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更新日:2022.12.19 / 掲載日:2022.12.19

【RX、クラウン】トヨタはなぜ新型ハイブリッドシステムを開発したのか【石井昌道】

文●石井昌道 写真●レクサス、トヨタ

 世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを発売してから四半世紀が経った。

 トヨタはプリウスに搭載した2モーターのシリーズパラレル式ハイブリッドのTHSの他、マイルドハイブリッドのTHS MやCVTと組み合わせたTHS Cなど様々なシステムに取り組んだが、2代目プリウスでTHSIIと呼ばれたシリーズパラレル式ハイブリッドを進化させ、システムをこれに集約していくことに落ち着いた。燃費性能がもっとも良く、コストも抑えられたからだろう。

 だが、ここにきて新たなシステムを開発し、トヨタ クラウンクロスオーバー RSとレクサス RX 500hに搭載してきた。

レクサス RX 500h

 フロントに横置きするエンジンは2.4Lターボで、モーターは一つで駆動・回生の両方を担う。トランスミッションは6ATだが、トルクコンバーターはなし。エンジン、モーター、トランスミッションは直結されているが、クラッチで切り離すこともできるので、EV走行も可能。1モーターながらシリーズ・パラレル式だ。

 クラウンではデュアルブーストハイブリッドシステム、RXではパフォーマンスハイブリッドシステムと呼ばれる。

 さらにリアにインバーターと一体化された駆動用モーターを持つ4WDとなっている。以前からハイブリッドながらリアにモーターを加えた4WDのE-FOURはあったが、リアモーターの出力を高めたため、前後駆動配分を可変することによる車両姿勢のコントロールの幅が広がった。

 クラウンの場合、フロントはエンジン200kW(272PS)+モーター61kW(82.9PS)、リアはモーター59kW(80.2PS)、RX500hではフロントはエンジン202kW(275PS)+モーター64kW(87PS)、リアはモーター76kW(103PS)。いぜんとしてフロントのほうが高出力のため、車両姿勢のコントロールは高速域になると効果が薄れるが、それでも多くの場面ですぐれた操縦安定性を確保してくれるはずだ。

 このモーター式4WDはDIRECT4と呼ばれ、ハイブリッドカーだけではなくBEVでも採用されていく。

 ハイブリッドシステムだけをみれば欧州車や日産でも採用されていたものに近く、燃費効率も従来のTHSIIの2モーター式にはかなわないが、ドライブフィールは格段にスポーティなのが特徴。ターボエンジンのパワフルさ、有段ギアの気持ち良さなどを存分に味わいながらトルクが太いモーターのアシストまで加わるのだから痛快だ。

トヨタ クラウンクロスオーバー RS

 クラウンにもRXにも従来型の2モーター式も用意されているので乗り比べてみたが差は歴然。

 アクセルを踏み込んで強めに加速させようとすると、2モーター式ではエンジン回転数がいきなり高まって速度は後から上がってくる。CVTでよく言われるラバーバンドフィールがあってダイレクト感が薄いのだ。これでも以前に比べればエンジンもモーターもレスポンスが良くなっているのでだいぶましにはなっているのだが、新しいパフォーマンス型ハイブリッドに乗ってしまうと、スポーティさや上質感ではかなわない。

 クラウンは普通のハイブリッドなので、ラバーバンドフィールを感じる場面が多いが、RX450+はプラグインハイブリッドとなるためSOC(充電状態)が高めに維持され、アシストが大きいのでだいぶ是正される。アクセルの踏み込みに対してモーターがぐっと押してくれるのでエンジン回転数をあまり高めなくても済むからだ。

 パフォーマンス型ハイブリッドは新開発ながら、エンジン、トランスミッション、2つのモーターの協調制御がスムーズでぎこちなさがまったくないのはさすが。THSIIで養ってきた摺り合わせ技術は世界トップと言えるもので、他の追随を許さないだろう。シンプルなBEVよりも要素が多いハイブリッドのほうが、技術の底力が見えやすいというのが興味深いところだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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