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更新日:2022.06.02 / 掲載日:2022.06.02
【日産 ノート特集】「e-POWER」で大ヒットした人気のコンパクトカー
文●大音安弘 写真●日産
日産が提案した新感覚の電動車「e-POWER」で大ヒットし、その名を轟かせたコンパクトカーが「ノート」だ。最新世代は、e-POWER専用車へと進化を遂げ、上級コンパクトハッチの「ノート・オーラ」を投入するなど、新たな展開も見せている。今や日産の屋台骨のひとつへと成長を遂げたノートの歴史を振り返りたい。
【初代:広々とした室内と積載力の高さが魅力】
初代ノートは、2005年1月20日、新提案のコンパクトカーとしてデビュー。同クラスとしては大きめなボディとボクシーなスタイルの融合が生む、広いキャビンと積載性の高さを持ち味としていた。その姿からも分かるように、2001年にデビューし、コンパクトカー市場を席巻したトールワゴンスタイルの「ホンダ・フィット」との全面対決を狙ったモデルである。正統派コンパクトハッチ「マーチ」をベースとしながらも、ボディサイズを拡大。差別化を図るべく、初代フィットよりも大きめにデザインされている。それでも全長は、取り回しに優れる3998mmに留め、2600mmのロングホイールベースとすることで、キャビンを最大化。さらにサイズアップと積載エリアの拡大による重量上に対応すべく、マーチよりも排気量の大きい新開発の1.5L直列4気筒DOHCエンジンと当時最新のトランスミッションであったCVTを組み合わせた(※4WD車は4速ATとなる)。日産らしい走りへの拘りも追求され、ユーロサスペンションとエアロを組み合わせたスポーティな「15RX」の設定や上級グレードの足回りには、リップルコントロールショックアブソーバーを採用。さらに若者やクルマ好きをターゲットにしたカスタム仕様「ライダー」も同時に設定し、単なる実用車でないこともアピールしていた。
2008年1月9日に発表されたマイナーチェンジでは、フェイスリフトを実施。丸目ライトを内蔵したヘッドライトデザインや力強い走りを予感させるフロントグリル&フロントバンパーを採用するなど、フロントマスクを大幅改良。インテリアの質感や使い勝手も向上されていた。パワートレインは、1.5Lのみであったが、CVTと合わせて改良を行い、2WD車の燃費が向上されている。意外な展開をみせたのが、同年10月の新グレードの追加だ。なんとマニュアルトランスミッションと1.6L直列4気筒DOHCエンジンを組み合わせた「16X」と「16RZ」を追加。特に「16RZ」は、ユーロサスペンションを組み合わせたスポーティ仕様であった。突如、ノートにMT仕様が追加されたのは謎めいているが、当時の日産は、いくつかのコンパクトカーにMT車を復活させている。これは推測だが、MTのみを愛車にしてきた高年齢層からの要望があったことや手軽なスポーティモデルが不在だったことなどの要因が考えられる。ただ、そこまでのスポーティな車種ではなかったため、初代に置いて、MT車は希少な存在となっている。
【2代目:「e-POWER」を追加し3年連続ナンバー1へ】
コンパクトカーニーズの変化から、日産のコンパクトカーの看板が「マーチ」から「ノート」へのスイッチを決定づけたのが、2012年8月28日に発表された2代目ノートだ。一クラス上のハッチバック「ティーダ」が、国内販売を終了したため、2クラス分のニーズを担うべく、よりボディサイズを拡大したのが大きな特徴。もちろん、よりスペース効率を追求したハイトワゴンスタイルは継承。一足先に新世代に進化していた「マーチ」と同じVプラットフォームを採用していたが、守備範囲の拡大からボディサイズは、一回り大きい全長4100mmまで拡大された。2代目では、環境意識の高まりから、時代に即したダウンサイズエンジンとし、全車1.2Lの3気筒DOHCエンジンが搭載された。そのために先代よりも約70㎏もの軽量化も断行。しかしながら、自然吸気エンジンは排気量の差が物をいうため、新エンジンといえど、先代の1.5Lエンジンの性能には及ばなかった。そこで秘密兵器として投入されたのが、直噴ミラーサイクルエンジンにスーパーチャージャーと組み合わせた過給機仕様だ。最高出力こそ98psと控えめだが、最大トルクは、1.5Lエンジン車並みの142Nmを発揮。さらに当時、ガソリン登録車トップの25.2km/L(JC08モード)を実現させた。ただ過給機付きといっても、その狙いは、環境性能とのバランスを重視したものであり、ECOモード運転中は、アクセルの踏み方で過給を行わないことも可能であった。モデルラインの新価値としては、機能と質感を高めたスーパーチャージャーエンジン専用の最上級グレード「メダリスト」が誕生。この仕様が、実質的なティーダの後継を担うものであった。
サイズアップを図った2代目ノートは、市場から歓迎され、発売より2週間で21,880台を受注する好調ぶりを見せる。意外なことに、全体の73%がスーパーチャージャーエンジン搭載モデルを選択。その背景には、スーパーチャージャーによる力強い走りに加え、燃費性能の向上で、自動車所得税と自動車重量税が免税となったこともあったようだ。
