車の最新技術
更新日:2020.01.08 / 掲載日:2019.10.29
燃料電池車(FCV)の仕組みとメリット・デメリット
グーネット編集チーム
地球温暖化の影響もあり、世界中でエコへの取り組みに関心が向けられています。
特に多くの二酸化炭素を排出する車ではその活動が顕著となって表れており、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といった、二酸化炭素を発生させないエコな車が開発されています。
今回はその中でも、燃料電池車(FCV)について仕組みやメリットをご紹介していきます。
燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)、ハイブリッドの違い
環境に優しいエコカーとして注目を集めている燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV・PHEV・PHV)など、政府の後押しや免税措置もあり、目覚ましい普及を遂げてきました。それぞれに燃料と駆動の仕組みが異なり、環境負荷の軽減に貢献しています。
ここでは、燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)、ハイブリッドの日本での普及率や、基本的な仕組みの違いについて解説します。
日本での普及率
経済産業省による2017年度の車の保有台数の調査では、燃料電池車(FCV)が2,440台、電気自動車(EV)で103,569台となっており、ハイブリッド車(HEV・PHV)に至っては8,310,669台となっています。
調査データから見るとハイブリッド車が圧倒的な普及台数となっていますが、燃料電池車(FCV)の販売が始まったのは2014年のことであり、販売年数の違いがそのまま保有台数に反映されているとも受け取れます。
ちなみに2014年度の150台から始まった燃料電池車(FCV)の保有台数は、2017年度では2,440台となっており、16倍の上昇率を示しています。年々その伸び率が下がっていることを考慮すると、今後、燃料電池車(FCV)の普及率が高まることが予想されます。
日本では2050年の「水素社会の実現」を目標に掲げ、世界的にも、中国を始めとする主要各国が燃料電池車の普及を目指しているのが現状です。その結果、燃料電池車の市場は、2030年度には2兆2084億円になるとの予想もされています。
基本的な仕組みの違い
燃料電池車(FCV)は、水素を燃料とし、酸素との化学反応による電気エネルギーでモーターを駆動・回転させます。航続距離も長く、静音無害なため、次世代のエコカーとして早くから注目を集めていました。
しかしながら、全体的なインフラ整備が進んでいないため、他のエコカーに後れを取っているのが現状です。
対して電気自動車(EV)は、文字通り電気を燃料として家庭でも手軽に充電できることから、安定的に需要を伸ばしてきました。しかし、現時点においては、航続距離が短いというデメリットが強調されています。
インフラも十分整い、航続距離も申し分のないのがハイブリッド車(HV・PHEV・PHV)です。HVは初期に爆発的な普及を見せた純粋なハイブリッド車のことであり、エンジンと電気モーターによる相互駆動で力強い走りを実践しています。
HVは外部電源からの充電ができない難点があったのですが、そのデメリットを克服したのがPHEV・PHVです。
PHEV・PHV、どちらもプラグインハイブリッド車であり、技術的な違いはありませんが、その名前の違いはメーカーによる呼び方の違いや、ハイブリッド車寄りの電気自動車(PHEV)か、電気自動車寄りのハイブリッド車か、という意味合いを含ませたものになります。
PHEV・PHVは、外部電源からの充電も可能で、航続距離が長いというメリットがあります。
燃料電池車(FCV)のメリット
グーネット編集チーム
燃料電池車のメリットは、二酸化炭素といった空気を汚染するガスを、一切発生させないということが第一に挙げられます。
水素と酸素が化学反応を起こした後はただの水に姿を変え、その蒸気はパイプを通って外に排出されます。これにより、空気を一切汚すことなく車を走行させることが可能です。
また、燃料電池のエネルギー変換効率は、ガソリン車に比べるとおよそ倍とされており、今後研究が進めばガソリン車以上に遠くまで走行できるようになると考えられています。電気自動車のように電気を定期的に充電する手間も要りません。
ガソリン車に比べると低振動・低騒音のため、静かな環境の中で快適な走行ができることもメリットです。閑静な住宅街でも近隣に迷惑になる心配もないため、車の騒音問題のリスクも低くなります。
燃料電池車(FCV)のデメリット
デメリットとしては、燃料電池の価格の高さが挙げられます。
燃料電池には触媒として非常に高価である白金が使用されているため、車の価格自体も普通車より高くなってしまいます。
また、ガソリンスタンドは全国各地にありますが、水素ステーションに関しては、全国でおおよそ80ヶ所しか存在していないようです。
日本の主要都市に水素ステーションが偏っており、地方ではまだ普及が進んでいないため、現時点では水素の充填を行いにくいというのが大きなデメリットです。
メリットとして挙げた低騒音ですが、一方で歩行者に接近しても全く気付かれないという恐れもあります。
これにより歩行者側も注意力が散漫となり、車との接触事故が起きる可能性もあります。
燃料電池車(FCV)の購入補助金について
燃料電池車(FCV)は環境性能に優れた次世代型自動車として売り出されました。しかし、車体価格が他の車両と比べて高額なため、今ひとつ浸透していないのが現状です。
そのため、国や自治体では水素ステーションなどのインフラ整備をはじめ、購入・保有に対する補助金や税制の優遇措置など、さまざまな対策を取っています。
自動車グリーン税制(自動車税)
自動車グリーン税制とは、排出ガス性能や燃費性能の優れた車に対し、その性能に応じて自動車税や軽自動車税を減税する制度のことを言います。また、新車登録から一定期間を超過した環境負荷の大きい車に対して重い税を課す制度です。
ガソリン車やLPG車においては13年、ディーゼル車は11年経過した後、重課されます。
エコカー減税
エコカー減税とは、環境性能に優れた車の購入に対して適用される、自動車取得税と自動車重量税の減税措置のことを言います。環境性能に優れた車とは、国土交通省の定めた排出ガスと燃費における基準値をクリアしている車のことです。
現行では「2020年度基準」が採用されており、基準に対する達成率により税率が異なります。
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金)
燃料電池車(FCV)や電気自動車など環境に優しい車の普及促進のために始まったのがCEV補助金です。燃料電池車と電気自動車、プラグインハイブリッド車、さらにクリーンディーゼル車がCEV補助金の対象となり、補助金額は数万円から数百万円です。
燃料電池車は、トヨタMIRAIならおよそ202万円、ホンダCLARITY FUEL CELLなら208万円のCEV補助金を受け取ることができます。
独自の補助金(自治体主体)
環境負荷の少ない車への税金の優遇措置は、自治体独自の観点からも行われています。
東京都の場合、対象車種は燃料電池車と電気自動車、プラグインハイブリッド車に限られますが、自動車税、自動車取得税が全額免除となります。
エコカーへの優遇措置は各自治体によって異なるので、お住まいの地域で独自の補助金制度があるかどうか、確認してみましょう。
まとめ
高額であるためなかなか普及の進まない燃料電池車(FCV)ですが、二酸化炭素を発生させないという革新的な車であり、今後さらに普及が望まれる車です。
燃料電池車の大きなデメリットの一つでもあるインフラ整備も徐々に進んでいくことが予想されます。また、燃料電池車は価格が高額というデメリットもありますが、インフラが整備され、普及が進むことで、生産量も増え、手の届きやすい価格になることも予想されます。
現時点において燃料電池車の購入を考えている方は、国の補助金や税制など、あらゆる優遇措置を活用しましょう。