車の最新技術
更新日:2024.03.14 / 掲載日:2024.03.14
最新アダプティブ・クルーズ・コントロールは直感的に操作できる? 国産車vs輸入車比較

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス、日産
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
(掲載されている内容はグー本誌2024年3月発売号「[運転支援技術のいまを専門家が解説!]最新運転支援技術の操作性を先代と現行、国産と輸入車で比較」記事の内容です)
違和感と操作性がACCの出来のよさ
ところで、そんなACCの理想はどこにあるのでしょう。大きく分けてふたつが考えられます。
ひとつは作動に違和感がないこと。人の感覚に沿い、ドライバーの補正が必要なくスイッチをオンにすればあとは料金所や大きく曲がるカーブなどもクルマ任せにできることが理想です。新しい車両は割り込まれる際の車速の調整が巧み。さらにクラウンではウインカーを出すと、移ろうとする車線の車両に速度を合わせて予備の加減速を行うからギクシャクせず滑らかです。
そしてもうひとつは操作性(操作手順)が簡単で違和感がないか。誰にとっても、それこそクルマの運転に不慣れな人でも使いやすいことが求められます。この特集では、そこに注目してみました。
結論から言えば、操作性はどんどん良くなっています。たとえば起動から速度設定は、かつての国産車は「全体のシステムをオン」と「速度設定」の2アクションが必要でした。しかし昨今はトヨタ車など国産の一部車種ではワンアクション化。希望の速度になったらボタンを押すだけで「システムオン」と「速度設定」ができるようになりました。これは大きな進化です。
では、輸入車はどうなのか?
じつはワンアクションでシステム起動から速度設定ができるモデルは日本車より多く存在。しかし、国産車対輸入車という図式があるかといえば、そうではありません。
国産車も輸入車もメーカーや車種によってワンアクションを実現しているか否かは異なるので、単純に「国産だから」とか「輸入車だから」という話ではないのです。
ところで、冒頭の作動の違和感ですが、最もよくないのは、ドライバーが意図しない動きがあること。たとえば前が空いたからといって急に加速したり、逆に何かを誤検知して急に減速するのもよくありません。
その点は輸入車だとボルボやメルセデス・ベンツあたりが滑らかでドライバーに寄り添っている印象ですが、日本でもスバルやトヨタの最新システムはかなりスムーズ。ときどき「輸入車のほうが性能がいい」みたいに言う人もいますが、日本車だって優れた制御を行う車種もたくさんあります。最新のシステムで比べると、トヨタ クラウンもメルセデス・ベンツCクラスもどちらも洗練度は高いから信頼&安心なのです。
では先進の運転サポート装備が進化したことで、実際のユーザーの生活はどれくらい便利になるのか。気になるのはそこですが、高速道路運転の疲れは確実に軽減されます。だからロングドライブがしやすくなるし、渋滞対応タイプなら渋滞もかつてより苦にならないのが大きなメリットですね。
[国産車現行モデル代表]トヨタ クラウン クロスオーバー

CHECK POINT

[1]設定は簡単にできるか
クラウンではボタンをひとつ押すだけなので、超簡単。ただし多くの国産車は2回押す必要があるので、クラウンや多くの輸入車に比べると手間がかかる。
[2]先行車がいなくなったときの加速感
かつては先行車がいなくなると設定速度まで急加速するACCもあったが、昨今は皆無。ジワジワと加速し、急加速が必要であればアクセルを踏んで対応。
[3]渋滞時の停止、再発進はどうか
とにかくスムーズ。トヨタ車の制御の繊細さはここ2年ほどでさらに磨かれ、ギクシャク感とは皆無だから同乗者がゆっくり寝ていられる滑らかさだ。
[4]車線維持はどの程度できるか
2022年に発売された「ノア/ヴォクシー」以降のトヨタ新型車はシステムが刷新されて車線維持性能も高度化。ハンドルに手を添えるだけでカーブを曲がれる。
「機能ON」スイッチはここ/ワンアクションで作動開始

