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更新日:2018.10.30 / 掲載日:2018.10.26
新「プレミアム」を狙え!新世代レクサス大研究 LEXUS ES 詳細レポート

“最新”が惜しみなく注がれた新世代のプレミアムセダンが誕生
ここ数年、魅力的なモデルを立て続けに投入しているレクサス。新世代モデルを中心とした躍進ぶりは大きな注目を集めており、いまやその動向は世界中から熱い視線を集めるほどだ。今回はそんな新世代レクサスの強さの秘密を徹底的に解明してみよう。
7代目となるレクサスESは、トヨタの最新が注がれた「フルTNGA」モデル。近年、登場したレクサスモデルの中でも際立った進化を遂げているだけに、レクサスを検討しているユーザーならば、見逃してはもったいないぞ!
●文:山本シンヤ ●写真:澤田和久
アッパーミドルモデル「ES」が久々に日本に復活!
【プレミアム】LEXUS LS
【プレミアム】LEXUS GS
【プレミアム】LEXUS ES
【エントリー】LEXUS IS
かっては日本でもウインダムのモデルネームで発売されていたレクサスESだが、新型は正式に「ES」として導入される。現在、レクサスセダンはLSを頂点に4モデルがラインナップしているが、新型ESはGSと同じアッパーミドルセダンに位置する。ただし、最新シャシーの採用などで走行性能向上も図られた新型ESは、車格はGSより上というイメージになりそうだ。
LEXUS ES

新型ES バリエーション&価格
●発売日:2018年10月24日
●価格帯:580万~698万円
●販売店:レクサス店
●問い合わせ:0800-500-5577
上質感の巧みな演出により1ランク上のモデルに進化
1989年にトヨタが新たに立ちあげた高級車ブランド「レクサス」。多くの人には「LS(=セルシオ)」の印象が強いと思うが、この時もう一台のモデルが発表された。それが「ES」である。
初代は成功とは言えなかったが、2代目以降人気が爆発的に高まり、レクサスの販売台数をけん引するエース的存在に成長を遂げた。ちなみに2/3/4代目は日本に「ウインダム」の名で導入。5/6代目は海外専用モデルとなったが、韓国や中国などアジア圏でも人気を博している。
そんなESが7代目にフルモデルチェンジ。最大のポイントはメインマーケットである北米/中国だけでなく、日本/欧州への展開も行なう世界戦略モデルに生まれ変わったことだ。後継モデルとして日本へは12年ぶりに帰ってくるが、“ES”としては初導入となる。
エクステリアは歴代モデルを振り返ると、どこか「高級なカムリ」が拭えない印象があったが、新型はカムリの面影がないのはもちろん、FF横置きレイアウトながらも「小さなLS」を思わせる。低重心かつワイド&ローで、刺激的だけどエレガントさが備わるスタイリッシュなプロポーションだ。ちなみに全長4975mm×全幅1865mm×全高1445mm、ホイールベースは2870mmと、先代LSの標準ボディに迫るサイズを持つ。
インテリアは新世代レクサスを特徴づける水平基調のインパネデザインを採用。運転席周りはコンパクトなメーターやメーターフード左右のダイヤルなど、LS/LCと共通イメージでコクピット感覚を強めているが、助手席はES独自のインパネセンターデザインを含め、視覚的な解放感を演出した空間に仕上げられている。また、FFレイアウトのメリットを活かした室内空間も強みで、特に後席の居住性はLSよりも上下方向に余裕があるため、解放感も非常に高い。そういう意味ではLSよりもフォーマルセダンとしての資質は高いかもしれない。
パワートレーンは2.5L直4の「ダイナミックフォースエンジン」と、モーターを組み合わせたハイブリッド。いわゆるTHS-IIを搭載するが、小型・軽量・低損失技術を盛り込んだ新世代型で、燃費はいいのは当たり前、高い動力性能やラバーバンドを抑えたフィーリングなど、日常走行のほとんどの領域でハイブリッドを意識することはないはずだ。
ボディ設計も専用仕立て走りのFスポーツも用意
プラットフォームはカムリから採用されたTNGAの「GA-K」を採用するが、基本骨格は共通ながらも専用のボディ構造やレーザースクリューウェルディング、構造用接着剤、軽量化素材などを積極的に採用することで、ES専用と言っていい、プラスαの要素もふんだんに盛り込まれている。
サスペンションはES初採用のリヤ・ダブルウィッシュボーンサスやジオメトリーの最適化、新開発のスイングバルブショックアブソーバー(標準車)が奢られるなど、”飛び道具“に頼ることなく基本に忠実かつ本質を重要視した設計を持つ。また、専用の内外装に加え、パフォーマンスダンパーやリニアソレノイド式AVSなどがプラスされるスポーティな「Fスポーツ」も選ぶことができる。
安全支援システムも抜かりはなく、単眼カメラとミリ波レーダーを進化させた第2世代となる「Lexus Safety System+」を搭載するが、注目は量産車として世界初採用の「デジタルアウターミラー」だろう。筆者も実際に試してみたが、通常のドアミラーから乗り換えても違和感のない視界性能を実現している。
このようにESはLS/LCのような強烈なインパクトこそないが、飛び道具に頼らずに基本に忠実かつ本質を重要視して開発されている。「静かなエキサイティング」という言葉がしっくりとくる完成度を持っている。
■LEXUS ES300h “Version L”

