車種別・最新情報
更新日:2020.04.23 / 掲載日:2018.05.26
【最新モデル大研究】SUBARU新型フォレスター
●文:川島 茂夫●写真:SUBARU
今年のニューヨークモーターショーでお披露目された新型フォレスターが、早くも日本に導入される。スバルの看板モデルだけに、どれほどの進化を遂げたか?気になるユーザーも多いはずだ。グレード構成など、最新の情報を紹介しよう。

●主要諸元(X-BREAK)※プロトモデルの数値
●全長×全幅×全高(mm):4625×1815×1730●車両重量(kg):1530●エンジン:2.5L水4DOHC(184PS/24.4kg・m)●JC08モード燃費:14.6km/L●燃料タンク容量(L):63[レギュラー]●乗車定員:5名●最小回転半径(m):5.4
新型フォレスターここがポイント
<CHECK1>新世代プラットフォームの採用など飛躍的な性能向上が確実

<CHECK2>オン/オフ問わない万能モデルパワートレーンは最新仕様

ガソリン車もハイブリッド車も最新ユニットを搭載。さらにシンメトリカルAWD&X-MODEは全グレード標準と、オンロードもオフロードも隙の無い内容を持つ。走りも大いに期待できる。
<CHECK3>キャビンも上級志向を強化最新利便装備も用意された
スバルは現行インプレッサから内装質感が劇的に向上したが、新型フォレスターのキャビン空間も期待どおりの出来栄え。
スバル車初採用のドライバーモニタリングなど、最新装備の充実ぶりも見所。
車格感は1ランクアップ性能向上も大きな見所
水平対向エンジンと4WDをハードウェアの特徴とするスバルにとって、今や欠かせない柱となったのがSUVである。4WD系スポーツの強烈な印象があるためか、SUVへの展開は市場動向に応じたようにも見えるが、初代フォレスターの登場は1997年、レガシィ・グランドワゴンは1995年に発表されている。つまり、現在盛り上がっているクロスオーバー系の元祖的存在でもあるのだ。
そんな流れの中でフォレスターは、よりカジュアルなスバルXVが登場したこともあって、オフロード適性を高めていることが特徴。従来型はそんな理由もあって、ファミリー&レジャーユースを得意とするSUVに、しっかりと焦点を合わせている。
新型はそんなフォレスターの基本コンセプトやパッケージングを継承しながらも、シャシーをSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)に変更するなど、ハードウェアを一新してきた。
ハードウェアで注目すべきはエンジンだろう。従来型は2LのNA車とターボ車が設定されていたが、新型はNA仕様の2・5Lと2Lハイブリッドになった。このガソリン車の排気量からも分かるように、パワートレーン設定は1クラス上にシフトし、スバルSUVの看板車種らしい性能向上が図られている。
ハイブリッドシステムは、直噴化とロングストローク化で高効率を追求した新世代水平対向の2LとCVTのパワートレーンに電動駆動系を組み合わせたパラレル式を採用している。10kWの最高出力を持つ電動モーターは、先代スバルXVで展開していたシステムと共通のスペックだ。ただし、様々な改良が加えられ、回生効率やパワーアシスト特性が改善されていると予想できる。ちなみにWLTCの郊外と高速モードでは2・5L車にわずかに及ばないが、市街地モード燃費では約12%向上。加減速の多い低中速走行での燃費はかなり期待できそうだ。
駆動方式は電子制御多板クラッチにより後輪へのトルク伝達を制御するフルタイム4WDを全車に採用する。これまでベーシックグレードに設定されなかったXMODEは全車標準となり、制御の見直しを図るとともに、新たに深雪&泥濘モードを加えて、悪路踏破性の向上を図っている。
ドライバーの負担を軽減する最新技術も投入された
スバルの看板技術であるアイサイトも最新仕様となった。アイサイトはバージョン3に前走車追従車線維持機能(ツーリングアシスト)も付加。アイサイトセイフティプラスとして後側方警戒支援システムや自動ハイビームも設定。
そしてスバル車初となるドライバーモニタリングシステムの装着もトピックス。インパネ上部の情報表示パネル上部に設置された専用カメラによりドライバーをモニタリングすることで、居眠りや脇見で安全な運転ができないと判断すると、メーターや情報表示パネルで警告を発する機能を持つ。
グレード展開は2・5L車が3タイプ、ハイブリッド車は1タイプの全4グレード。装備面での差別化は少なめで、オンロード志向ならツーリング/プレミアム、アウトドア志向ならX-BREAK、先進性ならアドバンスという具合にキャラ付けは明快だ。
内装はプレミアムとアドバンスが同系統のラグジュアリー仕様、X-BREAKは撥水加工シートなどで、専用仕様に仕立てられる。ナビは全グレードともアクセサリー設定。プレミアムSUVで人気が高いパワーテールゲートは全車OP。OPも含めると機能装備に大きな隔たりがないので、趣味嗜好を活かした選択がしやすい。
新型は、オフロードの強みはそのままに、普段使いでの快適性も強化した、昨今のSUVのトレンドにも配慮したモデルである。
躍動感と塊感を意識して描かれる、スバル最新のデザインフィロソフィー“DYNAMICxSOLID”の考え方が注がれたエクステリア。
SUVらしい力感溢れるスタイリングに仕上げられている。
全幅は1815mmと僅かに拡大されたが幅広感は皆無。デザインは従来型のイメージを踏襲しつつも、モダンキュービックフォルムの考え方が加えられたことで躍動感が強まった。
取材車のX-BREAKは、ルーフレールやフロント/サイド/リヤのアンダーパーツにオレンジカラーが配色される、若々しいイメージが与えられたカジュアルなグレード。
ホークアイデザインのライトには、コの字のポジションライトも備わる。コの字は水平対向エンジン「BOXER」のピストン運動を表現しており、最新スバル車に採用されているデザインイメージのひとつ。
スバル=六連星という意味も込められる、六角形のヘキサゴングリルも最新のデザインイメージのひとつ。X-BREAKではソリッドブラックに塗装され、精悍さを強調する。
アルミホイールは、設定グレード全てに専用のデザインが設定される。X-BREAKには、ガンメタリック塗装の異形6スポークの17インチホイールの組み合わせ。

