車のニュース
更新日:2019.09.17 / 掲載日:2019.09.17
NISSAN 新型セレナ vs ライバル対決
続いては、マイナーチェンジしたセレナとライバルミニバンの先取り対決。 デザイン、走り、使い勝手など、項目ごとにライバルを設定し、比較してみたぞ。
“見映え”で顔比べ
NISSAN セレナ
●価格:252万9360~ 365万7960円(ビジネスグレード除く)
最近のトレンド通り、押し出し感の強いフロントフェイスとなったセレナ。2トーンモデルならスタイリッシュさも、より感じられる。
ハイウェイスター
フロントグリルの開口部面積の違いなどにより、やはり標準車はハイウェイスターよりも大人しい印象となっている。
標準車
1BOX型ミニバンに 求められる魅力を網羅的に 取り込んだ仕様に
低全高や骨太感でファミリー色を弱めるライバル車に対して、セレナは低いベルトラインと大きなサイドウインドウのファミリーカーらしいプロポーションを採用し続けていた。ところが今や大きなウインドウは同クラスの標準的なプロポーションとなっている。時代が追い付いてきたわけだが、本家とも言えるセレナは骨太あるいは押し出し路線へと転身。と言ってもフロントマスクだけだが、先代まではあまり主張していなかったプレミアム性を前面に出したデザインとした。1BOX型に求められる魅力を網羅的に入れ込んだと言えよう。
ライバル TOYOTA エスクァイア
●価格:266万4360~339万7680円
マイナーチェンジでフロントグリルの横幅をさらに拡大。メッキのバーはセンターを太く、サイドは細くし、間にシルバーの樹脂を挟み込んで立体感を出している。
3姉妹の中でも アクの強い個性を 与えられたモデルなのだ
エスクァイアはヴォクシー/ノアをベースに内外装をゴージャスにドレスアップしたモデル。とくにフロントマスクの煌びやかさと押し出し感がセールスポイントだ。セレナを喩えるならMC前はノア的、MC後はエスクァイア的とも表現できる。ただ、フロントマスク周りはかなり尖ったデザインだ。好き嫌いが分かれる領域にまで踏み込んだと言い換えてもいい。こういったデザインが採用できるのはノアとヴォクシーという姉妹車の存在があればこそ。裏返せば中途半端な個性では3姉妹車展開をする意義も弱まる。アクが強いからこそのエスクァイアなのだ。
エクスファイアってこんなクルマ
現行型から加わった、ヴォクシー/ノア系の第3の姉妹車である。走行メカや基本機能は姉妹車と共通であり、内外装の高級化を図っているのが特徴だ。なお、ボディパネルはノアをベースとする。グレード別の機能装備設定はノアとほぼ共通し、価格差は内外装の違いと考えてもよく、その点ではノアの「カスタム」仕様とも言える。
走行性能で比べてみる
NISSAN セレナ

e-POWER
なんといっても注目はe-POWER車だ。シリーズ式のハイブリッドで、EVのような走行感覚を味わえる(写真はノートのもの)。
ペダルドライブなど 独特の走りを楽しめるe-POWERが強み
マイナーチェンジ後のモデルには未試乗だが、資料を見る限り走行性能の変更はないようだ。電動モーターのパワーを直で使うe-POWERの低中速域での力強さと、強いエンブレ回生による1ペダルドライブが走行性能面の特徴。シリーズ式ハイブリッドのため高速でのパワーや効率低下がウイークポイントだが、そういった部分も含めてEVの走行感覚を楽しめる。また、フットワークはソフトな乗り心地を特徴に、穏やかな操縦性と共にファミリーカーに似合い。走りもフレンドリィ志向である。
ライバル HONDA ステップワゴン ハイブリッド

●価格:330万480~360万2880円
ホンダの3種のハイブリッドのうち、i-MMDを搭載するステップワゴン。ハイブリッドはスパーダにしか用意されないのは残念。
シリーズ式の弱点をカバーするi-MMDで 落ち着いた走りを実現
電動モーターで駆動するシリーズ式ハイブリッドをベースに、高速巡航用にエンジン直動機構を備えたi-MMDを採用。電動モーターのじゃじゃ馬的な特性をうまく抑え込んで、素直なコントロール性と穏やかな力強さを実現している。エンジン直動は巡航時のみ作動するが、これはシリーズ式の欠点である高速での燃費低下をカバーするためだ。ただし低い回転数で落ち着いたエンジンにより、余力感も向上。フットワークはソフトな乗り心地を重視。操縦性も穏やかであり、一昔前のハンドリング優先だった頃とは異なり、ファミリーユースに適した特性だ。
ちょっと 格上だけど こんな選択肢もある