■主要諸元(ES300h Version L)
●全長×全幅×全高:4975mm×1865mm×1445mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1740kg
●パワートレーン:2487cc直4DOHC(178PS/22.5kg・m)+モーター(88kW/202N・m)
●WLTCモード燃費:20.6km/L
●燃料タンク容量:50L[レギュラー]
●最小回転半径:5.9m
●最低地上高:145mm
低く抑えたフードや立体的な造形を盛り込むなど、ワイド&ローを強調するパッケージは、新世代レクサスに共通するアイデンティティの一つ。
傾斜を強めたフロント&リヤピラーやグラマラスなキャラクターラインを採用するなどで、引き締まったスタイリングを構築。
フォーマルとスポーティを高い次元で両立している。
デジタルアウターミラーの映像。キャビン左右に配されるモニターにサイドカメラからの映像を表示するデジタルアウターミラーは、バージョンLにメーカーOP設定。注目を集める最先端装備の一つだ。
キャビン左右に配されるモニターにサイドカメラからの映像を表示するデジタルアウターミラーは、バージョンLにメーカーOP設定。注目を集める最先端装備の一つだ。
グレードごとに異なるデザインのアルミホイールを設定。上級仕様のバージョンLには、フィンデザイン+ハイパークロムメタリック塗装の18インチが装着される。
シャープなアイラインと大型スピンドルグリルは、もはやレクサスに欠かすことができないデザインアイコン。標準ボディ車のグリルは縦スポーク形状となる。