ツーリングとプレミアム、マイルドHVを積むアドバンス(撮影車両)は、アンダーパーツのカラーラインはシルバーで塗装される。全高も1715mmとX-BREAKに比べると15mmほど低くなる。
新型のインパネデザインはインプレッサ系の流れを汲むレイアウト。ドアトリムなどにステッチや立体感のあるツインキルト加工を施すなど、上質感の演出も巧みになっている。
リニアトロニックはマニュアル7段モード付に進化。手元で任意にギアを選べるパドルシフトも備わる。X-BREAKのコンソールリッドはエクステリア同様にオレンジで加飾される。
X-BREAKのシートは、泥や汚れに強い撥水ファブリック仕様が採用され、アウトドアユースを意識した造り込み。ステッチカラーもオレンジとなる(写真は北米仕様車)。
パワートレーンは2タイプ設定
ガソリン車のエンジンは、184PS/24.4kg・mを発揮する2.5L水平対向4気筒(FB25型)。直噴化に加えて、90%の部品が新設計された最新仕様が搭載される。
マイルドHV車には、2L水平対向4気筒(FB20型)+モーターのe-BOXERをを搭載。スペック数値は先代XVハイブリッドと同等だが、制御系を進化させていることが予想される。
先進安全装備「アイサイト」はツーリングアシストも備わる最新仕様

車線中央維持機能と先行車追従操舵機能を備えるアイサイト・ツーリングアシストを全グレードに標準装備。最新の先進安全装備を備える充実の内容(写真は北米仕様車)。
ドライバーモニタリングシステムはAdvanceのみに標準装備

ドライバーのわき見や居眠りを推定して注意を促すドライバーモニタリングシステムは、新型ファレスターの目玉だが、設定があるのはAdvanceのみ(標準装備)。
新型フォレスターグレード詳細
Touring

ベーシックモデルにもアイサイトは標準装備
アイサイト・ツーリングアシストやX-MODE、アクティブトルクベクタリングなどの機能装備&メカニズムは標準装備となるエントリーグレード。シートはファブリック/合成皮革のコンビシートだが、前後ともシートヒーターが備わるなど、実用性の高い装備も充実している。
Premium

上級装備が追加された中核グレード
18インチアルミホイールやLEDフォグランプが追加され、ファブリック/合成皮革のコンビシートは、Premium専用意匠に変更されるなど上級志向を強化。後側方警戒支援機能を持つアイサイトセイフティプラスが標準装備になるなど、安全性能も強化されている。
X-BREAK

内外装をカジュアルに仕上げた上級仕様
装備水準はTouring相当だが、内外装にオレンジカラーが配置され、精悍なガンメタリックカラーのアルミホイールやルーフレールなどが標準装備となる。シートと荷室床は汚れに強い撥水仕様になるなど、アウトドアユースを強く意識した内容を持つことも特徴だ。
Advance

