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更新日:2019.07.18 / 掲載日:2019.07.18
トヨタのクルマを大きく変えた原動力「TNGA」徹底解説

「もっといいクルマづくり」が達成されてきている理由はいくつかあるが、その中でもTNGAの貢献度はピカイチだ。ここでは今一度TNGAの内容について考えてみたい。
TNGAがもたらす考え方はクルマ作りの全方位に及ぶ
トヨタの新世代モデルの評価が非常に高い。これは作りやすさや効率を重視しすぎていた反省を元に、「もっといいクルマ作り」への舵を切った結果だ。この好結果をもたらす理由はいろいろあるが、最も大きいのは、クルマ作りの構造改革と呼ばれる「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」の採用である。
これは単純にプラットフォームやパワートレーンの刷新を意味するのではなく、その前提となる「クルマ作り」や「仕事の進め方」の段階から改革を狙うものだ。ポイントは「商品力の向上」、「グルーピング開発による効率化」、「モノ作り改革」、「グローバル標準への取り組み」、「TNGAと連動した調達戦略」の5つ。
プラットフォームの開発を例に説明すると、従来はプラットフォームは中長期的に使えるように高い性能を持たせて必要とするモデルにおいて共用していたが、TNGAではそれに加えて各モデルや各ユニット、各生産工場でバラバラだった技術的な共有まで行なう。開発効率の向上だけではなく、いい物を安く効率的に作るための手段としても有効で、各モデルごとの個性や色が出しやすくなったという恩恵がある。
実際、現行プリウスは先代に比べて走行性能が大きく高まっているが、それはTNGAの考え方から開発されたGA-Cプラットフォームの採用によるところが大きい。そしてこのプラットフォームはC-HRやカローラ スポーツ、レクサスUXにも採用されていくが、同じプラットフォームが使われるわけではなく、モデルごとにアップデートが施され、走りの評価も最新モデルほど高いという一面がある。
このTNGAがもたらす開発の流れはパワートレーンや安全&運転支援機能でも同様。TNGAは全方位において「いいクルマづくり」に多大な貢献をしているのだ。
【TNGAの大きな流れ|2011】「もっといいクルマづくり」を目的としたTNGAの方針を発表
2011年3月に発表されたトヨタグローバルビジョンにおいて、「もっといいクルマ」を目指すことを公言したトヨタ。2012年4月にそれを実現させるための取り組みとして「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の構想が発表された。この段階では3種類のFFプラットフォームを新開発することが公表されている。
【TNGAの大きな流れ|2015】TNGAモデル第一弾としてプリウスを発売開始

2015年3月に「もっといいクルマづくり」の取り組み状況が公表され、FR系プラットフォームやパワートレーンなど、TNGAに関連する開発が順調であることが判明。その後9月には、アメリカ・ラスベガスにおいてTNGAプラットフォーム(GA-C)が初めて採用された新型プリウスを披露。12月には日本国内でプリウスが発売開始された。
【TNGAの大きな流れ|2016】「Dynamic Force Engine」を核とした次世代パワートレーン計画を発表
新たなパワートレーン戦略を発表。TNGAにより基本骨格から刷新することで高い走行性能と環境性能を両立させた新型エンジンを「Dynamic Force Engine」と名付け、今後もさらに進化させていくことを公表。
同時に8速・10速オートマチックトランスミッションや2.5LTHS 2、マルチステージTHS 2の開発も発表された。
【TNGAの大きな流れ|2017】初のフルTNGAモデルとなるカムリを発売開始

TNGAで開発されたプラットフォーム(GA-K)とパワートレーン(2.5LTHS 2)を搭載する、初のフルTNGAモデルとなるカムリが発売開始。2.5LTHS 2はプリウスで採用された小型・軽量・低損失化技術を継承するなどTNGAの特徴も色濃く持つユニット。このプラットフォーム&パワートレーンの組み合わせは、その後レクサスESやRAV4にも採用されている。
【TNGAの大きな流れ|2018】設計の自由度が高いTNGAの強みが注がれたクラウンを発売開始