ガラスエリアを広く取り、中央に大型ワイドディスプレイを配するレイアウト。コクピット感とくつろぎを意識して設計されたキャビン空間には、LS譲りの設計思想がふんだんに盛り込まれる。
各種インフォメーションを表示する7インチのTFT液晶フルデジタルメーターを採用(標準仕様&バージョンL)。光量も十分高く、昼間でも視認性は十分に確保されている。
12.3インチワイドディスプレイは全グレードに標準装備。地図画面とメニューを同時表示できるなど、画面の広さを生かした巧みなインターフェースも見所だ。
シフトノブも本革仕様。その左側にはメニューを手元で操作できる第二世代型のタッチパッドが配置。レクサスが掲げるシートインコントロールの思想はしっかりと受け継がれている。
後方カメラの映像をミラー内ディスプレイに表示するデジタルインナーミラーは、スイッチ操作で鏡面ミラーモードにも切り替えが可能。バージョンLとFスポーツにメーカーOPで設定。
バージョンLにはセミアニリン本革シートが標準装備。フリーキルティングが生み出す美しいデザインも見所の一つ。
FFレイアウトが生み出すリヤシートのゆとりの空間もESの大きな美点だ。
ハイブリッドバッテリーをリヤシート側に配置することで、トランク容量を犠牲にすることなく大容量(443L)を実現。9.5インチサイズのゴルフバックを4つ積載することが可能。
パワートレーンは、2.5L直4DOHCとモーターを組み合わせた最新仕様のTHS-IIハイブリッドシステムを搭載。省燃費性と動力性能を高い次元で両立させている。
■LEXUS ES300h “F SPORT”
Fスポーツは、スピンドルグリルやリヤバンパーロアガーニッシュ、リヤスポイラーなどの専用パーツで差別化が図られる。
■主要諸元(ES300h F SPORT)
●全長×全幅×全高:4975mm×1865mm×1445mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1730kg
●パワートレーン:2487cc直4DOHC(178PS/22.5kg・m)+モーター(88kW/202N・m)
●WLTCモード燃費:20.6km/L
●燃料タンク容量:50L[レギュラー]
●最小回転半径:5.9m
●最低地上高:145mm足回りも電子制御式のAVSと贅沢な内容だ。
基本レイアウトは標準車と同じだが、ステアリングやシフトノブはディンブル本革、ベダルはアルミ仕様に変更され、スポーティと上質感を巧みに融合している。
Cの意匠イメージを継承したスポーツ形状が与えられたシート。
表皮一体発泡工法で製造される、ドライバーの体圧分布まで考慮したFスポーツ専用品だ。
メーターは、標準車と同様にTFT液晶メーターを採用するが、一回り大きい8インチサイズにアップグレードされている。
スピンドルグリルは、LSに連なるデザインを受け継いだL字ピースの集合体で構成されるメッシュ意匠を採用。これもFスポーツ専用だ。
ホイールもFスポーツ専用の19インチ。塗装もダークプレミアムメタリックとスペシャリティ感の演出にも抜かりがない。
メカニズム&装備
デジタルアウターミラー
ディスプレイは、拡大機能に加えて、後退時やBSM作動時などに警告アイコンを表示する。安全&利便性の面でも魅力的な装備だ。
高精度カメラからの映像は、後方車を確認しずらい夜間でも鮮明に映し出す。
未来を先取りした新世代装備、利便性も極めて優秀
カメラで撮影した車両左右後方映像を車内のディスプレイに表示。通常のミラーよりも広い視野と天候に左右されない視認性が特徴だ。映像では苦手な「奥行き」も画像処理でシッカリと表現。カメラはピラーに直接ではなく触角のようなステーを介して装着されている。
GA-Kプラットフォーム

高剛性&低重心化を追求した最新のプラットフォーム
FFのミドルクラスをカバーする「GA-K」。「ESはカムリをベースに……」と言われることが多いが、実際は一クラス上のアバロン用がベースだ。他のTNGAプラットフォームと同じく「高剛性&低重心化」と基本諸元にこだわっているが、「素性が一番いい」と言う話もよく聞く。
パワートレーン(2.5Lハイブリッド)

走りの質感が高まった新世代のハイブリッド
世界トップレベル41%の熱効率を誇る「2.5Lダイナミックフォースエンジン」と小型・軽量・低損失化を実現した「進化版THS-II」を組み合わせたハイブリッドシステム。燃費がいいのは当たり前で、ハイブリッドの最も苦手だった走りのレベルを飛躍的に向上させている。
Lexus Safety System +
カメラで走行ラインを検知することで、高速道路などの自動車専用道路で優れたライントレース性能を発揮するLTA。
今後採用が進んでいく最先端の利便装備だ。
レクサス最新の先進安全装備が全グレードに標準装備される
ほぼ全てのレクサスに設定されるLSS+だが、ESにはその進化版となる第2世代が搭載される。カメラ/レーダーの性能向上による検知機能のレベルアップやユニットの小型化、「レーントレーシングアシスト(LTA)」を含む様々な機能の拡充も合わせて、世界トップレベルの安全性能を誇る。
NAVI-AI-AVS
バージョンLとFスポーツは、車両の前後にも微細の振動を速やかに吸収するパフォーマンスダンパーを装着。
ハンドリング性能と乗り心地性能の向上に貢献する。
減衰力をより繊細にコントロール
AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)は、路面状況や走行状態をセンサーで検知し減衰力を最適に調整する電子制御ダンパーだが、Fスポーツに装着されるNAVI AI-AVSはさらにカーナビの地図情報も活用。車両前方のコーナーのRを地図から予測し、より最適なサスペンション設定を可能にしている。
新型ESグレード別主要諸元&装備

LEXUS ES開発者インタビュー

LEXUSチーフエンジニア
榊原 康裕氏
「7代目は歴代屈指の自信作だからこそ、日本で勝負します」
満を持して日本に導入することになった新型ES。歴代は世界でも高く評価されているだけ、その実力はかなり気になる。ここでは開発者に新型ESの見所やこだわったことなどを、聞いてみることにしよう。
●聞き手:山本シンヤ
TNGAの恩恵により走りの質感が大幅に向上

