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更新日:2021.02.10 / 掲載日:2019.08.30
ハンズフリー通話しながら運転することは違法になるのか

グーネット編集チーム
現在、国内における個人のモバイル端末の普及率は高く、総務省の2017年の「通信利用動向調査」をみると、モバイル端末の普及率が84.0%に達していることが分かりました。
老若男女を問わず誰もが手軽に使用できる便利なコミュニケーションツールとして、モバイル端末は広く生活に浸透しています。
しかし、便利な反面近年ではモバイル端末に関する事故が多発しているのも実情です。
例えば、クルマを運転中に仕事先から電話がかかってきたらみなさんはどうしていますか。
片手にモバイル端末を持ち操作しながら走行する「ながら運転」が違法行為だと認識し、通話ができるハンズフリーイヤホンなどを使用して対応している方も多くいるのではないでしょうか。
では、ハンズフリーで通話しながら運転することは違法にならないのでしょうか。
ここでは、ハンズフリー通話とはなにか、ハンズフリーで通話しながら運転することは違法になるのかについて解説します。
特に営業車を日ごろ運転する多忙なビジネスマンの方は、ぜひ参考にしてください。
ハンズフリー通話とは
そもそも「ハンズフリー通話」とは、どういったものなのでしょうか。
まずハンズフリーの定義を紐解いてみましょう。
スマートフォンの事業者であるKDDI株式会社のサイトを見ると、「ハンズフリーの概要」として以下のように記されています。
「ハンズフリーとは、手がふさがっていないという意味であり、手に持たない様子や、手で持たなくてよいようにするための装置のことを指す。特に電話で用いられる言葉であり、イヤホンとマイクが一体型になったハンズフリーヘッドセットなどを装着すれば、受話器や携帯電話本体を持たずに通話が可能となる。近年では、ヘッドセットを利用せず、携帯電話本体だけでハンズフリー通話を実現している機種も多い。」
つまり、個別の機器や使い方に違いはありますが、直接スマートフォンなどの携帯機器を手に持つことなく、会話をすることを押し並べて「ハンズフリー」とし、そうした使い方(通話方法)を「ハンズフリー通話」と定義するようです。
つまり、両手が空いた状態(Hands Free)を指しています。
ハンズフリーイヤホンやヘッドセットをはじめ、カーナビゲーションシステムとスマートフォンをBluetoothで接続しペアリングして、車載用の別体となっているマイクとスピーカーを使って会話するハンズフリー通話も同じ括りとなります。
ハンズフリー通話をしながらの運転の問題点・危険性とは
ハンズフリー通話をしながらのクルマの運転で考えられる問題点や危険性について考えてみましょう。
以前のモバイル端末にはハンズフリーそのものの環境がなかったため、規制されていない頃は普通に手に携帯電話を持ち、耳に当て会話をしていました。
そのような状態でクルマの運転をすると、運転に集中できないことや片手が使えなくなるなどの理由から、危険な行為とみなされ、2004年6月の道路交通法の改正により運転中の携帯電話の使用が原則禁止となりました。
その後、2018年の道路交通法の改正では、運転中に携帯電話などを注視あるいは操作しながらクルマを運転した場合、危険行為とみなし直接の事故の危険が生じなくても「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」へと厳罰規定が強化されました。
警視庁の見解としては、スマートフォン等の注視・操作、カーナビゲーションシステム等の注視は「画面に意識が集中してしまい、周囲の危険を発見することができず、歩行者や他のクルマに衝突するなど、重大な交通事故につながる極めて危険な行為」とされています。
運転中のスマートフォンの操作や注視は「ながらスマホ」として、事故の危険性があることを問題視しています。
対してハンズフリー通話ですが、いくら両手が使えると言っても、クルマを運転中は運転に集中する必要があり、本人はそのつもりではなくとも、会話に気を取られてしまい、安全運転が遵守できない可能性があります。
仮にドライバーが2秒間、スマートフォンの画面を注視したと仮定したら、時速60km/hで走行していた場合、33.3m進むことになります。
これが時速100km/hで走行している高速道路であれば、約55.6mの間、周囲を見ていないことになります。机上の計算ですが、看過できない数字ではないでしょうか。
ハンズフリー通話しながらの運転は道路交通法上では違法になるのか
現在、道路交通法第71条(運転者の遵守事項)では、自動車が停車しているときを除き、スマートフォン等を手に持って操作および画面を注視することを禁止しています。
