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更新日:2023.04.28 / 掲載日:2023.04.27

自動車メーカー各社決算のみどころ【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文●池田直渡 写真●トヨタ
 さて世間はまもなくゴールデンウィークに突入する。そして連休明けと同時に自動車メーカー各社の決算発表が行われる。第三四半期決算をベースに起きつつ、年間決算の行方を占ってみるというのがこの記事の趣旨である。
 日程は以下の通りだ。
9日   三菱
10日   トヨタ
11日   ホンダ スバル 日産
12日   マツダ
15日   スズキ
 まずは、国内自動車メーカー全社の決算に影響を与える要因はどう動いたかをざっとまとめる。
 2023年3月期決算に最も影響を与えるのは原材料高騰である。当該期の原材料価格は、自動車生産のエコシステム全体に多大な影響を与えており、サプライヤーを守るためには、自動車メーカー各社としても値上げに応じざるを得なかった。このマイナスはかなり大きいはずだ。ただし、原材料高騰そのものは前期から引き続いているので、本来的には織り込み済みのはず。22年3月期の来期見通しと大幅にズレるとは考えにくい。
 次に大きいのは、半導体不足による生産制約である。現時点でもまだ長納期の傾向は続いており、その中でどれだけの調達力を発揮して、台数と構成のバランス良く生産を行なったかどうかが問われる。一つの目安として、生産台数の推移は、調達力を表していると思って良いだろう。おそらくほとんどのメーカーは、昨対の生産台数でここを大幅なプラスに持ってくるはずで、それがどの程度できているかが、今後の成長力の差になるはずだ。
 企業努力というよりはある種のボーナスステージととらえるべきが為替変動である。年間を通した極端な円安の追い風は強烈。11月と12月でだいぶ戻したとは言え、年間を通して為替の差益は多大な影響を与えることが予想される。原材料費の高騰分をほとんどオフセットできるはずである。逆に言えば、この原材料高騰が円安という局面で来なければ、かなり厳しいことになっていたメーカーもあるはずだ。個社の見どころについては、決算の発表順に考えていこう。
 まずは三菱。三菱はおそらく昨対で悪くない数字が出てくると思われるが、営業利益の大幅増加は、比較対象となる前期が低かったという要因が大きい。ここから先に伸びる力がないと、中期的な目標が立てられない。魅力的な商品を適宜デビューさせていく力があるかどうかが問われる。商品計画の具体的なビジョンが発表されるかどうかが注目点である。
 トヨタは、第三四半期の仕上がりを見る限り、相当な業績結果を示すものと考えられる。原材料価格の高騰も大きいだろうが、台数で善戦、さらに継続的な商品力改善によって、構成を上げてきているはず。加えて為替でも利益を押し上げる流れなので、原材料高騰を打ち消して場合によっては記録的な好結果を出すかもしれない。
 ホンダはここ数年と大きな流れは変わらない。二輪事業が躍進し、四輪は若干押し込まれる流れになるのではないか。四輪に関してはホンダが得意とする米中での販売台数はマイナスになりそうだ。一方で新型車投入による構成のアップでそれをどこまでリカバーできるかがポイントとなる。
 スバルは、決算的にはかなり良い仕上がりになると思われるが、これも本質的には前期の落ち込みが大きかった故に比較として伸びている形。平熱に比べたらまだまだ調子が悪い。ここからどれだけ素早くコロナ前の水準に戻していくかは引き続きの課題である。
 日産は第三四半期の時点ですでに販売台数を下方修正してあり、そういう意味では悪材料は織り込み済みではあるが、中国の台数落ち込みがかなり大きい。加えて、頼みの北米もそこそこ落ちているので、すでに年末の時点で、下方修正を余儀なくされていた。一方で売上高と利益はプラスの見込み。これは積極的な新型車投入で、構成が良くなっていることに加え、為替のボーナスも大きい。また、日産はルノーとのリアライアンスによって経営環境を大幅に改善して見せたこともあって、ここからのハンドリングの自由度は大きく改善されそうである。この攻め時にどれだけの成果があげられるかが問われる大事な局面になるだろう。
 マツダは、ラージ商品投入という、投資が嵩んだ嫌なタイミングで原材料価格の高騰を迎え、ピンチに陥る可能性があったが、まさに為替に救われた形になるだろう。ただし、投資に相応しいだけの新商品投入は、規模の割にコンスタントに継続してきており、その成果も無視できない。とは言え、先行投資をやれるだけやった後なので、あとは売るだけというか、これで売れないと洒落にならない。死ぬ気で売るしかない。ラージ商品がどうなるかがまさに運命の分かれ道になってくる。
 スズキはおそらくトヨタと並んで最も好調な決算となるだろう。昨対の基準が低かったとは言え、当該期は大幅に伸ばした。特に台数を本来のポテンシャルまで押し上げたことが大きい。これはコロナ前のレベルに戻したことを意味しており、まさに強靭な回復力を発揮していると言える。もっとも厳しいことを言えば、スズキの場合、メインとするマーケットがインドであり、その先にアフリカにも唾をつけている。両マーケットは成長著しく、本来であれば、旧に復しただけではダメで、伸びていなければいけないのかもしれない。
 ということで、個別には課題があるものの、今回の各社決算発表はあまり波乱含みにはならない。むしろなべて好調という結果を予想している。
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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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