キャビン空間の仕立ては、上位モデルとなるLS譲り。どのシート位置に座っても、レクサスらしい快適かつ、上質な雰囲気を堪能できる。
――ウインダムを含めると12年ぶり、ESとしては初の日本導入となります。同時に欧州への展開も行なうとの事ですが…。
榊原「ESのメインマーケットは北米そして中国であることは変わりませんが、新型は世界戦略車という役割も担うことになりました」
――風のウワサではGSの次期モデルが存在しないため、その代わりに……と言う話も聞きますが。
榊原「GSの未来についてはお答えできませんが、ESとGSとはキャラクターが異なるので代わりではありません。実はESの日本導入はどちらかと言うと開発サイドの想いから実現しました」
――それはどういう事でしょう?
榊原「元々、ESは初代から乗り心地の良さと静粛性が高い評価を得てきましたが、走りに関してはまだまだ……と言うのが本音でした。しかし、新型はTNGAと言う武器を手に入れたことで「二律創生」を実現することができました。元々は日本導入予定はなかったのですが、我々としてはここまでいいクルマに仕上がったので、「日本で勝負がしたい!!」と言う想いから導入を決断しました。そういう意味では、「レクサスチャレンジ」の一つでもあります」
――しかし、世界的にクロスオーバーSUV人気の一方で、セダン市場は縮小傾向です。
榊原「RXやNXなどのクロスオーバーの人気が高く、これまでダントツトップだったESを揺るがす状況なのも事実ですが、クルマの基本“セダン”にはまだまだ可能性があると思っています」
――エクステリアは先代LSに迫るサイズです。これまではどこか「高級カムリ」のイメージが拭えなかった印象ですが、新型はFFレイアウトながら「小さなLS」のようなプロポーションです。
榊原「カムリベースとも言われることが多いですが、実は先代(6代目)からは、一クラス上のアバロンの基本コンポーネントをベースに開発を行なっています」
――FFのメリットとロングホイールベースを活かした後席の居住性の高さから、日本市場では先代LSの標準車や先代クラウンマジェスタからの乗り換えも期待できそうな気もしますが?
榊原「ただ、あくまでもESはドライバーズカーであることは決して忘れていません」
――パワートレーンは北米仕様には3.5LのV6、中国仕様には2Lの直4も用意されてますが、日本仕様は2.5Lのハイブリッドのみですか?
榊原「北米はマルチシリンダー人気、中国は税制の問題でコンベンショナルなエンジンも用意していますが、ESのベストはハイブリッドです。そのため日本仕様は迷うことはありませんでした。今回のパワートレーンは燃費や環境性能はもちろん、ハイブリッドのネガだった走りやフィーリングに関しても高いレベルに仕上げています」
プラットフォームはES専用、1ランク上を巧みに追求

量産車として世界初採用となるデジタルアウターミラーは、実用性の高さも見所の一つ。いずれ安全ドライブには不可欠のアイテムになる可能性も秘めている。
――フットワーク系はどうでしょうか? 歴代ESは走りをアピールしていませんでしたが。
榊原「プラットフォームはGA-KですがES専用にかなり手を入れています。目指したのは、「気兼ねなく使えるのにやっぱりいいよね」と思わせるような走り。そのためには飛び道具には頼らずに、基本性能の向上を目指し、あくまでも忠実に、かつ本質を大事に開発を進めました」
――レクサスの走りのコンセプトは「スッキリと奥深く」です。
榊原「すでに発売中のLS/LCとは駆動方式やキャラクターは異なりますが、テスト時にはLS/LCの開発チームにも協力してもらって、同じ“味”を追求しました」
――ES初となる「Fスポーツ」もラインアップされています。
榊原「従来はFスポーツをやりたくてもできなかった……と言うのが本音ですが、新型は基本性能を飛躍的にレベルアップすることができたので実現できました」
――世界初採用のデジタルアウターミラーもESの大きな特徴です。
榊原「ESの開発とデジタルアウターミラー開発のタイミングがリンクしたので採用を決断しました。でも、「やります!」と言ったものの実際にクルマに搭載して物にするまでは苦労の連続でした。ただ、これもレクサスチャレンジの一つです。通常のミラーの仕様に対してOP設定となるため、カメラやモニターのデザインなどは過渡期なのも事実ですが、まずは多くの人に体験してもらいたいです。慣れると本当に便利ですので」