MITSUBISHI デリカD:5 ●価格:244万9440~421万6320円
BOX型SUVとも言うべきモデルであり、悪路走行を前提にしたシャシー設計や4WDシステムを採用。生半可なSUVを凌ぐ悪路踏破性は、本格的なアウトドアレジャーを楽しむユーザーに最適。また、国産ミニバンでは唯一のディーゼル車をラインナップ。現在、従来型の継続モデルとなるガソリン車と2系統の構成になる。
ステップワゴンって こんなクルマ
常用途やレジャーでの家族ドライブを楽しむためのユーティリティや走りを重視した設計は初代とも共通するコンセプト。横開きのドアを加えた「わくわくゲート」や広々視界のウインドウグラフィック、多彩な積載性などレジャーでのポテンシャルが高い。登場時は1.5Lターボのみだったが、マイナーチェンジにて2Lハイブリッドを加えている。
居住性と見晴らし のよさ対決
NISSAN セレナ

床面地上高はやや高め。シートベルト内蔵の2列目やハンズフリーオートスライドドア、3列目用助手席側オートスライドドアスイッチ等の装備で、乗降性を高めている。
e-POWER車は7人乗り車(セカンドはキャプテンシート)。以前から備えられている、8人乗り車のスマートマルチセンターシートはセレナの大きな特徴。
高い開放感が強みだったが ライバルの追従で訴求力は やや弱まった
現行2L級1BOX型ではプラットフォームの開発年時が最も古く、そのため床面地上高も高い。しかし、高い全高もあってキャビンボリュームで目立った差はない。居住性向上のポイントとしてはシート機能が挙げられる。2L車に限定されるが、ベンチシートながらセカンド中央席の格納とロングスライドでキャプテンシートの様に使ったり、フロントやサードシートのセンターコンソールとして活用できる機能がそれ。なお、広いウインドウがもたらす開放感も同車のセールスポイントだったが、ライバル車も同路線を採ったため以前ほどの訴求力はなくなった。
ライバル TOYOTA ヴォクシー/ノア

●価格:250万9920~338万400円
低床設計となった現行型ヴォクシー/ノア。見晴らしも◎。2L車に7人乗り/8人乗りを用意するがハイブリッド車は7人乗りのみ。
プラットフォームは 一新され魅力増 トヨタらしく「手堅い」造り
現行車からプラットフォームを一新。超扁平型燃料タンクの採用等による低床設計が特徴のひとつとなっている。ただし、全高も低くなっているため、居住性の向上というより、低重心化による操安と乗り心地の両立や乗降性向上が狙い。キャビンは手堅い設計という感じで、かっちりした造り込みや肘周り等々の収まりやすさを考慮した内装設計で居心地向上を図っている。見晴らしは現行車になって大きく改善されている。低ベルトラインで上下に大きく開口したサイドウインドウを見ても分かるように小柄な乗員でも見下ろし視界が広い。
ちょっとだけ格上だけどこんな選択肢もある

HONDA オデッセイ ●価格:298万~415万円
全高を抑え気味にしたステーションワゴン型ミニバンの上級モデル。1BOX型と比較すると積載性や多人数乗車での居住性に劣るが、ワゴンを思わせる寛ぎや走りが魅力。緊急用のプラス2席を備えた上級ワゴンと考えると理解しやすい。2.4Lガソリンと2LのHVが用意され、HVにはシリーズ式をベースにしたi-MMDを採用
ヴォクシー/ノアって こんなクルマ
ハードウェア面では現行型で大きく進化した。プリウス由来のハイブリットもそのひとつだが、完全新設計のプラットフォームは正に最新型。ただし、先進安全&運転支援機能は出遅れている。衝突回避機能に不足はないものの、2L級1BOX型では唯一のACCとLKAの設定がなく、かなり大きなハンデとなっている。
ユーティリティ &使い勝手
NISSAN セレナ


