車の最新技術
更新日:2024.11.18 / 掲載日:2024.11.18
いまさら聞けないマイルドHVの違いと効果【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●アウディ、スズキ、メルセデス・ベンツ
軽自動車にもあたりまえのように装備されるようになったMHEV(マイルドハイブリッド)だが種類や効果の違いは様々だ。
もともとはエンジン車に付いているオルタネーター(発電機)をモーターとしても使って、より燃費改善効果やエンジンのアシストなどに使えないかという発想から、少しずつ強化。一般的な12Vバッテリーの他に専用バッテリーを持ち、モーター出力も高めていく。
MHEVのなかでももっともマイルドなのは軽自動車用でスズキ アルトのそれは最高出力1.9kW(2.6馬力)でバッテリーは0.18kWh。WLTCモードの燃費は27.7km/Lで、MHEVではないモデル(充電制御付きアイドリングストップは装備)の25.2km/Lに比べて10%近く良好だ。


こちらは12V電源のMHEVだが、欧州は48V電源が流行中。電圧を高めればそれだけ効果が高くなるが、フルハイブリッド等の60V以上の強電は安全確保のための構造や専用ハーネスが必要でコストアップが必至。48Vならば12Vとさほどかわらないのでコストと効果のバランスがいいのだ。電力の回生は48V MHEVでも80~90%は可能だという。ちなみにマツダは珍しい24VのMHEVもある。
48VのMHEVにも2種類ある。
リーズナブルなのがベルト駆動式。オルターネーターを大型化したようなもので、既存のエンジンにほぼアドオンで装備可能でコストが抑えられる。それに対してトランスミッションなどへの内蔵式は、少しコストアップするが出力の高いモーターを使えば効果もそれだけ大きくなる。


メルセデス・ベンツはベルト駆動式をBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)、内蔵式をISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と呼び、車種毎に使い分けている。
横置きエンジンはBSG、縦置きエンジンはISGが多いようだが、GLCなどは「220 d」はISGなのに「メルセデスAMG 43」はBSGなど、必ずしも横置きと縦置きで区別されていない。モーター出力はどちらも10kWだ。
ライバルのBMW X3は間もなく新型がデビューするが、MHEVを搭載。ガソリンの20 xDriveとディーゼルの「20d xDrive」はベルト駆動式でモーター出力は8kW。スポーティなガソリンの「M50 xDrive」はトランスミッション内蔵型で出力は13kWとなる。
2023年2月に日本発売となったアルファロメオ・トナーレのMHEVはストロング志向で7速DCTに内蔵されたモーターの出力は15kW。発進時にはモーターで走り出し、走行中も隙あらばエンジンをとめてモーター走行に移行するなどストロングハイブリッドのようでもある。もちろん、EV走行は限定的ではあるものの、MHEVとしては積極的に燃費改善を行っているのだ。
ちなみにトナーレは意外やパワートレーンが先進的で1.5Lガソリン・エンジンには可変ジオメトリーターボ(VGT)を採用。ディーゼルでは一般的だが、ガソリンではポルシェ718ケイマン/ボクスターやVWゴルフなど一部でしか採用例がない。

最新のMHEVは本国デビューを果たした新型アウディA5が採用したMHEV plusだ。
アウディはこれまでもベルト駆動式の48V MHEVを持っていたが、それにトランスミッション後方へモーターを搭載するパワートレーン・ジェネレーターを加えた。
モーター出力はパワーアシスト時が18kW、電力回生時が25kWとされる。従来よりもアシストや燃費改善の効果が高く、電力回生は90%を超えるだろう。さらに、一般的なMHEVのバッテリー容量が0.5kWh~1kWh程度のところ1.7kWhと大きい。回生を沢山とって、効果を最大化しようという狙いだ。アウディ初のリン酸鉄バッテリー(LFP)を使っていることにも注目したい。
MHEVのストロング化が進み、ちょっとした競争領域になっているのだが、その背景には燃費改善=CO2排出量削減だけではなく厳しい排ガス規制もあるのだろう。
対策をすればするほどレスポンスが悪くなり、ドライバビリティに影響が出てしまう。とくにディーゼルでは顕著だ。実際に、排ガス規制対応したら途端に運転しにくくなったモデルもあるほど。プレミアムブランドのディーゼル車はよりストロングなMHEVがセットになっていく傾向にあるのだ。