これまで国産車のACC設定は、「メインスイッチON」と「車速設定」の2アクションが必要だったが、近年のトヨタ車はワンアクション化。ハンドルについているボタンを押せば、そのときの速度を上限として前を走る車両と一定の間隔をあけて追従走行がスタートする。
ACC以外の主な支援機能
・車線維持をサポート
・高速道路の車線変更をサポート
・オートマチックハイビーム
・標識の見逃しをサポート
・先行車・信号出遅れをサポート
・出会い頭の事故をサポート
・一般道で先行車との車間距離を維持



[輸入車現行モデル代表]メルセデス・ベンツ Cクラス

CHECK POINT

[1]設定は簡単にできるか
ワンアクションなので超簡単。複雑な操作なく、誰でも簡単に設定し扱える。車間の設定や設定速度のアップ/ダウンもハンドルのスイッチで可能だ。
[2]先行車がいなくなったときの加速感
加速の強さは「走行モードに応じて」を標準とし、「ゆるやかな加速(コンフォート)」と「速め(ダイナミック)」をあらかじめ設定できる。
[3]渋滞時の停止、再発進はどうか
メルセデス・ベンツもトヨタと並んで、先進運転支援機能の滑らかさに定評があるメーカー。停止や再発進もスムーズで、停止後30秒以内なら自動で再発進。
[4]車線維持はどの程度できるか
車線維持支援機能も高性能で、(日本では制限速度を超えるが)210㎞/hまで対応するのは、その制御がいかに高度であるかを示唆しているともいえる。
「機能ON」スイッチはここ/ワンアクションで作動開始

新型CクラスもACC起動はワンアクション。ハンドルにあるボタンを押すだけで、その速度を上限としてACCの作動が始まる。じつはCクラスに限らず、欧州車にはワンアクションでACCが起動する車種が多く、その数がまだ少ない国産車よりも気軽に使える。
ACC以外の主な支援機能
・車線維持をサポート
・高速道路の車線変更をサポート
・オートマチックハイビーム
・標識の見逃しをサポート
・出会い頭の事故をサポート
・一般道で先行車との車間距離を維持



先代モデル(〜2019年)におけるACCの使い勝手と操作性をチェック!
[国産車先代モデル代表]トヨタ クラウン(先代)
起動は2アクション必要ただし、制御は悪くない

先代クラウンと新型クラウンを比べて大きく異なるのは、起動方法。ワンアクションの新型に対して先代は2アクションが必要で、そこはわずらわしい。ただしACCの作動自体は不満なし。前へ割り込まれた際などの制御の綿密さなどはさすが新型と思えるが、先代も十分実用的だ。
先代モデルでもここまで使える!
・先行車にしっかり追従する
・カーブ速度抑制機能がある
・緊急時操舵回避支援がある
先代モデルはここが残念!
・ACCの設定が2アクション必要
・横方向の検知範囲が狭い
・先行車がいなくなると急に加速
※機能の詳細については年式により異なる場合があります。

[輸入車先代モデル代表]メルセデス・ベンツ Cクラス(先代)
先代型でもACC起動はワンアクションで完結する

クラウンとは異なり、先代モデルであってもワンアクションでACCが機能するのはCクラスの強み。ACCの制御に関しては、クラウンと同様に割り込まれたときの反応などに多少ギクシャク感があるものの、とはいえ十分に実用的な使い勝手だ。先代であっても便利に使えるACCといえる。
先代モデルでもここまで使える!
・ワンアクションでACCを起動できる
・ステアリング操作を補助する車線維持を備える
・30秒以内なら停止から自動で再発進
先代モデルはここが残念!
・隣の車線を走る車両の検知は現行型に劣る
・コーナーで自動的に車速を落としてくれない
・自動ブレーキ以外の運転支援装備はオプション
※機能の詳細については年式により異なる場合があります。