マイルドHVを搭載する最先端グレード
2LNA+モーターを組み合わせたe-BOXERシステムを搭載する唯一のグレード。18インチホイールやLEDフォグランプなど、装備水準はPremiumとほぼ同内容だが、新型の目玉装備であるドライバーモニタリングが選べるのはAdvanceのみになる。
ボディカラー
Touring/Premium/Advance<全9色>
ホライゾンブルー・パール
セピアブロンズ・メタリック
ジャスパーグリーン・メタリック
ダークブルー・パール
クリムゾンレッド・パール(OP)
アイスシルバー・メタリック
クリスタルホワイト・パール
ダークグレー・メタリック
クリスタルブラック・シリカ
X-BREAK<全4色>
アイスシルバー・メタリック
クリスタルホワイト・パール(OP)
ダークグレー・メタリック
クリスタルブラック・シリカ
シート素材
ファブリック/トリコット+合成皮革※TouringとPremiumとAdvanceに標準設定。
撥水ファブリック/合成皮革※X-BREAKに標準設定。
本革※Premium(ブラック)とAdvance(ブラック/ブラウン)にOP設定。
新型フォレスターのライバルは?
SUBARU新型フォレスター

価格帯:280万8000円~309万9600円※編集部調べ
価格はほぼ同水準だが車格感や上質感は1ランク上
フォレスターはレジャー向けの実用SUV。国産車ではエクストレイルとアウトランダーが代表的である。この2車は3列シート仕様もラインナップすることからも分かるように、ファミリー&レジャーに軸足を置いている。フォレスターも実用面では優等生だが、多用途性ではこの2車に及ばない。ただ、新型は遊び心やプレミアム感を高めているため、車格感では両車を上回っている。アウトランダーとの比較では設計年次の影響も大きいが、エクストレイルと比べても1クラス上の印象である。ちょっとリッチな気分でアウトドアレジャーを楽しむ、という雰囲気の演出も次期フォレスターが一枚上手である。
NISSAN エクストレイル

価格帯:219万7800円~309万8520円
キャラクターはかなり近いガチのライバルはこのモデル
アウトドア適性の高さや、ハイブリット車が選べるグレード体系、強力な運転支援機能を選べるなど、フォレスターのキャラクターと限りなく近い。ガチのライバルになるのはこのモデルだろう。

4WD車には電子制御式のインテリジェンス4×4が採用されるなど、泥路や雪路などの走破性は申し分なし。オンロードとオンロードのバランスの良さはフォレスターと同等だろう。
MITSUBISHI アウトランダー

価格帯:253万8000円~328万4280円
4WD性能は互角以上アウトドア派ならば見逃せない
パジェロ譲りの本格4WDシステムを搭載するミドルSUV。電動モーター駆動のPHEVモデルも存在するが、価格の面を考えればバランスの良い2LNA車がライバルだろう。

アウトドア志向を狙った特別仕様車アクティブギアを設定するなど、近年積極的なプロモーションを実施中。本領発揮はラフな不整地路だが、オンロードの走りも侮れない実力を持つ。
MAZDA CX-5

価格帯:249万4800円~352万6200円
方向性は違えども、価格帯は近いライバルとしてありえる選択
オンロード主体のモデルゆえに、フォレスターとは目指す方向性は異なるが、ガソリン車同士で比較すると価格帯はかなり近い。購入時に悩むユーザーも多いはずだ。

