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更新日:2018.11.21 / 掲載日:2018.08.25
HONDA 新型N-VAN・N-BOX徹底比較
●文:川島茂夫 ●撮影:奥隅圭之・佐藤正巳

ホンダが新発売したNバンは、その使い勝手の幅広さで、軽商用バンとしてだけでなく一般ユーザーからも大変注目を集めている。そのNバンとナンバーワン軽トールワゴンのNボックスを徹底比較した。プラットフォームを共用するこの2台の違いとは?
HONDA N-VAN
●発売日:7月13日●価格帯:126万7920~179万9280円●販売店:ホンダカーズ全店●問い合わせ先: 0120-112010
■主要諸元(N-VAN +STYLEFUN・ターボHondaSENSING)
●全長×全幅×全高(mm):3395×1475×1945●ホイールベース(mm):2520●車両重量(kg):970●駆動方式:FF●パワートレーン:658cc直3DOHCターボ(64PS/10.6kg・m●トランスミッション:CVT●JC08モード燃費(km/L):23.6●燃料タンク容量(L):27[レギュラー]●最小回転半径(m):4.6
HONDA N-BOX
■主要諸元(N-BOX G・EXHondaSENSING)
●全長×全幅×全高(mm):3395×1475×1790●ホイールベース(mm):2520●車両重量(kg):930●駆動方式:FF●パワートレーン:658cc直3DOHC(58PS/6.6kg・m)●トランスミッション:CVT●JC08モード燃費(km/L):27.0●燃料タンク容量(L):27[レギュラー]●最小回転半径(m):4.5
NバンはNボックスのプラットフォームで開発
アクティバンやバモス系の実質的な後継車として開発されたのがNバンである。車体設計面でのアクティバン系からの大きな変化は駆動系レイアウトだ。アクティバン系は床下にエンジンを配置したMRレイアウトを採用していたが、Nバンは標準的なFFレイアウトを採用した。このプラットフォームはNボックスをベースに開発されたものであり、ハードウェア構成では姉妹車といってもいいだろう。ACCや半自動操舵LKAを含むホンダセンシングも採用。安全&運転支援機能は軽自動車全般でも最高水準にある。
スーパーハイト系をベースとした商用車は先にウェイクから発展したハイゼット・キャディが登場しているが、ボディシェルを共用するキャディに対して、Nバンは専用ボディとなっている。
多量の荷物の効率的な積載は軽商用の設計要点のひとつだが、Nバンはそういった用途で積み降ろし作業の効率化を図るため、左側にセンターピラーレスのスライドドアを採用した。巨大なドア開口は使い勝手では有利だが、車体剛性や衝突安全では工夫が求められ、しかも乗用系とはレベルの違った耐久性が要求される商用である。結果、車重はNボックスよりも40kg以上増加している。なお、車体だけでなく、CVTも専用設計とするなど、車体全般がヘビーデューティ仕様になっている。
Nボックスに対して増加した車重。さらに貨物積載の負担が加われば動力性能は相当厳しくなる。NA仕様の試乗車には100kgのウェイトが積載。つまり3名乗車相当での走行だったが、一般走行での登坂や加速でも全開近い踏み込みもしばしば。i-VTECが廃止されて高回転のパワーが低下しているせいもあるが、5000回転以上の滞在時間が長い。NAの軽貨物車はそうやって走らせるものだと、何となく納得してしまうが、非力感は否めない。
ターボ車になると印象が随分と異なる。常用回転域はNA車より1000回転以上下回る。アクセルの残り代も大きくなり、「頑張り感」が大幅減。付け加えるなら高速の100km/h巡航もターボ車は無理がない。ACCとLKAで楽々ツーリングが楽しめた。
貨物積載を前提したサスチューンと軽商用車用タイヤのため乗り心地は硬めだが、可変バネレートの採用もあって空荷でも意外と落ち着いている。コーナリング限界は低下しているものの操安性はNボックス同様に初期ロールが緩く、ストロークするほどに落ち着くタイプ。Nボックスの長所を活かしたフットワークである。
エクステリア
ファミリー志向のNボックスに対してカジュアルなNバン
全長と全幅は規格いっぱいは軽自動車の常識であり、両車に差はない。ホイールベースも共通である。異なるのは全高で、1790mmのNボックスに対して、標準ルーフ(クール)が+60mm、ハイルーフ(標準/ファン)が+155mmである。Nバンの標準ルーフの全高設定が軽1BOXの標準値であり、ハイルーフ仕様は軽自動車では最も高い全高設定である。
外観は波板デザインを側面に入れるなど機能優先の道具感を演出しているが、効率優先の殺伐とした感じも、飾って背伸びした感じもないカジュアルな感覚が印象的。そこに「ファン」と「クール」の二つの個性を加えて、ファミリー志向のNボックスと違ったキャラを主張している。
作り込まれたNボックスのフォルムに比べると、Nバンは3本ビードラインを取り入れたシンプルなデザイン。
全長、ホイールベースはどちらも同じ。助手席側の開口部を比較するとピラーレスのNバンが圧倒的だ。
全幅は同じ。どちらも愛嬌のあるフロントビューを持ち、姉妹車というのも納得。フロントガラスの開放感はNボックスが上。
全高はNバンが1945mmで、Nボックスが1790mm。実際に並べると数値以上にNバンの背が高い印象だ。
積載量確保のために、Nバンはスクエアな開口部を持つ。荷室床面地上高はNボックスの方が低くなっている。
N-VAN・N-BOX 主要諸元・主要装備

