車の最新技術
更新日:2019.05.29 / 掲載日:2019.05.29
NISSAN「プロパイロット2.0」大進化のすべて

日産の運転支援技術として定評のある「プロパイロット」が2019年の秋にさらなる次元にレベルアップする。「プロパイロット2.0」と名付けられたこの新システムの見どころをじっくりと見ていこう。
●文/山本シンヤ
世界初の快挙!高速道路で同一車線内での“ハンズオフ”をついに実現
日産の柱は「電動化」と「電脳化」と明快だ。電動化に関してはリーフをフラッグシップにノートやセレナのe-POWERが高い人気を誇る。一方、「電脳化」に関しては、セレナから導入が開始された「プロパイロット」が約3年でグローバル7モデルに採用を拡大、累計35万台を記録している。実は日産の運転支援技術は20年近い歴史があり、世界初採用されたものも数多い。そのプロパイロットの進化版が、今秋日本で発売予定の改良型スカイライン(V37 )に搭載される「プロパイロット2.0」だ。
プロパイロットは高速道路の同一車線内でアクセル/ブレーキ操作とステアリング支援を統合制御する運転支援システムだが、プロパイロット2.0はそれに加えて、「高速道路のナビ連動ルート」と「同一車線内のハンズオフ」を組み合わせた内容だ。
高速道路のナビ連動ルートは、ナビで目的地を設定しルート走行を行なうと、高速道路の本線への合流から高速道路の出口までの間で「ルート上の車線変更と分岐の支援」、また前方に遅い車がいる時は「追い越し時の車線変更の支援」を行う。また、同一車線内のハンズオフは、その名の通り、同一車線内ならステアリングから手を離すことを可能にした先進の運転支援である。
「手放し運転やわき見を助長するのでは?」と言う意見もあるだろうが、プロパイロット2.0は自動運転ではなく、あくまでも運転支援機能。全ての責任は運転者たるドライバーにある。そのため、同一車線内のハンズオフは、ドライバーが常に前方に注意を払い、状況に応じてステアリングを操作できる状態の時にのみ行われる制御なのだ。実は車内にはドライバーが前方を注視しているか監視するためのドライバーモニターカメラも装備される。そのため、ドライバーが脇見をした場合、音や表示を用いて何度も注意を行ない( 回数が増すに連れて警報度合が上がる)、それでもダメな場合は停止制御まで行う。安全への配慮は十分と言えるだろう。これらを実現できたのは「3D 高精度地図データ」と「周囲360度の広範囲センシング」の2つの技術のおかげ。
3D高精度地図データは日本国内の高速道路をセンチメーターレベルの細かさでデータ化し、道路の曲率や勾配はもちろん、全車線の区分線情報や速度標識、案内標識の情報も登録されているという。これにより道路と自車位置関係を高精度で把握ができ、加えてカメラの認識範囲より先の道路状況の判断も事前に可能。その結果、より正確で滑らかな速度調整やステアリング制御を行えるようになった。また昨今、新たな高速道路の開通が増えているが、地図データの更新が年数回という高頻度な点も見逃せない。
とは言っても、道路環境は刻々と変わるため車両側での正確なセンシングも重要だ。プロパイロット2.0では3つの画角(150/54/28度)を持つトライカムとAVMカメラ4つの合計7つのカメラと5個のレーダー(フロント+サイド×4)、そして12個のソナーで白線/標識/周辺車 両などを検知。これらを協調させることで、車両の周囲360度の情報と道路上の正確な位置、そして周囲の車両の複雑な動きを監視する。
また、システムをより確実にするため、日本の高速道路は全て実際に走り込んでテストを行なったというが、加えて急な車両の割り込みなど、実際の走行中に発生することが想定できる様々な危険シーンについては高機能ドライビングシミュレーターも活用して開発が進められたという。
日本のスカイラインへの採用を皮切りに、ほかのさまざまな車種への展開も計画されているだけにこれからが本当に楽しみだ。「ぶっちぎれNISSAN」を応援したい!
「プロパイロット2.0」注目POINT
【注目POINT1】3D高精度地図データを利用
日本国内の高速道路の形状を高精度にデータ化。走行時には横方向で約5cm、前後方向で約1m以内の誤差での自車位置把握が可能だという。
【注目POINT2】周囲360度の広範囲センシング
3つのカメラを組み込んだトライカムやAVM(アラウンドビューモニター)カメラ、ソナーやレーダーを使い自車の周囲360度を常時監視する。
【注目POINT3】インテリジェントインターフェイス
道路や周囲のクルマの状況に加え、現在のセンシング状況や制御の状態などをドライバーに分かりやすく伝える工夫がなされている。
カメラやレーダー、ソナーなどが車両のあらゆる箇所に装着されており、これらを協調させることで高精度なセンシングができる。周囲を走行中の他車や標識、白線などその対象は多岐にわたる。