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更新日:2023.06.29 / 掲載日:2023.05.19
【フェラーリ ローマ スパイダー】美しさに磨きがかかったオールマイティフェラーリ

文と写真●大音安弘
フェラーリ ジャパンは、2023年5月18日、都内に設けられた特設会場にて、新たなオープンモデル「フェラーリ ローマ スパイダー」を発表し、日本初披露した。価格は、3280万円となる。
ローマ スパイダーは、今年3月、モロッコ マラケシュにて、世界初披露されたばかりの最新モデルだ。その名が示すように、日本では2020年4月に発表された2+2クーペ「ローマ」のオープンカー仕様となる。近年のパワフルさとスポーティさを前面に押し出したスポーツカーらしいフェラーリとは一線を画し、往年のフェラーリを彷彿せるクラシカルなスタイルを持ち味とする点は、クーペとスパイダー共に共通だ。
そのコンセプトは、クーペと共通の50年代から60年代の優雅なイタリアンライフスタイルより着想した「ラ・ノーヴァ・ドルチェヴィータ(新しい甘い生活)」を受け継いでおり、フェラーリによる官能的な走りに加え、オーナーに寄り添い、日々の生活を豊かにする存在が目指されている。

ローマのオープンモデル「スパイダー」の特徴を紹介しよう。開閉可能なルーフは、上品なソフトトップを採用。静粛性に優れる5層構造のファブリックを採用しており、クローズド時は、ハードトップ同様の静粛性を提供してくれる。電動格納式ソフトトップは、わずか13.5秒で開閉可能な上、時速60km/hまで作動するので、一般道を走行中にも操作ができる優れもの。さらにコンパクト化を図ることで、独立したトランクは、ソフトトップ展開時255Lの容量を確保。これはクラストップの容量だという。
キャビンの快適性を高めるウィンドディフレクターは、最高170km/hまで展開できるように設計されており、車内に抜ける風も自由にコントロールできる。ボディ構造やメカニズムは、クーペを基本とするが、新たな技術も取り入れられている。その一例が、リアセクション。電動格納式ハードトップを持つオープン「ポルトフィーノM」に採用された技術を採用。さらにサイドシルやAピラー、ウィンドスクリーン周辺も、スパイダーのために設計変更を受けている。
性能面もクーペモデルに匹敵するものが目指され、ビークルダイナミクスの開発目標は、クーペに匹敵する走りの興奮とハンドリングの正確性が掲げられたという。このため、より優雅なソフトトップモデルでありながら、クーペに迫る走りの刺激も併せ持つ、より贅沢な存在となっている。このため、ドライブモードセレクター「マネッティーノ」は、クーペと同じ5モードで、ダイナミクス性能を最大化する「レース」モードも しっかりと備えている。また可変式エアロダイナミクスも、空力が変化するオープン時の走行を加味したものとなっており、クーペとは異なる専用チューンとすることで、スポーティかつ安定した走りを実現している。

搭載される3.9LV8ツインターボエンジンは、最高出力620CV(456kW)/5750~7500rpm、最大トルク760Nm/3000~5750rpmを発揮。FRレイアウトだが、8速DCTのトランスミッションは後方に配置となるトランスアクスルとすることで、室内の広さと前後の重量バランスの改善も図っている。もちろん、これはクーペも同様だ。オープン化による重量増は、84㎏に留められており、乾燥重量は1556㎏となっている。



インテリアは、クーペモデル同様に2+2となるが、ソフトトップの搭載で、リヤシートはスペースとシートバックも角度もタイトとなる。ただシートバックの肉厚をしっかりと確保することで、小さな子供を乗車させるなど、ファミリーユースも睨んだ仕様となっているようだ。コクピット周りは、クーペと同様で、ホールド性の高いセミバケットタイプのスポーツシートを装備。多彩な表示が可能なデジタルメーターに加え、センターの縦型ディスプレイと助手席用タッチスクリーンを採用するなど、操作性とエンタメ性も高められている。

発表会に登壇したフェラーリジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表取締役社長は、「オープンカーを愛する人や初めてオープンカーを試したい人に向けて開発したのが、ローマスパイダー。ドライビングのスリルを最大限に楽しめ、あらゆるシチュエーションに対応する完璧なドライバビリティを追求したクルマ。都会から郊外に向けて走ることで、オーナーの週末は最高のものとなるでしょう」とコメントした
クーペに引き続き、登場したオープン仕様のローマ スパイダー。個人的には、定番の赤よりもシックな色が似合う点も好印象だ。クーペ同様、最新フェラーリとは一線を画す、どこか懐かしい雰囲気と高級パーソナルカーらしい上品なスタイルは、フェラーリ信者だけでなく、往年のスーパーカーファンの心も鷲掴みにすることだろう。
その対価として求められるのは、約4000万円だが、派手過ぎず、快適性も重視されたことで、オールマイティに使えるフェラーリとなっていることを考慮すれば、購入検討者にとっては割安に映るかもしれない。