また、カーナビゲーションシステム等に表示された画面(画像)を注視することも禁止しています。もちろん、事故や急病人が出た際のスマートフォンの利用は例外措置となります。
つまり道路交通法では、スマートフォンを手に持たないハンズフリー通話に関しては、明確な定義はありません。
条文を読む限りハンズフリー通話には、規制がないことになります。
ちなみにスマートフォンの操作・注視に関しての罰則規定は次の通りです。
交通の危険とは、スマートフォン等を使用中に事故を起こした場合の適用となります。
事故を起こしていなくても、操作もしくは注視が認められた場合の適用が下の保持に該当します。
携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金
反則金:9,000円(普通自動車の場合)
違反点数:2点の加点
携帯電話使用等(保持)
罰則:5万円以下の罰金
反則金:6,000円(普通自動車の場合)
違反点数:1点の加点
ハンズフリー通話しながらの運転は条例でルールが異なる

グーネット編集チーム
前述の通り、道路交通法ではハンズフリー通話をしながらの運転について罰則規定はありません。
しかし、一部の都道府県においては、「ハンズフリーイヤホン」を装着していると道路交通規則によって「安全運転義務違反」として検挙される場合があります。
東京都の場合、ハンズフリー通話に関しては、イヤホン等の着用と会話に集中して、緊急自動車の接近音などが聞こえなくなる可能性に触れており、以下の通りに定義されています。
「高音でカーラジオ等を聞き、またはイヤホン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音または声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。」
千葉県では(外部の音が聞こえない運転の禁止)として以下の通り定義されています。
「車両を運転するときは、音量を上げ音楽等を聴くなど、安全な運転に必要な音声が聞こえない状態にしないこと」
また、周囲の音が聞こえないような音量でヘッドフォン等を使用している状態も規制の対象となります。
都道府県ごとのイヤホンマイクに関する扱いの違い
下記のように都道府県でも、イヤホンマイクに関する扱いが異なり、一様ではありません。
イヤホンマイクを禁止している地域:茨城、群馬、東京、山梨、長野、滋賀、鳥取、島根、徳島、香川、愛媛、高知、熊本
イヤホンマイクの使用自体は認めているが、外部の音が遮断されていると判断された場合に違反になる地域:千葉、富山、山口、福岡
居住する地域が問題なくとも、旅行先の地域ではNGになる可能性があるので、注意が必要です。
安全運転義務違反を犯した際の罰金・加点などの罰則とは?
東京都をはじめ、条例で「安全運転義務違反」として検挙された場合の罰則規定は次の通りです。
反則金:9,000円(普通自動車の場合)
違反点数:2点の加点
上記の通り、道路交通法のスマートフォンの操作・注視より罰則規定より重いことが分かります。
現在、ハンズフリーに関する扱いや罰則規定は国と都道府県によって異なるため、今後罰則規定の厳罰化がなされる可能性は否定できません。
ハンズフリー通話以外で、運転中に安全に電話をする方法はどんなものがあるか
現在、ハンズフリー通話で問題がない可能性を模索すると以下の通り要約されます。
都道府県の道路交通規則の条例を読み解くと、緊急自動車の接近でも支障のない、片耳タイプのイヤホンであれば問題ないかも知れません。
ただし、問題がないと言っても、万一ハンズフリー通話中に事故に遭ったら、責任を追及される可能性はあります。
ハンズフリー通話との因果関係を立証することは困難であるからです。
また、カーナビゲーションシステムとスマートフォンをBluetoothで接続してペアリングして使用する場合も同様で、スピーカーもクルマのものを使うので解釈上は問題なくても、電話を受ける際に画面を2秒ほど見たら道路交通法の違反に問われる可能性もあるため、判断が難しいでしょう。
では、クルマで運転中に通話する際、ハンズフリー通話以外で安全に電話する方法はあるのでしょうか。
結論として、クルマの運転中にハンズフリー通話以外で安全に電話をする方法は、ないと言っていいでしょう。
モバイル端末自体やハンズフリーイヤホンマイクなどのハンズフリー通話の手段を持ち合わせていない場合、クルマを道の駅やサービスエリア、パーキングエリア等の駐車場に停めて、電話をかけるしかないと思われます。
安全運転の観点からも、運転中の電話はなるべく避けるようにした方が良いでしょう。
現在もスマートフォンの使用に関しては罰則規定が厳罰化されましたが、未だ法の整備に関しては過渡期なのかも知れません。
道路交通法や都道府県の道路交通規則の条例では問題なくとも、安全を担保するとなると、運転中はハンズフリー通話もやめて、クルマを停めてから電話をかけた方が安全です。