっぽうで、走っていてストレスがなく疲れにくいのは、日本と違って極端に遅い車がおらずほぼすべてのクルマが流れに乗って走れているからだと感じる。トラックが延々と並んで走って車線をふさぐ、なんてことは基本的にない。だから走りやすいのだ。

 周囲を走るクルマを見るとSUVはやっぱり多い。でもセダンも意外に走っている。「アメリカのセダン離れ」と言われるのは正確に言えば「アメリカンブランドのセダン離れ」であって、日本や韓国、そしてBMWなど欧州ブランドのセダンは結構多い。

 また、物流を支える大きなトラックに加え、郊外へ行くとキャンピングカーがやたらと多いことにも気が付く。大型バスみたいなキャンピングカーもけっこうあって、それでの旅行なら車中泊でも家と同じくらい快適なんだろうな……なんてイメージしたりする。きっと楽しい旅になるだろう。

 ところでフリーウェイには、日本のようなサービスエリアはない。でもフリーウェイ出入り口の脇にガソリンスタンドや飲食店、時にはホテルも並んだ「レストエリア」が頻繁にあるから、一旦フリーウェイを降りてそこでクルマと自分のお腹を満たせばいいのだ。

 というわけで、最初はハードルが高いと感じるかもしれないアメリカのドライブ。でも、クルマの運転が好きで日本で日常的に運転しているドライバーであれば、実際にやってみるとそれほど難しくないと感じるはずだ。最初はアメリカの運転事情に詳しい人に同乗してもらえばバッチリだ。

 それに、カリフォルニアの人は優しいから、車線変更などもウインカーを出せばスムーズに入れてくれる。

 もし運転が慣れて余裕ができたら、ロサンゼルスでクルマを借りてグランドキャニオンをはじめとする大自然を見にロングドライブするのもオススメ。

 「グランドサークル」と呼ばれる地域を走り、モニュメントバレーなどダイナミックな大自然を巡る旅もいいだろう。

値上がり幅が半端ないアメリカのガソリン価格

かつてアメリカのガソリン価格は水よりも安いのが当たり前だったが……

 ただ、ガロン(約3.8L)で6ドル弱(約900円=リッターあたり200円超え)するガソリン価格はもう少し下がると嬉しいけれど……。

アメリカでもリッターあたりのガソリン価格は200円を超える

 アメリカのガソリン価格はかつてとんでもなく安くて、21世紀に入る前はガロン当たり2ドル(リッターあたり50円前後)を切るのが一般的だった。ここ10年を見ても、いまの半額以下の時もあった。運転好きとしては、そんな時代に戻って欲しいなとひそかに願っている。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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