N-VANのプラットフォームはN-BOXがベース
Nボックスのプラットフォームをベースとしつつ、Nバンはボディではリヤフロアとサイドシル、シャシーではリヤサスペンションを中心に専用設計している。
インテリア・キャビン
総合的なキャビン居住ではNボックスが一枚上
Nバンのシート設定を一言でまとめれば「1プラス3」である。つまり運転席は一人前の設え、他はそれなりである。
それでも助手席は機能が省略されるものの不足ないサイズと造りなので長時間乗車も何とか対応できるが、後席は補助席レベル。ベンチ仕様の簡素な造りで、バックレスト丈はヘッドレストのようなエクステンションを伸ばして男性の肩胛骨付近まで。当然サポート性は悪く、加減速Gや横Gのストレスを感じやすい。格納状態が通常で、人を乗せなければならない時に引き出すという考え方である。
Nボックスの助手席と後席の座り心地はスーパーハイト系では標準的だが、Nバンと比較すれば段違いに快適である。スペースもしっかり確保され、大人4人がくつろぐことができる。
N-VAN

仕事使いがメインとなることを想定し、ドライバーにとっての使いやすさと快適性を求めたインパネレイアウト。トレイや収納も確保されている。
運転席には登録車クラスのゆったりしたサイズのシートを使用。助手席や後席は格納性を重要視した仕様で、長時間乗車だと負担が大きくなる。
運転席のシートは、サイドがしっかりと体をサポートする形状になっていて、長時間の走行でも疲れにくくなっている。後席はサイズも小さく簡素な作り。
N-BOX

表示系の見やすさを重視したすっきりしたインパネまわり。ファミリーユースに配慮した収納やポケットが使いやすく配置されている。
前後席の座り心地は高い水準で、Nバンと比較すると総合的な快適性で上回る。大人4人が乗ってもしっかりとくつろぐことが可能だ。
N-VANはアクセサリーも充実
純正アクセサリーブランドであるホンダアクセスから、仕事やレジャーに使えるアクセサリーが豊富に用意されている。
アウトドア向けのアクセサリーも多く、車中泊用のアクセサリーを使えば、大人2人でも車内でくつろぐことができる。
ユーティリティ
高い収納力が魅力のNバン
軽規格の全高制限の2mに迫る全高の余裕は室内高の拡大に繋がるが、カタログ値ではNボックスが35mm勝っている。これは計測方法の違いで、Nボックスは客室床面、Nバンは荷室床面から天井までを計測するため。荷室床面高を基準にすれば、全高の違いに相当する室内高の差があり、Nバンは室内での作業にも十分な高さがある。なお、リヤゲート開口地上高はNボックスのほうが低い。
Nバンは床面の平坦さと積み降ろし作業を重視した設計である。Nバンの積載性のよさは助手席/後席格納時。運転席横まで見事にフラットな荷室床面が構成される。しかも、ピラーレスドアのお陰で、横からの積み降ろしが容易。作業性も含めて積載性は段違いだ。
N-VAN

荷室幅:最小90~最大120cm/荷室高:130cm/荷室通常奥行き:72cm/荷室最大奥行き:235cm(編集部計測)

助手席と後席を収納すると、運転席の横まで、フラットな積載スペースとなる。助手席側ピラーレスによる、開口部の大きさも魅力。
N-BOX

荷室幅:最小90~最大124cm/荷室高:117cm/荷室通常奥行き:42cm/荷室最大奥行き:127cm(編集部計測)
編集部CHECK!! N-VANとN-BOXは段ボール箱をどれだけ積める?