デュアルバックドアはセレナの大きな特徴。さっとカバンを取りたいだけで、重いバックドアを操作するのが面倒な時、駐車場等で後ろのスペースに余裕のないときに活躍。3列目格納は左右跳ね上げ式。
シートアレンジの豊富さと デュアルバックドアはセレナの魅力だ
ユーティリティ面ではセカンドのロングスライドと左右席の横スライド、サードシートのスライド機構、デュアルバックドアのハーフバックドアが見所。シート関連機能は寛ぎ向上に役立つだけでなく、長尺物積載などのアレンジにも多様性がある。サードシートのスライドは若干の居住性の犠牲でサードシート使用時の荷室容量を拡大できる。ハーフバックドアは狭い場所の開閉しやすさと買い物等のチョイ積みしやすいのが特徴。適応用途を左右するほどの利便性ではないが、肌身感覚での使いやすさはセレナの真骨頂とも言える。
前席だけでなく、2列目や3列目のポケッテリア類が充実しているのは嬉しい。USBソケットも数多く備えている(グレード別)。
ライバル TOYOTA ヴォクシー/ノア
センターコンソールボックスを低く設計、ガソリン車は前席間もフラットで、キャプテンシート仕様ならばウォークスルーも可能。2列目のマルチスライドレバーひとつで前後にも、横にもスライドさせられる。3列目は左右跳ね上げ式。
セレナほど特筆すべき目玉はないが、ポケッテリア類も一通り用意しており、日常でのユーティリティ面に不満はないはず。
オーソドックスな造りで アレンジの操作の しやすさに注目
寛ぎ優先のセカンドキャプテン仕様と多用途性のベンチ仕様という構成はライバル車と共通。両仕様ともにセカンドロングスライド機能を備えているが、サードシートにスライド機能はないため、貨客容量のアレンジへの影響はサードシート格納時のみ。ベンチ仕様のセカンドシート格納は座面チップアップの前スライド。積載性に関わるシート機能は比較的オーソドックスである。跳ね上げ式では最も軽く扱えるサードシート収納などアレンジ機能よりも作業性を重視した設計でもある。
こんな機能を 持つモデルもある
HONDA ステップワゴン (わくわくゲート) ●価格:245万5920~ 360万2880円 (ただしBには わくわくゲートの 設定なし)
同車のキャビン機能で最も特徴的な部分。一般的なドアと同様の横開き開閉のサブゲートは狭い場所での荷物の積み降ろしだけでなく、クルマを小屋のような気分で使えるアイテム。サードシートの床下格納によるフラットで広い荷室と相まって1BOX型をアウトドアレジャーのベースキャンプとして使うユーザーに最適だ。
HONDA ステップワゴン (わくわくゲート) ●価格:245万5920~ 360万2880円 (ただしBには わくわくゲートの 設定なし)
安全&運転 支援装備の充実度
NISSAN セレナ

安全装備の充実に力を入れているセレナ。プロパイロットについても制御が進化しているとのことで、早く試乗で確かめたいところ。
ニッサン初となる装備、アダプティブLEDヘッドライトシステムは見どころのひとつだ。c
ミニバンにこそ欲しい 各装備が運転の疲労を 大きく軽減してくれる
標準装着率やグレード展開に多少の不満はあるものの、プロパイロットを核とした安全&運転支援機能は2L級1BOX型に限定しなくてもセレナの大きなアドバンテージである。MCでは衝突回避や周辺監視など総合的な向上が図られたが、やはり要点は全車速型ACCと走行ライン制御LKAの高速走行での運転疲労軽減。動力性能や操安面のハンデもある上に、仲間や家族と車中のコミュニケーションが重要なミニバンだからこそ欲しい装備であり、期待通りの効果がある。長距離走行の機会が多ければこれらの機能だけで選んでもいいくらいだ。
ライバル HONDA ステップワゴン

こちらも多機能で知られるホンダセンシングを用意。歩行者事故低減ステアリングや、路外逸脱抑制機能もある。
国産車ではかなり高レベルな装備 しかも全車に備えられる 周辺監視はやや不足?
ホンダは安全&運転支援機能の普及に最も積極的なメーカーのひとつであり、その主力車種の一車となるステップワゴンにもホンダセンシングが用意される。ACCや走行ライン制御型LKAが全車に標準装着されている。なお、各系統のベーシック仕様とターボ車のGではレスOP仕様も選択が可能だ。また、ACCはターボ車とHVで仕様が異なり、ターボ車は作動速度域が30km/h以上の高速型、HVは渋滞追従機能を備えた全車速型になる。国産車では高レベルの機能設定だが、BSM等の周辺監視機能が不足気味である。
セレナの「強み」はまとまりのよさにあり

POWERはシリーズ式の弱点をカバーしたステップワゴンのi-MMDと比較すると、技術的先進性に欠く。プラットフォームも低床設計のライバル車と比較すると一世代古い印象は拭えない。先進安全&運転支援機能でフル装備を狙えば、グレード制限やOP装着でけっこう値が張る。それでも1BOX型の主な用途を考えれば、上位候補車として欠かせない存在である。
ヴォクシー系3姉妹は高レベルのウェルバランスが魅力だが運転支援機能が致命傷。ステップワゴンもHVがスパーダ限定でちょっと割高感がある。ハードウェアの世代的にちょっと古いなと思えてもデメリットと言うほどでもなく、現実的な用途を考えればセレナがまとまりがいい、となるわけだ。