車のニュース
更新日:2023.10.03 / 掲載日:2023.10.03
カーデザインの現場に潜入! 日産の新デザインプレゼンテーションホールは凄かった!

文と写真●ユニット・コンパス
幾重にも設置されたセキュリティを通るとまるでSF映画のセットみたいな未来的な空間が広がっていた。視界は180度すべてスクリーンで覆われ、天井もスクリーンになっていて、まるで映像の世界に入り込んだような没入感だ。
ここは神奈川県厚木市にある日産グローバルデザインセンター内の施設、デザインプレゼンテーションホール。クルマは商品化までになんどもデザイン案を作りブラッシュアップしていくが、それを社内でプレゼンテーションするときに使う施設だという。
世の中のデジタル化が進んでクルマにもその流れが来ているのはご存知のとおり。そして、なかなか我々ユーザーが目にすることがないクルマづくりのプロセスでも、デジタル化が進んでいるのだという。
デジタル化のメリットは、時間とコストを節約できること。そして、物理的距離の制約からも解放してくれる。
アナログからデジタルへと進化するカーデザイン

なぜデジタル化が必要だったかを理解しやすくするために、自動車のデザインができるまでを簡単に説明しよう。
自動車開発では、まずは複数のデザイナーがコンセプトをイラストという形で提案し、コンペを勝ち抜いた案をさらに何度も何度もブラッシュアップしていく。かつては、イラストの次はクレイモデルといわれる模型だった。それも、まずは巨大なラジコンのようなものを作り、最終的には実物大で仕上げていく。モデラーと呼ばれる職人たちが専用の粘土を削り、微妙なラインを生み出してきたわけだ。
ところが、モデルを作るには数週間の時間が必要。当然、モノがモノだけに、鞄に入れて持ち歩くこともできない。外部にデザインが流出しては困るので、デザイン提案を受けるためには、全員がその場に集まる必要があった。
それを改革したのがデジタル技術。デザイナーの作業がアナログからデジタルに移行していくのに合わせて、それを評価する場もデジタルつまりCGに置き換えた。実物大のクルマ1台が表示できるモニターからスタートし、次世代では2台を並べて比較できるサイズと解像度に進化させた。CGにすることで、デザイン変更などを反映させるスピードは格段にアップした。それでもまだ、その場に全員が集まる必要があった。
次の進化はVR(拡張現実)だ。ゴーグルを装着して仮想空間を体験できるVR技術を取り入れることで、平面ではなく立体としてデザインを評価できるようになったし、実際に車内に乗り込んだ感覚を体験することができるようになった。
そして最新の進化が、今回公開されたデザインプレゼンテーションホール。日産によればそれは、現実と仮想現実の融合だという。
現実とデジタルが融合する新しいデザインプレゼンテーションホール

デザインプレゼンテーションホールを構成する要素は、湾曲した24Kスクリーン、フルカラー天井スクリーン、リモートによる照明技術、そして音響についても7.1chのシステムが用意されている。これらを統合することで、まるで現実のようなリアリティを表現。
ゲーム製作に使われる開発環境を採用したことで、時間による光の移り変わりなどもリアルタイムに変更できる。また、ホールには実車も展示できるため、実車をみながら改良のアイデアを提案するなどの使い方もできるという。
日産では市場に合わせて現在4つのデザインセンター(日本、アメリカ、イギリス、中国)を世界に展開しており、このホールは海外の拠点からもアクセス可能になっている。今回の取材会でも、ニューヨークのオフィスから、VRゴーグルを使ってモデルを検討する様子がデモンストレーションされた。働く場所に制約されずに会議に参加できるのは、デザイン開発を円滑に進め、迅速に意思決定するのに大いに役立つという。





JAPAN MOBILITY SHOW 2023で公開予定のコンセプトカーも登場

また、取材会では『JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー2023。一般公開日:2023年10月28日(土)~11月5日(日)』で公開されるコンセプトカー「ニッサン ハイパーアーバン」もお披露目された。
実物大のCGを見ながらデザイナーによるプレゼンテーションを体験できたのだが、なるほどこれならモデルが目の前になくてもデザインの検証が行えるだろうことが肌感覚として伝わった。『JAPAN MOBILITY SHOW 2023』では、日産のデザイナーたちが腕を振るった新しい提案がたくさん見られる予定だ。そちらもどうぞお楽しみに!