今回用意したのは、宅配業者で使用する100サイズの段ボール箱。実測するとタテ42センチ、ヨコ32センチ、高さ25センチだった。
NバンとNボックス、それぞれの荷室への実際の積載量も気になるところ。そこで編集部では、実際に段ボール箱を積んでみて、その個数をカウントしてみた。果たしてその結果は?
N-VAN
助手席のスペースまで使って、トータル32コを積めた。後方視界を考えずにただ積むだけならさらに10コは積める。
N-BOX
後席を倒した状態で24コを積めた。Nバンと比較すると室内の高さに余裕がないので、これが限界となる。
走行性能
走りのゆとりではNボックス
しっかりとした乗り味ならNバン
Nボックス対比では動力性能と乗り心地がNバンの泣き所。重量ハンデはおよそ一人分だが、高い全高は高速走行での空気抵抗を増加させる。そういった負担増を低いギヤレシオで補正しているのだが、それはエンジンの常用域を高める。NボックスのNA仕様も高回転の使用頻度は高いが、Nバンほど忙しさは感じない。ターボ車でも同様の違いがあるが、トルクのゆとりで巡航ギヤの維持能力が高まり、緩加速時の回転上昇減でNA車ほどの違いはない。Nバンのほうが少々うるさく感じるくらいだ。
フットワークの違いは別項で述べたとおり。快適性とコーナーリングのゆとりはNボックス。ただ、しっかりとした乗り味を求めるユーザーならNバンが好みの可能性も。
N-VAN

Nボックスよりも重量が重いので、NA仕様では高回転気味となる。ターボ車では高速道路でもゆとりが生まれてくる。

NバンはS660のミッドシップ用MTをベースとした6速MTを自然吸気エンジン車に設定。高速走行時の静粛性と燃費を向上。
N-BOX

総合的な快適性とコーナーリングでの安定感が魅力。レスポンスに優れた加速性能で、街中での走りでもストレスは少ない。
先進安全・運転支援
どちらもホンダセンシングを標準装備
NボックスはACCや半自動操舵LKA、標識認識、誤発進抑制等々の装備をセットしたフルパッケージのホンダセンシングを全車に標準装着する。Nバンは一部車種にACCやLKA、誤発進抑制が設定されていないが、これはすべてMT車。CVT車はNバンも全グレード標準装着である。ACCは全車速型ではなく、対応速度は30km/h以上だが、軽自動車でACCとLKAの採用は圧倒的アドバンテージである。とくに遠出も考慮してターボ車を選ぶユーザーには魅力。ホンダNシリーズでもNバンとNボックスだけが採用している。

Nバンは、ホンダの商用車として、先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を初めて標準装備している。
維持コスト
登録車に比べると乗用と商用で大きなコスト差はない
登録車クラスでは乗用と商用(貨物)の税額が大きく異なるが、軽自動車ではそれほど大きくない。軽自動車税の年額差は5800円。ちなみ積載1000kg以下の貨物車は軽商用の年額プラス3000円の8000円である。自賠責保険の年額は同じ。任意保険料は保険会社によって料率が異なるのだが、これも大差ないと考えていいだろう。また、初回の車検期間が軽乗用は3年、軽商用は2年と差があるが、初回以降はどちらも2年である。登録車に対して軽自動車は維持費で有利だが、軽の乗用と商用ではそれほど大きな違いはないわけだ。

結論
Nバンはアウトドアレジャー派にとって有力な選択肢
Nバンにはレジャー用途に尖らせた以前のスパイクと似たセンスを感じた。後席に実用性を求めるユーザーには勧めないが、2名乗車に割り切れば大きな可能性を示す。アウトドア系の趣味を楽しむユーザーには魅力的だ。
提供元:月刊自家用車