ディーゼルターボ車もガソリン車もパワートレーン系を最新仕様にアップデート済み。有力ライバルの2.5Lガソリン車は気筒休止機構が追加されて、省燃費性能も向上。
フォレスター新型VS従来型詳細チェック!
どこまで違う?買い替えが正解か?気になる部分を横比較
スバルのクルマは、乗り替え需要が多いことでも有名だ。当然、フォレスターの場合も新型に乗り替えたいオーナーが多いことは予想できる。ここでは新型と従来型の気になる部分を比較することで、買い替えが正解なのか?をジャッジしてみたい。
見た目の変化は少なめだが中身は著しく進化している
デザインも含めてコンセプトに大きな変化は見られない。ただし現状維持というわけではない。方向性を維持したままの正常進化が新型の見所だ。代を経る毎に走行性能も含めて、アウトドアレジャー適性も向上している。
新型の車体寸法は全長、全幅とも若干拡大されているが、実際は従来型と同じ感覚で問題ない。共にロングルーフのワゴン的なキャビンデザインを採用し、プロポーションにも大きな違いがないため、キャビン寸法も前後席距離は20mm、室内有効長で33mmの拡大と、大きな変化はない。この拡大分はホイールベースの変化とほぼ一致している。荷室の奥行きは30mm増加。トリムのデザイン変更があるにしても、外寸の変化以上にキャビンが大きくなり、わずかながらもスペース効率に優れた設計だ。実用性や積載性に大きな影響はないにしても、レジャーワゴンとしてバランスへのこだわりが感じられる。
シャシーやパワートレーンの出来の実際は試乗しないと分からないが、新世代型のハードウェアを採用していることからも期待していいだろう。
シャシーはインプレッサやスバルXVにも用いられるSGPを採用。この最新シャシーは設計の共用化によるコスパ向上が主目的だが、インプレッサとXVの設計の違いを見ても分かるように、それぞれのコンセプトに応じて設計変更を加えていることも見逃せない強み。フットワークの操安性と乗り心地の改善も期待できる。
新旧のフォレスターを比較した際に、最も期待したいのは乗り心地である。インプレッサから発展したスバルXVがしなやかさと据わりを向上させているのを考えれば、ハードウェア一新の新型の走りは大きく進化している可能性が高い。X-MODEのおかげもあって悪路対応力も向上しているだろう。
加えて1ランクアップのパワートレーンの採用である。ガソリン車は2・5Lに排気量が拡大。さらに先代のスバルXVに搭載されていたハイブリッド仕様が復活し、新世代感を一層強化した。
従来までは機能感が強すぎる印象もあったインテリアも、新型は洒落っ気のあるアクセントやプレミアム感を加えて、趣味の時間を楽しむ雰囲気も高まっている。アイサイトも最新仕様にアップし、高速長距離の運転支援性能も向上している。
大きな方向性は変わらなくても、新型は性能もデザインも、最新にふさわしいモデルに仕上がっている。従来型のユーザーが安心して選ぶことができるモデルであることは間違いなさそうだ。
エクステリア
デザインの方向性は同じだが新型は引き締まった風貌を手に入れた
新型
キープコンセプト路線と言いつつも、要所要所のデザインが骨太な表現になったことで、引き締まったスタイリングを手に入れた。従来型と見比べると、その違いは明らかだ。

六角形のヘキサゴングリルは、近年のスバル車に共通するデザインアイコンのひとつ。新型はより強調する見せ方に仕上げられる。標準ボディ車はシルバーメッキだが、X-BREAKはソリッドブラック塗装。
従来型
従来型も2016年のマイナーチェンジの際に、ダイナミック×ソリッドのデザイン手法が注入され、メリハリの効かせた表現を手に入れたが、新型と比べると存在感はやや薄めに映る。

従来型は北米市場を意識していたこともあり、ミドルクラスとしては大柄なボディサイズを持つ。
パワートレーン
新型

<エンジン>最新の2.5Lは直噴仕様省燃費性能も高まった
主力となる2.5Lエンジンは、レガシィ系に搭載されているFB25型の最新ユニット。直噴化に加え内部構造の再設計により、省燃費性能も向上している。

<ミッション>マニュアルモードは7段式より自然な加速フィールを楽しめる
リダクションギヤの設定を変更し、変速機構は7段式に進化。内部フリクション低減を図ったことで、駆動力をより効率良く伝えることが可能になった。
従来型

<エンジン>スバルの定番ユニットFB20型を搭載
従来型の主力エンジンは2LのFB20型。比較的新しいエンジンゆえ148PS/20.0kg・mと必要十分のスペックを持つが、排気量が拡大された新型と比べると、高速域で差を感じる可能性が高い。

<ミッション>リニアトロニックの変速機構は6段式
フォレスターのミッションは、2012年に従来型がデビューした時にリニアトロニックに変更された。変速機構は6段式。6速MT車の設定もあった。
X-MODEは改良されたが悪路走破性能はほぼ互角だろう

滑りやすい路面でエンジンやトランスミッション、ブレーキを統合コントロールするX-MODEは、道路状況に応じて制御動作を変更できる2モード式に進化。より幅広い走行状況で安定した走りを実現するが性能はほぼ互角だろう。
キャビン
新型の質感向上は明らか従来型との差は想像以上に大きい
新型
従来型同様にインプレッサの流れを汲むレイアウトだが、素材感が高まったこともあり質感向上は明らか。ディスプレイ表示を大きく、操作系もコンパクトにまとめていることも特徴(写真は北米仕様車)。
キャビンは若干拡大されたが、ヘッドルームまわりはほぼ同じ。シートも素材や仕立てが良くなっており、プレミアム感が高まったことも新型の美点だ。
従来型

約6年間の間に数度の改良が行われ、素材の見直しなどは図られたが、モニターサイズやスイッチ類の配置などに古さは否めず、新型と比べると質感も物足りなく感じてしまう。
装備
ドライバーの運転を助ける利便装備が大幅に強化
新型
乗員認識技術「ドライバモニタリングシステム」が設定されるなど、最先端のインターフェイスを採用。最先端装備の充実ぶりも新型の見所だ。
アイサイトは、従来型はバージョン3に留まっていたが、新型は最新のアイサイト・ツーリングアシスト付きに進化。強力な運転支援機能も手に入れた。