2013年12月の初のマイナーチェンジでは、衝突被害軽減ブレーキを搭載した「エマージェンシーブレーキパッケージ」を設定。単眼カメラによるセンシングで、車両や人を検知し、衝突の回避・被害軽減。さらに車線逸脱警報も装備し、オプションで踏み間違い防止アシストを組み合わせることもできた。翌年の2014年10月にもマイナーチェンジが実施されたが、2代目の人気の高さもあり、その内容は小変更に留められたが、新たな人気グレードが追加される。それが「NISMO」だ。日産のモータースポーツ活動を担う「NISMO」の名を冠したスポーツモデルで、空力特性を高めるエアロ、スポーティな内装、ボディと足回りの強化などを図った本格派純正コンプリートカーである。グレードは、スーパーチャージャーエンジン+CVTの「NISMO」と専用チューンで強化した140ps/163Nm仕様の1.6L 4気筒DOHCエンジンと5速MTを組み合わせた「NISMO S」の2タイプが設定され、ノートにスポーツハッチという新たなキャラクターが加わった。2015年7月の改良では、一のグレードに設定されていた「エマージェンシーブレーキパッケージ」の内容を全車に標準化され、衝突被害軽減ブレーキと車線逸脱警報が標準装備に。また最上級グレード「メダリスト」が自然吸気仕様にも拡大。さらに燃費向上の改良を図ることで、2WDの自然吸気エンジンも減税対象となり、より手頃さが増していた。
ノートの歴史と未来を変える大変革が怒ったのが、2016年11月2日に発表された新パワートレイン「e-POWER」の追加だ。日産初となる量産シリーズハイブリッドシステムで、エンジンの役目は発電のみ。駆動は、バッテリーに蓄えた電気を使い、モーターのみで行う。この仕組みを日産は、「新しい電気自動車のカタチ」として大々的にアピールした。エンジンは、発電用に最適化した1.2L直列3気筒エンジンを搭載し、駆動用モーターなどの電動システムは、出来る限りリーフから流用することで、低コストの電動車を実現させていた。驚くべきは、その高性能ぶりで、最高出力109ps、最大トルク254Nmという力強さと最大37.2km/L(JC08モード)という低燃費を両立。さらに電動化による静粛性の向上やアクセル操作に対してリニアな加速など、今までのコンパクトカーにはない魅力が満載されており、再び世間の関心がノートに集まることになる。このタイミングで、フェイスリフトも実施され、日産の新ブランドマスク「Vモーショングリル」を取り入れている。
新パワートレイン「e-POWER」のインパクトは大きく、改良発表から2週間で、2代目デビュー時同等の2万台越えの受注を記録。エンジン車も継承されるも、全体の78%がe-POWER搭載グレードを選んでおり、大きな起爆剤となったことが分かる。発売後11か月後の2017年11月には、ノートe-POWERだけで10万台越えを記録する大ヒットとなり、モデル中盤で日産の看板車へと転身を図ることに成功した。
爆発的な人気を受け、ノートe-POWERも独自の進化を遂げ、デビュー間もない2016年12月には、NISMOシリーズに、「ノートe-POWER NISMO」を追加。チューニング内容も専用化することで、電動パワートレインの魅力を引き出す走りを実現していた。2018年7月には、待望の4WD仕様も追加。これはエンジン車と同じ小型の後輪駆動モーターを追加したモーターアシスト式4WDであったが、降雪地などの生活4駆が求められる地域でも、e-POWERを選び易くする配慮であった。2018年9月には、NISMOに、より高性能化を図った「ノートe-POWER NISMO S」を追加。モーター出力を136ps、320Nmまで強化しており、リーフのモーターを流用した強みが活かされている。
このようにe-POWERの展開を武器に、2017年から3年連続で登録台数が、コンパクトカー暦年ナンバー1を記録。見事な有終の美を飾り、新型となる現行型へとバトンを渡した。
【3代目:「e-POWER」専用車になり内外装のクオリティもアップ】
現行型となる3代目ノートは、2020年11月24日に発表。最大のトピックはe-POWER専用車となったこと。スタイリングは、ワゴンからハッチバックへと変化しているが、ボディサイズは高さを含め、2代目ノートとほぼ同等をキープ。これは電動パワートレインによる爽快な走りのイメージを強めながらも、歴代のワゴンスタイルの良さを受け継ぐための工夫であった。
日産の社運をかけて、新世代を代表するモデルとして開発された新型ノートは、プラットフォームも刷新。日産とルノーで共同開発された小型車向けの「CMF-B」を採用。さらにe-POWERのシステムも大幅改良が加えられ、モーターとインバーターを刷新。最高出力116ps、最大トルク280Nmという性能向上に加え、システムの小型軽量化も実現されていた。その結果、最大38.2km/L(JC08モード)の低燃費化も図られている。
インテリアも先進的なスタイルとなり、次世代EVとしてお披露目されていた「アリア」の世界観も感じさせるものに仕上げられている。日産の自動運転技術である「プロパイロット」もノートシリーズに初採用することで、日産の今が堪能できる魅力的なコンパクトカーに仕上げられていた。また2020年12月には、後輪モーターを強化することで、走行安定性を高めた新しい電動4WDシステムを搭載した「ノートe-POWER 4WD」を追加することを発表。単なるe-POWERの4WDではなく、前後モーターをフル活用した本格電動4WDシステムが生む高い走行安定性が様々シーンで体感できるようになった。
まとめ
2021年6月15日には、ノートシリーズの上位モデルとなる「ノート オーラ」を新発売。扱いやすいサイズ感はそのままに、専用内外装による上級化とモーター性能の強化で、小さな高級車に仕上げたオーラは、質実剛健なノートとは異なる世界観を提供し、ダウンサイザーを中心に熱烈な支持を受けている。また新型からNISMOも、オーラがベースとなり、より高性能な電動車という立ち入りを強化している。しかし、ノートも身近な電動車というポジションに甘んじているわけではない。オーテックジャパンが手掛けた上質な内外装と走りを備える「ノートオーテック」やクロスオーバーモデル「ノート オーテック クロスオーバー」を追加するなど、新たな魅力を発信し続けている。