2018年に発売されたクラウンには、レクサスLSで採用されているGA-Lプラットフォームを最適化したナローシャシーを採用。さらに2.5Lハイブリッド車のパワートレーンは、カムリ用の2.5LTHS 2を縦置FR仕様にしたシステムが搭載されるなど、TNGAの利点を存分に感じさせてくれるモデルだ。
TNGAプラットフォームは3タイプ展開中
プリウスに採用されたGA-Cを筆頭に、順次採用モデルが拡大中。採用モデルごとに適正化が図られているため、同じプラットフォームを採用していてもまったく同じということにはならない。現在、次期ヤリス用の「GA-B」も開発中だ。
GA-C【主な採用モデル】プリウスC-HRカローラ スポーツレクサス UX
GA-K【主な採用モデル】カムリレクサス ESRAV4
GA-L【主な採用モデル】レクサス LSレクサス LCクラウン
【チェック1】シャシー&ボディ|TNGAプラットフォームを多彩なモデルに積極展開汎用性の高い設計も持ち味
骨格の見直しや高張力鋼板の使用拡大など、TNGA世代のプラットフォームは劇的進化が著しい。モデルによってはLSW(レーザースクリューウェルディング)や構造用接着剤使用拡大などの新技術も積極採用され、力の流れや連続性にもこだわった設計となっている。プリウスを皮切りに、C-HR、カローラスポーツ、レクサスUXなどが採用する「GA-C」、カムリやRAV4、レクサスESなどが採用する「GA-K」、そしてクラウン、レクサスLC/LSが採用する「GA-L」が国内に投入されいる。
レーザースクリューウェルディング(LSW)
通常のスポット溶接に比べ、溶接打点のピッチを狭めることで接合部位の構造を強化。開口部に集中施工することで、従来よりも車体構造をより強固にすることができる。安定性や乗り心地の向上にも大きく貢献している。
高剛性ボディ構造
ボディ骨格を一から見直しひとつなぎにした環状構造を積極採用。ボディ剛性の向上に寄与し、衝撃に対しても高い耐性を持つことも特徴。
アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム(AVS)
電子制御で減衰力をコントロールするAVSは、もともとはオフロードモデルに採用されていた技術だが、近年は乗用車系への採用も積極的。
クラウンとカローラ スポーツには高応答型のリニアソレノイド式AVSが採用されている。
【チェック2】パワートレーン|最新設計で高性能化が図られた新世代ユニットに切り替え中
パワートレーンは「ダイレクト&スムーズ」をテーマに開発。「ダイナミックフォースエンジン」と呼ばれる新エンジンは高速燃技術や可変制御システムの採用などにより熱効率は世界トップレベルの40%を実現。従来エンジン比で動力性能は10%向上させながら、燃費は20%向上させている。トランスミッションはAT、CVT、MTなどニーズに合わせて用意。どれも多段化や高効率化など基本性能の徹底的見直しが行なわれている。
ダイナミックフォースエンジン
RAV4に搭載されている2Lガソリン車のエンジンは、最大熱効率40%を達成した最新仕様のダイナミックフォースエンジン。全域のトルクアップが図られたほか、省燃費性能も飛躍的に高まっている。
2.5L THS-2
カムリやレクサスES、RAV4ハイブリッドに採用。2.5L直4エンジンはダイナミックフォースエンジン、THS 2システムも最新制御が採用されるなど、ガソリン車に近い自然な走りを楽しめる。
ダイレクトシフトCVT
RAV4のガソリン車に搭載されるダイレクトCVTは最新の10速ステップ式。発進ギヤ機構のおかげで発進時の加速も良好。従来CVT車の弱点を克服した。
マルチステージハイブリッド
レクサスLSに採用されているマルチステージハイブリッドシステムは、エンジンと2つのモーターに自動変速機を組み合わせることで両方の出力を緻密に制御。高い走行性能と省燃費性を両立する。
【チェック3】安全&運転支援|第2世代となる最新仕様は検知能力や支援機能が大幅向上
トヨタの予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、導入3年半で1000万台を達成し、現在は第2世代へと刷新中。単眼カメラ+ミリ波レーダーの構成はそのままに、ユニットの小型化や統制性アップ、性能向上による検知対象の拡大、さらに高度運転支援機能(LTA)の採用などが行なわれている。
トヨタセーフティセンス
最新仕様の障害物検知は、夜間歩行者にも対応。各車ともフルモデルチェンジの際に最新仕様に切り替わっているが、既存モデルも改良時にある程度の機能は追加されている。
ITSコネクト
道路とクルマ、あるいはクルマ同士が直接通信することで、運転を支援するITSコネクト。まだ本格普及には時間がかかるが、未来のクルマに必須の機能も積極的に搭載している。
ダイハツもDNGAモデルを投入開始

軽量&剛性を高い次元で両立。従来型に比べ曲げ剛性が大幅に高まったことに加えて、サスも完全新設計となるなど、走行性能の大幅向上が期待できる。
TNGAがもたらす改革の波はダイハツにも及んできている。7月発売予定のタントに採用されるプラットフォームは、TNGAのダイハツ版とも言えるDNGAの考えを元に開発された新世代プラットフォーム。この先、軽乗用車とコンパクトカーも大きな進化を遂げそうだ。