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更新日:2023.08.25 / 掲載日:2023.08.12
ランクル250のデザインを読み解く【九島辰也】
文●九島辰也 写真⚫︎トヨタ
今日のように四駆が当たり前になっていない時代、それだけを扱う専門誌が多くありました。「4×4(フォーバイフォー)マガジン」というのはそのひとつで、老舗四駆雑誌として多くの四駆乗りの支持を得ていました。毎号かなりディープな企画がウケていたのでしょう。実際にオフロードコースへ持って行きかなり過激なテストをしていましたから。タイヤを組んだままのホイールを外して重さを測ったりして。きっとバネ下重量を自分達なりに検証していたんだと思います。もはや薄い記憶ですが。
学生時代、そんなディープな雑誌の編集部でアルバイトしていました。なので、20代から“ヨンク”には親しみがあります。2000年ごろ「アメリカンSUV」という雑誌を立ち上げたのもきっとそんな経験からでしょう。まだほとんどの人がSUVの意味を理解していない時代でした。日本ではRVなんて特有の呼ばれ方をしていましたからね。おかげで「アメリカン“サブ”」なんて読む人も多かった。
なんて話はともかく、先日ランクル250が発表されました。いわゆる150系プラドの後継モデルです。日本ではプラドの名前を外しましたが、後継であることは確か。他の国ではその名を使いますし、150系が250系になったのですからそうです。200系が300系に進化したのと同じですね。
とはいえ、“原点回帰”というワードを使うなどしてユニークに進化させました。スクエアなフォルムは80年代の70系に通じるものがあります。知っていますか?プラドの原点は70系の“ランクルワゴン”というモデルだということを。それを知れば彼らが“原点回帰”を使った意味が理解できます。
原点回帰した理由は今日のアウトドアブームと関係していることでしょう。ワイルドな装いのいかにもヨンクらしいモデルがトレンドになっています。きっとRAV4の爆発的なヒットも関係しているに違いありません。ワタクシも3年間目一杯カスタムして乗っていましたが、このクルマはマニアをたくさん育てました。オフ会には毎回100台以上のカスタムRAV4が集まります。
それじゃもしこのアウトドアブームがなければ150系プラドはどう進化していたか。想像するに、それはシティ派オフローダーとして正常進化していたはずです。もしかしたらSUVクーペになっていたかも。ボディはモノコックで、名前からランクルの名前が消え、「トヨタ・プラド」なんて名乗っていた可能性もあります。まぁ、それはそれで見たかった気もしますがね。
それはともかく、新型ランクル250はアンベールされました。で、その印象はまさに北米マーケットを強く意識したことを感じます。うまい具合にランクルの過去のデザインキューを取り入れていますが、最近のアメリカのトレンドもそこに注入されているように見えます。具体的には日本では正規販売されていないフォード・ブロンコやGMCハマーあたり。それぞれが自身の歴史を振り返っていますが、共通したデザイン上の“ナニか”を感じます。言ってしまえば、MAやMBジープなんですけどね。ランクルの元祖トヨタBJジープもそうですし。ちなみに、“ランドクルーザー”という名前は“ジープ”の商標権をウィリス・オーバーランド社が登録したことで生まれたんです。まさに「ヨンクの道はジープに通じる」ってところでしょう。ランドローバー系もそうです。
個性的な部分もあります。それは角型と丸型のヘッドライトを用意した点。ランクル300とのつながりを表現するなら角型だし、原点回帰を強調したいなら丸型となります。きっとこういう場合は最後までどちらにするか決められなかったんだと思います。それなら「両方出しますか!」という結論でしょう。他のメーカーですが、過去には次期型をひとつに絞りきれず2つのモデルを出したところもありますから。その辺は正解、不正解はありません。いずれ時間が決めてくれます。
グリルの“TOYOTA”マークも話題のようですが、それは北米で販売されるモデルの一部のグレードにはずっと付いていたので、正直あまり目新しさはありません。私のRAV4もタコマに付いている“TOYOTA”マークを移植していました。昔からトヨタの四駆乗りの間では定番のカスタムです。
なんて感じでひとつひとつ挙げていくとキリがないので、ランクル250についてはメディア向け試乗会の後たっぷり語りたいと思います。まだまだ詳細はアナウンスされていませんしね。ところで、250もそうですが、個人的には同時発表された新型70が気になって仕方ありません。パワーソースが代わって再再上陸しました。こいつはヤバイ。財布の紐が緩みそう。詳細が待ち遠しい限りです。